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ビビりとモフモフ、冒険開始

神様流のOMOTENASHI

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時雨に乗って移動しながら、レナさんとも打ち合わせする。
今回、弓を使えるレナさんが、とっても重要なんだよね。

「理解はしたけど…上手くできるかしら…」
「お前ならやれる。風のコントロールは、俺より上手い。」
「そ、そう?」
「レヴァンさんとレオンさんには、おとーさんから通達行ってるってさ。街の護りと他の冒険者さん達は任せて、討伐に集中しよう。」
「いざとなれば、ディアドルフさんも動いてくださります。失敗を恐れず、頑張りましょう!」
「そうね…きっと大丈夫。この街には、元も合わせてSランクが3人も居るもの!失敗したって、どうにかなるわね!」

うんうん、それくらいの気楽さで行こーぜ!
門に到着すると、レヴァンさんが、周囲の冒険者さん達に、指示を出していた。

「うぅ~…!こんな範囲に、土壁なんて作れませんっ!」
「新人の俺達だけで、街の防衛なんて無理ですよぉ!」
「口より手を動かす!新人だから等という、言い訳は聞きません!1人で無理なら、他の者と協力しなさい!」
「れ、レヴァンさん!俺、魔法からっきしで…!どうすればいいっすか?!」
「その剣は飾りですか?魔力が無いなら、まだ壁ができていない場所の防衛に出る!」
「は、はい!行って来ます!」
「レヴァンさん、10体ほど此方に来ました!」
「正面の7体は引き受けます!残り3体はどうにかなさい!《シャドウ・バレット》!!」

指示を出しながら、寄ってきたゴブリンを仕留めるレヴァンさん、カッコいい!
その杖とローブも、いい感じにおどろおどろしくて、魔王城の大魔導師みたいだね!
めっちゃ似合ってるよ!

どうやら、ミニクロプスに前線の人手を割かれたせいで、ゴブリンが此方まで来始めてるみたいだ。
たかがゴブリン雑魚敵、されどゴブリンモンスター
武器を持たない街の人達には、ゴブリン1体でも脅威になる。
絶対に門を通しちゃいけない。
皆、頑張って!此処は任せた!

「レヴァンさん!ミニクロプスどの辺?!」
「御待ちしてました!例の新種は、南東の森から50メートル程手前まで出ています!レオンが直接指揮していますが、攻撃が通らないため、前線を維持するので手一杯のようです!」
「了解!やるぞ小梅、若葉!」
『行くですよ!』
『はいはーい!』

2体を腕と頭に乗せて、時雨から門の外へ飛び降りる。

作戦はこうだ。
頭の上の小梅が、砂で巨大な何かの動く像を造り、俺はその影に隠れて突っ込む。

「《エンチャント・フラッシュ》!」
「頼むぞ、ミライ!」
「オッケ!」

詩音が俺の体を光らせて、砂から出たとき、真っ先に目に入るようにする。
某髭のお兄さんがお星様取った時みたいだけど、残念ながら、無敵状態ではないんだよね、コレ。

相手に大量の砂を浴びせて埋めたら、出てきた所を俺がぶん殴って注意を引き、小梅と、ユニークスキルで隠れた若葉と一緒に足止め。
その隙にラルフ達は、時雨に乗って、空の視角から接近する手筈だ。

途中、レーザー光が砂を突き抜けて、街の方へいったけど、心配は要らない。
外壁の周りには、レヴァンさんの魔力が漂っている。
大量のゴブリン相手に範囲魔法を使わず、初級の魔弾系で仕留めていたのは、街自体の防衛に魔力を回しているからだ。
ミニクロプスのレーザーは、壁に届くこと無く、闇の塊に阻まれて消えた。

『総長さん!あと10メートルで、ミニクロプスとぶつかるです!』
「了解!」
「来たか…!お前らは予定通り、ゴブリンの殲滅に当たれ!」
「「「はいっ!!」」」
「てめぇの相手は此方だ!!」
『ギャォオオオオオッ!!』

レオンさんの指示が聞こえる。
俺が到達するまで、他の冒険者さんにタゲが向かないよう、相手してくれるらしい。

「ミライ、聞こえるな?!そのまま突っ込んで来い!」
「イエッサァーッ!!」
『激突まで3…2…1…今です!』
「《バリア・ウォール》!1回埋まっとけぇ!!」

防御壁で砂の形を裏から整えて、上から被せるように叩きつける!

ドスゥンッ!!

「けほっけほっ、砂埃やべっ…!」
『大丈夫です?』
「ディアドルフから、詳細は聞いた!後任せていいか?!」
「オッケー!」
「よし、俺は手薄な場所へ助太刀に行くからな!」

うん、今の内に離脱して!
砂山に突き刺さった、マジでゲームに出てきそうな両刃の大剣を引き抜いて、レオンさんは街道の方へ駆けていく。
アレ背負って、よく走れるな…流石ギルマス。

『グギャゥウウッ!』
「おう、デカブツ!今度は、俺が相手してやるよ!」
『負けないです!』

大きさは、頭だけで5~6メートルくらい、かな?
本来どんだけデカいんだか。
よーし…やったりますか!

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※壁の上から様子を見ているディア様視点

ふむ…全体的に見て、まだ手助けは必要無さそうだ。

「あ…ディアドルフ様、ご令嬢の1人が門に近付いてます。御止めして来ますね。」
「ああ、頼む。」

マリアンナ嬢か…彼女もミライ達の世界から、引き取った子だったな。
恐らく手伝いに来たのだろうが、ここは止めた方が無難だろう。

「お~♪やってるやってるぅ♪」
「よくもまあ、私の隣に来れたな、元凶ロラン。」
「いやぁ、それほどでも。」
「褒めてはいない。…念のため聞くが、アレは何だ。」
「君の考察通りだよ~。胴体取っ払って、手足を顔にくっつけたサイクロプス。隣座っていい?座るね~。」
「聞きながら座るな。…あの見た目は…もう少し、どうにか成らなかったのかね?」
「ぶっちゃけ俺も、とんだクリーチャー産み出しちゃったなぁ、と思ってる。」

そう思った時点で、直してやりたまえよ……

「…サプライズという悪戯此度の事件を引き起こした、その真意は?」
「本当はもっと違う形だったんだよ。あの子達への修練場おもてなしとして、何個か高難度ダンジョン作ったんだよね。…ハイに成り過ぎて、作り過ぎちゃったけど。」
「…その内、最も近いダンジョンへ招く前に、私が閉じてしまった、と。」
「うん☆」

『うん☆』ではない。

「あんなダンジョンに、子供を入れようとするな。」
「いやぁ、『こういうモンスターも居るから、気をつけてね!』っていうアドバイス変わりになればな~とね?第一階層なら、どのモンスターも、単独出現するようにしてたんだよ。初期ステータスでも、逃げれるように。」
「逃げる際に奥の方へ行かれたら、どうするつもりだった。」
「ミライくんなら、比較的冷静に『レベリング不足』って判断して、シオンちゃん連れて外へ撤退してくれるでしょ。本当にヤバくなったら、君が助けに行ってただろうしね。」
「それはそうだが…。そういった理由なら、何故今更アレを外に出した?」
「まあ、俺なりの歓迎だよ歓迎w神様の試練的な?」

全く、こやつは……

「……そうだ、あのウサギは前世で何をやらかして、此処に来た?」
「あー、あの子ヤッバイよ~w根っからの悪女w前世17歳で亡くなってるんだけどさぁ、男取っ替え引っ替え27人も手玉に取ってんのwしかも、全員ただの財布的な扱いで、貢がなくなった瞬間ポイよ?」
「……考えられんな。」
「君には、特に理解不能だろうねぇ。」
「理解したくもない。」

やはり、ロランが面白がって引っ張ってきた中でも、『仕置き』が必要な部類であったか。

「最期はヤンデレ化した男に、包丁でサクッと殺られたみたいだね。刃物怖がってたでしょ?」
「確かに……ミィルに転生の許可は?」
「勿論取ったさ。魂自体に『悪女』としての行動や思考が、こびり着いちゃってんだもん。『完全に足洗えるくらい、キッツいお灸据えたってや』って、寧ろ頼まれましたぁ~♪」

……という事は…

「魅了のスキルを与えたのも、仕置きの内か。」
「そりゃだって、あの子いきなり説教されたって、聞かないでしょ~w最っ高に調子乗ってる所へ、ドーンッ!!と現実叩き付けた方が、効果的じゃん♪」
「解らんでもないな。」
「そっちの方が、俺も愉しいしw」
「そちらの理由が、主軸ではあるまいな…?」
「さ~て、どうかな~♪」

やれやれ…怒る気も失せるな。

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2018,12,20 9:49 一部修正しました。
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