君のために僕がいる

美珠

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1巻

1-3

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「ああ、そういえばそうだったね」
「星奈先生、ほんとにわかってるんですか?」
「わかってる。君って、からかうと面白いね、本当に」
「え?」
「別れてくるよ、ちゃんと」
「は? あ、いいですよ。もういいんです」
「だったら君は、この見合い話がここで止まってもいいの?」
「えー……っと? それは、どういうことですか?」
「同じ医者同士、お互いの仕事に理解がある。ついでに言うと、僕は君よりきっと収入が多い。ゲットしなくて大丈夫ですか?」

 そんなふうに言われると、万里緒はもう何も考えられなくなる。
 これって、間接的なプロポーズ?
 こういうときは、どうしたらいいんだろう。
 こんなイイ男が目の前で「自分を釣らなくていいんですか?」と聞いている。

「私は結構、気が強くて、愚痴ぐちっぽいところもあるし、医師としての経験も浅くて……」
「うん、それで?」
「……本当に恋人とちゃんと別れるんですか? そう言いながら、実はキープして二股かけようってんじゃあ……」
「キープ? キープねぇ……あはは」

 さっきから万里緒は笑われてばかりいる。
 けれど万里緒は真剣だ。世の中には実際そうやって、二人の女性を手玉にとる男もいるじゃないか。とくに男性医師は金銭的な余裕も社会的地位もあるし、何だってやりたい放題でしょ?

「キープとかよく考えつくね。面白いけど、もっと頭柔らかくしたら?」
「柔らかいから色々と可能性を考えられるんじゃないですか?」
「そうじゃなくて」

 千歳はそう言って、ビールを飲み干した。万里緒はすかさず、彼のグラスにビールをぐ。

「そうじゃなくて、なんですか?」
「そういうことをしない男もいるって、考えたことないんだ?」
「それはわかってますけど。でも星奈先生は無駄にイケメンなんですよ。その歳まで、なんで独身なんですか? 医者としても優秀で、すごくいい人だって聞きましたけど? 引く手数多あまたなんじゃないですか?」

『あ、失礼なことを言い過ぎた』と反省しても、もう遅かった。

「この歳まで独身だったのは、仕事に打ち込んでいたからだよ。忙しく働きすぎると縁遠くなるって、同業者だからわかるでしょ? 言ったことを反省するくらいなら、言わなきゃいいのに」

 千歳は本当にエスパーなのかもしれない。万里緒の心を完全に読みきっている。

「すみません。やっぱり私って……気が強いんです……」
「なんか、漫才してるみたいだね、僕ら」
「私、言わなくてもいいことでも、思ったらすぐツッコんじゃう」
「君のこと、相当ツボに入った。やっぱり、ちゃんと別れてくるよ」
「へっ? なんで!?」
「君は面白いし、男前だし、可愛いだけの女じゃないから」

 そう語る千歳の唇は、すごく魅力的だ。
 でもダメ、そんなこと考えちゃいけない! また思考を読まれてはかなわない!
 どんどん思考が混乱してくる万里緒だった。
 一方千歳は、「他にもこういう店を知ってるんだったら教えて?」などと言いながら、膝をコツンと当ててくる。
 万里緒が思わず身を固くすると、千歳は「そういうところ、可愛いと思うよ?」と、かすかに声を出して笑った。
 完全にからかわれている。
 こんな場面で女性にちょっとしたスキンシップを与えて刺激するとは、なんて上級者なんだ。
 連絡が途絶えて自然消滅させるなんて、看護師の彼女はなんてもったいないことをするんだ。こんなにもイケメンで、背が高くてスタイルもよく、医師としての能力も人柄も抜群の男性を、なんでもっとしっかり捕まえておかない。
 仮に千歳がきちんと彼女との関係を清算したとして、果たして自分は彼をしっかりゲットできるのか? 前途多難な恋が始まりそうな予感がする。



   3


 千歳との見合いの翌週も、万里緒はいつも通り出勤した。

「藤崎先生、患者さんが先生とお話ししたいそうです」

 看護師が万里緒に声をかけてくる。

「わかったわ。どういう用件か聞いてる?」
「たぶん、不安なんだと思います。説明室をとっておきました」

 この看護師は万里緒よりも年上で、経験豊富なので手回しがいい。

「ありがとうございます」

 万里緒は看護師に礼を言ってから、受け持ち患者の待つ病室へと向かった。
 彼女は万里緒を見ると笑顔になり、ベッドから起き上がった。

「先生、いつもすみません」
「いいえ。説明室を取っていますから、行きましょうか?」

 明るく「はい」と言って万里緒のうしろについてきたが、その足取りは重く、いかにも不安そうだった。
 彼女は当初、胃の痛みを訴えて受診。精密検査を行ったところがん発症はっしょうしていることがわかった。
 万里緒は、手術などの外科的治療が必要と判断した。そのことを本人に説明すると、彼女は「とにかく早く退院できる方法で治療を始めたい」と希望した。そこで万里緒は、さっそく外科に紹介することにしたのだ。

「先生、私なんだか怖くなってしまって……自分から望んでおいて、すみません」

 患者はひどく気落ちした様子で、下を向いている。

「先生、私、大丈夫でしょうか? まだやることがたくさんあるし、生きていたいんです」
「大丈夫ですよ。外科の先生たちはみんなスペシャリストですから」
「そう聞いて、なんだか少し勇気が湧いてきました」
「一緒にがんばりましょうね」

 彼女は会ったときよりも落ち着いた様子で、説明室を出ていった。
 万里緒はひと息つき、面談の内容を記録しておくためにナースステーションへ向かった。
 パソコンに記録したあと、カルテにも記載をしておく。
 今日は外来日なので、たくさんの患者たちが待っている。

「頑張らないとなぁ」

 万里緒は大きく伸びをしてから、首にかけていた聴診器を外した。


   * * *


 外来の診療を終えた万里緒は、病棟回診に必要なカルテを取りにナースステーションへ行く。
 そこで、顔見知りの外科医、三枝さえぐさまことに出くわした。

「げ……」

 思わずそう、つぶやいてしまった。
 チャラくて面倒くさいので、あまり会いたくない先輩医師だった。

「おー! 万里緒ちゃーん」

 相変わらず軽い調子だ。万里緒は愛想笑いを浮かべ、頭を下げた。

「三枝先生、ここは病棟ですので、私のことは苗字で呼んでください……」
「いいじゃん、万里緒ちゃんで。……そんな嫌そうな顔するなよ」
「いや、別に嫌というわけでは」
「顔に出てるよ」
「はあ……」
「ああそうだ、万里緒ちゃんから引き継いだ患者さん、新しく来た先生にてもらうことになったから。今、検査データをプリントアウトしてる……あ、来た。星奈、カルテはここだよ!」

 星奈、と聞いて万里緒がうしろを振り向くと、そこには彼が立っていた。

「万里緒ちゃん、紹介するよ。俺と同期の、星奈千歳だ。今月異動で来たんだけど、腕はばっちりだからねー。それから星奈、この万里緒ちゃんは、消化器内科で今、唯一の女医だよ」

 紹介されて、万里緒はゆるく笑う。さっそく千歳と接点ができた。

「よろしくお願いします、星奈先生」
「こちらこそ、藤崎先生」
「固い挨拶あいさつすんなよ、星奈」
「普通だろ、これで。ところで藤崎先生、患者さんのことを少し聞いてもいいですか?」
「あ、はい。彼女は児童養護施設で料理を作っていて、その仕事が生きがいなんです。それで、一日も早く退院して仕事に復帰することを希望しています」

 万里緒が答えると、千歳はカルテを見ながらしきりにうなずく。
 それを見ていた三枝が、「成長したよねぇ、万里緒ちゃん」と、いきなり肩を抱いてきた。
 まったく、患者の目も看護師の目もあるというのに。

「ちょっ! 手を放してください! やめてって、いつも言ってるでしょう!」
「いいじゃん、俺と万里緒ちゃんの仲じゃない。この子さぁ、研修医で外科を回ってきたとき、俺が指導医だったんだよ」

 三枝が千歳にそう説明している間に、万里緒は彼の腕から逃れた。

「でも、つれないんだよなぁ。俺はいつも可愛いって言ってるのにさ」
「そういうスキンシップが迷惑なんじゃない?」

 苦笑しながら答える千歳を見て、万里緒は複雑な気持ちになった。
 元指導医に肩を抱かれている万里緒を見て、千歳はどう思っているのだろう。しばらく機能していなかった乙女心が稼働しだした感じだ。
 でも、千歳はなんとも思っていない様子だった。

「スキンシップでもなんでもしてプッシュしないと、いつまでも元指導医のままじゃん?」

 彼は、いっこうに悪びれず笑っている。そして、こんなことも言った。

「俺もそろそろ本気で頑張らないとね。星奈は教授の覚えもめでたいから、見合いの世話までしてもらえていいけど、俺は自力で相手を見つけないと。あ、星奈。ちなみに見合い相手はどうだったんだ?」

 ほんの一瞬だけ、千歳と万里緒の目が合った。
『その見合い相手は私です』と万里緒は心の中でつぶやく。

「そういう話はあとで。今は患者さんのことが第一だ。本人が手術を希望しているなら、さっそく準備を進めよう。ちょっと資料をとってくる」

 そう言って千歳は、ナースステーションを出ていった。
 そんな千歳を見送りながら、三枝は話を続ける。

「万里緒ちゃん、あいつ、口調はおっとりしていて、実際にのんびりした性格だけど、仕事は出来過ぎ君だから安心していいよ。腕はピカイチで、何があっても動じない男だ。患者受けもいいんだよなぁ、イイ男だから」

 ベテラン外科医の彼がそう言うのだから、その通りなのだろう。叔母が手放しで誉めていたのもうなずける。
 千歳を誉める三枝を見て、万里緒は彼のことも誉めておこうという気になった。

「先生だって、消化器内科の看護師たちがカッコイイって騒いでましたよ?」
「マジで? でも、星奈を見たら星奈のほうがいいと思うに決まってる。整った顔してるし、看護師にも優しいから。おまけに、のんびり屋だけど仕事は早くて的確。あいつは、どこに行ってもモテモテだ。だから、いつも女が切れない」

 やや不貞腐ふてくされたように言う。

「へぇ……いつもいいお相手がいるんですか?」
「そう。あいつさぁ、清潔感のある顔してるだろ。だから女は警戒心を抱かずに近づけるみたい。おまけに優しいし怒らないんだよね。そういうところもモテポイント」

 ため息をついて腕を組みながら、ふと思いついたように付け加える。

「もしかして、万里緒ちゃんもトキメいた?」
「は!? やめてくださいよ」
「だって俺がこんなに口説いてんのに、星奈のことじっと見たりしてさ。またかよ、って感じ」

 そういう三枝だって、何かと万里緒に絡んでくるが、彼が自分に本気でないのはわかっている。三枝はほかに気になる相手……というか付き合っている医師がこの病院にいることに、万里緒は薄々感づいていた。
 そうこうしているうちに、千歳がナースステーションに戻ってきた。
 そして、患者のカルテを万里緒の手に戻し、笑みを浮かべて言う。

「患者さんは、不安があるみたいだけど、納得はしているようだから、今日の会議で手術の日程を決めます。明後日までには外科病棟へ転科させましょうか」

 手際てぎわがいいな、と万里緒は感心した。

「はい、そうしてください。それと!」

 万里緒がちょっと語気を強めると、千歳は首を傾げて見つめてくる。

「患者さんのこと……どうかよろしくお願いします」

 万里緒が頭を下げると、千歳はうなずいた。

「もちろんです」

 その一言は、万里緒の胸に響いた。
 千歳がナースステーションを出て行ったあとも、万里緒はそのまましばらくカルテを抱きしめていた。

「カッコイイですねー。言うことも素敵だったなぁ。……あの人、新しい外科の先生ですか? 名前は?」

 側にいた若い女性看護師の目がハートマークになっている。

「ああ、星奈先生よ。星奈千歳先生」
「可愛い名前ですね! いやー、嬉しい。これからもここに来ますよね?」
「そうね、外科医だし」
「うっそー! みんなに情報流そう!」

 看護師は可愛い反応をする。こんなふうにピンク色に染まったような声を出したことが、かつて一度でも万里緒にあっただろうか。たぶん、ない。

「星奈先生って、彼女いるんですかねぇ」
「……っ、さぁね」
「久し振りに、なんか嬉しいです!」

 先ほどのナースはナースステーションにいる同僚を集め、さっそく千歳の噂話を始めた。若い女性看護師たちの頬が次々とピンク色に染まっていく。それを見て、万里緒はまたため息をつく。
 万里緒も三十歳になったとはいえ、病院ではまだ若い部類に入る。だが中身がオヤジだということは、嫌でも自覚せざるを得ない。ビールが好きだし、焼酎しょうちゅうも好きだ。一人で三軒ハシゴすることもある。過去には、一度だけだが朝起きたら枕に砂がたくさんついていたこともある。
 そんな万里緒に、女なら誰でも目の色を変えて騒ぐような千歳が振り向くだろうか。

「あり得んだろ、やっぱり」

 万里緒は彼にトキメキっぱなしだが、自分の器量では彼を捕まえられる気がしない。

「あり得んけど、頑張りたい気もするんだよね……」
「藤崎先生、さっきから何をつぶやいてるんですか?」

 ナースに言われ、万里緒は「こっちのこと」と曖昧あいまいに答えておいた。
 そして、今は仕事に集中しようと頭を切り替えた。


   * * *


 今日も遅くなった。そう思いながら、千歳と出会った食堂へ向かう。
 夜は居酒屋として営業しているので、深夜十二時まで店は開いているのだ。

「なんか、疲れてるね、マリちゃん」
「そうなんですよ。おじさん、ビールと……っ」

 店の中を歩きながら言いかけて、目の前に千歳がいることに気づいた。
 千歳は食事の途中らしく、はしを持ったまま、万里緒を見てにこりと笑う。
 そして、どうぞ、と言わんばかりに、隣の椅子いすを引いた。
 万里緒は促されるまま、千歳の隣に座る。

「ビールと、いつもの日替わりを」
「今日はマリちゃんの好きなビールがあるよ、ほら!」
「青島ビール! 仕入れたんですか?」
「そうだよ」

 ニコニコ顔のおじさんに万里緒も笑顔になる。大好きな青島ビールを見てテンションが上がった。が、ふと気づいて隣を見ると、千歳は案の定、笑いを噛み殺していた。

「好きなんだね、青島ビール」
「好きなんですよ、青島ビール」

 千歳は、飾りボタンがついたシャツとチノパンという格好だった。とってもよく似合っている。

「そういえば今日、星奈先生のこと、看護師たちがカッコイイって噂してましたよ」

 言いながら自分のグラスにビールをごうとすると、千歳がそっとビールびんを奪う。

「女の人が手酌てじゃくするととつぎ遅れるらしいよ」
「マジですか?」

 ずっと手酌てじゃくだったよ、と内心ツッコんだ。

「迷信だと思うけどね」

 そんなやりとりをしている間に、日替わり定食が出てきた。今日はトンカツと野菜炒めだ。さっそく手をつけると、トンカツの衣がサクサクして美味しかった。

「二人とも知り合いかい?」

 店主のおじさんが聞いてくる。

「職場が一緒なんですよ」

 千歳が答えると、店主は「そうかい」と答えながら隣のテーブルの片づけを済ませ、去っていった。

「そうそう。見合いの日、君に会ったあとすぐに、彼女ときちんと別れたよ。彼女のほうも別れたつもりになってたらしいけど……けじめ、つけたよ」

 万里緒が黙っていると、「何か言うことない? 藤崎さん?」と返事を促された。

「……本気ですか? あり得ないんですけど?」
「何があり得ない?」
「私を選ぶなんて! もっとこう、うちの看護師みたいな可愛い、ピンクナース的な女性のほうが……」

 言いかけて、やめた。千歳が笑ったからだ。

「ピンクナースって何?」
「うちの病院の看護師たちが、星奈先生を見て頬をピンクに染めていたから。そういう素直で可愛い反応をするナース、って意味です」
「君は頬を染めてくれないの?」

 千歳は、とんでもないことを言う。

「可愛いだけの女性は好みじゃないって言ったはずだけど?」
「いや、だからですねぇ、星奈先生みたいな、優しくて女の人を切らさないような恋の上級者が、私を選ぶなんてあり得ないんですよ。私、中身はオヤジ系だし」
「そこがいいって言ったのに」

 そう言って、にこ、と笑う。

「面白がってるだけでしょ?」
「もうすぐ三十七のオッサンは、これでも真面目に考えてますよ」

 万里緒は言葉に詰まり、はしを動かす手も止めてしまっていた。

「本気にしますよ、色々と」
「本気にしてよ、色々と」

 それから千歳は、笑いを噛み殺して続ける。

「やっぱり、僕ら漫才してるみたいだ」
「途中で、心変わりされちゃ困りますよ」
「君こそ、心変わりしないでよね、万里緒さん」

 クルリとした目を細めながら、千歳は言った。

「教授にも言ってあるから。見合い話は進んでます、って」

 クラッとする。
 こんなことが、オヤジな自分の身に起こるなんて。まったく、なんてこったい。

「嫌なの?」
「まさか! ただ、信じられないだけです。本気ですか?」
「……早く、ご飯食べたら?」

 千歳は万里緒のぜんを指差し、早く食べろと促す。千歳はすでに食事を終えている。
 万里緒も急いで食べて、ビールも飲み干す。

「お会計、お願いします。二人分ね」
「はいよ!」

 千歳はさっと立ち上がり、万里緒の分の会計も済ませてしまう。万里緒も遅れて財布を取り出したけど、払わせてはもらえなかった。
 店を出るとき、店主のおじさんに「マリちゃん!」と呼び止められた。

「はい?」
「頑張れよ!」

「何を?」と聞く前に千歳が店を出たので、慌ててあとを追う。
 店外に出ると、千歳は少し行ったところで待っていてくれた。

「家まで送ろうか。車、すぐそこに停めてあるから」
「あー、遠慮しておきます。私の家、ここからちょっと離れてますし」
「いいよ」

 それだけ言って千歳が歩き出してしまったので、万里緒も仕方なくついていく。
 近くの駐車場には、黒のジープが停めてあった。

「これが星奈先生の車?」
「海に行ったり、山に行ったりするから、大きな車にしたんだ。今年は一緒に行く?」

「さあ乗って」と促されるままに乗り込むと、新車の匂いがした。車高が高く、なんだかとても見晴らしがいい。

「この車、まだ新しいみたいですね。あ、でも、本当にいいんですか? 家まで送ってもらって。それに、さっきの話ですけど……」

 言いながら万里緒が千歳のほうに顔を向けると、彼の大きな手が頬に触れ、頬のラインに沿って滑った。それから後頭部をしっかりとつかみ、固定される。
 何も考える間もなく、気がつけば唇をふさがれていた。

「ん……」

 重ねるだけの軽いキス。次いで、角度を変えてもう一度唇が重なる。


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