未成年囚人達のソーシャルサービス

SAKAHAKU

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第三話(ルナルート攻略)

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ーー朝の六時半起床。

囚人達の朝はとにかく早い。

最近の日影の囚人ライフは中々起きない寝坊助のルナを叩き起こすことから始まる。

「起きろルナ。さっさとしないと点呼の時間に間に合わねぇぞ」

「うう……うるさい。眠い……」

「此処は自宅じゃねぇ。何時迄もゆっくり眠っていられると思うなよ。お前が起きないと刑務官に怒られるのはペアの俺何だぞ」

「点呼!」と刑務官が発声して始まった囚人達が並んで番号を叫ぶお決まりの人数合わせ。

ちなみにルナは三番。日影が四番だ。
いち、にー。と来てルナが番号を叫ばなかった時は流石の俺もひやっとしたね。
咄嗟に出せる限りの女声を演じて代わりに叫んでおいた。

(ふぅ……気付かれなくて良かった)

「さっきはありがと……普通にうとうとしてた」

牢の中での朝食中、おそらくは先程の点呼のことだろう。
日影はルナからお礼の言葉を頂戴した。

「俺の美声に盛大に感謝するんだな」

今日はまだ、立ってくれていただけマシだった。昨日何か揺すっても耳元で話しかけても全く起きなかったから、仕方なしにルナをおんぶしながら点呼に参加したんだ。

おかげで他の連中に冷笑されちまったよ。

「美声、あのおネェみたいな声が?」

「言っておくが、刑務官はそのおネェみたいな声をお前の声だって信じたんだからな」

俺が本気を出せばおネェ界最強と謳われている「スギコ」ですら恐れを成して跪くだろうな。

「お、ルナ。今日は朝食残さず食べたんだな。偉いぞぉ~」

まるで自分より年下の女の子を褒めるように同い年の女の子の頭を撫でる。

昨日はあげぱんだけ食べてシチューは残してたもんなぁ。完食しているその様子を見るに、作業途中で腹が減ることを一日で学習したようだ。

「娘を褒める父親みたいに接さないで。食べ物を残さず食べるのは当たり前でしょ」

「お前、昨日は残してたじゃねぇか」

「うう……誰でも調子の悪い時や気の向かない時だってあるよ……」

「悪い、悪い。ただ言ってみただけだ。だから泣くなよ」

「なっ、泣いてないし……てきとーなこと言わないで!」

「はいはい。それよりさっさと作業部屋行こうぜ。遅れると色々と不味い」

午前中の刑務作業。拷問のように永遠と続く慣れない造花作りからやっとのこと解放され、二人はこれから向う奉仕作業の準備をしていた。
意外なことにルナは日影が苦戦していた造花作りを簡単にマスターし、てきぱきと確実に量産していた。
こいつ、案外物覚えに長けているんだな。

「さて。これからラーメン屋に出掛ける訳だが、最初に言っておくぞ。今日は転けてくれるなよ。店長の鬼のような形相を二日続けて拝むことになるのは御免だからな」

「うん……頑張る。昨日はごめんね」

……えっと、何かルナが素直だと調子が狂うな。


**********************


「もうホールは任せられん。お前は裏で皿洗いでもやってろ」

「すいませんでした……」

予想通りと言うか、何と言うか、二日目もルナは出来上がったラーメンや餃子を客の待つテーブルへ運ぶ途中、何も無い場所で激しい音を立てて転けていた。

最初の一回目は大目に見てくれていた店長も、二回目三回目と繰り返すと流石に怒りを我慢しきれなかったようで……ルナには厨房で、安全で被害の少ない食器洗いを任せることにしたみたいだ。

「木ノ下。ティアーズと二人で休憩行ってこい。三十分やる」

三十分というそれなりに長めの時間を与えられた日影とルナは、店長の有難いお言葉に甘えて、裏にある畳七畳くらいの休憩室で体を休めることにした。

「ルナ。休憩くれるって。一緒に行こうぜ」

「…………」

「ルナ?」

声をかけてみても、ルナは洗い場で食器を洗い続ける手を休めない。
よく見ると、目を赤くして、涙をぽろぽろと零していた。
こいつ、何で泣いてんだよ。よく泣くやつだな。

「いい。あたし休憩要らない……」

「どうしてだよ。休憩取って良いって言われたんだぞ。それに、休める時にちゃんと休んでおかないと疲れて倒れちまうだろ」

「いいの!……だって、あたし……失敗ばっかりして、貴方や店長に迷惑ばかりかけてるから」

「お前、その件に関してはさっきちゃんと謝ってただろ。店長もいつまでも怒ってないから、そんなに自分を追い詰めるなって。ほら行くぞ。ラーメン二人で食べていいってさ」

何時迄も駄々を捏ねるルナの手を引っ張って休憩室まで連れて行く。
全く……世話の掛かる相棒だぜ。

「冷めないうちに食べた方が美味しいぞ。ほら、涙拭いて早く食べなって」

「う、ん……ありが、と……」

中々目の前のラーメンを食べようとしないルナに割り箸を手渡してやった。
そんな俺の顔を見つめて泣き虫さんは、

「貴方は、食べないの?」

どうせなら二人分くれたらいいのに、残念ながら貰ったラーメンは一つだ。分けて食べろと言われていたが、そういや取り皿持ってくるの忘れたな。今から厨房に戻るのも何か面倒だし、刑務所に帰れば晩御飯が待っている。

「あ、ああ。俺は腹減ってないから大丈夫。それより働き過ぎて疲れちゃってさ。悪いんだけど仮眠取るから時間になったら起こしてくれない?」

「え、でも……あたしこんなに食べられない……」

「だったら、ルナが残した分を俺が貰うことにするよ。それで良い?」

「……どうして?」

「ん?」

「……どうしてそんなに、あたしに優しくしてくれるの?」

「急にそんなこと聞かれてもな」

「作ったラーメン駄目にしても何も言わないし、店長から怒られてるあたしを庇ってくれたり。貴方はいつも優しいよね……ツンツンして可愛くない子を嫌がらずに、どうして構ってくれるの」

はて。ほんと、どうして何だろうな。

そうは聞かれても自分でもよく分からない。
ただ、女の子が涙を流している姿を見るのが昔から苦手で、子供の頃も泣いている子が居ればよく手を差し伸べたりしてた。

あの日だってそうだ。

俺が逮捕されたあの日だって、迷子になって泣いてる小学生を放っておくことが出来なかった。

ロリコンという異常な性癖持ちがこの世にわんさかと溢れ出たことで、男が幼女へ近付き難い時代になってしまっているのは分かるが、その場には女性もいたんだ。面倒臭がらないで助けてやれば良いじゃねぇか。

他の誰かがそうしてりゃ、俺が間違いで捕まらずに済んだかもしれないのにな。

まあ、そうだな。強いて言えば、

「お前と、ルナと仲良くなりたいから……って理由じゃ駄目か?」

悩んで考えた末に出した俺の台詞に、ルナはくすっと、控えめに笑顔をみせて「貴方馬鹿でしょ」そう言った。

この時初めて見たんだよな。ルナが心から笑った顔を。

「貴方には教えても良いかも……ううん、知って欲しい」

「教えるって何を?まさか、ルナのスリーサイズとか?」

「そんなの、本当に知りたいと思ってる?知ってどうするのよ?」

「色々妄想して、頭の中でルナを辱めて遊ぶ。ふふ、退屈でつまらない刑務所での楽しみが一つ誕生した瞬間だな」

「そんなこと思ってない癖に。優しい貴方が酷いことするとは思えないけど?」

「俺は心の中に無数の闇を抱えて生きている人間だからな。優しい所を見せておいて後で盛大に裏切る。ルナをがっかりさせてやるよ」

本当はルナが何を俺に教えたいのか、そんなことはとっくに分かっていたんだ。

でも、それを聞くのは別に今じゃなくても良い。

この時間は泣き虫のコイツをたっぷりと楽しませ、たくさん笑わせてやりたい。心からそう思ったんだ。


**********************


「おはよう。ひーくん」

相棒の明るく元気な声で夢から目が覚める。
いつも彼より遅い起床の筈のルナが、自分の分と一緒に日影の分の朝食まで運んできてくれていた。

今まで俺のことを「貴方」としか呼ばなかったルナが下の名前で「ひーくん」とあだ名で呼んできた。

ーーまるで恋人のように。

「おはよう。ルナ」

俺は色々あって彼女に好かれるようになりました。




















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