君の横を歩きたい

渡良瀬 カンナ

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日常が壊れる音

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 A.M.6時50分目覚まし時計の無機質な音が部屋に響くのと同時にそれを止め、枕元にあると眼鏡を手に取りまだ完全に空いていない目にかける。二階から一階へ降りていき、洗面所で顔を洗うい寝癖を直す。リビングに行くともう朝食がテーブルに広がっている。席に着き、手を合わせ各料理を順番にそれぞれ30回ずつ噛みながら朝のニュースを見る。別になんの変哲も無い日常である。食べ終えると制服に着替えバックを背負い玄関に向かう。右足から靴を履き靴紐をしっかり結ぶ。いつものルーティン通りである。
 家を出ようとすると、母親が寄ってきて、
 「かけるお願いなんだけどチーちゃんの家に学校行く前寄ってくれない?今日チーちゃんの両親仕事でいないみたいだから」
 自分の日常のリズムが壊れる音がする予感がしたが断れるわけもなく隣の家にチャリを押しながら向かう。インターホンを押すが返事がない、扉を開けてみると鍵が開いている不用心だ。行き慣れた順路を通りある部屋の前で立ち止まる。
「学校間に合わねーぞ」
とノックをしながら言うと、数秒後に叫び声があがった。
「やっばー!寝坊した」
その声を聞き学校に行こうと引き返そうとすると
「翔ちょっと待ててねすぐ準備する。」
さらば僕の日常と心の中で言った。5分としないで出てきた。彼女が乾 千里いぬい ちさと僕の幼馴染だ。制服は着崩れてるがあの短時間ではよくここまで準備したと思う。
 二人で千里の家を出て自転車にまたがると、千里はなぜか後ろの荷台に腰掛けている。
「何してんの?」
「学校行くんでしょ」
「チャリの二人乗りは犯罪ですけど」
「だって、私の自転車盗まれてまだないんだもん」
「走れば?」
「かよわい幼馴染を走らせるの?ひどーい」
「かよわい…?」
ゴフッ‼︎疑問を投げかけた瞬間千里のチョップがわき腹にヒットしていた。
「もう早くして遅刻する」
登校時間まで残り5分、最悪の日だ。

 学校の前で先生が挨拶している。今日の担当は井上だ。体育科で学校1怖い先生、千里に降りるよう頼むが突き抜ければ大丈夫と言う。嫌な予感しかないが彼女は1度言ったら聞かない。しょうがなくスピードを上げて突っ切ると、井上が怒号を上げながら追いかけてくる。チャリを駐輪するときには千里は校舎に入っていた。ハメられた、大丈夫って駐輪しないといけない僕は井上に捕まることは確定演出だ。僕はそのまま生徒指導室に連行、反省文原稿用紙5枚分、ため息つきながら教室に向かった。
 教室に入ると1番仲のいい岡田 拓人おかだ たくとが来て
「朝から二人乗り登校とはアツアツですなぁー、何と羨ましい」
と煽って来たのでさっきもらった原稿用紙を見せて
「お前も描きたい?」
というと勘弁と両手をあげた。千里とも同じクラスなので席に行きハメたなと睨みつけると
「ごめんって、そんなつもりはなかったんだって」
「もうちょいましな言い訳しろよ」
半分呆れて言った。
「あとこれ、母さんから朝食べてなかったら渡せって」
家を出る前預かっておいたサンドウィッチを渡すと
「ありがとう、ほんと空腹で死にそうだったの」
とすぐにかぶりつき始めた。ほんと僕は小さい頃から千里に振り回されっぱなしだ。
 いつも彼女は僕の前を歩き続けている。そしていつもそんな彼女を羨ましいと思って見てる自分がいた。
 1限の始業のチャイムが鳴る。
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