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……あいつ、本気で俺を抱く気か?
俺、男だぞ? 抱いて何が楽しいんだよ。勉強し過ぎて頭がおかしくなったのか?
カラオケ屋のレジのお金を数えながら拓真のことを考えていると、引き継ぎで制服をだらしなく着た先輩が現れた。
「優太、お前今金無いんだよな?」
「ないっす」
おかげで俺の体を狙っている親友が作るご飯を毎日食べてます。
「アロハがお前と飲みたがってたぞ」
「……アロハ?」
頭の中に年中アロハシャツを着て白髪をポニーテールにした、毎回フライドポテトの鬼盛りを頼む巨体の常連客が浮かんだ。
「あいつ金持ってそうだし、上手くやって金引き出せば?」
「引き出す?」
「パパ活だよ。お前ならできるだろ」
どういう意味だよ。俺がそんな乞食みたいなことできるわけないだろっ。
……いや待てよ。たしかあいつこの辺の地主で毎日遊んで暮らしてるって言ってたな。連れてきたキャバ嬢そっちのけで話しかけられても無視してたけど、たしかにあいつなら使えるかもしれない。
とっくに返済日まで一ヶ月切ってるのに正攻法で五百万も稼ぐなんて絶対に無理だ。そうなると、金持ちから引き出すのは良い手かもしれない。
先輩からアロハの連絡先を聞き、さっそくアロハと待ち合わせることになった。アロハが指定したのはカラオケ店から近い通りにある、アロハが経営する地下のバーだった。
まだ閉店中の札が出ている店のドアを開けると、制服を着た店員に案内され、カウンターの奥にあるカーテンで閉められていた部屋に入った。
するとすでにアロハが広いソファに座っていて、テーブルにはボトルとグラスが置かれていた。
「ゆーちゃーん」
万年赤ら顔で巨体で白髪のポニーテールのアロハが、俺に大きな手を振っている。それを見た瞬間、足は重くなった。
……我慢しろ。金を引き出すためだ。親友とセックスするくらいならパパ活した方がマシだろ。何とかしてこいつから五百万を引き出すんだ。
恐る恐る隣に座ると、アロハは大きな手で俺の頭を撫でた。
「わぁ、ほんとに優ちゃんがきたー、おじさんうれしいなー」
「…………」
頭を撫でられた手で背中を撫でられ、ゾッとして鳥肌がたった。
「おじさんはー若い子たちのーお願いごとをきいてあげるのが趣味なんだー」
巨体から発せられる猫撫で声に耳を塞ぎたくなった。
「ゆーちゃんのお願いごとはなーにー?」
「五、五百万が欲しいです」
思わず本音を出すと、アロハに肩を抱かれた。
「いいよー。優ちゃんがおじさんの愛人になってくれるならー」
「…………」
酒くさい息を顔にかけられ、吐きそうになった。
「おじさんといっぱいイチャイチャしてー、いっぱいチュッチュさせてくれたらー、五百万あげるしー、マンションも買ってあげるしー、毎月旅行に連れてってあげるしー、ヘリコプターにも乗せてあげるよー?」
……気持ちわりぃ。男にいやらしい目で見られるってこんなに気持ち悪いもんなのか。
思わずアロハの体を押しやったが、アロハの巨大な体はびくともせず、むしろのしかかってきた。
「……え、まっ」
「大丈夫。この店はおじさんの店だから。何してもぜーんぶ秘密にできるからねー」
「…………」
「おじさんに優ちゃんのぜーんぶ見せてねー」
巨漢のアロハに体に乗られ、太い指がTシャツの中に入った瞬間、目をつぶった。
……覚悟だ。ここで覚悟を決めれば全てが手に入るんだ。親友とセックスするよりはマシだ。俺は今からおっさんの愛人になるんだ。おっさんの愛人になって五百万を手に入れて、マンションも手に入れて、ハワイに行って、ヘリコプターに乗るんだ。
「どうした?」
俺の顔を見るなり、何かを感じとったのか、拓真は顔をしかめた。そんな拓真の体にぶつかりながら拓真の家に入った。
「金持ちのおっさんの愛人になりそこねた」
「…………」
「我慢できずにおっさんの顔殴っちまった。訴えられたら助けろよ? お前のせいでもあるんだからな?」
思い出したらくやしくて、ソファにジャンプして思いっ切り頭をかきむしった。
「あーっ! あともう少しだったのにっ! 五百万どころかマンションまで手に入りそうだったのにっ!!」
俺のバカっ! なんで我慢できなかったんだっ! 働かずにごっそり稼げたのにっ!
「金持ちの愛人? お前にそんな勇気があったのか?」
拓真がソファにうつ伏せで寝転ぶ俺の横に座った。
「こうなった次々と金持ちの愛人になって五百万稼いでやるっ!」
「俺となら一回セックスするだけで済むのに?」
俺を見下ろす拓真を睨み付けてやった。
「お前とセックスなんてできるわけがないだろっ! 二度と友達には戻れなくなるんだぞっ!?」
「俺はその覚悟があるけど」
「俺にはないっ!」
他に親友と呼べる人間はいないからなっ!
「だったら俺の愛人になれば?」
「……愛人?」
仰向けに寝返った俺の顔に拓真の顔が迫っていた。でもアロハの時のような嫌悪感を含む恐怖はなかった。
……こいつは男だけど若いし、昔から知ってるからだ。
そう言い聞かせないと、意識してしまいそうだった。
「マンションならいずれ買ってやるし、借金もチャラにしてやる」
「じ、条件は?」
「一回だけ俺とセックスすること」
「ほ、ほんとに一回だけ?」
頭からアロハの猫撫で声が消えなかった。
……あいつは若い生き血を吸う妖怪だ。あいつの愛人になっていたらきっと骨の髄までしゃぶり尽くされていたかもしれない。
……でもこいつならたった一回でいいのか?
「……ほんとうに、たった一回セックスするだけでいいのか?」
恐る恐る上から俺を見つめる拓真にそう聞くと、拓真は一度起き上がって眼鏡をはずし、また俺に覆い被さった。
俺、男だぞ? 抱いて何が楽しいんだよ。勉強し過ぎて頭がおかしくなったのか?
カラオケ屋のレジのお金を数えながら拓真のことを考えていると、引き継ぎで制服をだらしなく着た先輩が現れた。
「優太、お前今金無いんだよな?」
「ないっす」
おかげで俺の体を狙っている親友が作るご飯を毎日食べてます。
「アロハがお前と飲みたがってたぞ」
「……アロハ?」
頭の中に年中アロハシャツを着て白髪をポニーテールにした、毎回フライドポテトの鬼盛りを頼む巨体の常連客が浮かんだ。
「あいつ金持ってそうだし、上手くやって金引き出せば?」
「引き出す?」
「パパ活だよ。お前ならできるだろ」
どういう意味だよ。俺がそんな乞食みたいなことできるわけないだろっ。
……いや待てよ。たしかあいつこの辺の地主で毎日遊んで暮らしてるって言ってたな。連れてきたキャバ嬢そっちのけで話しかけられても無視してたけど、たしかにあいつなら使えるかもしれない。
とっくに返済日まで一ヶ月切ってるのに正攻法で五百万も稼ぐなんて絶対に無理だ。そうなると、金持ちから引き出すのは良い手かもしれない。
先輩からアロハの連絡先を聞き、さっそくアロハと待ち合わせることになった。アロハが指定したのはカラオケ店から近い通りにある、アロハが経営する地下のバーだった。
まだ閉店中の札が出ている店のドアを開けると、制服を着た店員に案内され、カウンターの奥にあるカーテンで閉められていた部屋に入った。
するとすでにアロハが広いソファに座っていて、テーブルにはボトルとグラスが置かれていた。
「ゆーちゃーん」
万年赤ら顔で巨体で白髪のポニーテールのアロハが、俺に大きな手を振っている。それを見た瞬間、足は重くなった。
……我慢しろ。金を引き出すためだ。親友とセックスするくらいならパパ活した方がマシだろ。何とかしてこいつから五百万を引き出すんだ。
恐る恐る隣に座ると、アロハは大きな手で俺の頭を撫でた。
「わぁ、ほんとに優ちゃんがきたー、おじさんうれしいなー」
「…………」
頭を撫でられた手で背中を撫でられ、ゾッとして鳥肌がたった。
「おじさんはー若い子たちのーお願いごとをきいてあげるのが趣味なんだー」
巨体から発せられる猫撫で声に耳を塞ぎたくなった。
「ゆーちゃんのお願いごとはなーにー?」
「五、五百万が欲しいです」
思わず本音を出すと、アロハに肩を抱かれた。
「いいよー。優ちゃんがおじさんの愛人になってくれるならー」
「…………」
酒くさい息を顔にかけられ、吐きそうになった。
「おじさんといっぱいイチャイチャしてー、いっぱいチュッチュさせてくれたらー、五百万あげるしー、マンションも買ってあげるしー、毎月旅行に連れてってあげるしー、ヘリコプターにも乗せてあげるよー?」
……気持ちわりぃ。男にいやらしい目で見られるってこんなに気持ち悪いもんなのか。
思わずアロハの体を押しやったが、アロハの巨大な体はびくともせず、むしろのしかかってきた。
「……え、まっ」
「大丈夫。この店はおじさんの店だから。何してもぜーんぶ秘密にできるからねー」
「…………」
「おじさんに優ちゃんのぜーんぶ見せてねー」
巨漢のアロハに体に乗られ、太い指がTシャツの中に入った瞬間、目をつぶった。
……覚悟だ。ここで覚悟を決めれば全てが手に入るんだ。親友とセックスするよりはマシだ。俺は今からおっさんの愛人になるんだ。おっさんの愛人になって五百万を手に入れて、マンションも手に入れて、ハワイに行って、ヘリコプターに乗るんだ。
「どうした?」
俺の顔を見るなり、何かを感じとったのか、拓真は顔をしかめた。そんな拓真の体にぶつかりながら拓真の家に入った。
「金持ちのおっさんの愛人になりそこねた」
「…………」
「我慢できずにおっさんの顔殴っちまった。訴えられたら助けろよ? お前のせいでもあるんだからな?」
思い出したらくやしくて、ソファにジャンプして思いっ切り頭をかきむしった。
「あーっ! あともう少しだったのにっ! 五百万どころかマンションまで手に入りそうだったのにっ!!」
俺のバカっ! なんで我慢できなかったんだっ! 働かずにごっそり稼げたのにっ!
「金持ちの愛人? お前にそんな勇気があったのか?」
拓真がソファにうつ伏せで寝転ぶ俺の横に座った。
「こうなった次々と金持ちの愛人になって五百万稼いでやるっ!」
「俺となら一回セックスするだけで済むのに?」
俺を見下ろす拓真を睨み付けてやった。
「お前とセックスなんてできるわけがないだろっ! 二度と友達には戻れなくなるんだぞっ!?」
「俺はその覚悟があるけど」
「俺にはないっ!」
他に親友と呼べる人間はいないからなっ!
「だったら俺の愛人になれば?」
「……愛人?」
仰向けに寝返った俺の顔に拓真の顔が迫っていた。でもアロハの時のような嫌悪感を含む恐怖はなかった。
……こいつは男だけど若いし、昔から知ってるからだ。
そう言い聞かせないと、意識してしまいそうだった。
「マンションならいずれ買ってやるし、借金もチャラにしてやる」
「じ、条件は?」
「一回だけ俺とセックスすること」
「ほ、ほんとに一回だけ?」
頭からアロハの猫撫で声が消えなかった。
……あいつは若い生き血を吸う妖怪だ。あいつの愛人になっていたらきっと骨の髄までしゃぶり尽くされていたかもしれない。
……でもこいつならたった一回でいいのか?
「……ほんとうに、たった一回セックスするだけでいいのか?」
恐る恐る上から俺を見つめる拓真にそう聞くと、拓真は一度起き上がって眼鏡をはずし、また俺に覆い被さった。
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