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 何やら言い争う声が聞こえ、が引き摺るように連れて来られました。
 まぁ、随分髪が伸びましたわね。
 9年ぶりに会う元婚約者です。いえ、名前だけなら現王でしょうか?
 それにしても、思ったりより元気ですわね。
 ここ一週間は生きるのに必要な最低限の水しか与えていないのに。

 その理由はすぐに判明しました。
 ヤコブソンの後ろから、シーツに包まれたフローラが引き摺られて来ましたから。
 自慢の美貌は、おそらく殴られたであろう痣と鼻血で見る影もありません。
「死んでいるのか?」
 旦那様が問い掛けると、護衛は「いえ」と答えます。
 やはり害虫はとてもしぶといのですね。
 死んだと思って油断すると、襲いかかってきて驚かされます。

 でも死んでなくて良かったわ。

「お父さま、怖いです」
「オーリー、王になるなら汚いものも見なくてはいけないよ。ここは王家の罪人が閉じ込められる所なのだ」
 旦那様に抱かれている我が子を見て、ヤコブソンが目を見開きます。
「俺の子を返せ!」
 暴れるヤコブソンに、旦那様が首を傾げてみせます。

「君はここから9年間出ていないのに、どうやって7歳のオーリーの父親になれるのかい?」
 旦那様は次に腕の中のオーリーに視線を合わせ「あのように嘘を言ったり、人を陥れようとしたからここに入れられたのだよ」と説明してます。
 まぁ、人を陥れたのは前回ですが、今回もフローラを正妃にして私を側妃にし、死ぬまでこき使うつもりだったようですからね。
 馬鹿過ぎて失敗しただけです。


「何が、どうなっている……?」
 後ろ手に拘束されている前王と前王妃が、を見つめています。
 もう旦那様は顔を隠していないのに、息子だと疑っていなかったのです。滑稽ですわね。
 ヤコブソンがタイラーほど素敵なわけが無いのに。

「離して差し上げて」
 私が言うと、前王と前王妃を拘束していた護衛達は、突き飛ばすように二人を部屋の中へと押し込みました。
 フローラの側に跪いた二人は「ヒッ!」と短い悲鳴をあげます。
 そして、隣のヤコブソンを見ました。
「この、この貧相で汚いのが、ヤコブソン?」
 汚いとは言っても週に一度は入浴出来ていたし、一週間前までは、冷たくなっていても平民よりはずっと豪華な食事をしていたのですけどね。

 9年分髪が伸び年は取っていますが、昔と印象は大して変わっておりませんよ?


「さて、お話しましょうか」
 私は王家の三人へソファを示しました。
 フローラはかろうじて意識があるようなので、頑張って座って貰いましょう。
 愛しい我が子、オーリーはここで退場です。
 オーリー付きの侍女と護衛に守られて、王宮へと戻りました。


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