なんちゃって調理師と地獄のレストラン

SAKAHAKU

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第三十話(ユキミさんといっしょ)

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深く考えずにタカヒロをアルバイトとして召集した俺のせいかどうかはしらんが、今度はこっちからタルトをあっちの店に貸し出す羽目になっちまった。
オーガニック貴重な雑用……いや貴重な戦力が不在なおかげで、俺の方はめっきりサボりに行ける機会が減った。
鬼子の監視はキツイわ仕事量は普段の倍以上になるわで、俺の体はもうぼろぼろ。
それもこれも、タカヒロの野郎が報復のようにタルトをスカウトなんかしやがったせいだ。
タルトがむこうの店に通い始めてからもう二週間が経とうとしている。いつになったらオーガニックに復帰するつもりなんだよ?
とりあえず、この状況を打破しねぇとまずい。ストレス過多で俺が死ぬ。
何度も言って申し訳ないがもう死んでんだけどね。
そこで俺が考えたのは、助っ人としてあいつに仕事を手伝わせることだ。

「おーい、ユキミいるかー?いないわけないよな。勝手にあがらせてもらうぜー」

屋根裏部屋に通じている階段をあがって中へと入る。
ユキミはベッドの上で腰掛け携帯ゲームに熱中していた。
いつものことだが、とっくに日は昇ってるってのに部屋の中は真っ暗だ。
幽霊だから太陽の光は苦手、暗い時しか活動できません……ってわけでもない。こいつが朝昼夜関係なく出歩けるのを俺は知っている。
親切にもカーテンを開けてやったあと、ユキミの正面まで行って話しかけた。


「今日は何のゲームやってんだ?」

『はっ……!?もしかして、夜這い?』

「バカ。お前それ、本気で行ってんのか?」

『ほんき……?クスクス。遠慮しなくてもいいのに』

こいつは本当に人をからかって遊ぶのが好きだな。
一番暇そうに見えるこいつに助っ人になって貰おうと思っていたのだが、選ぶ相手を間違えたかもしれない。
と言っても、近場で他に頼める相手もいないがな。
一つ屋根の下、という表現があってるのかどうかはわからないが、ユキミが手っ取り早いのは確かだ。

「お前は俺が遠慮してると思ってんのか」

『ギャルゲー』

「は?」

『ぷよよんやり過ぎて飽きてきたから、今日は趣向を変えてギャルゲーやってるの』

ユキミは俺の問いかけを無視してそんなことを答える。
どうでもいいが、ギャルゲーとか女がやるもんじゃねーだろ。別にやるなとは言わねーが。

「今日はギャルゲーやってんのな。果たして、女のお前に女キャラクターが攻略できるかどうかーー」

『クスクス。女の子のことは女の子の方が詳しいに決まってるのだよ。ユキミさんは女の子ですから。ーーもしかして、女の子に見えない?』

「いやいや、見える見える。見えるから安心しろ。そっか……確かにな。ギャルゲーって、男より女がやった方が難なくクリアできるのかもな」

『その証拠に……ほら、ヒロイン三人攻略済み。後二人攻略すればコンプリート』

ほらと言われて画面見せられても「ああそう」とか「俺も昔やったなー」くらいしか言えんが。
というか、俺はギャルゲーの進捗状況を聞きにきたんじゃねぇんだよな。
ただユキミに店を手伝って欲しかっただけで……、

「はは、そりゃすごいなー。ところでユキミ、物は相談なんだが今日って時間空いてるか?暇してんなら俺とーー」

『ちょっと待って』

「あん、なんだよ?」

「ユキミさん相手にデートのお誘い……?まさか、えっちなこと目当てなんじゃ」

……こいつはなにか、ギャルゲーのやり過ぎで頭でもおかしくしちまったのか?

「そうだと言ったらお前は何をしてくれるんだ?」

「そうだなぁ……えっとねぇ……」

ユキミが何やら真剣な顔になってうーんと考え始める。
そんなこと真面目に考えんなよ。馬鹿かこいつは。

「24時間の制限付きでユキミさんの体を自由にさせてあげてもいい」

「24時間もっ!?触りたい放題じゃねぇか!」

ちょっと魅力的な気がしてしまった。
行動とか喋り方に難ありの不思議ちゃんだが、見て呉れだけはトップクラスだからな。
この機会に女体の構造について詳しくなってみるのもいいかもしれない。

『あ、でもでも~、こっちはこっちで勝手にゲームして遊んでるから、君の望む反応はしてあげられないと思うけど、そこは悪しからず』

ゲームして気ままに遊んでる幽霊さんにいたずらしてる俺の光景が頭に浮かぶ。
にやにやした顔面が気持ちわりーったらありゃしない。そんなのは童貞君のすることだ。

『冗談はさておき……』

「冗談かよ!?期待して損したわ!」

『クスクス。期待しちゃったんだ。ふうん……で、何か用があるんじゃなかったの?』

「そうだったそうだった。こんなくだんねー話で時間潰してる余裕なんざねぇんだ。ユキミ、店手伝ってくれよ。ギャルゲーやってるくらいなんだ、どーせ予定なんかねぇだろ」

『しつれーな。ギャルゲーやるのにちょー忙しい』

「聞けばお前は、本来の仕事をやりながら別の作業が同時にいくつでもできるらしいな。だったらギャルゲーやりながらオーガニックの手伝いもできるだろ。な!頼むよ!つうかやれ!」

『あ、そんな強引に引き摺っていかなくても……どうせ連れてかれるなら、ギャルゲー有りがちのお姫様抱っこってのに興味が……』

「いいからいくぞー」

最初こそユキミの体をベッドから床に引っ張り落としてそのまま引き摺り歩いていた俺だが、強い要望と階段という難所踏破のため、仕方なくお姫様抱っこに切り替えた。

「なんか、お前の体異常に軽かったんだが?」

『君に抱きかかえられる寸前に体重を操作した。クスクス、あまり気にしないで。ユキミさんなりの気遣いってやつよ』

まあいいや。なんにしても助かったぜ。今日は鬼子もいねーからな。
あいつ、タルトもいねーってのに俺一人だけで店回せって言うんだからな。冗談じゃねーぜ、まったくよー、まさしく鬼だな。

『で、今日のまかないは?』

「まだ開店前だってのに、もうまかないの話かよ。今日は限定メニューの日だからな。俺の独断と偏見で全てが決まる」

とは言っても、最近ずーっと限定メニューばっかなんだけどね。
タルトもいねーし大変だからってことで。まさかラスクにまで手伝わせるわけにも行かねーしよー。

「よし、決めた」

『ああ、まかない楽しみだわー』

「お前はそればっかか!」

『で、何に決めたと?』

博多弁みたいな感じで聞いてくるユキミに対し、俺は自信ありげにこう答えた。

「おむすびとおかずのセット」

人手も足りねーし、こんなところでお客供には妥協してもらわにゃ、俺の体が疲労で悲鳴をあげる。
それに、なんと言ってもさ、

「おむすび、ラスクの大好物なんだ。あいつが起きてきたら食わせてやりたい」

『うわー、ロリコンだロリコンだ。ギャルゲーにそーいう主人公よく出てくる。ありがちでなんの面白みもない』

「俺はロリコンじゃねぇ」

ロリコンはみんな口を揃えてそう主張するだろう。
だがな、ほんとうに俺は違うんだからな。

「俺はただ純粋にラスクが好きなだけだ。俺がもしロリコンだったら……そうだな、タルトなんか毎日ひでー目にあってるぞ」

13の娘っ子がロリに分類されるのかは知らんが、だいたいあってるんじゃないかと俺は思う。
自分が13の時に自分を幼いなどと考えた覚えは一度もないがな。

『そーいうのを世間ではロリコンと言う』

「物の例えってやつだ。本気にすんな」












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