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第十七話(お医者さんごっこか!お医者さんごっこ何だな!?)
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ーーあれ、誰もいねぇ。
ばあちゃん(木ノ下光子)との十分という短い面会を終えて帰ってくれば、牢の中には金髪少女と銀髪少女の姿が見当たらない。
ーーああ、そっか。
よく考えてみれば、晩御飯の後は入浴の時間だったな。
耳を澄ませてみれば、奥の風呂場から楽しそうにはしゃぐ二人の少女の声とぱしゃぱしゃという水音が聞こえて来るではありませんか。
「ル、ルナさん……、洗ってくれるのは嬉しいんですが、胸ばかり洗い過ぎです……くすぐったいです……」
「慈愛たんよりあたしの方が胸大っきい……勝った……」
二人の声が反響して此処まで何喋っているのか丸わかりに聞こえて来るが……ルナの奴、小学生の胸と自分の胸を比べて勝ち誇るとかどう何だ?
「まだ子供なので胸が膨らんでいないのは当たり前です。見たところ、私とルナさんの胸はそれほど変わらないようですが?」
「……ふっふっふ。お胸の次はどこを洗って貰いたいのかなぁ。じ・あ・た・ん?」
「い、いえ……結構です。後は自分で洗います」
「だーめっ!あたしのこと貧乳扱いした悪い子な慈愛たんにはお仕置きしちゃうんだから!」
「ふぁっ……、ルナさん……洗いながら脇擽るの止めて下さい……!ひぁっ、あぅっ、あっ、やっ……!」
風呂場の中で現在何が起こっているのか容易に想像出来る。
自分より何歳も年上のルナの胸が小さいと指摘し彼女の逆鱗に触れてしまった慈愛が、良い様に体を弄ばれているのだ。外で聞いている俺からしたら興奮する材料でしかない。
「ひーくん、遅いなぁ~。もうお風呂の時間終わっちゃうのに……」
「そう、ですね。お風呂入れないとかお兄ちゃんが可哀想です」
おそらく体や髪を洗い終わったであろうルナと慈愛が、ゆったりと温かな湯船に浸かりながらその場にいない日影の話をし始めた。
「ひーくんはいつもお風呂あたし達に譲ってくれるし、今日も多分そうしただろうねぇ。慈愛たんもすでに知ってるとは思うけど、あの人すっごく優しいから」
「はい。お兄ちゃんが優しいことに関してはルナさんより詳しいつもりでいます。そこだけは絶対に譲れないです」
「言ったなぁ~。あたしの方が慈愛たんよりずっとひーくんマニアだよ!」
「ひーくんマニアって何ですか?ルナさんは子供の私に対して大人気無さ過ぎます」
一度そこで会話が途切れて数秒後。ルナが何か名案を閃いたような声をあげる。
「あたし良いこと思い付いちゃった。慈愛たん、聞いてくれる?」
「はい。何です?」
「えっとね……」
ルナはまるで、日影が面会室から牢の中に帰って来ているのに気付いたのかと思わせるような行動を取り始める。
急に会話内容が聞こえ辛くなったことから察するに、慈愛の耳元で囁くように声を出しているに違いない。いわゆる、ひそひそ話という行為だ。
「良いですね。お兄ちゃんもきっと喜んでくれる筈です」
「だよね、だよね。ひーくん帰ってきたらそうしてあげよう」
全くと言って予想がつかないが、二人が俺に何をしようと企んでいるのか、少しだけ気にはなった。
************************
「ねぇねぇひーくん。上脱いで。上」
「お兄ちゃん、下も脱いで下さい。可愛い妹からのお願いです」
「……は?何言ってんだお前等。長い刑務所生活で気でも狂ったか?」
やることもなくベッドに寝転がっていた日影に、金髪と銀髪の髪をした悪魔が突然に襲い掛かる。
風呂上がりである二名の体からは石鹸とシャンプーの甘い香りがして、当然のように男の本能を刺激される。気付けばいつものツインテールを解いたルナに背後から抱きつかれ、身動きが取れなくなっていた。
「何すんだよ。上脱ぐとか、下脱げとか……ま、まさか……お医者さんごっこか?お医者さんごっこ何だな!?」
「ひーくんはえっちだなぁ~。そんな訳無いじゃん」
「よく分かりませんが、お医者さんごっこが好きな人はえっち何ですか?」
慈愛はまだ幼いからか、お医者さんごっこという言葉が通用しないらしい。
というか、この子は基本そっち系の話に疎すぎる。俺が同じくらいの歳の頃はすでに保健体育の授業に興味があったような覚えがあるが。
「えっちはお前等だ。男の服無理矢理脱がそうとしやがって。女なら何しても許されると思ったら大間違いだ。普通逆だろ。ええい、放せ、放せ」
「ああっ!?ひーくん暴れちゃ駄目っ!」
ルナの拘束から何とか抜け出した日影は、狭い牢の中を必死で二人から逃れようと走り回る。ちょっとした鬼ごっこが始まった。
「ひーくんどうして逃げるの!そんなに嫌がることないじゃない!」
「目的を説明しろ。俺を全裸にして何をするつもりだ?ヌードデッサンならお断りだぞ」
「全裸にはしません。「パンイチ」です」
「慈愛ちゃん、パンイチとか、そんなはしたないこと女の子が言っちゃいけません。お兄ちゃんは悲しいぞ」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら牢の中を走り回る賑やかな俺達の姿を眺めて、向かいの牢に居るデブちゃんが羨ましそうに呟いた。
「ああ。俺も混ざりてぇ。青春してぇ。女の子とイチャつきてぇ……くそっ、日影ばっか良い思いしやがって……」
「おデブちゃんも混ざって来たら良いじゃない。お医者さんごっこ」
「けっ。行けたらとっくに行ってるよ。おいつるぎ、俺等もお医者さんごっこするぞ。服脱げ、脱げ」
刑務所暮らしが長いおデブは目の前に居る美少女に自分を抑えきれなくなったのか、彼女の服を脱がそうと手をかけようとしたが「触ったら殺す」とでも言わんばかりの鋭い視線に怖じけ付き、動きをぴたっと止めた。
これでデブちゃんは余計につるぎの好感度を下げたな。
「つーかまーえた!」
「うぉっ……放せよルナ。お前の慎ましやかな胸が背中に当たってる」
「あー。またひーくん慎ましやかって言ったー。酷いよ。割と気にしてるのに……」
「あ、わり……ついおちょくっちまった……」
「ルナさん、平気です。お兄ちゃんは巨乳派じゃありません。貧乳派です」
さらっと慈愛がとんでもないことを口にするが、俺がいつ巨乳より貧乳が好きと暴露した?ありもしない事実を捏造するのは控えて頂きたい。誤解する奴はとことん誤解するからさ。
「慈愛たん、それフォローしたつもり?」
「フォローのつもりです」
そう返答する慈愛ちゃんは珍しくしたり顔だった。
「あの…………結局君達は何がしたいの?」
理由を聞いてみれば、二人はお風呂に浸かりながら一人だけ汗を流せなかった俺の為を思って、濡れタオルで体を拭いてあげようと話し合っていたようだ。
その気持ちはとても有難いけど、別に自分で拭けるしなぁ……。
「お兄ちゃん、上脱いで下さい。体拭いてあげます」
「……へいへい」
本当に此処の刑務所が不思議で仕方が無い。
他の刑務所がどうかは知らないが、こんなことを牢の中で女子にさせている囚人が居たら牢を別々にされても可笑しくないと思うし、そもそも男と女を同じ牢に収容する所から変だ。
「かゆい所はありませんか~?」
ルナがこういう場面でありきたりな台詞を口にしたが、日影は素っ気ない返事をする。
「ん~…………無いな」
「テンションが低いですね。遠慮なく言ってくれて大丈夫ですよ」
そう慈愛は言うが、本当にかゆい所など無いのだが。
「ううむ……いろんな所からの鋭い視線や妬みの声が聞こえて来なきゃ最高何だろうけどな……」
十八年近く生きてきて此処までのハーレム感を味わったことがない童貞君の俺からしたら、本音で言えば嬉しいさ。
周りの連中が羨み恨み殺意の籠った目を向けて来なければな。
「お兄ちゃん、次は下をお拭きします。ズボン脱いで下さい」
ルナと二人で背中や腕をタオルで拭いてくれた後に、慈愛が何の躊躇いもなく真顔でそう言った。
普通の女子なら、男の半裸姿など見ようものなら「きゃー」とかお馴染みの悲鳴を上げて顔を赤くしそうなもんだけど、この子は違うのか。
まあ一緒に風呂に入ったこともあるし、体の洗いっこも経験した。お互いの産まれたままの姿も確認済みな訳で、今更恥ずかしがることは何も無いが。
……しかし、それでも。
「下は勘弁してくれ。足とか自分で拭けるからさ」
「え~。遠慮しなくて良いのに。あたしならひーくんの大切な所でも嫌がらずに拭いてあげられるよ。慈愛たんにはレベル高過ぎて無理だと思うけど」
「お兄ちゃんの大事なとこ?どこですか、それ。心臓……でしょうか?」
「ふっふっふ。やっぱり慈愛たんみたいなお子様にはまだ分からないか~。しょうがないからお姉さんが教えてあげるよ。それはね」
「やめろ、ルナ。慈愛に変な言葉教えてピュアな心を汚してやるな」
「どこですか、ルナさん。そこまで言っておいてお預けされたら気になるじゃないですか。眠れなくなったらどうしてくれるんです?教えて下さい」
「うん。良いよ。それはね。おちん」
「はい!終了~!この子マジか。マジなのか?言っちゃ駄目っつったじゃん!?」
途中まで言いかけたところで焦り気味にルナの口を塞ぎに行ったよ。
慈愛の答えを知りたくて堪らない探究心は抑えきれないままだが、これで良かったんだ。俺は間違ってないぞ。
「おち?何ですか?」
「……んんっ?何かな慈愛ちゃん。子供はそろそろおねむの時間だよ。眠れないならお兄ちゃんが本でも読んであげようか?」
その誘いに、慈愛は心から嬉しそうに瞳をキラキラさせる。同時にわくわくもしているようだ。
「本当ですか。ぜひお願いします」
ふぅ。何とか誤魔化せたみたいだな。因みに煙に巻いたとも言う。
俺やルナから見たらまだまだお子様な慈愛ちゃんは、愛読書である絵本を音読してやると、うとうとし始めぱちくりと目を閉じたり開いたりを繰り返していた。
そこら辺はやはりキュートであり、可愛いと感じてしまう俺はロリコンなのか、ロリコンじゃないかと言えば、やはり前者になってしまうのかもしれないな。
「ああ。慈愛たん温かい……」
最近のルナは就寝時間になればベッドの上で慈愛をぎゅっと抱きしめて、まるで自分専用のゆたんぽを扱うように幼い少女の体を使用している。
というのも、この牢の中は元々ペア牢で、俺達がトリオとなってからもベッドは二つのまま増えちゃいない。そういう訳で、どっちかのベッドを二人で使うしか方法がないんだ。
「マジで温かそうだな……俺も慈愛ちゃん抱いて眠りてぇよ……」
「ひーくんのロリコン」
「何とでも言え。寒いんだよ」
ま、その台詞だけ聞くとルナのように誤解する人も多いだろうが、刑務所の中じゃ布団は暑かろうが寒かろうが一枚しか使うことを許されていないんだ。しかもかなり薄っぺらいやつな。
つまり、俺は二人で眠っていて温かそうなルナと慈愛が羨ましいだけであって、決してロリコンという訳では無いんだ。……多分。
「慈愛、ぐっすり眠ってるな。気持ち良さそうだ」
「うん。そだね……、あのね、ひーくん」
「ん?どした、何か相談事か?」
「慈愛たんね、お風呂の中で泣いてたんだ。もう叔母さんのお家には戻りたくないって……」
「……そっか」
「そっかって、冷たいなぁ~。ひーくんは慈愛たんのこと心配じゃないの?」
「ああ。それな……もう解決したんだわ」
慈愛を心配するルナへ、今回の面会に来てくれたばあちゃんの話を語ってやることにした。
実を言うと、うちのばあちゃんは児童相談所に勤めていてな。慈愛の家庭の事情を相談してみたら様子を見に行ってくれると約束してくれた。
この子は俺より先に出所する。外の世界で慈愛を守ってやれるのはおそらく彼女達だけだろう。
「慈愛にはとりあえず、一度叔母の所に帰って貰うことになるけど、虐待が発覚すれば児童相談所で引き取ってあげることが可能何だ。残酷かもしれないけど、最初の少しの間だけは様子を見る形になるかな。証拠を掴めないと職員の人達も動き辛いと思うんだ」
「ううん、親に虐待されていることにすら気付いて貰えない子供達がたくさん居るって考えたら、それでも有難いことだと思う。教えてあげたら慈愛たん喜んでくれるんじゃないかな」
「そう、だな……だと、良いな」
日影がこの場所から解放されるのはずっと先のことだし、その間の慈愛の生活が心配だ。
せめて塀の中に居る内だけでも、この小さな少女を守ってやらないと。そう心に決めた。
ばあちゃん(木ノ下光子)との十分という短い面会を終えて帰ってくれば、牢の中には金髪少女と銀髪少女の姿が見当たらない。
ーーああ、そっか。
よく考えてみれば、晩御飯の後は入浴の時間だったな。
耳を澄ませてみれば、奥の風呂場から楽しそうにはしゃぐ二人の少女の声とぱしゃぱしゃという水音が聞こえて来るではありませんか。
「ル、ルナさん……、洗ってくれるのは嬉しいんですが、胸ばかり洗い過ぎです……くすぐったいです……」
「慈愛たんよりあたしの方が胸大っきい……勝った……」
二人の声が反響して此処まで何喋っているのか丸わかりに聞こえて来るが……ルナの奴、小学生の胸と自分の胸を比べて勝ち誇るとかどう何だ?
「まだ子供なので胸が膨らんでいないのは当たり前です。見たところ、私とルナさんの胸はそれほど変わらないようですが?」
「……ふっふっふ。お胸の次はどこを洗って貰いたいのかなぁ。じ・あ・た・ん?」
「い、いえ……結構です。後は自分で洗います」
「だーめっ!あたしのこと貧乳扱いした悪い子な慈愛たんにはお仕置きしちゃうんだから!」
「ふぁっ……、ルナさん……洗いながら脇擽るの止めて下さい……!ひぁっ、あぅっ、あっ、やっ……!」
風呂場の中で現在何が起こっているのか容易に想像出来る。
自分より何歳も年上のルナの胸が小さいと指摘し彼女の逆鱗に触れてしまった慈愛が、良い様に体を弄ばれているのだ。外で聞いている俺からしたら興奮する材料でしかない。
「ひーくん、遅いなぁ~。もうお風呂の時間終わっちゃうのに……」
「そう、ですね。お風呂入れないとかお兄ちゃんが可哀想です」
おそらく体や髪を洗い終わったであろうルナと慈愛が、ゆったりと温かな湯船に浸かりながらその場にいない日影の話をし始めた。
「ひーくんはいつもお風呂あたし達に譲ってくれるし、今日も多分そうしただろうねぇ。慈愛たんもすでに知ってるとは思うけど、あの人すっごく優しいから」
「はい。お兄ちゃんが優しいことに関してはルナさんより詳しいつもりでいます。そこだけは絶対に譲れないです」
「言ったなぁ~。あたしの方が慈愛たんよりずっとひーくんマニアだよ!」
「ひーくんマニアって何ですか?ルナさんは子供の私に対して大人気無さ過ぎます」
一度そこで会話が途切れて数秒後。ルナが何か名案を閃いたような声をあげる。
「あたし良いこと思い付いちゃった。慈愛たん、聞いてくれる?」
「はい。何です?」
「えっとね……」
ルナはまるで、日影が面会室から牢の中に帰って来ているのに気付いたのかと思わせるような行動を取り始める。
急に会話内容が聞こえ辛くなったことから察するに、慈愛の耳元で囁くように声を出しているに違いない。いわゆる、ひそひそ話という行為だ。
「良いですね。お兄ちゃんもきっと喜んでくれる筈です」
「だよね、だよね。ひーくん帰ってきたらそうしてあげよう」
全くと言って予想がつかないが、二人が俺に何をしようと企んでいるのか、少しだけ気にはなった。
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「ねぇねぇひーくん。上脱いで。上」
「お兄ちゃん、下も脱いで下さい。可愛い妹からのお願いです」
「……は?何言ってんだお前等。長い刑務所生活で気でも狂ったか?」
やることもなくベッドに寝転がっていた日影に、金髪と銀髪の髪をした悪魔が突然に襲い掛かる。
風呂上がりである二名の体からは石鹸とシャンプーの甘い香りがして、当然のように男の本能を刺激される。気付けばいつものツインテールを解いたルナに背後から抱きつかれ、身動きが取れなくなっていた。
「何すんだよ。上脱ぐとか、下脱げとか……ま、まさか……お医者さんごっこか?お医者さんごっこ何だな!?」
「ひーくんはえっちだなぁ~。そんな訳無いじゃん」
「よく分かりませんが、お医者さんごっこが好きな人はえっち何ですか?」
慈愛はまだ幼いからか、お医者さんごっこという言葉が通用しないらしい。
というか、この子は基本そっち系の話に疎すぎる。俺が同じくらいの歳の頃はすでに保健体育の授業に興味があったような覚えがあるが。
「えっちはお前等だ。男の服無理矢理脱がそうとしやがって。女なら何しても許されると思ったら大間違いだ。普通逆だろ。ええい、放せ、放せ」
「ああっ!?ひーくん暴れちゃ駄目っ!」
ルナの拘束から何とか抜け出した日影は、狭い牢の中を必死で二人から逃れようと走り回る。ちょっとした鬼ごっこが始まった。
「ひーくんどうして逃げるの!そんなに嫌がることないじゃない!」
「目的を説明しろ。俺を全裸にして何をするつもりだ?ヌードデッサンならお断りだぞ」
「全裸にはしません。「パンイチ」です」
「慈愛ちゃん、パンイチとか、そんなはしたないこと女の子が言っちゃいけません。お兄ちゃんは悲しいぞ」
ぎゃあぎゃあと騒ぎながら牢の中を走り回る賑やかな俺達の姿を眺めて、向かいの牢に居るデブちゃんが羨ましそうに呟いた。
「ああ。俺も混ざりてぇ。青春してぇ。女の子とイチャつきてぇ……くそっ、日影ばっか良い思いしやがって……」
「おデブちゃんも混ざって来たら良いじゃない。お医者さんごっこ」
「けっ。行けたらとっくに行ってるよ。おいつるぎ、俺等もお医者さんごっこするぞ。服脱げ、脱げ」
刑務所暮らしが長いおデブは目の前に居る美少女に自分を抑えきれなくなったのか、彼女の服を脱がそうと手をかけようとしたが「触ったら殺す」とでも言わんばかりの鋭い視線に怖じけ付き、動きをぴたっと止めた。
これでデブちゃんは余計につるぎの好感度を下げたな。
「つーかまーえた!」
「うぉっ……放せよルナ。お前の慎ましやかな胸が背中に当たってる」
「あー。またひーくん慎ましやかって言ったー。酷いよ。割と気にしてるのに……」
「あ、わり……ついおちょくっちまった……」
「ルナさん、平気です。お兄ちゃんは巨乳派じゃありません。貧乳派です」
さらっと慈愛がとんでもないことを口にするが、俺がいつ巨乳より貧乳が好きと暴露した?ありもしない事実を捏造するのは控えて頂きたい。誤解する奴はとことん誤解するからさ。
「慈愛たん、それフォローしたつもり?」
「フォローのつもりです」
そう返答する慈愛ちゃんは珍しくしたり顔だった。
「あの…………結局君達は何がしたいの?」
理由を聞いてみれば、二人はお風呂に浸かりながら一人だけ汗を流せなかった俺の為を思って、濡れタオルで体を拭いてあげようと話し合っていたようだ。
その気持ちはとても有難いけど、別に自分で拭けるしなぁ……。
「お兄ちゃん、上脱いで下さい。体拭いてあげます」
「……へいへい」
本当に此処の刑務所が不思議で仕方が無い。
他の刑務所がどうかは知らないが、こんなことを牢の中で女子にさせている囚人が居たら牢を別々にされても可笑しくないと思うし、そもそも男と女を同じ牢に収容する所から変だ。
「かゆい所はありませんか~?」
ルナがこういう場面でありきたりな台詞を口にしたが、日影は素っ気ない返事をする。
「ん~…………無いな」
「テンションが低いですね。遠慮なく言ってくれて大丈夫ですよ」
そう慈愛は言うが、本当にかゆい所など無いのだが。
「ううむ……いろんな所からの鋭い視線や妬みの声が聞こえて来なきゃ最高何だろうけどな……」
十八年近く生きてきて此処までのハーレム感を味わったことがない童貞君の俺からしたら、本音で言えば嬉しいさ。
周りの連中が羨み恨み殺意の籠った目を向けて来なければな。
「お兄ちゃん、次は下をお拭きします。ズボン脱いで下さい」
ルナと二人で背中や腕をタオルで拭いてくれた後に、慈愛が何の躊躇いもなく真顔でそう言った。
普通の女子なら、男の半裸姿など見ようものなら「きゃー」とかお馴染みの悲鳴を上げて顔を赤くしそうなもんだけど、この子は違うのか。
まあ一緒に風呂に入ったこともあるし、体の洗いっこも経験した。お互いの産まれたままの姿も確認済みな訳で、今更恥ずかしがることは何も無いが。
……しかし、それでも。
「下は勘弁してくれ。足とか自分で拭けるからさ」
「え~。遠慮しなくて良いのに。あたしならひーくんの大切な所でも嫌がらずに拭いてあげられるよ。慈愛たんにはレベル高過ぎて無理だと思うけど」
「お兄ちゃんの大事なとこ?どこですか、それ。心臓……でしょうか?」
「ふっふっふ。やっぱり慈愛たんみたいなお子様にはまだ分からないか~。しょうがないからお姉さんが教えてあげるよ。それはね」
「やめろ、ルナ。慈愛に変な言葉教えてピュアな心を汚してやるな」
「どこですか、ルナさん。そこまで言っておいてお預けされたら気になるじゃないですか。眠れなくなったらどうしてくれるんです?教えて下さい」
「うん。良いよ。それはね。おちん」
「はい!終了~!この子マジか。マジなのか?言っちゃ駄目っつったじゃん!?」
途中まで言いかけたところで焦り気味にルナの口を塞ぎに行ったよ。
慈愛の答えを知りたくて堪らない探究心は抑えきれないままだが、これで良かったんだ。俺は間違ってないぞ。
「おち?何ですか?」
「……んんっ?何かな慈愛ちゃん。子供はそろそろおねむの時間だよ。眠れないならお兄ちゃんが本でも読んであげようか?」
その誘いに、慈愛は心から嬉しそうに瞳をキラキラさせる。同時にわくわくもしているようだ。
「本当ですか。ぜひお願いします」
ふぅ。何とか誤魔化せたみたいだな。因みに煙に巻いたとも言う。
俺やルナから見たらまだまだお子様な慈愛ちゃんは、愛読書である絵本を音読してやると、うとうとし始めぱちくりと目を閉じたり開いたりを繰り返していた。
そこら辺はやはりキュートであり、可愛いと感じてしまう俺はロリコンなのか、ロリコンじゃないかと言えば、やはり前者になってしまうのかもしれないな。
「ああ。慈愛たん温かい……」
最近のルナは就寝時間になればベッドの上で慈愛をぎゅっと抱きしめて、まるで自分専用のゆたんぽを扱うように幼い少女の体を使用している。
というのも、この牢の中は元々ペア牢で、俺達がトリオとなってからもベッドは二つのまま増えちゃいない。そういう訳で、どっちかのベッドを二人で使うしか方法がないんだ。
「マジで温かそうだな……俺も慈愛ちゃん抱いて眠りてぇよ……」
「ひーくんのロリコン」
「何とでも言え。寒いんだよ」
ま、その台詞だけ聞くとルナのように誤解する人も多いだろうが、刑務所の中じゃ布団は暑かろうが寒かろうが一枚しか使うことを許されていないんだ。しかもかなり薄っぺらいやつな。
つまり、俺は二人で眠っていて温かそうなルナと慈愛が羨ましいだけであって、決してロリコンという訳では無いんだ。……多分。
「慈愛、ぐっすり眠ってるな。気持ち良さそうだ」
「うん。そだね……、あのね、ひーくん」
「ん?どした、何か相談事か?」
「慈愛たんね、お風呂の中で泣いてたんだ。もう叔母さんのお家には戻りたくないって……」
「……そっか」
「そっかって、冷たいなぁ~。ひーくんは慈愛たんのこと心配じゃないの?」
「ああ。それな……もう解決したんだわ」
慈愛を心配するルナへ、今回の面会に来てくれたばあちゃんの話を語ってやることにした。
実を言うと、うちのばあちゃんは児童相談所に勤めていてな。慈愛の家庭の事情を相談してみたら様子を見に行ってくれると約束してくれた。
この子は俺より先に出所する。外の世界で慈愛を守ってやれるのはおそらく彼女達だけだろう。
「慈愛にはとりあえず、一度叔母の所に帰って貰うことになるけど、虐待が発覚すれば児童相談所で引き取ってあげることが可能何だ。残酷かもしれないけど、最初の少しの間だけは様子を見る形になるかな。証拠を掴めないと職員の人達も動き辛いと思うんだ」
「ううん、親に虐待されていることにすら気付いて貰えない子供達がたくさん居るって考えたら、それでも有難いことだと思う。教えてあげたら慈愛たん喜んでくれるんじゃないかな」
「そう、だな……だと、良いな」
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