ビビりとモフモフの異世界道中

とある村人

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ビビりとモフモフ、冒険開始

全ては彼の我儘故に

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※ディアドルフ様視点

「くっ…我が神よ……ゴボッ…今暫くお待ちを…ゴプッ……貴方様を封じた悪魔を、この手で葬って御覧に入れます…!」
「待たんで良い。」

邪神の中途半端な加護呪いにより、半アンデッド化した大神官が、悪魔だ何だと言いながら襲って来る。
身体の大半が溶けて流動し、色合いが肉のような、ゼリー状の憎きアレに見えてきた。
辛うじて残っているのは、頭の形に右目と口、それから右腕くらいのものだ。
…燃やしたい…物凄く燃やしたい……

「ちょっと動くな貴様。だんだん、可能な限り視界に入れたくない、プヨプヨしたアレに見えてきた。」
「ク、クク…ゴボッ……敵に動くなと言われて…動かない者など居ませんよ…!」
「っと。」

ああもう、大人しくしてくれたまえよ。
まだ、器を死なせる訳には、行かぬのだから。

何故持っているのか、大神官は帝国の初代皇帝に授けた『獣王の槍』を装備している。
流石にこの槍で刺されれば、無傷では居られんが……如何せん素人の槍裁き。
目を閉じるどころか、寝ていても避けられる自信がある。
やれやれ…さっさと出て来てくれぬものか。

[かれこれ30分は付き合ってやったが……邪神が一向に出て来んぞ。どうなっておるのだ、ビルム。]
[仕方無いですよ。陣描いて儀式したのが、才能溢れる姪っ子じゃなくなったんで。あと7分12秒479待ってください。]
[ボクの娘がやっていれば、とっくに出て来てるのだけどねぇ。嫌われてでも、させなかったけれど。]
[この哀れな怪物と踊るのも飽いた。…そうだ、乱入して来いビルム。敵として。]
[何言い出すんですか!嫌ですよ、アンタにぶん殴られる役なんて!]
[《フルストップ》で回避したまえよ。]
[時止めて避けた先へ、0.00098秒後には現れる奴相手に、どうしろと?!]

そうは言っても、君なら結構な時間、耐えるだろう。
次女と結婚の挨拶をされた時の大乱闘が、未だに『本気での戦闘最長記録』なのだが。

[あーもう…解りました。その祭壇の時だけ、すっ飛ばしますんで。]
[うむ、何時でも良いぞ。]
[因みに、ガルヴァくんまだ居ますけど、良いんですね?]
[あの子なら平気だ。構わんよ。]
[んじゃ…合図に一回、相手の動き止めてください。]

動きを止める、か。ふむ。

「フフ…獣王の武器は、ゴブッ…如何なる者にも…防ぐ術無し…!ゴボボッ…最強と呼ばれる貴方も…ゴボッ…この神槍は、避けるしかない御様子で…!」
「そうでも無い。」

『如何なる者にも』とは…人間らしい矛盾した誤解だ。
獣王の武器だけで、剣に槍,爪,弓,鎌が在るのだぞ?
その武器同士をぶつければ、相殺できるだろう。

そもそも、ソレらが何から出来ていると思って居るのか。

「良いことを教えてやろう。」

右腕を元に戻し、頭を狙ってきた槍の穂先を、『爪』で押さえる。
大神官は目を見開き、『止まった』。

「獣王の武器の素材は、私の爪・・・だ。」

時が飛び始める…最期に、声は届いただろうか?
消し飛んでいく時の中で、槍をアイテムボックスへ入れた。
コレなら使っても壊れないが、正直拳が一番楽だ。
そして、時が正常に動く時点に合わせて、右腕を大きく振るう。

「神罰の時は来たり…汝の罪、我が拳にて裁いてくれよう!!」
「っ?!ごはぁっ?!」

時が戻ったその瞬間、大神官…の身体に入った、邪神の顔を殴った。
背から蝙蝠の翼が生え、尾が蛇の黒い狼の姿だ。

吹き飛んだ邪神は、既に壊れかけた祭壇の壁に激突し、気絶はしていないが鼻と口から血を流す。
すまんな、顔面を狙ったのは態とだ。
その方が、気が晴れそうだったもので、つい。

「久しいな、邪神。喜ぶが良い、私に『3度』裁かれる者は貴君が初めてだ。魔法使いメイフィス・フェルティを、貴君と数えて良いのならば、だが。」
『ぐっ…神の欠片め……何を、した……!』
「貴君の登場が、あまりに遅いのでね。友人に出番を早めてもらった。それだけだ。」

ふむ…流石に1撃消滅は無い、か。
結構。久方振りに本気を出すのだ。
愉しい時間は長い方が良い。

以前のHPは、ちょうど百万であったな。
八つ当たりを兼ねて長めに殴るため、かなり加減したら、1発1万程度のダメージになったはず。
最後は殺し切らぬため、本当に微調整だったが。

今のHPは…総量が3百30万か。
贄となったリビングデッドの総数が23体、つまり1体につき10万のHPを得たと。
回復しない99万9千9百99を引いて、現在の実質の総量は2百30万と1。
今、軽く1度殴って、残りは2百15万程…
1撃15万は、強すぎただろうか。

『ぅっ……貴様、やはりあの時…わざと加減していたな…?!我を簡単には、殺さぬためか…!!』
「うむ。あっさり死なれては、八つ当たりに成らぬのでな。」
『…人間が何故、貴様を受け入れるのか、全く解らぬ。貴様と恩人の何が違う。』
「ふむ…人智の及ばぬ力を持っている、という点では、然程違いは無いのだろう。強いて言うならば、力を振るう方向くらいのものか。」

人に受け入れられぬ辛さは、多少解るがね。

不治の病に掛かった恋人を救うための研究で、生きる者を不死者アンデッドに変える術を見付けてしまった事には、同情しよう。
恐れられ迫害された事を理由に、誰彼構わずリビングデッドにしたのは、どうかと思うが。

まあ、人の身では、早急に捌け口が必要だったのやも知れぬな。
私の場合は、寝床に引き籠っただけで済んだ。
ザッと千年程。

「…貴君も現在のように長命であれば、時の流れが解決しt」
『《ソウル・クラッシュ》!!』
「《シャイニングヘルファイア》!!」

禍々しい闇属性と、浄化の力を纏わせた炎が激突し、互いに押し合う。
3千6百年ぶりの会話は終わりかね?
怨み言の10や百程度、あるだろうに。
突然、魂を砕く禁術を使ってくるとは…
ああ、ソレが怨み言の代わりか。納得した。

『貴様だけだ、貴様だけ殺せばいい。それで世界は終わる…!』
「精々、私を愉しませてくれたまえよ。貴君と殺り合う為に設えた戦場だ。この労力に見合う戦いを期待している。」

ガルヴァも目的のモノを捕らえて、亜空間へ避難したようだ。
誰も居ない、基本世界から隔離された広い空間。
私が暴れても、支障の無い環境が整った。

浄化の炎を上に打ち上げると、邪神は此方の思惑を察して、魔法を止めた。

『《ギガンティス》!!』

身体制御ともまた違う…巨大化の魔法か。
以前は習得していなかった筈。
私から隠れ仰せている間、無為に時を過ごした訳では無い、ということか。

面白い。

此方は逆に、変身を解いた。
完全に戻るのは、何時以来であったか。
崩れる建物も、ひび割れる地面も気にしなくて良い。
ああ、ただ残念な事が1つ。
邪神も巨大化してしまっては、走り回れる程の広さが無い。

『お互い、少々窮屈だな?』
『貴様が死ねば、気にする事も無くなる。』
『フフッw全く貴君は面白い事を言う。』

私を殺すだの、世界を滅ぼすだのと……!

『ガルルルルッ!!』
『ぐっ?!…っ、貴様…!』
『貴君如きが私に刃向かおうなど、烏滸がましい!その傲慢こそが、汝の罪と識れ!!』
『貴様が言うか…魔狼王・・・!誰より傲慢で我儘な、裁定者めが…!』

さあ、私と貴君。
どちらの『我儘』が罷り通るか、最期の審議と参ろうか。
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