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第四話(刑務所の休日)
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普通の一般人と同じように、俺達囚人が収容されている此処(刑務所)にも一応決められた休みの日がある。
基本土日と祝日だ。
囚人になる以前は犯罪者に休日など与えられる筈がないと勝手に思っていたのだが、案外そうでもないらしく、刑務作業や奉仕作業で疲れた体を心身共に癒すことが可能だ。
休みを貰えたところで、牢の中から出ることは出来ないし、特にすることもなく暇ではあるが、実現可能な娯楽と言えば、読書、トランプ、ボードゲーム。
それか、惰眠を貪るくらいか。
「あ~、ねみ……」
そういう訳で刑務作業と奉仕作業がお休みの日は、いつも決まって朝食後布団に潜って二度寝を始めるのだが、これまた決まって、ルナが「ひーくん、あそぼー」と俺の邪魔をしてくるのも毎度のことである。
「ねー、ねぇー。ひーくん。一緒にあそぼーよー。ねぇーってば~」
「ルナ、お前も土日は十分に眠っとけ。休みの日なら何時間でも夢の中に入っていられる。誰にも文句言われることはないぞ」
夢の中へ現実逃避する時間も俺達には必要だ。何もかもリセットして、普通の高校生だった自分に戻りたい。
「え~、やだ。そんなのつまんない~。遊んでよ~」
「悪いな、ルナちゃん。お父さんは毎日のお勤めで疲れているんです。寝かせてください。お願いします」
「ひーくんはあたしのパパじゃないでしょ。良いのかなぁ~。遊んでくれないなら本当に泣いてるように見えるプロ級の嘘泣き披露しちゃうよ。両隣と正面の牢にいる人達にも聞こえちゃうかもね~」
ーールナを泣かせた何てことが周りの囚人達に知れ渡れば、俺が奴等に酷い目に会わされることなど目に見えている。
僻みや妬みに加えて、虐めから暴行、公開処刑までもがセットメニューに含まれる。
こんな所に無実で閉じ込められているってだけでも毎日地獄にいるような思いをしてるってのにーーこれ以上のストレスを抱え込んだら俺の心と体が持たない。
ルナのことが大好きな連中の気持ちを刺激する真似はよせ。
「分かったよ。俺もまだ命が惜しい。とことん遊んでやろうじゃねぇか」
ルナと楽しく戯れている俺の姿を見ただけで、おそらく彼等は激しく苛立ち歯噛みするだろう。
結局は遊ぼうが遊ぶまいが結果は同じだ。
「で、何して遊ぶんだよ。トランプかチェスか将棋。二人で出来るのはそれくらいしかないぞ」
「これ使ってままごとがしたい!」
「これって……」
ルナが大きな瞳を爛々とさせて両手いっぱいに抱えてきたのは、種類豊富な動物のぬいぐるみだ。
何が悲しくて十七歳の男がままごとなどと小学生でさえ卒業していそうな遊びをしなきゃならんのだ。
「このウサギさんがお父さん役で、このくまさんがお父さん役ね。それでそのアヒルさんがーー」
「ちょっと待て。このたくさんのぬいぐるみは何処から盗んで来た?」
「盗んできた何て人聞きが悪いな~。ひーくん、このぬいぐるみは奉仕作業先であたしに子供達がくれたんだよ」
あ~……そういや、そうだったかも。
休みの日の前日に行った保育園で、ルナが園児達にえらく気に入られておもちゃにされている光景は愉快で微笑ましかった。
ツインテ引っ張られたり、背中蹴られたり。
他にも色々と悪戯されてたっけ。
ちなみに休み明けの奉仕作業も場所は変わらず保育園だ。
幼女の誘拐未遂(ロリコン)で捕まった俺からしたら、あそこは一番行きたくない場所だが、そんな囚人を幼児だらけの仕事場に放り込む警察の考えが理解できない。
「すまん。元「大怪盗」だったルナさんなら、ぬいぐるみ盗むくらいやりかねないと思いまして」
「ひどっ!?もうあんなことしないって心に決めたもん!ほんとうだよ!ほら、ポチとタマもあたしを信用してくれてるみたい!」
猫と犬のぬいぐるみを両手に持って、声真似をしながらそれを否定する。
「ひかげくんは酷い人だわん。応援してあげなきゃかわいそうやろ? そうだにゃー。見損なったですにゃん」
どうでもいいが、ポチとタマとか名前がテキトー過ぎる。外国っぽい「マックス」とか「ジャック」じゃねーのかよ。
何か途中で関西弁混ざってるし、もう訳わからん。
ーーにしても、母親が大統領か。
親が偉大だと意外と子供は苦労するのかもな。
親が頭の良い大学とか出てると、子供に対して「勉強しろ勉強しろ」ってうるさかったりしてな。
まあ偏見でしかないが、放任主義の家庭で育った俺には想像もつかない。
ーーなんでもクレプトマニアって名前の、治療が難しいとされる心の病が実在するらしい。
ルナの話を聞いて初めて知った。ストレスが原因で発症する珍しいタイプの病気なんだってさ。
ある日を境に、ルナは欲しくもない物を次々と万引きするようになった。いや、なってしまったと言うほうが正しいのか?
とにかく、毎日のように繰り返して繰り返して繰り返しまくった。数百円で買える、安い品物を何度も何度も。
満足感とか達成感を得られれば盗む物はどんな物でも構わないみたいで、本当はしたらいけないことだって理解しているのに自制が出来ないってんだから防ぎようがない。
文字どおり親が素封家であるお嬢さまに、警察を敵に回してまで手に入れたいお宝があるとは思えない。
そんなことを態々しなくても大統領の母親に強請れば何でも買って貰えそうだ。
「あたしは何かが欲しくて物を盗んでた訳じゃないから……病気の克服、応援してほしいな」
「……悪い。そうだよな。応援するって約束したもんな。でもさ、本当に俺なんかでいいのか?ルナほどの美少女の頼みなら誰だって喜んで協力してくれると思うけど」
「美少女とかなんか照れる……ひーくんはいつも褒めすぎ。否定はしないけどね」
「そこは否定しとけよ。謙虚な女の子ってのも中々可愛いもんだぞ」
「せっかくひーくんが可愛いって言ってくれたのに、肯定こそすれ否定何かしないよ」
「実際問題、彼氏いないとかすげー嘘くさいんだが」
初めて会った日泣いていた理由。
刑務所から出社しても帰る場所がないと言っていたのは本当だったんだ。
早い話が母親に病気の話を打ち明けても受け入れられず、呆れられて見放された。
何だか可哀想だよな。なりたくてそうなってしまった訳じゃない。誰にだって起こりうる病気なんだ。ルナは別に悪くないじゃないか。
「じゃあ、ひーくん。あたしの初めてになってみる?」
「……は?」
「ひーくんがあたしの、彼氏さんになってくれたら嬉しいなぁ。なーんて」
「ほう。それは俺への愛の告白と受け取って良いんだな」
「うん。そう。……あたしの恋人になってくれる?」
おお……告白何て十七年間の人生で初めてされたな。
ルナに好意を寄せられていることには気付いていたが、俺の答えはもちろんNOだ。
刑務所の中でアイドル的存在である彼女の彼氏になるという大イベントを女に飢えている囚人達に知られでもしたら、日影の命は彼等の団結によって速やかに抹消されるだろう。
彼女ができた所で死んだら意味がない。
女との合体行為を一度も経験しないまま死の世界に葬られるとかごめんだな。
死んでも死にきれねーよ。
「やめておけ。こんなロリコン男と恋仲になったって一つも良いことないぞ。それに、お前ほどの美貌の持ち主なら、俺みたいな心も見た目もブサメンな男と付き合わなくたってイケメンと付き合えるだろ」
何が悲しくて自分を自虐しまくっているんだろうな。口に出していてかなり惨めな気分だ。イケメン共は一人残らず全員地獄に落ちろ。
「え~。ひーくん全然ブサメン何かじゃないよ。普通にかっこいいよ。だからあたしの恋人になってよぉ~」
「断る。お世辞には感謝するが、お前の恋人になるとか絶対に無理。俺のルナ攻略ルートは失敗に終わったの」
「うぅ、ひーくんの馬鹿……こんなにひーくんのこと大好きなあたしなら攻略したも同じじゃない」
「まあ、何だ。此処では攻略してやれないが、シャバに出たらお前のルートを飽きるほどプレイしてやるよ。良い子だからそれまで待て」
周りが敵だらけの刑務所内でルナと恋仲になることは「死」を意味する。
ドラマやCMで活躍する有名な女優と同じくらいかそれ以上に可愛いルナと同室ってだけで、囚人達に妬まれながらの生活を送っているんだ。
ーーこれ以上奴等を刺激してなるものか。
「そんな先まで待つのやだよ~。だってひーくんが此処から出られるのって後何年も先のこと何でしょ」
「懲役十年に処された日からちょうど一年くらいか。残り九年は刑務所の中だな」
「ひーくんって本当は無実何でしょ。よくそんなに落ち着いていられるね」
「無実だって騒いだところで、此処から出られる訳でもないしな」
そういや、俺が助け損なったあの小学生はどうなったかな。
話を聞いた限りじゃ訳ありの家庭っぽかったから心配していたが、今じゃそれを確かめ様もない。
その子だけだったな。犯罪者のレッテルを貼られた俺のことを庇ってくれていたのは。
子供だったあの子の証言は、いくら口にしようが大人達には信じて貰えなかったんだけどな。
幼女「藤野慈愛」は日影を庇い過ぎて母親……いや、母親代りの女に頬を打たれた。
聞き分けのない慈愛に言うことを聞かせる為だった。
俺がまた無実を訴えようものなら、またあの子のことも巻き込んでしまうだろう。それが原因で、あの子が叔母に何かされるのは見たくないな。
家出する程嫌だったみたいだし、もしかしたら虐待を受けていたかもしれない。
「そうかな。どうなるかはやってみないと分からないよ」
「俺のことは良い。ほら、ままごとするんだろ。さっさと始めようぜ」
折角の休日二日間は、ままごと(人形遊び)に付き合わされ、ほとんど疲れも取れずに終了した。
基本土日と祝日だ。
囚人になる以前は犯罪者に休日など与えられる筈がないと勝手に思っていたのだが、案外そうでもないらしく、刑務作業や奉仕作業で疲れた体を心身共に癒すことが可能だ。
休みを貰えたところで、牢の中から出ることは出来ないし、特にすることもなく暇ではあるが、実現可能な娯楽と言えば、読書、トランプ、ボードゲーム。
それか、惰眠を貪るくらいか。
「あ~、ねみ……」
そういう訳で刑務作業と奉仕作業がお休みの日は、いつも決まって朝食後布団に潜って二度寝を始めるのだが、これまた決まって、ルナが「ひーくん、あそぼー」と俺の邪魔をしてくるのも毎度のことである。
「ねー、ねぇー。ひーくん。一緒にあそぼーよー。ねぇーってば~」
「ルナ、お前も土日は十分に眠っとけ。休みの日なら何時間でも夢の中に入っていられる。誰にも文句言われることはないぞ」
夢の中へ現実逃避する時間も俺達には必要だ。何もかもリセットして、普通の高校生だった自分に戻りたい。
「え~、やだ。そんなのつまんない~。遊んでよ~」
「悪いな、ルナちゃん。お父さんは毎日のお勤めで疲れているんです。寝かせてください。お願いします」
「ひーくんはあたしのパパじゃないでしょ。良いのかなぁ~。遊んでくれないなら本当に泣いてるように見えるプロ級の嘘泣き披露しちゃうよ。両隣と正面の牢にいる人達にも聞こえちゃうかもね~」
ーールナを泣かせた何てことが周りの囚人達に知れ渡れば、俺が奴等に酷い目に会わされることなど目に見えている。
僻みや妬みに加えて、虐めから暴行、公開処刑までもがセットメニューに含まれる。
こんな所に無実で閉じ込められているってだけでも毎日地獄にいるような思いをしてるってのにーーこれ以上のストレスを抱え込んだら俺の心と体が持たない。
ルナのことが大好きな連中の気持ちを刺激する真似はよせ。
「分かったよ。俺もまだ命が惜しい。とことん遊んでやろうじゃねぇか」
ルナと楽しく戯れている俺の姿を見ただけで、おそらく彼等は激しく苛立ち歯噛みするだろう。
結局は遊ぼうが遊ぶまいが結果は同じだ。
「で、何して遊ぶんだよ。トランプかチェスか将棋。二人で出来るのはそれくらいしかないぞ」
「これ使ってままごとがしたい!」
「これって……」
ルナが大きな瞳を爛々とさせて両手いっぱいに抱えてきたのは、種類豊富な動物のぬいぐるみだ。
何が悲しくて十七歳の男がままごとなどと小学生でさえ卒業していそうな遊びをしなきゃならんのだ。
「このウサギさんがお父さん役で、このくまさんがお父さん役ね。それでそのアヒルさんがーー」
「ちょっと待て。このたくさんのぬいぐるみは何処から盗んで来た?」
「盗んできた何て人聞きが悪いな~。ひーくん、このぬいぐるみは奉仕作業先であたしに子供達がくれたんだよ」
あ~……そういや、そうだったかも。
休みの日の前日に行った保育園で、ルナが園児達にえらく気に入られておもちゃにされている光景は愉快で微笑ましかった。
ツインテ引っ張られたり、背中蹴られたり。
他にも色々と悪戯されてたっけ。
ちなみに休み明けの奉仕作業も場所は変わらず保育園だ。
幼女の誘拐未遂(ロリコン)で捕まった俺からしたら、あそこは一番行きたくない場所だが、そんな囚人を幼児だらけの仕事場に放り込む警察の考えが理解できない。
「すまん。元「大怪盗」だったルナさんなら、ぬいぐるみ盗むくらいやりかねないと思いまして」
「ひどっ!?もうあんなことしないって心に決めたもん!ほんとうだよ!ほら、ポチとタマもあたしを信用してくれてるみたい!」
猫と犬のぬいぐるみを両手に持って、声真似をしながらそれを否定する。
「ひかげくんは酷い人だわん。応援してあげなきゃかわいそうやろ? そうだにゃー。見損なったですにゃん」
どうでもいいが、ポチとタマとか名前がテキトー過ぎる。外国っぽい「マックス」とか「ジャック」じゃねーのかよ。
何か途中で関西弁混ざってるし、もう訳わからん。
ーーにしても、母親が大統領か。
親が偉大だと意外と子供は苦労するのかもな。
親が頭の良い大学とか出てると、子供に対して「勉強しろ勉強しろ」ってうるさかったりしてな。
まあ偏見でしかないが、放任主義の家庭で育った俺には想像もつかない。
ーーなんでもクレプトマニアって名前の、治療が難しいとされる心の病が実在するらしい。
ルナの話を聞いて初めて知った。ストレスが原因で発症する珍しいタイプの病気なんだってさ。
ある日を境に、ルナは欲しくもない物を次々と万引きするようになった。いや、なってしまったと言うほうが正しいのか?
とにかく、毎日のように繰り返して繰り返して繰り返しまくった。数百円で買える、安い品物を何度も何度も。
満足感とか達成感を得られれば盗む物はどんな物でも構わないみたいで、本当はしたらいけないことだって理解しているのに自制が出来ないってんだから防ぎようがない。
文字どおり親が素封家であるお嬢さまに、警察を敵に回してまで手に入れたいお宝があるとは思えない。
そんなことを態々しなくても大統領の母親に強請れば何でも買って貰えそうだ。
「あたしは何かが欲しくて物を盗んでた訳じゃないから……病気の克服、応援してほしいな」
「……悪い。そうだよな。応援するって約束したもんな。でもさ、本当に俺なんかでいいのか?ルナほどの美少女の頼みなら誰だって喜んで協力してくれると思うけど」
「美少女とかなんか照れる……ひーくんはいつも褒めすぎ。否定はしないけどね」
「そこは否定しとけよ。謙虚な女の子ってのも中々可愛いもんだぞ」
「せっかくひーくんが可愛いって言ってくれたのに、肯定こそすれ否定何かしないよ」
「実際問題、彼氏いないとかすげー嘘くさいんだが」
初めて会った日泣いていた理由。
刑務所から出社しても帰る場所がないと言っていたのは本当だったんだ。
早い話が母親に病気の話を打ち明けても受け入れられず、呆れられて見放された。
何だか可哀想だよな。なりたくてそうなってしまった訳じゃない。誰にだって起こりうる病気なんだ。ルナは別に悪くないじゃないか。
「じゃあ、ひーくん。あたしの初めてになってみる?」
「……は?」
「ひーくんがあたしの、彼氏さんになってくれたら嬉しいなぁ。なーんて」
「ほう。それは俺への愛の告白と受け取って良いんだな」
「うん。そう。……あたしの恋人になってくれる?」
おお……告白何て十七年間の人生で初めてされたな。
ルナに好意を寄せられていることには気付いていたが、俺の答えはもちろんNOだ。
刑務所の中でアイドル的存在である彼女の彼氏になるという大イベントを女に飢えている囚人達に知られでもしたら、日影の命は彼等の団結によって速やかに抹消されるだろう。
彼女ができた所で死んだら意味がない。
女との合体行為を一度も経験しないまま死の世界に葬られるとかごめんだな。
死んでも死にきれねーよ。
「やめておけ。こんなロリコン男と恋仲になったって一つも良いことないぞ。それに、お前ほどの美貌の持ち主なら、俺みたいな心も見た目もブサメンな男と付き合わなくたってイケメンと付き合えるだろ」
何が悲しくて自分を自虐しまくっているんだろうな。口に出していてかなり惨めな気分だ。イケメン共は一人残らず全員地獄に落ちろ。
「え~。ひーくん全然ブサメン何かじゃないよ。普通にかっこいいよ。だからあたしの恋人になってよぉ~」
「断る。お世辞には感謝するが、お前の恋人になるとか絶対に無理。俺のルナ攻略ルートは失敗に終わったの」
「うぅ、ひーくんの馬鹿……こんなにひーくんのこと大好きなあたしなら攻略したも同じじゃない」
「まあ、何だ。此処では攻略してやれないが、シャバに出たらお前のルートを飽きるほどプレイしてやるよ。良い子だからそれまで待て」
周りが敵だらけの刑務所内でルナと恋仲になることは「死」を意味する。
ドラマやCMで活躍する有名な女優と同じくらいかそれ以上に可愛いルナと同室ってだけで、囚人達に妬まれながらの生活を送っているんだ。
ーーこれ以上奴等を刺激してなるものか。
「そんな先まで待つのやだよ~。だってひーくんが此処から出られるのって後何年も先のこと何でしょ」
「懲役十年に処された日からちょうど一年くらいか。残り九年は刑務所の中だな」
「ひーくんって本当は無実何でしょ。よくそんなに落ち着いていられるね」
「無実だって騒いだところで、此処から出られる訳でもないしな」
そういや、俺が助け損なったあの小学生はどうなったかな。
話を聞いた限りじゃ訳ありの家庭っぽかったから心配していたが、今じゃそれを確かめ様もない。
その子だけだったな。犯罪者のレッテルを貼られた俺のことを庇ってくれていたのは。
子供だったあの子の証言は、いくら口にしようが大人達には信じて貰えなかったんだけどな。
幼女「藤野慈愛」は日影を庇い過ぎて母親……いや、母親代りの女に頬を打たれた。
聞き分けのない慈愛に言うことを聞かせる為だった。
俺がまた無実を訴えようものなら、またあの子のことも巻き込んでしまうだろう。それが原因で、あの子が叔母に何かされるのは見たくないな。
家出する程嫌だったみたいだし、もしかしたら虐待を受けていたかもしれない。
「そうかな。どうなるかはやってみないと分からないよ」
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