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プロローグ(俺作アンドロイド。鍵中深紅)
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「深紅たんがどうしたら良いか迷ってる。もうひなっち先輩で良いだろ。ひな坊」
「ひなっち先輩はまだ良いとしても、ひな坊とか絶対嫌だからね」
「主」
制服の裾をくいくいと可愛らしく引っ張るのはマイエンジェル深紅たん。
何か言いたげな表情にじっと見つめられる。
「どうした、深紅たん。おお、ひな坊というあだ名が気に入ったのか。そうか、そうか。じゃあそれで」
「おいこら。まだしんちゃんは何も言ってないでしょ」
「深紅は未来で奥方にたくさんお世話になった。だから、あだ名をつけて呼ぶような失礼な行為は出来ればしたくない」
深紅たんは俺のお願いを何でも聞いてくれる良い子だ。それなら俺も彼女のささやかなお願い事くらい聞いてあげなくては不公平になるな。
「良いぞ。ひなっちのことをこれからどう呼ぶかは深紅たんに委ねた」
「主ならそう言ってくれると思っていた」
結局、深紅たんがひなっちを「奥方」以外のあだ名で呼ぶことはなかった。
どうして奥方なのかと聞かれたから、正直に言ってやったよ。
俺とお前は何年後かに結婚するらしいぞってな。
そしたら赤面して走って逃げやがった。一緒に帰るんじゃなかったのかよ。
「腹減ったな……」
いつもなら晩飯を作って持って来てくれる筈の日向が夜二十時を過ぎても、全くと言って家に現れる様子がない。
未来の自分の夫が俺だと知って恥ずかしくなったとか、きっとそんな理由だろうな。
「ひなっちはまだか。深紅たんも腹減ったよな」
「心配する必要はないと思われる。奥方が主に甘く優しいことは深紅がよく知っている」
確かに、アイツが俺に優しいことは否定しないが。
「しかしだな、深紅たん。日向はいつも大体十九時には夕飯を運んで来てくれているんだぞ。時間を見てみろ。もう二十時を過ぎた。今日はちょっと遅すぎるとは思わないか?」
「そっか」
そっかって……何故か深紅たんの反応が冷たい。
「深紅た~ん。君に料理スキルとかって備わってないの~?」
「可能。だが、もう少し時間が経過すれば奥方が食事を運んで来てくれるのでは?」
「もう十分待った。今日は深紅たんの手料理をご馳走してくれ」
「むう。仕方がない。後々奥方の悲しがる姿が容易に想像できるが深紅は主のお願いを断れない」
仕方無くと深紅たんが作ってくれたのは肉まん、シュウマイ、エビチリ、チンジャオロース、蟹玉と全てが中華料理だった。
「中華作る材料何か家には無かった筈だが」
「材料なら深紅がテレポーテーションでスーパーに行って買って来た」
「深紅たん偉い。俺と結婚しようか」
「駄目。主の結婚相手は奥方と決まっている」
でしたな。残念過ぎる。俺的に好みなのは日向より深紅たんの方なのだが。
「はむ」
深紅たんは料理をテーブルの上に全て運び終わった後、自分の作った肉まんを一つ取って口にくわえた。
日向が家に食事を運んで来たのは中華料理のほとんどを食い終えた後だった。
「夕飯遅くなってごめんね。掴、ひなのこと怒ってるよね?」
「怒ってない、怒ってない。深紅たんの手料理食い過ぎて満腹で死にそう」
「しんちゃんが作ってくれたんだ。ありがと。そう、だよね……ひなが来るの遅いから悪いんだよね」
「奥方、深紅余計なことした。謝る」
「ううん、大丈夫。しんちゃんこそ、態々掴の為に夕飯作りに来てくれてありがとう」
日向が持っているのはきっと夕飯の入った弁当箱だろう。
だが、すまない。もう俺の腹にはこれ以上何も入りそうにない。食い過ぎで吐きそうなくらい気持ちが悪いのだ。
「じゃあ、ひな帰るね。明日も朝起こしに来るから」
日向が見るからに落ち込んでいるのがわかった。
そりゃそうだろう。せっかく作って持って来た弁当をまたそのままの状態で持ち帰るんだからな。
しかし、すまん。何度も言うようだが俺の腹にはもう何も、
「奥方、深紅に任せて」
「……へ、しんちゃん?」
深紅たんが帰ろうとした日向を呼び止めて、その手から弁当箱を奪い俺の居る卓袱台前まで運んできた。
「まさか、深紅たん。あれだけ食ってまだ食う気か?やめとけ、やめとけ。太っても知らんぞ」
「違う。食べるのは深紅じゃない。主」
「はぁ?俺はもう腹一杯で……もがっ!?」
「食べるの」
そう言って深紅たんは弁当箱を開け、無理矢理に俺の口へ食べ物を押し込んだ。
「……ま、待て。待ってくれ、深紅たん」
「せっかく奥方が作って来てくれたのに、食べてあげなきゃ可哀想。主、二口目。早く口開けて」
「待てって……今食ったら絶対に吐いちまうって。せめて、もう少し時間を空けてからにだな……」
「やだ」
「もごっ!もがっ!」
「しんちゃん、掴が可哀想だからもうやめてあげて」
「わかった」
…………死ぬ…………。
「……あ、あれ……?」
俺が眠りから覚めた場所はベッドの上ではなかった。どうやら卓袱台に顔を伏せて眠っていたらしい。
気がついたら部屋の中には、朝の明るい光が差し込んでいた。
無理矢理に日向の作って来てくれた弁当を俺に完食させようとした昨日の深紅たんには驚かされたな。
後々考えてみればあれは深紅たんなりの思いやりで、あの子はきっと俺が日向に対して冷たい態度ばかり取っていたことが許せなかったんだろう。
「ごめんよ。深紅たんからしたら、日向は俺と同じくらい大切な家族何だよな」
俺の隣で満足そうに眠る深紅たんの頭を撫でて謝罪した。
いつもの無表情で電波な深紅たんも好きだが、昨日のような強引な深紅たんも俺はアリだぞ。
「昨日はびっくりしたよ~。しんちゃんが掴に無理矢理ひなが作ったお弁当食べさせ始めるんだもん」
「俺が一番びっくりしてたけどな」
今日もいつものように俺を起こしにやって来た日向と一緒に登校。
深紅たんは何故か、中々起床する気配が無かったので俺の背中におぶって来た。
(この子はテレポ使えばすぐに学校に移動出来るんだけどな)
「日向の作った弁当、美味しかったぞ」
「そ、そう……何か嬉しいな。掴がひなのお弁当褒めてくれたの 初めてかも」
毎日食事を作ってくれている日向に罪悪感があって自然と口にした精一杯の感謝の言葉だった。
いつも無表情な深紅たんの寝顔が、何故だか嬉しそうに微笑んでいるように見えたのは見間違いではないのかもしれない。
「ひなっち先輩はまだ良いとしても、ひな坊とか絶対嫌だからね」
「主」
制服の裾をくいくいと可愛らしく引っ張るのはマイエンジェル深紅たん。
何か言いたげな表情にじっと見つめられる。
「どうした、深紅たん。おお、ひな坊というあだ名が気に入ったのか。そうか、そうか。じゃあそれで」
「おいこら。まだしんちゃんは何も言ってないでしょ」
「深紅は未来で奥方にたくさんお世話になった。だから、あだ名をつけて呼ぶような失礼な行為は出来ればしたくない」
深紅たんは俺のお願いを何でも聞いてくれる良い子だ。それなら俺も彼女のささやかなお願い事くらい聞いてあげなくては不公平になるな。
「良いぞ。ひなっちのことをこれからどう呼ぶかは深紅たんに委ねた」
「主ならそう言ってくれると思っていた」
結局、深紅たんがひなっちを「奥方」以外のあだ名で呼ぶことはなかった。
どうして奥方なのかと聞かれたから、正直に言ってやったよ。
俺とお前は何年後かに結婚するらしいぞってな。
そしたら赤面して走って逃げやがった。一緒に帰るんじゃなかったのかよ。
「腹減ったな……」
いつもなら晩飯を作って持って来てくれる筈の日向が夜二十時を過ぎても、全くと言って家に現れる様子がない。
未来の自分の夫が俺だと知って恥ずかしくなったとか、きっとそんな理由だろうな。
「ひなっちはまだか。深紅たんも腹減ったよな」
「心配する必要はないと思われる。奥方が主に甘く優しいことは深紅がよく知っている」
確かに、アイツが俺に優しいことは否定しないが。
「しかしだな、深紅たん。日向はいつも大体十九時には夕飯を運んで来てくれているんだぞ。時間を見てみろ。もう二十時を過ぎた。今日はちょっと遅すぎるとは思わないか?」
「そっか」
そっかって……何故か深紅たんの反応が冷たい。
「深紅た~ん。君に料理スキルとかって備わってないの~?」
「可能。だが、もう少し時間が経過すれば奥方が食事を運んで来てくれるのでは?」
「もう十分待った。今日は深紅たんの手料理をご馳走してくれ」
「むう。仕方がない。後々奥方の悲しがる姿が容易に想像できるが深紅は主のお願いを断れない」
仕方無くと深紅たんが作ってくれたのは肉まん、シュウマイ、エビチリ、チンジャオロース、蟹玉と全てが中華料理だった。
「中華作る材料何か家には無かった筈だが」
「材料なら深紅がテレポーテーションでスーパーに行って買って来た」
「深紅たん偉い。俺と結婚しようか」
「駄目。主の結婚相手は奥方と決まっている」
でしたな。残念過ぎる。俺的に好みなのは日向より深紅たんの方なのだが。
「はむ」
深紅たんは料理をテーブルの上に全て運び終わった後、自分の作った肉まんを一つ取って口にくわえた。
日向が家に食事を運んで来たのは中華料理のほとんどを食い終えた後だった。
「夕飯遅くなってごめんね。掴、ひなのこと怒ってるよね?」
「怒ってない、怒ってない。深紅たんの手料理食い過ぎて満腹で死にそう」
「しんちゃんが作ってくれたんだ。ありがと。そう、だよね……ひなが来るの遅いから悪いんだよね」
「奥方、深紅余計なことした。謝る」
「ううん、大丈夫。しんちゃんこそ、態々掴の為に夕飯作りに来てくれてありがとう」
日向が持っているのはきっと夕飯の入った弁当箱だろう。
だが、すまない。もう俺の腹にはこれ以上何も入りそうにない。食い過ぎで吐きそうなくらい気持ちが悪いのだ。
「じゃあ、ひな帰るね。明日も朝起こしに来るから」
日向が見るからに落ち込んでいるのがわかった。
そりゃそうだろう。せっかく作って持って来た弁当をまたそのままの状態で持ち帰るんだからな。
しかし、すまん。何度も言うようだが俺の腹にはもう何も、
「奥方、深紅に任せて」
「……へ、しんちゃん?」
深紅たんが帰ろうとした日向を呼び止めて、その手から弁当箱を奪い俺の居る卓袱台前まで運んできた。
「まさか、深紅たん。あれだけ食ってまだ食う気か?やめとけ、やめとけ。太っても知らんぞ」
「違う。食べるのは深紅じゃない。主」
「はぁ?俺はもう腹一杯で……もがっ!?」
「食べるの」
そう言って深紅たんは弁当箱を開け、無理矢理に俺の口へ食べ物を押し込んだ。
「……ま、待て。待ってくれ、深紅たん」
「せっかく奥方が作って来てくれたのに、食べてあげなきゃ可哀想。主、二口目。早く口開けて」
「待てって……今食ったら絶対に吐いちまうって。せめて、もう少し時間を空けてからにだな……」
「やだ」
「もごっ!もがっ!」
「しんちゃん、掴が可哀想だからもうやめてあげて」
「わかった」
…………死ぬ…………。
「……あ、あれ……?」
俺が眠りから覚めた場所はベッドの上ではなかった。どうやら卓袱台に顔を伏せて眠っていたらしい。
気がついたら部屋の中には、朝の明るい光が差し込んでいた。
無理矢理に日向の作って来てくれた弁当を俺に完食させようとした昨日の深紅たんには驚かされたな。
後々考えてみればあれは深紅たんなりの思いやりで、あの子はきっと俺が日向に対して冷たい態度ばかり取っていたことが許せなかったんだろう。
「ごめんよ。深紅たんからしたら、日向は俺と同じくらい大切な家族何だよな」
俺の隣で満足そうに眠る深紅たんの頭を撫でて謝罪した。
いつもの無表情で電波な深紅たんも好きだが、昨日のような強引な深紅たんも俺はアリだぞ。
「昨日はびっくりしたよ~。しんちゃんが掴に無理矢理ひなが作ったお弁当食べさせ始めるんだもん」
「俺が一番びっくりしてたけどな」
今日もいつものように俺を起こしにやって来た日向と一緒に登校。
深紅たんは何故か、中々起床する気配が無かったので俺の背中におぶって来た。
(この子はテレポ使えばすぐに学校に移動出来るんだけどな)
「日向の作った弁当、美味しかったぞ」
「そ、そう……何か嬉しいな。掴がひなのお弁当褒めてくれたの 初めてかも」
毎日食事を作ってくれている日向に罪悪感があって自然と口にした精一杯の感謝の言葉だった。
いつも無表情な深紅たんの寝顔が、何故だか嬉しそうに微笑んでいるように見えたのは見間違いではないのかもしれない。
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