君の横を歩きたい

渡良瀬 カンナ

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部活動

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 ダルい授業を終えるとほはすぐに部活動に向かった。僕も千里もハンドボールをやっていて、男子は去年インターハイへ女子は県内ベスト4の成績つまり、かなりの強豪だ。そこでも千里はエースとして活躍していた。雑用をこなす僕と違って…。
 もうすぐインターハイ出場をかけた大一番の試合が近い、部員たちのレギュラー争いも激しさを増してきた。
 部活が終わり掃除をしていると、山川が話しかけてきた。山川は同級生でイケメン次のレギュラーに選ばれる可能性も高い、たけど性格がキツく僕は苦手だ。あと千里のことが好きである。話の内容はやはり千里のことだった。
「次のレギュラーにも俺は選ばれるから千里のこと紹介してくれよ」
「紹介って別に普通に話せる仲だろ自分で告ればいいじゃん」
「ちげぇんだよ、お前が俺のことをいい感じに伝えてくれてればほぼ確実だろ」
 僕がそういうのはできないと伝えると山川の表情が豹変し、
「お前さ雑用の分際で調子乗んなよ、部員に迷惑かけてやめるかと思ってたのに居座りやがって」
 僕は何も言い返さなかった、いや言い返せなかった。その時、キャプテンの黒田さんが来て「何揉めてんだ」と言うと山川は「べつに」と行ってしまった。
「山川に何言われたんだ」
「大したことないですよ、僕練習メニュー表先生に渡しに行かなきゃ」
とその場から離れようとすると黒田さんは僕の腕を掴み
「お前も次のレギュラー選考出るよな」
「何言ってるんですか、僕が出てもまたチームに迷惑かけるだけです」
「あれはお前のせいじゃないだろ、お前はそれを理由に逃げてるだけだ。」
「すみません」
僕は彼の元から離れた。
その通りだ、僕は逃げている、あの忘れてしまいたい記憶から…
 去年のインターハイ僕は1年生でレギュラーに選ばれた、先輩も仲間もみんなが応援してくれた。なのに…3回戦両チームどちらも引かないシーソーゲーム残り1分のところで僕がミスをしてしまい負けてしまった、そしてそのミスの時に3年の先輩を怪我させてしまった。先輩は「気にするな」と言ってくれたが、周囲はそうではなかった。
 その時を境に僕は選手をやめた。
校門を出ると千里がいた、「何してんだよ」と言うと「待ってた」と返された。
「翔はホントにこのままでいいの?」
「何が?」
ちょっとイラつきながら答えた。
「部活のことよ、選手に復帰しないでこのまま雑用で終わるの」
「関係ないだろ、ほっとけよ」
「昨日、から連絡あった」
その名前を聞いて身体がビクッとなった。
「あいつは今選手してないんだろって、伝言頼まれた。1年だったお前が一丁前に責任とか感じるな、あと渡すものがあるから明日取りにこいだって」
「なんだよそれ」
もうあの日から1年が経つ僕は気が向かないまま旭さんの家へ行った。
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