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第十六話(日影の面会と慈愛のこれから)
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(……先が思いやられるぜ)
客に配るつもりで焼いた餃子が大量に大皿の上に残ったままになっている。時間が経過してすでに冷めた餃子だ。その数ざっと六十個程。
一度焼いた餃子は売り物には出来ないし、かと言って捨てるのも勿体無い。
これは持ち帰って自分達で食べるしかないな。俺から言わせれば大ダメージでしかないが、慈愛が餃子を食べられると喜んでいたので今回は良しとしよう。
「こんなに美味しいのに、どうしてこの餃子は売れないのでしょうか?」
「最初に説明したとは思うが、この餃子は普通の餃子の倍くらい大きくて食べ応えのあるサイズの為か、売値も倍くらいに高い。一度食べて気に入ってくれたらリピーターになってくれる人も居るんだけどな」
日影、慈愛、ルナの三人は、牢の中で餃子を食しながらそれぞれが感想を述べていた。
ちなみにその半分は厚焼き玉子のお礼として、つるぎとデブちゃんにお裾分けしている。
晩御飯も支給されるというのにこんなにいっぱい食べきれない。
「もー無理。お腹いっぱい」
その大きなサイズの為か、三個程食べてルナはお腹いっぱいの合図として膨れた腹を押さえていた。
反対に慈愛は一パック六個入りの餃子を食べ終えても、まだまだ食べられそうで全く苦しそうな顔はしていない。
外の世界でひもじい生活を送っていたせいか、この銀髪少女は食べ物を粗末にしない。
好きな物も嫌いな物も、残さず綺麗に食べるおりこうさんだ。
現に刑務所で支給されたオムライスを食べ終えた後に餃子二パック目を完食した。
「慈愛たん、すごーい。よくそんなに食べられるね」
ルナもきっと思っている筈だ。そのミニマムサイズの体の何処にあの沢山の餃子が詰め込まれているのかと。
「慈愛、無理して全部食べる必要はないからな。お腹いっぱいになったら言えよ」
無理して沢山食べて、お腹を壊しても可哀想だからな。
「平気です。まだまだ食べられます」
「そうなのか?それなら俺の分も食べて良いぞ。実はもうお腹いっぱいでな」
「いいんですか?」
「ああ。遠慮はいらん。食え、食え」
箸で餃子を摘まんで食べさせようとしてやると、慈愛はぱあっと可愛らしい、子供らしい笑顔を見せた。
「あ~!慈愛たんずるい!あたしもひーくんに「あーん」して貰いたい!」
「お前はさっきお腹いっぱいだって言ってたじゃねぇか」
「うっ……良いの!ひーくんに食べさせて貰うのは別腹なの!」
「分かったよ。それくらいでそんなに落ち込むんじゃねぇ。慈愛の後でお前にも食べさせてやるから」
慈愛に食べさせてやるのは妹とか子供にしてやってるって感じで普通にできるけど、ルナは同い年だからなぁ。何か恥ずい。
「幸せです。叔母さんのお家に住まわせて貰っていた頃は、こんなにお腹いっぱい食べられる日はありませんでしたから……ずっと此処に居たいくらいです」
「……慈愛」
悲しい現実を目の当たりにして、一瞬言葉が詰まった。
俺がこの子にしてやれることって何かあるのかな。
「お兄ちゃん……私は刑務所を出た後、どうやって生きていけば良いんでしょうか?」
銀髪少女の真剣な眼差しが、じっと日影の瞳を見据えて回答を待ち望んでいる。
ずっと、刑務所の中に居たい。か……。
こんな小さな子に此処まで考えさせる程、その叔母は十分な食事を与えていなかったんだな。そう思ったら慈愛が可哀想でならない。
返答に困っていると、食事中の俺達の元へ刑務官がやって来てこちらへ視線を向けた。
「出ろ。木ノ下。面会だ」
面会か。久しぶりだな。誰だろう?
とは言っても俺に会いに来てくれる人物何て二人に絞られるんだが。
「ひーくんに面会?……まっ、まさかっ!彼女じゃないよね?ひーくんの彼女はあたしだけだよねっ!」
ルナの慌てた言葉に、日影は溜息を吐いた後でこう言った。
「知ってんだろ。俺が童貞だって。……ちょっと行ってくるな」
「……どーてい?」
日影の返答に安心した笑みを浮かべているルナとは逆に、慈愛が?マークを頭に浮かべてきょとんと首を傾げている。
(……子供の慈愛ちゃんは知らなくていいんだよ)
何にしてもちょうどいいタイミングだ。
暗い雰囲気にはあまり慣れていない。
俺に面会に来る人間は決まって二択。もしもあの人が此処へやって来てくれていたなら、慈愛のことを相談してみるのも悪くないかもな。
「ひかくん、久しぶり。元気け?」
「……ばあちゃん」
面会室で待っていたのは「木ノ下光子」
刑務所に入る前に一緒に暮らしていた俺の保護者に当たる人だ。
面会は月に二回までと決められていて、顔を合わせていられる時間も十分くらいしかない。
この限られた時間をフルに活用して、俺がばあちゃんに話す内容はすでに決まっていた。
「なあ、ばあちゃん。お願いがあるんだけどさ……」
日影は銀髪少女について話を持ち出した。
客に配るつもりで焼いた餃子が大量に大皿の上に残ったままになっている。時間が経過してすでに冷めた餃子だ。その数ざっと六十個程。
一度焼いた餃子は売り物には出来ないし、かと言って捨てるのも勿体無い。
これは持ち帰って自分達で食べるしかないな。俺から言わせれば大ダメージでしかないが、慈愛が餃子を食べられると喜んでいたので今回は良しとしよう。
「こんなに美味しいのに、どうしてこの餃子は売れないのでしょうか?」
「最初に説明したとは思うが、この餃子は普通の餃子の倍くらい大きくて食べ応えのあるサイズの為か、売値も倍くらいに高い。一度食べて気に入ってくれたらリピーターになってくれる人も居るんだけどな」
日影、慈愛、ルナの三人は、牢の中で餃子を食しながらそれぞれが感想を述べていた。
ちなみにその半分は厚焼き玉子のお礼として、つるぎとデブちゃんにお裾分けしている。
晩御飯も支給されるというのにこんなにいっぱい食べきれない。
「もー無理。お腹いっぱい」
その大きなサイズの為か、三個程食べてルナはお腹いっぱいの合図として膨れた腹を押さえていた。
反対に慈愛は一パック六個入りの餃子を食べ終えても、まだまだ食べられそうで全く苦しそうな顔はしていない。
外の世界でひもじい生活を送っていたせいか、この銀髪少女は食べ物を粗末にしない。
好きな物も嫌いな物も、残さず綺麗に食べるおりこうさんだ。
現に刑務所で支給されたオムライスを食べ終えた後に餃子二パック目を完食した。
「慈愛たん、すごーい。よくそんなに食べられるね」
ルナもきっと思っている筈だ。そのミニマムサイズの体の何処にあの沢山の餃子が詰め込まれているのかと。
「慈愛、無理して全部食べる必要はないからな。お腹いっぱいになったら言えよ」
無理して沢山食べて、お腹を壊しても可哀想だからな。
「平気です。まだまだ食べられます」
「そうなのか?それなら俺の分も食べて良いぞ。実はもうお腹いっぱいでな」
「いいんですか?」
「ああ。遠慮はいらん。食え、食え」
箸で餃子を摘まんで食べさせようとしてやると、慈愛はぱあっと可愛らしい、子供らしい笑顔を見せた。
「あ~!慈愛たんずるい!あたしもひーくんに「あーん」して貰いたい!」
「お前はさっきお腹いっぱいだって言ってたじゃねぇか」
「うっ……良いの!ひーくんに食べさせて貰うのは別腹なの!」
「分かったよ。それくらいでそんなに落ち込むんじゃねぇ。慈愛の後でお前にも食べさせてやるから」
慈愛に食べさせてやるのは妹とか子供にしてやってるって感じで普通にできるけど、ルナは同い年だからなぁ。何か恥ずい。
「幸せです。叔母さんのお家に住まわせて貰っていた頃は、こんなにお腹いっぱい食べられる日はありませんでしたから……ずっと此処に居たいくらいです」
「……慈愛」
悲しい現実を目の当たりにして、一瞬言葉が詰まった。
俺がこの子にしてやれることって何かあるのかな。
「お兄ちゃん……私は刑務所を出た後、どうやって生きていけば良いんでしょうか?」
銀髪少女の真剣な眼差しが、じっと日影の瞳を見据えて回答を待ち望んでいる。
ずっと、刑務所の中に居たい。か……。
こんな小さな子に此処まで考えさせる程、その叔母は十分な食事を与えていなかったんだな。そう思ったら慈愛が可哀想でならない。
返答に困っていると、食事中の俺達の元へ刑務官がやって来てこちらへ視線を向けた。
「出ろ。木ノ下。面会だ」
面会か。久しぶりだな。誰だろう?
とは言っても俺に会いに来てくれる人物何て二人に絞られるんだが。
「ひーくんに面会?……まっ、まさかっ!彼女じゃないよね?ひーくんの彼女はあたしだけだよねっ!」
ルナの慌てた言葉に、日影は溜息を吐いた後でこう言った。
「知ってんだろ。俺が童貞だって。……ちょっと行ってくるな」
「……どーてい?」
日影の返答に安心した笑みを浮かべているルナとは逆に、慈愛が?マークを頭に浮かべてきょとんと首を傾げている。
(……子供の慈愛ちゃんは知らなくていいんだよ)
何にしてもちょうどいいタイミングだ。
暗い雰囲気にはあまり慣れていない。
俺に面会に来る人間は決まって二択。もしもあの人が此処へやって来てくれていたなら、慈愛のことを相談してみるのも悪くないかもな。
「ひかくん、久しぶり。元気け?」
「……ばあちゃん」
面会室で待っていたのは「木ノ下光子」
刑務所に入る前に一緒に暮らしていた俺の保護者に当たる人だ。
面会は月に二回までと決められていて、顔を合わせていられる時間も十分くらいしかない。
この限られた時間をフルに活用して、俺がばあちゃんに話す内容はすでに決まっていた。
「なあ、ばあちゃん。お願いがあるんだけどさ……」
日影は銀髪少女について話を持ち出した。
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