眠れない男

たいら

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「北海道さん。朝ですよ」
「…………」
 北海道さんは目覚めが悪い。
「朝ご飯できてますよ」
 北海道さんがいつもの無防備な顔でぐっすり眠っている。
「北海道さんて見た目も若いですけどこっちもすごく若いんですね?」
「…………」
 北海道さんの目が突然開き、慌てて布団で体を隠しながら俺とは反対方向に逃げようとするのを、ギプスをしていない方の足を引っ張って元の位置に戻した。
「うわぁっ」
「どうしたんですか? 落ちちゃいますよ?」
「来るなっ」
 怯えた表情を浮かべる北海道さんの太ももの上に乗った。
「どうしたんですか? 怖い夢でも見たんですか?」
「……し、島根くんさ」
 北海道さんのスウェットの股間の部分が明らかに膨らんでいた。
「……島根くん、君、怖いよ」
 あんなにいつも好奇心を溜めて光っている北海道さんの目が、今は小さく揺れていて本当に怯えているみたいだった。
「怖い? ならなんで北海道さんのここはこんなに元気なんですか?」
「……知らないよ。いつもはこんなんじゃ……」
 キスをしながらスウェットの中に手を入れ、直接握ると、北海道さんの吐息が熱くなった。
「……あぁっ……あっ……ぁっ……ぁっ……」
 両手をスウェットの中に入れ、左手は玉を下から優しく揉みながら、右手では朝から元気な北海道さんを激しく扱いた。
 俺の体重で動けなくなっている北海道さんが、首を左右に振りながら喘ぎ出した。
 性欲が無いんじゃないかとすら思っていた北海道さんが、こんなに感じてくれるなんて今日もまた感動的だった。
「北海道さん。ずっと好きでした。やっと言えたんです」
「……ぁあっ……!」
「北海道さんが言わせたんですよ? 言うつもり無かったのに。こうなったら俺がどれだけ北海道さんのことを考えて生きてきたか怪我が治るまでにじっくり知ってほしいんです」
「……あっ……あっ……あっ……ぁああぁぁっ……!」
 眉間に皺を寄せ、苦しそうによがる北海道さんの顔を見ていた。これが本物の北海道さんだと目に焼け付けるために。無鉄砲で鈍感で俺の心配なんか気にも止めなかった北海道さん。俺のことを仲間じゃなくて空気だと思っていた北海道さん。
「……もうやめてっ……しまねくんっ……」
 恨めしくさえ思っていた。この人がいなければ俺はぐっすり眠れるのにって。でもその思いがやっと報われたんだ。
「……しまねくん、もうやめてっ……、もう終わったから……!」
「…………」
 いつの間にか両手が北海道さんの精液で濡れていた。北海道さんがぐったりとしている。
「あ、すみません」
 手を北海道さんのお腹で拭いた。
「汚れちゃいましたね。お風呂入りましょうか」
「……いや、いいから……やめて……」
 北海道さんは首を横に振っているが、抱きかかえて浴室へ連れて行った。






「北海道さんはどうして島根さんのことを変態って呼ぶんですか?」
「…………」
 千葉と二人で神奈川県の山奥にある資材置き場とは名ばかりの不法投棄場に来ていた。
 怪我で休養中の北海道さんが受けた依頼は、この山積みにされた瓦礫や粗大ゴミからある物を探し出すことだった。
「さっさと終わらせるぞ」
 日はとっくに暮れ、軍手をしてライトの付いたヘルメットを被り、朝までにお目当ての物を探さなければならなかった。
 まずは手始めにドアが凹んだ冷蔵庫を開けてみたが、中には腐ったキャベツらしきものが入っていて、慌てて閉めた。
 山に囲まれた場所に作られた不法投棄場は不気味で、どんな恐ろしいものが出てもおかしくない雰囲気を醸し出している。ゴミの山を夜空をバックに見ると、まるで巨大なモンスターみたいだ。
「こんなところになんで熊のぬいぐるみなんて捨てちゃったんですかね?」
「さぁ」
 電話で依頼人と話したのは北海道さんだけだった。
 古い洗濯機を覗いたり、割れたブラウン管テレビの中を覗いたりしたが、見つからない。とてもじゃないが俺と千葉だけでは今夜中に見つけるのは難しそうだった。
「……島根さん」
「え?」
 声がした方を向くと、千葉が尻もちをついていた。
「どうした?」
 ゴミを乗り越えながら千葉に近付くと、千葉が巨大な業務冷蔵庫を指差した。
「…………」
 千葉が指差した先にいたのは、手足を縛られた人間だった。
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