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ビビりとモフモフ、冒険開始

奴はいつか殴る

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水洗いは…水洗いだけは…!

『洗濯機は流石に可哀想だ』と言ってくれる、おとーさんにしがみつく。
そこで、おとーさんの身長(約2メートル)と変わらないデカさに成ってた事に気付き、冒険者さん達が近付いて来る前に、大型犬サイズに成った。
誤魔化せたかな…?

「洗わないと、ベタベタ取れないわよ。」
「攻撃魔法じゃなければ、大丈夫なんだろう?」
「未來くん、アレだけ自力で回れたんですから、きっと大丈夫です!」
『いや、皆アレよく見て?!洗濯機だよ洗濯機!』
「少量であれば、簡単に蒸発させられるのだが……」
「ここまでベッタリでは、難しいですよ。ほら、怖くありませんから。」
『やだぁーっ!!』

そうして、拒否柴のごとく抵抗すること数分。

『ごぼぼぼぼぼ』
「後でちゃんと、乾かしてあげますからね。」
「…せめて顔だけは、出してやらないか…?」
「頭から被っちゃってますから、ちゃんと洗ってあげないとダメです。」

抵抗虚しく、丸洗いなう。
いやうん、おとーさんが提案した『タオルでスライム液拭き取ってから、炎で残りを蒸発』は、タオルそんなに無かったんで、無理だってのは解るんだけど。

火属性云々以前に、息子を水製洗濯機に入れるのは酷くない!?
そりゃ頑丈だし、多少荒めに洗っても大丈夫だけどさ!
できれば、優しくシャンプーにして欲しかった!

「なあ…アレって、虐待か…?」
「止めるべきかしら…」
「いやでも、スライムの粘液って、結構強く洗わないと落ちないからな…」

ほら、冒険者さん達にも、虐待疑われてるよ!
ダメージには成ってないけど、鎮火しちゃったのか寒いし、息苦しいし、水流でグルグルして酔いそう。
うへぇ。

『ぷはっ』
「そろそろ、良いでしょうか。」
『す、スライムより……この洗浄方法がトラウマに成る……』
「未來くん、大丈夫ですか?」
『だいじょばないかも…へぷちっ…!』
「…お前、くしゃみ可愛いな。」
『あぅ。』

うー、寒い。
コレまでで、1番寒い気がする。
水に浸かってる時間が、長かったからかな?

「おいで。馬車の中で暖まると良い。」
『はーい。』

流石に、事情知らない人の前で、俺を炎に放り込むのはアウトだもんね。
庭の砂漠地帯で、じっくり暖めてもらおう。

馬車へ入る前に皆から少し離れ、ブルブルッとして水を飛ばす。

『あ、そうだ。おかーさん、コレ軽く火で炙って、このクッキーで挟んで、被害に遭った人達に配ってあげてほしいんだ。ある意味、俺らのせいで巻き込まれてるし。』
「ギルモブですか?…コレは、ミライ達のお金で買ったモノでしょう。」
『どのみち、今日のおやつ予定だったから。』
「解りました。ミライの分も、ちゃんと確保しておきますね。」

お願いね~。

───────
──────
─────

そんなわけで、庭の砂漠地帯にて。

おとーさんが出してくれた、青い炎へダイブ!!
全身隈無く当たるよう、炎の中でコロコロ転がる。

パッと見は拷問だけど、俺的には、炬燵でゴロゴロしてるのと、同じような感じだ。
ぬくぬく快適である。
因みにこの炎、普通の人間が触れたら、一瞬でウェルダンらしい。

「もう少し、優しく洗ってやりたかったが…済まないな。」
『まあ、早くベタベタ取れるように、あの方法選んだんだと思うし。いやー、まさか破裂するとは。』
「あまり知られていないが、奴等の打撃耐性にも限度がある。強過ぎる圧がかかれば、破裂して『核』をドロップするのだよ。」
『スライムの核?…薬の材料?』
「いや、割ると出てくる液体が、衝撃吸収材に加工できるらしい……ビルムに渡せば、喜ぶぞ。」

そう言って、バスケットボールくらいの、黒い玉を渡してきた。
巨人スライムの核かな?

『おとーさん、コレ奴等の一部だけど、大丈夫なの?』
「プルプルした半透明の生物でなければ、問題無い。」

成る程。とりあえず、貰っとくね。

そろそろ、暖まったかな。
軽くグルーミングもして、と。
よしよし、いつものフカフカな毛並みに戻った。

「もう良さそうか?」
『うん。あ、残りの炎モグモグしていい?』
「構わんぞ。」

やった!青い炎は、赤い炎よりちょっと美味しいんである。
うまうま。

ポカポカして、バトル前より体調良くなった気がする。
さて、皆の所へ戻ろう。

───────

てなわけで、外に戻って来た。

「ありがとうな、狼くん!俺達だけだったら、今日中には片付かなかったよ。」
「本当に、助かったわ。まさかスライムが、あんなに降ってくる・・・・・なんて…」
[え、降ってきたの?]
「ああ。俺達の目の前に、突然。明らかに人為的だから、盗賊の罠かとも思ったんだがな。」
「それにしては、私達が馬車を離れても、誰かが襲ってくる事もなくて。」
「悪戯にしては大掛かりだし、何が目的なのかさっぱりなんです。」

犯人の目的は、家のおとーさんをからかう事だよ……。

「ただでさえ助けて貰ったのに、オヤツまで貰っちゃって…」
[…迷惑料とでも思ってよ。犯人俺らの知り合いだから……]
「なんだって?!」
「こんな事をするなんて、どんな人なんですか?」
[基本ふざけてて、人をおちょくる事に全力で、愛人めっちゃ居るらしいけど、本命とは見詰め合うと素直にお喋りできない、残念なイケメン。]
「ちょw否定はしないけどさwww」

出やがった…!

「いやぁ、君達マジ最高だわw笑った笑ったwww親子2代で同じ失敗するとかw何してんのwww」

イラッ

『ダガミシスベシフォーウッ!!』
「うぉっとぉっ!?」

チッ、かわされたか。
どの面下げて来とんじゃ元凶!

「あはは、元気だなぁw」
『がるるる』
「ま、まさかコイツが…?」
「衛兵に突き出すか。」
「神妙になさい!」
「おっと、捕まる気は無いんだなぁコレがw」

いやもう、1回ブタ箱経験しとけ。

「何の用だ、ロラン。」
「ヤッホー♪君達をからかいに来たよ~♪」
「よし、歯を食い縛れ。」
「イ・ヤ・で~す☆」
「逃げたぞ!」
「追え!」

追いかけっこを始めた、神様2名と冒険者さんは、放っとくとして。
皆、大丈夫?

『とりあえず、シオンちゃんには近付けない!』
『お姉ちゃんは、死守するよ~♪』
『おしおき、する!』
『よーし、若葉と時雨は、そのまま詩音を頼む。陽向は無理しないでな。』

さて、俺は……

『《ヴァリアント》!!』

ぽふっ

「小梅。」
『むぅ。』

小梅の正面に行き、スッと正座。
両手の指で山型を作り、そっと地面へ着く。

「いきなりぶん投げて、すみませんでしたぁっ!!」

そして、ちゃんと目を見て謝ってから、頭を下げる。
コレぞ、正しい土下座の姿勢だ。

『ツーンなのです。』プイッ

くっ…可愛い…!声だけでも可愛い…!
兄ちゃん達の言ってた、夫婦生活の注意事項にあったな……
怒ってる嫁に『怒ってても可愛い』と思ってる事を悟られると、更に怒らせてしまうかもだから、顔に出すべからず。

「ごめんっ!巻き込みたくなくて!」
『優しく降ろすことも、できた筈です。』
「ごもっとも!」
『まあ、過ぎたことは良いのです。頭を上げるです。』
「はいっ!」

ちょっとツーンとしながら、寄って来てくれた。
ここで、むぎゅっとしちゃうと、謝る気が無いと見なされるかもだから、我慢我慢。

「ん?ちょ、小梅?背中ズボーはダメだって!ベストとシャツの間じゃ、俺が立ったら落ちちゃうよ?!」
『ここから出て欲しかったら、沢山ぎゅ~して、いっぱいナデナデするのです。』
「する!します!寧ろさせて!!」

俺にとってもご褒美だけど、良いの?
それじゃあ、早速…

モフモフ ナデナデ モフモフ ナデナデ ぎゅ~

「ふぅ……可愛い…」
『ふにゃ~♪』
「ミライ、炙ったギルモブ、取っておきましたよ。」
「ありがと!」
「あと食べてないの、未來くんだけですよ。とろーり蕩けて、美味しかったです♪」
「ヒナタとワカバの口を拭くのが、なかなか大変だったけどな。」
「ワカバくんは、自分で頑張ろうとしてくれてたんだけどねw流石に、難しかったみたいよ。」

それはしゃーないねw
つか逆に、小梅と時雨は、ベタベタに成らなかったのか。凄くね?

「あだだだだだギブギブギブッ!!」
「この度は、馬鹿が大変申し訳ありませんでした。コイツ、捕まえても即脱獄するのが目に見えてるんで、俺が預ります。」
「よ、よろしくお願いします。」
「…この人、どっから出てきた…?」
「さ、さぁ……」
「すまんな、ビルム。」
「いえ。」

あ、駄神捕まった。
ビルムさんが、時止めて取っ捕まえたのか。
きっとおとーさんじゃ、周辺に被害出さず捕まえるの、無理だったんだね。

「マジで痛いって…!ビルムくん、なんか何時になく、積極的に攻撃してない!?」
「軽く頭抑えてるだけ、ですけどねぇ。」
「コレが軽くなら、左腕のメンテするべきだよ!!わかったわかった、ごめんなさいってば!」
「はい、よく謝れました。んじゃ、姉さんと母さんがお待ちかねなんで、行きますよ。すみません、失礼します。」
「え」

わぁ、駄神が青ざめる所、初めて見た。
がんぱれー。死ぬなよー。

ピコン♪

ん?

[生きてる内に渡しとく。今回のお詫びに、ミライくんが見逃した、コウメちゃんの『焼きギルモブモグモグタイム(動画)』をどーぞ。]

おお。可愛いなぁ…できれば生で見たかった。

[てなわけで、シオンちゃんがやらかした、決定的瞬間の写真は保存させてもらう!]
[何に使うのさ]
[観賞用]
[観賞用…?!]
[ほら、今にも泣きそうなこの表情。素晴らしく苛めたい。]
[待て変態野郎]

決めた。
俺もっと強くなって、詩音のために、あの神1発ぶん殴る。

…あ。ビルムさんに、核渡せば良かった。
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