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15:罪と罰と……

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 アンソニーは、ローズに暴行を働いた現行犯として拘束された。
 本当に婚約者だったら情状酌量の余地もあっただろうが、今はただの他人だ。
 しかも王家主催のパーティー会場での犯行である。
 普通の暴行罪よりも、罪が重くなると予想された。

 連行されて行くアンソニーの後ろ姿を、ローズはフェデリーコと共に眺めた。
 愛してはいなかったし、婚約破棄を宣言された時には憎しみが湧いた。
 しかしリリーとの結婚が決まり、平民になる事が決定した時に、充分な罰は受けるのだからと忘れる事にした。

 許す事は出来なかったが、関わらなければ良いだけだと。

「彼は、婿入りと婿養子と養子縁組の違いもわからない程、残念な頭をしていたのね」
 思わず呟いたローズに、フェデリーコは首を傾げた。



 アンソニーは王宮から自宅へ帰る事無く、前科有りの平民へと落とされた。
 元々リリーと住むようにと用意された家に、僅かなお金と共に送られたらしい。

 そんなアンソニーとリリーの結婚だが、何が有っても覆らないと言われた通り、アンソニーが市井しせいへ下る日に執行された。

 しかしリリーがアンソニーと一緒に住む確率はかなり低いだろう。
 リリーはパーティーの翌日から、療養所を兼ねた修道院へと入所してしまったからだ。

 修道院では、「アンソニーとデートに行くの。お姉様にはナイショよ」と言ったり「フェデリーコとの結婚式はいつ?待ち遠しいわ」と言ってみたり、「私を見ないで!触らないで!」と泣き叫んだりしているそうだ。
 フェデリーコは『あれだけ視姦されればな』と思ったが、口に出すような愚かな真似はしなかった。



「昔から思い込みの激しい子ではあったけれど、物事が思い通りにいかないからといって、病んでしまう程とは気付かなかったわ」
 母親失格ね、とマーガレットは力無く微笑んだ。

「私だってまさか『将来はローズと一緒に伯爵家を支えてくれ』とに言った事が、養子縁組と誤解されてるとは予想出来なかったよ」
 本人も「婿入り」という言葉を使っていたからな、とアムネシア伯爵が溜め息を吐き出す。


 今日は、アムネシア伯爵家、ホッパード侯爵家、ハープネル侯爵家が集まっての・  茶だった。

「誓約書を私が保管せず、アンソニーに持たせれば良かったのかなぁ」
 ホッパード侯爵が遠い目をする。
「両家の名前の入った誓約書ですよ?邸の金庫で保管するのが当たり前です」
 学園入学時に、ちゃんと確認もさせたじゃないですか、とホッパード家長男が父親を擁護ようごした。


 自分達の懐は何も痛んでいないハープネル侯爵家は、何も言えずにただ静かにお茶を飲んでいた。
 むしろ最初の希望通りフェデリーコがローズと婚約出来たので、一人勝ちと言えるかもしれない。

「今日は共同事業についての話し合いじゃなかったのか?」
 ハープネル家長男が隣に座るフェデリーコにコッソリと質問する。
「問題が全て片付いたから、その情報共有……という名の大人の愚痴大会だと思うよ」
 フェデリーコが苦笑しながら、周りに聞こえないように小声で答えた。

「アルコール無しのお茶会じゃないと参加しない!と、駄々をこねた私を褒めてくださいね」
 フェデリーコの隣で、ローズが悪戯っぽく笑った。



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1日1回更新とか言っておきながら、サクサクと続きが書けたので、2回更新に戻します(笑)
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