ハロー、親愛なる太陽

yumeko

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太陽が沈んだ

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高校一年生のとき、僕らはお互いの顔も、名前すらも、ろくに知らなかった。
 広い校舎の何処かで、別の誰かと笑い、別の何かに苛立ち、ただ同じ制服を着ただけの他人だった。
 
 高校二年生になって、ようやく「認識」が始まった。
廊下ですれ違うとき、わずかに視線を送る程度。
直接言葉をかわすことはなくとも、噂が飛び込んでくるようになった。
「あいつ、女遊びが激しいらしい」
「あいつが画家の息子らしい」
「あいつ、また学年一位らしい」
耳に入ってくるのは、「らしい」という不確かな情報。
廊下でその姿を見かけるたびに、僕らは心の中で答え合わせする。「ああ、この人が噂の」そんな、名前と噂を紐づけただけの薄い関係。
それだけだった。僕らの世界はまだ、交わることのない並行線のままだった。

 運命が大きく動き出したのは、高校三年生だった。
クラス替えという名の神様の気まぐれが、ばらばらだった僕ら六人を一つの教室に押し込めた。
今思えば、僕らは皆、何かしらの孤独や欠落を抱えていたんだと思う。満たされない承認欲求、親の期待という重圧、冷めた視線。そんな僕らを無理やり引き寄せ、けれど優しく一つの場所に集めたのは太陽だった。

彼は、「太陽」のような人だった。
健康的な小麦色の肌に、染めたわけではないのに日差しを浴びすぎて明るくなった茶髪。そして、不安を受け止めてくれそうなガッシリとした体格。
  
彼が笑うと、僕らの欠落は一瞬だけ、埋まったような気がした。

 あの頃の日常は、ただただ、眩しくて楽しかった。未来のことなんて考えず、ただ好きなことだけを見つめていた。

退屈な授業を抜け出して屋上で風に吹かれたこと。
冬の放課後に凍えながら食べた、コンビニのアイスの甘さ。
制服のまま入り浸った、騒がしいゲームセンター。
赤点を回避するために、誰かの家に集まって机を囲んだ必死の勉強会。
そんな時間が永遠に続くのだと信じていた。
大人になっても、なんとなく集まって、なんとなくくだらない話をして、カラオケに行って。環境が少し変わっても、僕らの関係だけは変わらないのだと、信じて疑わなかった。

 けれど。

僕らの中心にいたはずの太陽は、卒業式の日、現れることはなかった。
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