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しおりを挟む2と5のローソクの炎が、優太と俺の名前が真ん中に書かれたケーキの上で揺れている。
「誕生日おめでとう」
「ありがとう」
仕事終わりにケーキを買ってきた拓真はまだスーツ姿だ。控えめな顔だちに縁のない眼鏡に黒髪の短髪。地味中の地味。モブ中のモブ顔。
こいつは大手弁護士事務所に所属する優秀な弁護士であり、俺の高校の同級生でもある。俺のことを一番よく知っていて、俺もこいつのことを一番よく知っている親友だ。
「これプレゼント」
「ありがとう。今年は何?」
拓真から渡されたのは一枚の封筒だった。封筒の中にはカードが一枚入っているのを確認し、思わずほくそ笑んでしまった。
……やっぱり。今年もギフトカードか。今年もこれを金に換えてパチンコ打つぞ。
「ん?」
しかしカードをよく見るとギフトカードではなく、YUTA YAMADAと俺の名前が印字された聞いたことのない会社のカードだった。
「なにこれ?」
「三年前にお前の名義で勝手に作った消費者金融のカード」
「は?」
控えめな顔だちの拓真が、今日はやけに強い視線で眼鏡の奥から俺を見ていた。
「お前から金貸してって言われるたびにこのカードで借金して渡してた」
「はっ!?」
「毎月利子だけ払ってたから今とんでもない額になってる」
「はっ!?」
俺の息で拓真の眼鏡の中のケーキのロウソクの炎が大きく揺れた。
「いくらっ!?」
「五百万」
「はぁ~~~~~~~~~~っ!?」
驚きすぎて自分でも聞いたことのない声が出た。
「何やってくれてんだよっ! どうするんだよっ!」
椅子ごと倒れそうになったのを、なんとか耐えた。
「どうやってカード作ったんだよっ!!」
「お前の身分証勝手に使って」
「はぁ~~~~~~~~~~っ!?」
意味がわからない。そりゃこいつなら俺の身分証なんて簡単に盗めただろうけど、やるか普通っ!?
「……お、おまえっ、べ、べんごしが、そんなことをっ」
俺がパニックになりかけているのに、拓真は冷静な表情でローソクの火を吹き消した。
……なんて誕生日だっ! 借金が一気に五百万になってしまったっ!!
「お前と俺、親友だよなっ!? なんでこんなことするんだよっ!?」
高校の頃からの仲なのにっ!
「そんなのはずいぶん昔の話だ。俺はずっとお前と出会ってしまったことを後悔してた。お前を俺に頼らないと生きられない人間にしてしまったから」
「なんで今さらそんなこと言うんだよっ! どうしてくれるんだよっ!! 五百万もっ!!」
五百万なんて借金、俺に返せるわけないだろっ!!
「お前が勝手にやったんだからなっ! 俺は絶対に返さないからなっ!!」
「元はお前が俺から借りた金だぞ?」
「そうだけどっ!!」
……わかってるけどっ!!
いつもは穏やかな態度を崩さない拓真が、今日はなぜか無表情で他人のように俺を見ている。
……一体こいつに何があったんだ?
「お前もう二十五だぞ? いつまで俺に甘えて生きていくつもりだ?」
「だからなんで急にそうなこと言うんだよっ!? 俺たち友達だろっ!?」
拓真のくせにっ!! 今まで散々言うこと聞いてきたくせにっ!
「俺はもうお前みたいなクズと友達でいるつもりはない。ようやくお前を見捨てる覚悟ができた」
「だからなんでだよっ! 今さらっ!!」
テーブルを両手で叩いても、テーブルの上のケーキとフォークと皿と包丁が跳ねただけだった。なんて日だっ!
「安心しろ。ちゃんと解決策は考えてやってる」
拓真がフォークと皿の位置を直しながら言った。
「えっ、解決策あるの?」
なんだ。
良かった。
……やっぱり拓真が俺にこんな酷いことするわけないんだ。弁護士になった今も、中身は昔と変わらずに優しいし、昔から俺が不利になることは一度もしたことがなかった。
拓真は高校の時からずっと唯一無二の親友だから、必ず俺のピンチには助けてくれるヒーローだったんだ。
拓真が包丁を握りながら言った。
「俺とセックスしたら借金は帳消しにしてやる」
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