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第十八話(おでん丼)
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「お兄ちゃん……これ、らっちゃんに何を食べさせてるんですか……?」
オーガニックの厨房で後片付けを済ませてきたタルトが、二階のリビングにやって来て俺に問う。
いつもの訝しげな表情がラスクに食べさせている晩飯に向いていた。
「ああ、これな。単純にメシとおでんを組み合わせた、名付けて「おでん丼」だ」
「得意そうに言ってますが……お米が完全におつゆに浸かって、特殊なお茶漬けみたいになってます。らっちゃん、それ美味しいですか?口に合わないなら強制じゃないので無理して完食しなくても大丈夫ですよ?」
「おいしい」
「だそうだ」
「はあ。今日の晩御飯はこのおでん丼ってやつですか」
「ケチばっかつけてないで、お前も騙されたと思って食ってみな。あまりの美味さに驚いて腰抜かすぜ」
そう俺が言うと、タルトは諦めて席に着きレンゲを手に取った。
試しにと、ご飯と汁をちょこっとだけすくって恐る恐る口へ運ぶ。
「あ……意外といけますね。これ」
てっきり不味いの一言が飛び出すと思っていたら、今回のおでん丼はまあまあ評価が高いらしい。
いつもは辛口で容赦ないのにな。
「だろ。俺の目に狂いはない。おでんと飯をパッと見た瞬間ピンときたね。こりゃいけるかもってさ」
メシを浸して食ったらスープカレーみたいな感じで美味いかもってな。
「そうですかそうですか。パッと見てピンときたんですか。すごいですね」
「……おまえ、絶対にすごいと思ってないだろ」
「ごしゅじんの作るごはんはなんでもおいしい」
「聞いたか。ラスクは本音全開で俺を称えてくれてるぞ」
「らっちゃんにもいつか分かる日が来ますよ。もう少し大きくなったらきっと「あの頃はどうしてこんな料理が美味しいと感じてたんだろう?」と」
「ありえんね。今やラスクは俺の料理の虜だからな。いくら大きくなろうがそう簡単に変わりゃしないさ」
「そうだといいですね」
「ごしゅじん、おかわりー」
タルトはそう言うが、ラスクは本日5杯目(山盛り)のおかわりを俺に求めている。
これだけ食うんだ、不味いならこんなに食わんだろ。
「おう。また山盛りでいいか」
「やまもりでいい」
「ほんとうにお前はよく食うよな」
そのちっこい体のどこにそれだけの量が入るのかマジでわからんな。とっくに容量オーバーになっていてもおかしくないと思うんだが。
「腹ん中ブラックホールにでもなってんじゃねぇのか?」
まあ、そんなけったいな設定を盛り込んだ覚えはないがな。
「ぶらほ?ぶらほって?」
「ラブホみたいな略し方すんなよ……」
「お兄ちゃんこそ、らっちゃんに変な言葉教えないでください。耳障りです」
ふつうに言えば気にならん言葉でも略してみると結構似るもんだな。
耳障りに思われたなら仕方ない。今後は気をつけよう。
タルトの言う通り、幼いラスクが知るにはまだ早過ぎるわな。
「ブラックホールってのは、俺も詳しくは知らないが……とにかく、何でも飲み込んじまう怖いやつだ。飲み込まれたら多分死ぬ」
「適当な説明過ぎてらっちゃんにはちんぷんかんぷんだと思いますが、怖いのだけはあってます」
「こわい?ゆーれーみたいな?」
「オーガニックに住みついてる幽霊は全然怖くないけどな。まあそんなとこだ」
話は変わるが、実を言うとこのおでん丼。昨日の深夜、ユキミに起こされて即興で作ったんだよな。
『腹減った!』『腹減った!』『腹減った!』とうるさいから仕方なくだ。
「お前、俺と出会う前はこういうときどうしてたんだ?」
『勝手に冷蔵庫物色してた』
なるほど。冷蔵庫に入れたはずの食材がいつのまにか消失してたときが何度かあっが、ありゃこいつの仕業だったのか。
「だったら今回もそうすりゃよかったじゃねーか。わざわざこんな時間に起こしに来なくったっていいだろ。ほら、冷蔵庫の中に今日俺が生成したおでんがあるからこれでも食え」
冷蔵庫から取り出したおでんの残り物を差し出すと、ユキミはこんなお願いを俺に要請した。至って簡単な誰にでもできることをだ。
『自分であっためるのめんどい。あっためとくれ』
「しゃあねぇなあ……レンジであっためるくらい簡単だし別にいいけどよ」
そんぐらい自分でやれよと言いたいところだが、大した手間でもないしと特に拒否はせずに了承した。
「……そうだ」
『どうした、われ?』
ふと冷凍ご飯があったのを思い出した俺は、これもユキミに食わせてしまおうと考え、この時思いついたのがこの二つを合体させることだった。
「いや、おでん丼ってのも案外美味いんじゃないかと思ってな。ユキミには悪いが実験台になってくれ」
『おでんどん?』
「ああ。まず器にあっためたメシを入れて、そこにおでんをぶっかけるだけだ」
『おおー!……なんか不味そ』
「見た目的にはな。食ったら多分美味いだろ」
ユキミがどうかは知らんが、俺的には冷凍ご飯は不味くてあまり好きじゃない。
食わせておいて何だが、汁物に浸しちまえば食感は気にならなくなる。
つまりおでん丼は、俺なりの気遣いから生まれたアイディア料理ってわけだな。
ユキミからの評価は上々でタルトも存外気に入ってた。
これならオーガニックの新たなメニューとして加えてもいいかもしれない。
オーガニックの厨房で後片付けを済ませてきたタルトが、二階のリビングにやって来て俺に問う。
いつもの訝しげな表情がラスクに食べさせている晩飯に向いていた。
「ああ、これな。単純にメシとおでんを組み合わせた、名付けて「おでん丼」だ」
「得意そうに言ってますが……お米が完全におつゆに浸かって、特殊なお茶漬けみたいになってます。らっちゃん、それ美味しいですか?口に合わないなら強制じゃないので無理して完食しなくても大丈夫ですよ?」
「おいしい」
「だそうだ」
「はあ。今日の晩御飯はこのおでん丼ってやつですか」
「ケチばっかつけてないで、お前も騙されたと思って食ってみな。あまりの美味さに驚いて腰抜かすぜ」
そう俺が言うと、タルトは諦めて席に着きレンゲを手に取った。
試しにと、ご飯と汁をちょこっとだけすくって恐る恐る口へ運ぶ。
「あ……意外といけますね。これ」
てっきり不味いの一言が飛び出すと思っていたら、今回のおでん丼はまあまあ評価が高いらしい。
いつもは辛口で容赦ないのにな。
「だろ。俺の目に狂いはない。おでんと飯をパッと見た瞬間ピンときたね。こりゃいけるかもってさ」
メシを浸して食ったらスープカレーみたいな感じで美味いかもってな。
「そうですかそうですか。パッと見てピンときたんですか。すごいですね」
「……おまえ、絶対にすごいと思ってないだろ」
「ごしゅじんの作るごはんはなんでもおいしい」
「聞いたか。ラスクは本音全開で俺を称えてくれてるぞ」
「らっちゃんにもいつか分かる日が来ますよ。もう少し大きくなったらきっと「あの頃はどうしてこんな料理が美味しいと感じてたんだろう?」と」
「ありえんね。今やラスクは俺の料理の虜だからな。いくら大きくなろうがそう簡単に変わりゃしないさ」
「そうだといいですね」
「ごしゅじん、おかわりー」
タルトはそう言うが、ラスクは本日5杯目(山盛り)のおかわりを俺に求めている。
これだけ食うんだ、不味いならこんなに食わんだろ。
「おう。また山盛りでいいか」
「やまもりでいい」
「ほんとうにお前はよく食うよな」
そのちっこい体のどこにそれだけの量が入るのかマジでわからんな。とっくに容量オーバーになっていてもおかしくないと思うんだが。
「腹ん中ブラックホールにでもなってんじゃねぇのか?」
まあ、そんなけったいな設定を盛り込んだ覚えはないがな。
「ぶらほ?ぶらほって?」
「ラブホみたいな略し方すんなよ……」
「お兄ちゃんこそ、らっちゃんに変な言葉教えないでください。耳障りです」
ふつうに言えば気にならん言葉でも略してみると結構似るもんだな。
耳障りに思われたなら仕方ない。今後は気をつけよう。
タルトの言う通り、幼いラスクが知るにはまだ早過ぎるわな。
「ブラックホールってのは、俺も詳しくは知らないが……とにかく、何でも飲み込んじまう怖いやつだ。飲み込まれたら多分死ぬ」
「適当な説明過ぎてらっちゃんにはちんぷんかんぷんだと思いますが、怖いのだけはあってます」
「こわい?ゆーれーみたいな?」
「オーガニックに住みついてる幽霊は全然怖くないけどな。まあそんなとこだ」
話は変わるが、実を言うとこのおでん丼。昨日の深夜、ユキミに起こされて即興で作ったんだよな。
『腹減った!』『腹減った!』『腹減った!』とうるさいから仕方なくだ。
「お前、俺と出会う前はこういうときどうしてたんだ?」
『勝手に冷蔵庫物色してた』
なるほど。冷蔵庫に入れたはずの食材がいつのまにか消失してたときが何度かあっが、ありゃこいつの仕業だったのか。
「だったら今回もそうすりゃよかったじゃねーか。わざわざこんな時間に起こしに来なくったっていいだろ。ほら、冷蔵庫の中に今日俺が生成したおでんがあるからこれでも食え」
冷蔵庫から取り出したおでんの残り物を差し出すと、ユキミはこんなお願いを俺に要請した。至って簡単な誰にでもできることをだ。
『自分であっためるのめんどい。あっためとくれ』
「しゃあねぇなあ……レンジであっためるくらい簡単だし別にいいけどよ」
そんぐらい自分でやれよと言いたいところだが、大した手間でもないしと特に拒否はせずに了承した。
「……そうだ」
『どうした、われ?』
ふと冷凍ご飯があったのを思い出した俺は、これもユキミに食わせてしまおうと考え、この時思いついたのがこの二つを合体させることだった。
「いや、おでん丼ってのも案外美味いんじゃないかと思ってな。ユキミには悪いが実験台になってくれ」
『おでんどん?』
「ああ。まず器にあっためたメシを入れて、そこにおでんをぶっかけるだけだ」
『おおー!……なんか不味そ』
「見た目的にはな。食ったら多分美味いだろ」
ユキミがどうかは知らんが、俺的には冷凍ご飯は不味くてあまり好きじゃない。
食わせておいて何だが、汁物に浸しちまえば食感は気にならなくなる。
つまりおでん丼は、俺なりの気遣いから生まれたアイディア料理ってわけだな。
ユキミからの評価は上々でタルトも存外気に入ってた。
これならオーガニックの新たなメニューとして加えてもいいかもしれない。
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