ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

文字の大きさ
98 / 249
ビビりとモフモフ、冒険開始

一応被害は最小限

しおりを挟む
※時は少し遡りディアドルフ様視点

ガキンッ!!

「あ…」
「っ?!ば、ばかな!教皇様より賜った、聖刻の槍が……!」

…しまった……

『相手の心が折れるまで、ただひたすらにギリギリで避ける』という遊びに興じていたのだが……
巨大なベア種かと思っていた庭の彫像が、よく見るとドレスを着た女性だったことに気付き、思わず2度見したところで…当たってしまった。
それも、思いっきり胸部に当てられたようだ。
人なら致命傷間違いなし。
『人』ならな。
今回の場合、光属性を宿した魔鉱石製の槍は見事に砕け、私の被害は衣服が僅かに破れているのみだ。

だがしかし!
戦闘中に庭の見物をしていた事も含め、妻にバレたらとても不味い…!

何が問題かというと、『攻撃を受けた』という事実により、心配させてしまうこと事態もそうだが…

「バレたら……絶対、暫く離れようとしない…!」

こういうことがあると、妻は心配のあまり、私にベッタリくっついて離れない。
その行動は可愛らしいし、正直ずっと一緒に居られるのは嬉しいのだが…
離れないということは、つまり旅に同行するということだ…!
ミライ達に紹介するのは構わないし、寧ろ紹介するべきだと思うが…
…俗世の餓えた男共の目に、彼女の姿を晒すのは嫌だっ……!!←

「……教皇様に…何とご報告すれば……!」
「隊長しっかりしてください!何やら奴が青ざめている内に捕縛を!」
「だ、ダメだ!槍が砕けてしまった衝撃で、立つことすら…!」

ひ、ひとまず証拠の隠滅を…体は無傷故、服を直せばどうにかなるか?
裁縫は不得意な上、魔法で直すとバレるからな……。
ディアナ……は、確実に妻へ告げ口されるから、シオンに縫ってもらおうか。
それで、この者達は…人の口に戸は建てられぬからな。
忘れさせる・・・・・…それしかない。

「斯く成る上は我らで!かかれー!」
「グリフォン召喚成功!お待たせしました!」
『仕方の無い坊や達だこと!アタシの討つべき敵はどいつ?!』

召喚されたのはグリフォンか…わざわざ私の好物を出してくれたのは嬉しい。
ノエルへの良い土産になる。
召喚獣は、従魔と違って『野生』扱いだから、遺体ではなくドロップ品が落ちる。

だが、まずは神兵だ…奴等の記憶を塗り替えねば。
ひとまず、攻撃範囲を庭だけに指定しよう。

「《パーフェクト・バリア》。」
「皆、バルト隊長の分まで奮起せよ!」
『あらぁ、いい男!ゾクゾクしちゃう!アタシの想い、全身で受け止めてぇ~!』

……グリフォンよ、貴君は『オス』に見えるのだが、私の気のせいか?
まあいい。

突っ込んで来たグリフォンを避け、右手を軽く握り、下に向けて・・・・・振りかぶる。

「…面倒だから、死んでくれるなよ。」
「ひっ…全員退がれ!!『星砕き』が来るぞぉおおお!!」

ソコソコに力を込めて、地面を殴り付けた。
大地が揺れ、亀裂が走り、地殻の奥に眠る紅の水が噴き出す。
この水は鉱石が溶けたモノで、人には熱くて仕方ないらしい。

『星砕き』とは、馬鹿勇者との旅を書き記された伝記にて、勝手に付けられた技名である。
初めてパーティーの前でやった時、『この世の終焉が来たかと思った』と言っていた、エルフの王女が名付けたそうだ。
そこまで大層な名にしなくとも…ただ殴っているだけ・・・・・・・・・・なのだから。

「ぎゃぁあああ?!」
「お、おい退kぐぁああああ?!」

結界によって、全ての衝撃は『この屋敷の庭』に留まり、ソコだけを徹底的に破壊していく。
地が底まで抜けてしまわぬよう、溢れた紅の水を冷やし固めておこう。
あと、全員死なせないために、範囲回復魔法を適度にかけねば。

「《コールド・ウォーター》、《グランド・ヒール》。」

あ、忘れていた。
大量の紅の水に、いきなり冷水をかけると、爆発するのだったか。
私は兎も角、神兵達は護らねば。

「《パーフェクト・バリア》。」

ドゴォオオオオオンッ!!

…やれやれ、どうにか間に合った。
死人は出てないな?……よし。

ふむ、庭が完全に吹き飛んだな。結界を張っていて正解だった。
最早立っているのは私のみか…グリフォンだけは、舞い上がる土も砕けた彫像も避けきった様だが。

『あ、アンタ!可憐な乙女に、何してくれてんのよ!爆発のせいで、アタシの羽根がボサボサになったじゃないのよぉー!いい男でも容赦しないわよっ!』
「すまないな、お嬢さん。彼等の記憶を抹消したくて、少々派手にやってしまった。」
『え…ヤダ、お、お嬢さんだなんて…』

コレだけ衝撃的なことをしておけば、私を刺したら槍が砕けた程度、些細な記憶になるだろう。
記憶を消せればもっと良いのだが、流石にソコだけを抜き出すのは無理だ。
記憶喪失者をこんなに出したくはない。

……ん?おや、コウメが見ているな。
任務完了一番乗りか、後で誉めてやろう。
軽く手を振ると、微妙な表情で振り返してくれた。
優しい子だからな。
この惨状に、思うところがあるのやも知れん。

『んなっ…!このアタシを前にして、仔猫ちゃんに目移りだなんて!浮気者はお仕置きよっ!』
「…そういう意味での目移りなら、貴君にもしていない。悪いが、妻帯者だ。子供も9人程居る。」
『なぁんですってぇー!その気にさせるだけさせて、このスケコマシぃいいい!!』

再び突っ込んで来た。
はて、何処にその気にさせる要因が…
気を使って「お嬢さん」等と呼んだせいか?

「誤解させてすまない。」
『ギャッ?!』

鉤爪を避け、脚を掴んで地面へ叩きつける。
ほう、この程度では死なないか…

『いったぁ~いっ!あ、アンタ何者?!アタシに、こんなことできるなんて…!』
「ただの、(物理的に)貴君を捕食したい捕食者だ。今宵の酒の席に、付き合ってくれたまえ。」

旨い摘まみの材料として。

『御断りっ!アタシ、そんなに安い女じゃなくってよ!』
「ほう。ならば、最上級の一撃をくれてやろうか。」

周囲に誰も居ないことを確認し、右手のみを元に戻して・・・・・、ゆっくり振り上げる。
あまり速く動かすと、他の物に当たって、大惨事に成りそうなのでな。
慎重にやろう。

『そ、その腕…貴方はっ?!』

右手を振り下ろし、獲物に爪を立てた。
何の抵抗も無く、肉がスルリと切れていく。
頭が綺麗に落ちた所で、肉や翼,爪がドロップした。

「無駄にはせんよ。悪く思うな。」

右手を再び人のソレにしてから、ドロップ品をアイテムボックスへ入れる。
肉はミライにも少しやろう。
きっと、調理したがる。

「被害は…吹き飛んだ庭と、召喚されたグリフォン。騙されていた、憐れな神兵約30名は、死者無し。うむ、ノエルの要望に応えてやれたな。」

後は…ミライかシオンが、辺り一面更地にしなければ大丈夫だろう。

『マスター。ウィリアムさんと奥様の護送、完了致しました。』
『食品倉庫にて、御2人ともグッスリとお休みでございます。』

ゴーレム達も戻ってきたか。順調だな。

「ご苦労。無いとは思うが、不足の事態に備えて待機を…」

ドカーンッ!!

「……食品倉庫の方だな。」
『倉庫内の、生体反応増加を確認しました。』
『巨大生物が、地下より這い出て来た様です。』
「眠らせた2人を運んだのも、食品倉庫だったな?」
『『申し訳ございません。』』
「気にするな、そちらは私が行こう。君達はコウメとヒナタの避難を。」
『『承知致しました。』』

やれやれ、一体何が起きたのやら。
また、面白く成ってきた!
しおりを挟む
感想 497

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【完結】発明家アレンの異世界工房 ~元・商品開発部員の知識で村おこし始めました~

シマセイ
ファンタジー
過労死した元商品開発部員の田中浩介は、女神の計らいで異世界の少年アレンに転生。 前世の知識と物作りの才能を活かし、村の道具を次々と改良。 その発明は村の生活を豊かにし、アレンは周囲の信頼と期待を集め始める。

俺、何しに異世界に来たんだっけ?

右足の指
ファンタジー
「目的?チートスキル?…なんだっけ。」 主人公は、転生の儀に見事に失敗し、爆散した。 気づいた時には見知らぬ部屋、見知らぬ空間。その中で佇む、美しい自称女神の女の子…。 「あなたに、お願いがあります。どうか…」 そして体は宙に浮き、見知らぬ方陣へと消え去っていく…かに思えたその瞬間、空間内をとてつもない警報音が鳴り響く。周りにいた羽の生えた天使さんが騒ぎたて、なんだかポカーンとしている自称女神、その中で突然と身体がグチャグチャになりながらゆっくり方陣に吸い込まれていく主人公…そして女神は確信し、呟いた。 「やべ…失敗した。」 女神から託された壮大な目的、授けられたチートスキルの数々…その全てを忘れた主人公の壮大な冒険(?)が今始まる…!

企業再生のプロ、倒産寸前の貧乏伯爵に転生する 

namisan
ファンタジー
数々の倒産寸前の企業を立て直してきた敏腕コンサルタントの男は、過労の末に命を落とし、異世界で目を覚ます。  転生先は、帝国北部の辺境にあるアインハルト伯爵家の若き当主、アレク。  しかし、そこは「帝国の重荷」と蔑まれる、借金まみれで領民が飢える極貧領地だった。  凍える屋敷、迫りくる借金取り、絶望する家臣たち。  詰みかけた状況の中で、アレクは独自のユニーク魔法【構造解析(アナライズ)】に目覚める。  それは、物体の構造のみならず、組織の欠陥や魔法術式の不備さえも見抜き、再構築(クラフト)するチート能力だった。  「問題ない。この程度の赤字、前世の案件に比べれば可愛いものだ」  前世の経営知識と規格外の魔法で、アレクは領地の大改革に乗り出す。  痩せた土地を改良し、特産品を生み出し、隣国の経済さえも掌握していくアレク。  そんな彼の手腕に惹かれ、集まってくるのは一癖も二癖もある高貴な美女たち。 これは、底辺から這い上がった若き伯爵が、最強の布陣で自領を帝国一の都市へと発展させ、栄華を極める物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

処理中です...