ファザコン由香里と親バカ達也

浜桜 直政

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第一章 異世界の勇者

第2話 達也 ―女神との邂逅―

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気がつくと、そこは女神の城だった。
召喚されたときは頭の中で声を聞いただけで、姿を見るのはこれが初めてだ。

『よくぞこの世界を救ってくれました。心から感謝します』
目の前に現れた女神は、俺の世界の女優にそっくりだった。……まぁ、そんなことはどうでもいい。

「これだけのギフトをもらって倒せなかったら落ち込むだろ」
そう言って苦笑する。

『あなたのおかげで百年は平和が続くでしょう』
女神が微笑む。

「それは良かった。戦友たちの幸せが何よりだ」
心からそう思えた。

――だが。

『では、次の世界に――』
女神がそう言いかけた瞬間、俺は言葉を遮った。

「その前に、今回の報酬だな」

『悠長なことを言っていられる状況じゃないのよ、あの世界は!』
女神が声を荒らげる。

「交渉決裂だな」
俺は女神に攻撃を仕掛けた。

『私には女神の盾がある! あなたの攻撃は届かない!』
仁王立ちする女神。

「諦める選択はないんだよ」
渾身の一撃を盾に叩き込み、亀裂を走らせる。

『馬鹿な……人間ごときの力で……!』
女神は狼狽する。

「次は破壊する」
拳にさらに力を込めたその時、天上から光の壁が降り、神々しい声が響く。

『勇者よ。そなたの気持ちもわかるが、ここは創造神たる我の顔を立て、矛を収めよ』

創造神――神の上の神が降臨した。

「女神を野放しにしていいんですかね、創造神ちゃん?」
(いや、神の上の神にちゃん付けする自分って何者だよ……)

『流石勇者、常人では言えぬことを言う。そなたの力はそなた自身のもの。女神とて抗えぬ。下手をすれば対消滅もありうる……』

「対消滅? ねーよ。神なら復活できるんじゃねーの」
俺は半ば呆れていたが、腹が立ったから攻撃したのは黙っておいた。

『その力は私のギフトではないのよ』
女神が震える声で言う。

「召喚したのはあんただろ。ギフトを授けたって言ってたよな? それがどういうことか説明してみろよ」

あえて女神を小馬鹿にした言い方をする。

『相変わらず癪に障るわね……人間の分際で!』
女神は怒りに顔をゆがめる。

『双方とも静まれ! 女神も我が眷属であることを忘れるな』
創造神が女神を制し、場を収める。

『勇者……いや、達也よ。女神の無礼は我が謝ろう。どうか矛を収めてくれ。だが女神の言う世界は本当に危機的状況なのだ。そなたの力で救ってはくれぬか』

「危機的状況なのは俺も同じだ。家族の方が大事だ」

『ならば女神の世界を救った後、今の時間に戻し報酬を受けるというのはどうじゃ? 創造神たる我が約束しよう』

俺は創造神をじっとにらみ、確かめる。

「……本当にできるんだろうな」

『創造神の名にかけて』

その姿は厳かで、威厳に満ちていた。

「わかった。アンタに免じて引き受ける。そのあとでまた交渉だ」

『最初からそう言えばいいのよ。それがあなたの役割なのだから』

次の瞬間、俺は女神の世界に転送された。
転送される直前、女神に向けて殺気を放ったのは――
これから始まる“本当の戦い”の予感だった。

――第一章 完。
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