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サースティールート
ギアン家の昼の日
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今日から三連休!
と言うわけで、朝からサースのところに行くことが出来るのです。やったね。
そうは言っても、サースの大好きな梅おにぎりを用意してから行きたかったので……両親が仕事に行ってから、ご飯を炊いておにぎりを握った。
昼間から行けるなら、もしかしたら他の人も合流出来るかもしれないし、と少し多めに作ることにした。
サースは意外とよく食べるから、残ることはないと思う。
実は私はハムマヨおにぎりが好きなので、こっそり交ぜて置いた。これも、なんだかんだ言って男の子たちは食べてくれそうな気がする。
用意が出来たところでサースに伝言を送る。
『おはようサース』
『おはよう、砂里』
『もう行ってもいい?』
『支度中だが、構わなければいつ来てもいい』
『え?大丈夫?』
『ああ』
いいのかな?と思いつつも、お許しが出ているので、早く会いたい気持ちの私はウキウキとランチバッグを持って魔法で異世界に飛んだ。
ばふん……と。
音と共に、世界で一番大好きな人の良い匂いに包まれる。
……だけど、なんだかいつもと違った。
まず、匂いがいつもより凄い。濃厚だ。
ぶつかった音もちょっと違った気がする。
掌にあたる感触も違う。
いつも感じている、布の感触を感じないのだ。
ふにふにと、柔らかい弾力を指の先に感じる……。
温かくて、柔らかくて、吸い付くような、まるで人肌のような弾力……。
ジワリと肌に馴染むような湿り気もある。
いつも以上の、むせ返るようなサースの匂いにクラクラしながら、そろっと顔を上げる。
彫刻のように美しいお顔がそこにあり、濡れた艶やかな黒髪が象牙のような白い肌を彩るように流れ落ちていた。
長い髪と肌には水滴が煌めいている。まるでキラキラと音がするように。
「砂里……すまない、湯を浴びて来たばかりだ。少し待っていてくれるか?」
「……」
いつもより頬を上気させたサースは、上半身裸の状態で、私を抱きしめ微笑んでいた。
「ひっ……ひいぃ~~~!!?」
愛する人の腕の中で発するには相応しくない悲鳴を上げてサースから飛びのくと、そのまま勢いよく壁まで後ずさった。
サースが目を丸くした。
水滴を垂らした、輝く濡れた宝石のようなサースは、呆然とした様子で私を見つめている。
少し見つめ合った後に、サースが言った。
「……すまない」
「……ううん」
そのまま暫く沈黙だけが私たちの間に訪れた。
気まずそうな顔をしたサースがそっと髪を拭き出し、上着を着終わるまで、私は壁に張り付くように立って微動だにしなかった。
(こういうのなんて言うんだっけ……)
気を逸らすように考え事に集中した。
漫画の中で男の子が好きな女の子と、時々アクシデントを起こすのだ。
(確か、確か……)
家に帰って来て、シャワーを浴びようとして風呂場の扉を開けると、そこには好きな女の子が居て……みたいなシチュエーション……あれは、確か……。
(ラッキー……スケベ……)
ああ、そうだ、そう言うんだ。思い出せてすっきりした!
すっきり。すっきり……?
私はそろりと視線を上げて、サースの後ろ姿を見つめる。
痩せているのに逞しい体躯は服の上からでも見てとることができる。
私は今、あの白いシャツの下の、艶めかしい肌に直接手を触れた……んだよね!?
(ひぇぇぇぇぇ…………!!)
サース相手にラッキースケベとか、前世でどれだけの徳を積んだら成しえるの!?
私の今世の運は全て使い果たしたの……?
もしかして、夢?すべては夢落ち?
私……もう死んでた?
幸福にぷるぷると体を震わせていると、サースが声を掛ける。
「砂里、すまない……大丈夫か?」
「神様に感謝していました」
「なんの話だ……」
気遣うように私に手を伸ばして来たサースが、ためらいながら抱きしめるのを止めたのを見て、さっきのことを気にしていることが分かった。
「ごめんね。驚いて叫んじゃって……」
「いや……」
「びっくりしただけで、どちらかというと、すごく嬉しくて、望ましい感じなんだけど……」
「……」
「いきなりは心臓止まっちゃうけど、そうじゃなかったら、また是非お願いしたい感じで……」
「……ふ」
サースが片手で口を押えて、視線を伏せて笑い出した。
肩を揺すって笑うから、濡れた髪からいつも以上の良い匂いが漂ってくる。
「……何を言うのかと思ったら……」
顔を上げたサースは、とても美しい微笑で言った。
「驚いたんだろう……そんなに気を遣わなくても大丈夫だ」
気を遣っている訳じゃないんだけど……。
そう思いながらも、それを口に出すのは恥ずかしくて、私は顔を赤くしながら俯いてしまう。
「おにぎり、持って来たよ」
「ありがとう……砂里」
サースは片手でランチバッグを受け取ると、もう片方の手で私の頭をポンポンと叩いた。
その手の温かさも、私を見つめる少し面白そうにする表情も、全部が私の心を満たすようだった。
「今日は、俺の家に……行きたいんだ」
「サースの家……」
それはギアン家の館のことだろうか。
ゲームの中で見たことがある。古めかしい、歴史を感じる大きなお屋敷。
「皆にも付いて来てもらえる。心配はいらない」
「皆……?」
「ああ。ユズル、ライ、ロデリック、ラザレスだ」
それは今ではサースの味方になってくれている人たちだった。
「父母に話を聞いておきたい。今日在宅していることは確認済だ。ただ、関係が良好では無かったから、俺は父母とまともに会話をしたことがほとんどないんだが……」
表情を曇らせて話すサースの横顔を見て、私は思い出して行く。
サースは、幼少期に魔力を暴走させ、屋敷やそこにいた人々を傷つけたのだと言っていた。
そのせいで疎まれ、悪魔と呼ばれて育ったのだと。
家族やギアン家の屋敷に、良い思い出があるとは到底思えなかった。
だって、『悪魔』だ。
こんなに優しい人がそう言われることを受け入れて生きてきたなんて、私にはまるでありえないような話に思える。
思わずサースに抱き着いてしまう。ぎゅう。
サースが不思議そうな顔をして私を見下ろした。
「一緒に居るよ……」
「……」
「ご両親とお話するときも、これからも、ずっと一緒に居るよ……」
彼の胸を強く抱きしめる私の頬には、サースのまだ濡れている髪があたっている。
さっきはこの服の下の艶めかしい肌に……直接抱き付いて……。
(……あれ?)
思い出したらいけない気がした。ちょっと思い出しただけなのにもう体がぞくぞくする。
「砂里……」
優しい腕が私を抱き締める。
「俺の聖女……」
サースはそう言うと、私の額にそっと唇を触れさせた。
それだけで私は、びくりと、体に電流が走るような衝撃を感じる。
顔を上げると、漆黒の瞳がまっすぐに私を見つめていた。
吸い込まれそうな煌めきに、心臓がドキドキして、このままじゃ意識を失うんじゃないかって思う。
サースは形の良い指で私の前髪をゆっくりと撫でるようにかき分けていた。
暫くしてから、ふっと笑って言った。
「そろそろ行こう」
「う、うん……」
そうして私は、心臓が止まる前に、なんとか極度の緊張状態から解放されたのだった。
隣のラザレスの部屋に迎えに行くと、もう四人とも集まっていた。
魔法剣を持つラザレスを囲むように、ライくん、谷口くん、ロデリック様が座っていた。
「ちょっと待ってて」
部屋に入って来た私たちにラザレスはそう言うと、四人は魔法剣に向けて何か魔法を唱えた。
すると、四人それぞれから色の付いた光が輝き出した。魔法の光だ。
ラザレスからは赤色の魔法。
ライくんからは黄色の魔法。
ロデリック様からは水色の魔法。
谷口くんからは緑色の魔法。
四つの光は、渦を巻くように輝きながら、吸い込まれるように魔法剣の中に消えて言った。
「出来た?」
「と、思う」
「凄いな……」
「こんなことが出来たのか」
四人が感嘆をあげながら魔法剣を覗き込んでいる様子を、サースも興味深げに見つめていた。
「……魔力の混合?」
サースの呟きに、谷口くんが顔を上げて頷く。
「そう。たぶん、この世界の人たちは、混合出来ることも知らないと思うんだけど……僕が異世界人だから、魔力が多すぎて、出来ちゃったんだよね」
???
完全にちんぷんかんぷんになっている私に気が付いたサースが分かりやすく説明をしてくれた。
「砂里……ゲームの中で、それぞれキャラクターにイメージカラーが付いていただろう」
「うん」
「赤色、黄色、水色、緑色、そして……黒色、あれは、それぞれの人間の持つ、得意な魔力を現していた色なんだ」
「へ!?」
サースは黒色だったけれど……あれは、闇魔法を意味していた色だったんだ。
「そして、それぞれの魔力を混合する概念が……この世界にはなかったんだ」
「……」
それって異世界人がこの世界の概念変えちゃったってこと?
ひやりとする気持ちになりながら、谷口くんを見つめると、可愛らしい笑顔でにっこりと微笑み返された。
何も気にしていない……!
「混合させるのに、そもそも膨大な魔力が必要なんだ。この世界の人には出来ないと思う。僕以外にも異世界の人は度々訪れていたみたいだけど……僕ほど魔法院でちゃんと勉強した人もいなかったでしょ?だから、このことは、きっと僕しか知らない」
谷口くん、可愛らしい顔をして、さらっと爆弾抱えて黙っていたってこと??
同じ異世界人でも、何の役にも立ってる気がしない私と谷口くんでは大違いに思えた。
魔法好きのラザレスと、魔法エキスパートの谷口くんを一緒にしておいたから、発覚することになったの……?
「サース、これって大丈夫なの?」
「……使い道次第だが。まぁ、すぐにどうこうするわけではないだろう」
一体どんな使い道があるんだろう。
そう思っているのは私だけではないみたいで、みんなが興味深げに魔法剣を見つめていた。
「……そろそろ出発した方がいいが」
「あー」
「おっけ」
「分かった」
「ほい」
話を一旦切り上げて、私たちはギアン家に向かうことになった。
そうして私たちはギアン家にやって来た。
歩いてやってくる人などいないんだろう。豪華な門から延々と私たちは歩いた。
庭にはどこまでも緑が広がり、よく手入れされているのが見ているだけで分かった。
しばらくすると、古めかしい歴史を感じる大きな建物が建っていた。
サースが扉を叩くと、キチンとしたスーツ姿の男性が扉を開けてくれた。執事さんのように見える方。
その人とサースは暫く話をしていたけれど、話が終わった後に私たちはサースに連れられて長い廊下を歩いた。応接室のようなところに入ると、私たちに座るように勧める。
「ここで待っていて欲しい。何かあった時に、来てくれるので構わない」
「しかし……」
サースの言葉にロデリック様が立ち上がって言う。
だけどサースは笑って答えた。
「砂里……サリーナを連れていく。大丈夫だ」
私は連れて行ってもらえるらしい。良かった!
立ち上がるとサースの隣にぴたっとくっつくように立った。
「お茶を運ばせる。父母に確認したいことは少しだけだ。そう長く時間は掛からない」
笑顔でそう言うサースからは、心配なことはなさそうに感じられた。
「分かった。何かあったら連絡するように……」
「ああ、分かってる」
その台詞を聞いていて、もしかしてサースはロデリック様とも伝言の契約をしたのかな?と疑問に思う。
だけどそんなことを聞いてもいい雰囲気じゃないので心の中だけで悶々とする。
「行こう、砂里」
「うん……」
私は考え事を振り払い、サースに付いて応接室を出た。
長い廊下を歩き、サースに付いて入った部屋は、壁一面が本棚に囲まれた書斎のような部屋だった。
机の上には長い艶やかな黒髪を後ろに束ねた、年配の男性が座っていた。
整った顔には似つかわしくないほどに眉根に皺を寄せ、その下の理知的な瞳で、不機嫌そうにサースを見つめていた。
(……!)
私は思わず口をあんぐりと開けてしまった。
サースの面影があるその人は、サースをそのまま2~30歳ほど歳を取らせたらこうなるのではないかと、そう思わせる渋いイケメンおじさまだった。
(サースのお父様……)
間違いないと思った。似すぎている。
そうして私は確信した。サースは歳を取っても美しい!これ以上なく私のタイプだ!と。知ってましたけど!
「お父さん、ご無沙汰していました」
「……誰だ」
サースのお父様は、ぶしつけな視線を私にぶつける。
「彼女は聖女学級の学友です。そして俺の大切な人です。同伴をお許しください」
「初めまして。サリーナ・リタです」
この世界で違和感のない方の名前を名乗った。サースが何も言わないからこれでいいんだろう。
「……何の用だ」
肯定も否定もせずに、お父様は話を続けた。
サースは気にする様子もなく答える。
「なぜ、自分は何も知らされていないのかと言うことと、知るべきことを教えて頂きたいことと、壊れた調和を修復するための助言を頂きたい」
「……なぜだ」
そう言ってサースを見上げたお父様からは、少しだけ、顰められていた表情が和らいでいる気がした。
「ギアン家の宿命を解き放つために」
サースの言葉にお父様はまっすぐにサースを見つめ、長い沈黙が訪れる。
ふいにお父様は視線を外し、長い睫毛を伏せた。するとサースと同じように、美しい顔には影が形作られる。
(……似てる)
なんでもない表情からもとても似ていると思う。
ほとんど会ったことも会話をしたこともなかったというこの二人は。
「誰もが一度はそれを願い、そして絶望する。それが宿命だ」
「自分は、まだ絶望していません」
そう言うとサースは私の肩をそっと抱いた。
「自分の幸福を願ってくれる聖女が側にいる。彼女がいる限り、絶望することはありえません……」
柔らかな笑みが私を見下ろしていた。
穏やかな表情から、心からその台詞を言っているのが伝わって来る。
サースのお父様は暫く無表情に考えるような時間を置いてから、机の中から一冊の本を取り出した。
古めかしい表紙の本だった。
「父の……お前の祖父の日記だ。直系に渡すようにと遺言が残っている。持って行くがいい」
そう言って、その本を机の上に置いた。サースはゆっくり近づくとためらうようにしてから手に取る。
「もう行け。私は忙しい」
お父様はそれきり顔を上げることはなく、書きかけの書類に目を落としてしまった。
なので仕方なく私たちは簡単に挨拶をしてから部屋を出た。
廊下を二人で歩き、皆の所に戻る間も、隣を歩くサースが緊張している様子なのが伝わって来ていた。
私は、心の中で思っていることをサースに伝えてもいいのか分からなかった。
お父様は……あまりにもサースに似ているって。
正確に言うと、ゲームの中の、不機嫌顔が定番だったサース様があのまま歳を取ったらこうなるんじゃないかと思わせる人だった。
ゲームの中の……愛情を知らずに生きて来て、人々に疎まれ続けたあのサース様を思い出す。
サースもお父様も、少しでも話し合う機会に恵まれればいいのにと、私には願うことしか出来なかった。
皆がいる応接室に戻ると、私たちもソファに座り、サースは話して来た内容を皆に伝えた。
「……本が渡されただけ?」
「まぁそうだな……」
「何かを知っていそうだったのか?」
「恐らくな」
「この中に書いてある可能性はあるの?」
「可能性はあるだろう」
皆の視線がじっとテーブルの上の本の表紙に注がれる。
私もふむふむと皆の話を聞いていたのだけど、急に自分の手元から明るい光が発光しだしたのでぎょっとする。
左手から白い光の粒が溢れ出していた。
「な、なに?」
「砂里!?」
サースが慌てて私の手を取る。私の左手の薬指の指輪が光の発生源だった。
「なぜだ!?」
指輪って確か、防御魔法らしきものが付与されてるんじゃなかったっけ?
サースが神経を研ぎ澄ませるように辺りを見まわした。他のみんなも緊張感のある顔つきに変わる。
輝いていた光の粒が急に凝縮するように一本の線となると、テーブルの上に置かれていた本に向かって注がれた。
「本に反応してる……」
「指輪が?」
谷口くんとライくんが言った。
サースは指輪と本を交互に見つめた後に、本を手に取ると言った。
「この本に危険が……?いや……」
少し考えるようにしてから、サースは本を持って立ち上がった。
「少し待っていてくれ、これは別の場所に保管してこよう」
だけれど、サースは本を持って部屋を出て行くことは出来なかった。
光の線が本を宙に持ち上げるように浮き上がらせたのだ。
それからはあっという間だった。
宙に浮いたその本は、光の線に引っ張られたかのように私の元に飛んで来て、勢いよく音を立てて胸にぶつかった。
スローモーションのように、本がパラパラとめくられる。
すると本の中から飛び出すように黒色の煙のようなモヤが溢れだす。
そのモヤは私の体を一瞬で包み込んだ。
視界が真っ暗になって、そうして、私は意識を失った――
遠くから声がした気がした。「何故、闇魔法が!」愛しい人が叫んでいる声だった。
だけれど私はもう、返事をすることが出来ない――
(そうして私は、暗闇に堕ちた)
と言うわけで、朝からサースのところに行くことが出来るのです。やったね。
そうは言っても、サースの大好きな梅おにぎりを用意してから行きたかったので……両親が仕事に行ってから、ご飯を炊いておにぎりを握った。
昼間から行けるなら、もしかしたら他の人も合流出来るかもしれないし、と少し多めに作ることにした。
サースは意外とよく食べるから、残ることはないと思う。
実は私はハムマヨおにぎりが好きなので、こっそり交ぜて置いた。これも、なんだかんだ言って男の子たちは食べてくれそうな気がする。
用意が出来たところでサースに伝言を送る。
『おはようサース』
『おはよう、砂里』
『もう行ってもいい?』
『支度中だが、構わなければいつ来てもいい』
『え?大丈夫?』
『ああ』
いいのかな?と思いつつも、お許しが出ているので、早く会いたい気持ちの私はウキウキとランチバッグを持って魔法で異世界に飛んだ。
ばふん……と。
音と共に、世界で一番大好きな人の良い匂いに包まれる。
……だけど、なんだかいつもと違った。
まず、匂いがいつもより凄い。濃厚だ。
ぶつかった音もちょっと違った気がする。
掌にあたる感触も違う。
いつも感じている、布の感触を感じないのだ。
ふにふにと、柔らかい弾力を指の先に感じる……。
温かくて、柔らかくて、吸い付くような、まるで人肌のような弾力……。
ジワリと肌に馴染むような湿り気もある。
いつも以上の、むせ返るようなサースの匂いにクラクラしながら、そろっと顔を上げる。
彫刻のように美しいお顔がそこにあり、濡れた艶やかな黒髪が象牙のような白い肌を彩るように流れ落ちていた。
長い髪と肌には水滴が煌めいている。まるでキラキラと音がするように。
「砂里……すまない、湯を浴びて来たばかりだ。少し待っていてくれるか?」
「……」
いつもより頬を上気させたサースは、上半身裸の状態で、私を抱きしめ微笑んでいた。
「ひっ……ひいぃ~~~!!?」
愛する人の腕の中で発するには相応しくない悲鳴を上げてサースから飛びのくと、そのまま勢いよく壁まで後ずさった。
サースが目を丸くした。
水滴を垂らした、輝く濡れた宝石のようなサースは、呆然とした様子で私を見つめている。
少し見つめ合った後に、サースが言った。
「……すまない」
「……ううん」
そのまま暫く沈黙だけが私たちの間に訪れた。
気まずそうな顔をしたサースがそっと髪を拭き出し、上着を着終わるまで、私は壁に張り付くように立って微動だにしなかった。
(こういうのなんて言うんだっけ……)
気を逸らすように考え事に集中した。
漫画の中で男の子が好きな女の子と、時々アクシデントを起こすのだ。
(確か、確か……)
家に帰って来て、シャワーを浴びようとして風呂場の扉を開けると、そこには好きな女の子が居て……みたいなシチュエーション……あれは、確か……。
(ラッキー……スケベ……)
ああ、そうだ、そう言うんだ。思い出せてすっきりした!
すっきり。すっきり……?
私はそろりと視線を上げて、サースの後ろ姿を見つめる。
痩せているのに逞しい体躯は服の上からでも見てとることができる。
私は今、あの白いシャツの下の、艶めかしい肌に直接手を触れた……んだよね!?
(ひぇぇぇぇぇ…………!!)
サース相手にラッキースケベとか、前世でどれだけの徳を積んだら成しえるの!?
私の今世の運は全て使い果たしたの……?
もしかして、夢?すべては夢落ち?
私……もう死んでた?
幸福にぷるぷると体を震わせていると、サースが声を掛ける。
「砂里、すまない……大丈夫か?」
「神様に感謝していました」
「なんの話だ……」
気遣うように私に手を伸ばして来たサースが、ためらいながら抱きしめるのを止めたのを見て、さっきのことを気にしていることが分かった。
「ごめんね。驚いて叫んじゃって……」
「いや……」
「びっくりしただけで、どちらかというと、すごく嬉しくて、望ましい感じなんだけど……」
「……」
「いきなりは心臓止まっちゃうけど、そうじゃなかったら、また是非お願いしたい感じで……」
「……ふ」
サースが片手で口を押えて、視線を伏せて笑い出した。
肩を揺すって笑うから、濡れた髪からいつも以上の良い匂いが漂ってくる。
「……何を言うのかと思ったら……」
顔を上げたサースは、とても美しい微笑で言った。
「驚いたんだろう……そんなに気を遣わなくても大丈夫だ」
気を遣っている訳じゃないんだけど……。
そう思いながらも、それを口に出すのは恥ずかしくて、私は顔を赤くしながら俯いてしまう。
「おにぎり、持って来たよ」
「ありがとう……砂里」
サースは片手でランチバッグを受け取ると、もう片方の手で私の頭をポンポンと叩いた。
その手の温かさも、私を見つめる少し面白そうにする表情も、全部が私の心を満たすようだった。
「今日は、俺の家に……行きたいんだ」
「サースの家……」
それはギアン家の館のことだろうか。
ゲームの中で見たことがある。古めかしい、歴史を感じる大きなお屋敷。
「皆にも付いて来てもらえる。心配はいらない」
「皆……?」
「ああ。ユズル、ライ、ロデリック、ラザレスだ」
それは今ではサースの味方になってくれている人たちだった。
「父母に話を聞いておきたい。今日在宅していることは確認済だ。ただ、関係が良好では無かったから、俺は父母とまともに会話をしたことがほとんどないんだが……」
表情を曇らせて話すサースの横顔を見て、私は思い出して行く。
サースは、幼少期に魔力を暴走させ、屋敷やそこにいた人々を傷つけたのだと言っていた。
そのせいで疎まれ、悪魔と呼ばれて育ったのだと。
家族やギアン家の屋敷に、良い思い出があるとは到底思えなかった。
だって、『悪魔』だ。
こんなに優しい人がそう言われることを受け入れて生きてきたなんて、私にはまるでありえないような話に思える。
思わずサースに抱き着いてしまう。ぎゅう。
サースが不思議そうな顔をして私を見下ろした。
「一緒に居るよ……」
「……」
「ご両親とお話するときも、これからも、ずっと一緒に居るよ……」
彼の胸を強く抱きしめる私の頬には、サースのまだ濡れている髪があたっている。
さっきはこの服の下の艶めかしい肌に……直接抱き付いて……。
(……あれ?)
思い出したらいけない気がした。ちょっと思い出しただけなのにもう体がぞくぞくする。
「砂里……」
優しい腕が私を抱き締める。
「俺の聖女……」
サースはそう言うと、私の額にそっと唇を触れさせた。
それだけで私は、びくりと、体に電流が走るような衝撃を感じる。
顔を上げると、漆黒の瞳がまっすぐに私を見つめていた。
吸い込まれそうな煌めきに、心臓がドキドキして、このままじゃ意識を失うんじゃないかって思う。
サースは形の良い指で私の前髪をゆっくりと撫でるようにかき分けていた。
暫くしてから、ふっと笑って言った。
「そろそろ行こう」
「う、うん……」
そうして私は、心臓が止まる前に、なんとか極度の緊張状態から解放されたのだった。
隣のラザレスの部屋に迎えに行くと、もう四人とも集まっていた。
魔法剣を持つラザレスを囲むように、ライくん、谷口くん、ロデリック様が座っていた。
「ちょっと待ってて」
部屋に入って来た私たちにラザレスはそう言うと、四人は魔法剣に向けて何か魔法を唱えた。
すると、四人それぞれから色の付いた光が輝き出した。魔法の光だ。
ラザレスからは赤色の魔法。
ライくんからは黄色の魔法。
ロデリック様からは水色の魔法。
谷口くんからは緑色の魔法。
四つの光は、渦を巻くように輝きながら、吸い込まれるように魔法剣の中に消えて言った。
「出来た?」
「と、思う」
「凄いな……」
「こんなことが出来たのか」
四人が感嘆をあげながら魔法剣を覗き込んでいる様子を、サースも興味深げに見つめていた。
「……魔力の混合?」
サースの呟きに、谷口くんが顔を上げて頷く。
「そう。たぶん、この世界の人たちは、混合出来ることも知らないと思うんだけど……僕が異世界人だから、魔力が多すぎて、出来ちゃったんだよね」
???
完全にちんぷんかんぷんになっている私に気が付いたサースが分かりやすく説明をしてくれた。
「砂里……ゲームの中で、それぞれキャラクターにイメージカラーが付いていただろう」
「うん」
「赤色、黄色、水色、緑色、そして……黒色、あれは、それぞれの人間の持つ、得意な魔力を現していた色なんだ」
「へ!?」
サースは黒色だったけれど……あれは、闇魔法を意味していた色だったんだ。
「そして、それぞれの魔力を混合する概念が……この世界にはなかったんだ」
「……」
それって異世界人がこの世界の概念変えちゃったってこと?
ひやりとする気持ちになりながら、谷口くんを見つめると、可愛らしい笑顔でにっこりと微笑み返された。
何も気にしていない……!
「混合させるのに、そもそも膨大な魔力が必要なんだ。この世界の人には出来ないと思う。僕以外にも異世界の人は度々訪れていたみたいだけど……僕ほど魔法院でちゃんと勉強した人もいなかったでしょ?だから、このことは、きっと僕しか知らない」
谷口くん、可愛らしい顔をして、さらっと爆弾抱えて黙っていたってこと??
同じ異世界人でも、何の役にも立ってる気がしない私と谷口くんでは大違いに思えた。
魔法好きのラザレスと、魔法エキスパートの谷口くんを一緒にしておいたから、発覚することになったの……?
「サース、これって大丈夫なの?」
「……使い道次第だが。まぁ、すぐにどうこうするわけではないだろう」
一体どんな使い道があるんだろう。
そう思っているのは私だけではないみたいで、みんなが興味深げに魔法剣を見つめていた。
「……そろそろ出発した方がいいが」
「あー」
「おっけ」
「分かった」
「ほい」
話を一旦切り上げて、私たちはギアン家に向かうことになった。
そうして私たちはギアン家にやって来た。
歩いてやってくる人などいないんだろう。豪華な門から延々と私たちは歩いた。
庭にはどこまでも緑が広がり、よく手入れされているのが見ているだけで分かった。
しばらくすると、古めかしい歴史を感じる大きな建物が建っていた。
サースが扉を叩くと、キチンとしたスーツ姿の男性が扉を開けてくれた。執事さんのように見える方。
その人とサースは暫く話をしていたけれど、話が終わった後に私たちはサースに連れられて長い廊下を歩いた。応接室のようなところに入ると、私たちに座るように勧める。
「ここで待っていて欲しい。何かあった時に、来てくれるので構わない」
「しかし……」
サースの言葉にロデリック様が立ち上がって言う。
だけどサースは笑って答えた。
「砂里……サリーナを連れていく。大丈夫だ」
私は連れて行ってもらえるらしい。良かった!
立ち上がるとサースの隣にぴたっとくっつくように立った。
「お茶を運ばせる。父母に確認したいことは少しだけだ。そう長く時間は掛からない」
笑顔でそう言うサースからは、心配なことはなさそうに感じられた。
「分かった。何かあったら連絡するように……」
「ああ、分かってる」
その台詞を聞いていて、もしかしてサースはロデリック様とも伝言の契約をしたのかな?と疑問に思う。
だけどそんなことを聞いてもいい雰囲気じゃないので心の中だけで悶々とする。
「行こう、砂里」
「うん……」
私は考え事を振り払い、サースに付いて応接室を出た。
長い廊下を歩き、サースに付いて入った部屋は、壁一面が本棚に囲まれた書斎のような部屋だった。
机の上には長い艶やかな黒髪を後ろに束ねた、年配の男性が座っていた。
整った顔には似つかわしくないほどに眉根に皺を寄せ、その下の理知的な瞳で、不機嫌そうにサースを見つめていた。
(……!)
私は思わず口をあんぐりと開けてしまった。
サースの面影があるその人は、サースをそのまま2~30歳ほど歳を取らせたらこうなるのではないかと、そう思わせる渋いイケメンおじさまだった。
(サースのお父様……)
間違いないと思った。似すぎている。
そうして私は確信した。サースは歳を取っても美しい!これ以上なく私のタイプだ!と。知ってましたけど!
「お父さん、ご無沙汰していました」
「……誰だ」
サースのお父様は、ぶしつけな視線を私にぶつける。
「彼女は聖女学級の学友です。そして俺の大切な人です。同伴をお許しください」
「初めまして。サリーナ・リタです」
この世界で違和感のない方の名前を名乗った。サースが何も言わないからこれでいいんだろう。
「……何の用だ」
肯定も否定もせずに、お父様は話を続けた。
サースは気にする様子もなく答える。
「なぜ、自分は何も知らされていないのかと言うことと、知るべきことを教えて頂きたいことと、壊れた調和を修復するための助言を頂きたい」
「……なぜだ」
そう言ってサースを見上げたお父様からは、少しだけ、顰められていた表情が和らいでいる気がした。
「ギアン家の宿命を解き放つために」
サースの言葉にお父様はまっすぐにサースを見つめ、長い沈黙が訪れる。
ふいにお父様は視線を外し、長い睫毛を伏せた。するとサースと同じように、美しい顔には影が形作られる。
(……似てる)
なんでもない表情からもとても似ていると思う。
ほとんど会ったことも会話をしたこともなかったというこの二人は。
「誰もが一度はそれを願い、そして絶望する。それが宿命だ」
「自分は、まだ絶望していません」
そう言うとサースは私の肩をそっと抱いた。
「自分の幸福を願ってくれる聖女が側にいる。彼女がいる限り、絶望することはありえません……」
柔らかな笑みが私を見下ろしていた。
穏やかな表情から、心からその台詞を言っているのが伝わって来る。
サースのお父様は暫く無表情に考えるような時間を置いてから、机の中から一冊の本を取り出した。
古めかしい表紙の本だった。
「父の……お前の祖父の日記だ。直系に渡すようにと遺言が残っている。持って行くがいい」
そう言って、その本を机の上に置いた。サースはゆっくり近づくとためらうようにしてから手に取る。
「もう行け。私は忙しい」
お父様はそれきり顔を上げることはなく、書きかけの書類に目を落としてしまった。
なので仕方なく私たちは簡単に挨拶をしてから部屋を出た。
廊下を二人で歩き、皆の所に戻る間も、隣を歩くサースが緊張している様子なのが伝わって来ていた。
私は、心の中で思っていることをサースに伝えてもいいのか分からなかった。
お父様は……あまりにもサースに似ているって。
正確に言うと、ゲームの中の、不機嫌顔が定番だったサース様があのまま歳を取ったらこうなるんじゃないかと思わせる人だった。
ゲームの中の……愛情を知らずに生きて来て、人々に疎まれ続けたあのサース様を思い出す。
サースもお父様も、少しでも話し合う機会に恵まれればいいのにと、私には願うことしか出来なかった。
皆がいる応接室に戻ると、私たちもソファに座り、サースは話して来た内容を皆に伝えた。
「……本が渡されただけ?」
「まぁそうだな……」
「何かを知っていそうだったのか?」
「恐らくな」
「この中に書いてある可能性はあるの?」
「可能性はあるだろう」
皆の視線がじっとテーブルの上の本の表紙に注がれる。
私もふむふむと皆の話を聞いていたのだけど、急に自分の手元から明るい光が発光しだしたのでぎょっとする。
左手から白い光の粒が溢れ出していた。
「な、なに?」
「砂里!?」
サースが慌てて私の手を取る。私の左手の薬指の指輪が光の発生源だった。
「なぜだ!?」
指輪って確か、防御魔法らしきものが付与されてるんじゃなかったっけ?
サースが神経を研ぎ澄ませるように辺りを見まわした。他のみんなも緊張感のある顔つきに変わる。
輝いていた光の粒が急に凝縮するように一本の線となると、テーブルの上に置かれていた本に向かって注がれた。
「本に反応してる……」
「指輪が?」
谷口くんとライくんが言った。
サースは指輪と本を交互に見つめた後に、本を手に取ると言った。
「この本に危険が……?いや……」
少し考えるようにしてから、サースは本を持って立ち上がった。
「少し待っていてくれ、これは別の場所に保管してこよう」
だけれど、サースは本を持って部屋を出て行くことは出来なかった。
光の線が本を宙に持ち上げるように浮き上がらせたのだ。
それからはあっという間だった。
宙に浮いたその本は、光の線に引っ張られたかのように私の元に飛んで来て、勢いよく音を立てて胸にぶつかった。
スローモーションのように、本がパラパラとめくられる。
すると本の中から飛び出すように黒色の煙のようなモヤが溢れだす。
そのモヤは私の体を一瞬で包み込んだ。
視界が真っ暗になって、そうして、私は意識を失った――
遠くから声がした気がした。「何故、闇魔法が!」愛しい人が叫んでいる声だった。
だけれど私はもう、返事をすることが出来ない――
(そうして私は、暗闇に堕ちた)
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