ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

文字の大きさ
24 / 249
オマケ集

ひのたん

しおりを挟む
※ひのたんの紹介です←











我こそは、日輪家の守り神『ひのたん』である。

我を生み出した創造主は、日輪の名に相応しい明るく活発な少年である。
なんでも、元々は三つ首の犬を造ろうとしていたそうな。
だが天より賜りし独創性がソレを赦さず、足が増え耳が減るなどの紆余曲折あって、我になったのだ。

そんな我の姿がコレだ。





どうだ、凄かろう。
何が凄いかというと、最早原型が何かも解らぬ上、平らな面がほぼ無いにも関わらず、自立はするという事だ。
我が創造主のような者を、人は天才と呼ぶのであろう。
因みに、生まれた当初は模様など無く、紅い体と紫の瞳だけであった。

残念ながら、『びじゅつのせんせい』という者は、我の良さを理解できなかったらしいが…
創造主の家族や、創造主を慕う者達は、よく理解しておる。

さて、創造主によって芸術的に造られた我であるが、最初はただの意思無き土塊つちくれであった。
自我を持ったのは、妹君より名を賜った時だ。
その名こそ『ひのたん』である。

『ひの』は日輪という、家を示す言葉から取られたもの。
『たん』には妹君の『可愛い名前がいい』という意図が含まれている。
とても素晴らしい名だ。
我に自我と意思を与えてくれただけはある。

そして、我を『とこのま』という神聖なる場に奉ったのは、創造主の爺様にあたる者だとか。
毎日我に家内安全を祈り、清き水を捧げてくれる良き家人である。
我に様々な模様を描いてくれたのは、この爺様だ。
また、我の隣に『緋之丹』という文字を書いた紙を奉納したのも、そうである。
恐らく、コレは我の為の書。
何と書いてくれたのだろうか…人の字を読めぬのが口惜しい限りだ。

そうして、我が守り神となって数年後。
我は布でできた分体を、2つも手に入れた。
創造主の友人に、布から熊や猫を生み、人を飾り立てる着物を作り出す職人が居たのだ。
その者は我が分体を、創造主と妹君に贈った。
2人は己が最もよく使用する物入れに、分体をくくりつけてよろこんでおった。

だが、それから更に2度程季節が回った頃…
妹君を守る分体の首が、『くらすのだんし』なる狼藉者に千切られてしまった。
御母堂によれば、その『くらすのだんし』は妹君の気を引きたいがため、斯様な暴挙に出たという。

子供の悪戯と言うには、事が大きすぎた。
分体とはいえ、少なからず妹君を守る力は有しておったのだ。
ソレが首を千切られ、力を無くせばどうなるか。
『くらすのだんし』という者は、死神の使いではないかと我は睨んでおる。

知ってか知らずか、創造主は涙を流す妹君に、自らを守る分体を手渡した。
代わりに首の千切られた分体を受け取り、友人に治してもらうと言って、妹君を宥めたのだ。
そうして、翌朝いつものように出掛けた創造主を、千切られた分体では、守れなかったのである。

アレから月日は流れ、妹君も年頃の娘に成長しておる。
現在、我の分体は知らぬ間に3つに増えていた。
1つは、創造主の守りを担当していた分体。
今は妹君の荷物入れにくくられ、懸命に守っておる。

1つは、1度首を千切られた分体。
コレは『ぶつだん』という、『とこのま』とはまた違う趣の神聖なる場に置かれている。
首は御母堂が治してくれたため、また力を取り戻した。

そしてもう1つ。
ソレはこの世界には居ない。
遥か遠き世界にて過ごす、創造主の荷物入れにくくられた分体。
だが、残念なことに、今はその荷物入れを持ち歩いてはくれていないようだ。
折角分体が近くに在るというのに、これでは創造主の無事を家人へ伝えられぬ。
さて困った困った……。


「いやー、ゲームと漫画に気取られて、忘れてたわ。」
「ひのたん、ありました?」
「あったあった。ウェストポーチに付け替えとく。」
「…はて、何処かで見たような……」
「え、ひのたん実在すんの?」
「いや、似たモンスターを見た気がしてな。恐らくソレとは別物だ。」
『ソレが、さいきょーのモンスターです?』
『ちっちゃいね~。』
「モンスターってより、御守りみたいな感じかなぁw折角詩音が作ってくれたもんだしw」
「取れたりしないように、状態維持の付与しておきますね。」


おお、異界の分体が、創造主の腰袋にくくられたらしい。
コレで創造主の無事を伝えられるというもの。
今宵早速伝えるとしよう。

───────

「おはよー!ママ、なんか超変な夢見た!」
「おはよう、ミリーちゃん。変な夢って…もしかして、未來が大きい猫ちゃんと寝てる夢?」
「やっぱ、あのデカわんこ兄ちゃんだよね?!良かった、あの世で春が来たか~。相手がにゃんこって辺りが兄ちゃんっぽいわ。」
「詩音くんも居たわよね?」
「そうそう、あと可愛い羊と…床で寝てるイケメン!」
「あの人綺麗だったわね~…。」
「ん、誰の話だ?」
「パパおはよー。変な夢見た?」
「おはよう、美鈴みりぃ。見た見た。息子の恋人っぽい娘が猫という事態を、すんなり受け入れてしまった自分に、少し反省してるところだよ。」
「貴方、床のイケメン気付いた?」
「床?…未來と詩音くんしか見てなかったからなぁ。」

妹君を守る分体を通して、家人の様子を伺う。
我が伝えた創造主の姿について、盛り上がっているようだ。
善きかな善きかな。

「緋之丹や。」

おや、爺様。

「今日もつつがなく過ごせるよう、見守っておくれ。…未來にも宜しくのぉ。」

あいわかった。
今日も懸命に守るとしようか。
しおりを挟む
感想 497

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

ホームレスは転生したら7歳児!?気弱でコミュ障だった僕が、気づいたら異種族の王になっていました

たぬきち
ファンタジー
1部が12/6に完結して、2部に入ります。 「俺だけ不幸なこんな世界…認めない…認めないぞ!!」 どこにでもいる、さえないおじさん。特技なし。彼女いない。仕事ない。お金ない。外見も悪い。頭もよくない。とにかくなんにもない。そんな主人公、アレン・ロザークが死の間際に涙ながらに訴えたのが人生のやりなおしー。 彼は30年という短い生涯を閉じると、記憶を引き継いだままその意識は幼少期へ飛ばされた。 幼少期に戻ったアレンは前世の記憶と、飼い猫と喋れるオリジナルスキルを頼りに、不都合な未来、出来事を改変していく。 記憶にない事象、改変後に新たに発生したトラブルと戦いながら、2度目の人生での仲間らとアレンは新たな人生を歩んでいく。 新しい世界では『魔宝殿』と呼ばれるダンジョンがあり、前世の世界ではいなかった魔獣、魔族、亜人などが存在し、ただの日雇い店員だった前世とは違い、ダンジョンへ仲間たちと挑んでいきます。 この物語は、記憶を引き継ぎ幼少期にタイムリープした主人公アレンが、自分の人生を都合のいい方へ改変しながら、最低最悪な未来を避け、全く新しい人生を手に入れていきます。 主人公最強系の魔法やスキルはありません。あくまでも前世の記憶と経験を頼りにアレンにとって都合のいい人生を手に入れる物語です。 ※ ネタバレのため、2部が完結したらまた少し書きます。タイトルも2部の始まりに合わせて変えました。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活

仙道
ファンタジー
 ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。  彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。

転生したら、伯爵家の嫡子で勝ち組!だけど脳内に神様ぽいのが囁いて、色々依頼する。これって異世界ブラック企業?それとも社畜?誰か助けて

ゆうた
ファンタジー
森の国編 ヴェルトゥール王国戦記  大学2年生の誠一は、大学生活をまったりと過ごしていた。 それが何の因果か、異世界に突然、転生してしまった。  生まれも育ちも恵まれた環境の伯爵家の嫡男に転生したから、 まったりのんびりライフを楽しもうとしていた。  しかし、なぜか脳に直接、神様ぽいのから、四六時中、依頼がくる。 無視すると、身体中がキリキリと痛むし、うるさいしで、依頼をこなす。 これって異世界ブラック企業?神様の社畜的な感じ?  依頼をこなしてると、いつの間か英雄扱いで、 いろんな所から依頼がひっきりなし舞い込む。 誰かこの悪循環、何とかして! まったりどころか、ヘロヘロな毎日!誰か助けて

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...