親友を落とす方法

たいら

文字の大きさ
2 / 21

2

しおりを挟む
「はぁ~~~~~~~~っ!? なんで俺とお前がセックスするんだよっ!!」
 声帯が振り切ってひっくり返ってしまった。
「それで全て帳消しにしてやる」
「俺とお前がっ!? セックスっ!? 嘘だろっ!?」
 男とヤるなんてかんっがえられないっ!
 ましてや親友とっ!? できるわけないだろっ!!
「破産したくないならな」
 拓真が包丁を片手に、丁寧にケーキの上の俺の名前の入ったチョコレートを外して、俺の皿に乗せながら言った。
「弁護士がそんなこと言っていいのかっ!? 倫理的にっ!」
「返せないなら別のもので返してもらうしかないだろ。俺だって五百万をタダでやるわけにはいかないし」
「だからってなんでセックスなんだよっ!!」
「お前に価値があるのはそれくらいだから」
 ……ひどい。こいつこんなこと言う奴だったのか。
 ずっと大人しい性格だと思っていたのに。なんでこんなに変わっちまったんだよ。
 ……最悪の誕生日だ。
 親友だと思ってた奴に借金の代わりに体を求められるなんて、二十五年生きてきて今までで一番最悪の誕生日だ。
「お前、もしかして俺のこと好きだったの?」
「別に」
 拓真がケーキに包丁を刺しながら言った。
 ……そうだよな。こいつに彼女がいたこと知ってるし、男好きに見えたことも一度も無い。俺のことをそんな風に見ていたとも思えない。
 じゃあなんでセックスなんだよ。
 何かの冗談だろ?
 そもそも五百万てなんだよ? 俺そんなに借りたか?
「……いつこのカードを作った?」
 テーブルの上のカードを指差すと、拓真もカードを見た。
「お前の二十三歳の誕生日。就職の面接に行くって嘘ついて俺から金借りてパチンコ打ってた日」
「…………」
 ……そんなこともあったかもしれない。
 二年前の誕生日を思い出そうとしたが、全く思い出せなかった。
 ……二年間で五百万? そんなに借りたか? いや、借りたかもしれない。いや、もっと借りていてもおかしくないくらいだ。でもだからって。
「つまり、俺の体を五百万で買うってことだろ?」
 あまりの恐ろしさに掠れた声がさらに震えた。
 ……こいつ、こんな弁護士のくせしてそんな下品なことを考えていたのか? もしかして二年前から? 俺よりクズじゃないかっ!
「他に返せるあてがあるのか?」
「ないけどっ! だからって体で返すのはおかしいだろっ!?」
「だったら自分で働いて返せばいい」
「五百万の借金なんて返せるかよっ!!」
 声を張り上げたつもりが全く出ていなかった。そんな俺を気にすることもなく拓真は丁寧にケーキをきっちり四等分に切り分けている。
「……ほ、他に代替案は? セックス以外で」
「それなら口で五千回」
「五千回っ!? 俺のフェラはそんなに安いのかよっ!!」
 包丁を持った拓真が眼鏡を上げながら言った。
「お前の価値は俺が決めることだ」
 こいつっ! 口調までおかしくなってるしっ!
 男がチンチン舐めるなんて、そんな屈辱的なことできるわけないだろっ! そんなの頭のおかしい奴らがやることだっ!
 ……仕方ない。こうなったら。
 拓真の足元に座り、床に手をついて頭を下げた。
「そこをなんとかっ。皿洗いとか風呂掃除とかしますから許してくださいっ!」
「口で五千回」
 絶対に嫌だっ!
「もうギャンブルやめます!」
「口で五千回」
「それ以外なら何でもします。許してください!」
「セックス」
「おまえ~~そんなやつじゃなかっただろ~~もとにもどってくれ~~~」
 上品で優等生で真面目な拓真しか知らないぞ俺は~。元に戻れ~。願いを込めて拓真の足にしがみついたが、蹴られてすぐに希望を打ち砕かれた。
「俺はもうお前を甘やかすのはやめたんだ。今まで貸した分は全額きっちり返してもらう。期限は一ヶ月」
「一ヶ月っ!?」
 一ヶ月で五百万っ!?
「一ヶ月後が次の返済日だ。その日までに俺に全額返すかセックスをするかしないと、五百万の借金に追われることになるぞ」
「…………」
 呆然とする俺を尻目に、拓真は冷静な顔でケーキを食べ始めた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

オメガなパパとぼくの話

キサラギムツキ
BL
タイトルのままオメガなパパと息子の日常話。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

オメガ修道院〜破戒の繁殖城〜

トマトふぁ之助
BL
 某国の最北端に位置する陸の孤島、エゼキエラ修道院。  そこは迫害を受けやすいオメガ性を持つ修道士を保護するための施設であった。修道士たちは互いに助け合いながら厳しい冬越えを行っていたが、ある夜の訪問者によってその平穏な生活は終焉を迎える。  聖なる家で嬲られる哀れな修道士たち。アルファ性の兵士のみで構成された王家の私設部隊が逃げ場のない極寒の城を蹂躙し尽くしていく。その裏に棲まうものの正体とは。

一夜限りで終わらない

ジャム
BL
ある会社員が会社の飲み会で酔っ払った帰りに行きずりでホテルに行ってしまった相手は温厚で優しい白熊獣人 でも、その正体は・・・

処理中です...