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第2章 「やりたいこと」を探して
第7話 部活
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以前雪菜さんは言った。
「玲ちゃんのやりたいことを見つけて欲しい。自分のペースで────」
家に帰ると一也さんが「おかえり」と声をかけてくれた。「ただいまです」と返してひとまず部屋に戻る。制服をハンガーにかけて適当に服を選ぶ。とりあえずジーパンとニットを取り出して着込んだ。荷物とプリント類をそれぞれを整理して貸したの準備をしておく。
リビングに戻ると先に帰って来た沙羅ちゃんがいた。
「玲さんおかえりなさにい」
「ただいま」
私は笑顔で返してテーブルの座席に座る。今日は一也さんが家事当番だ。沙羅ちゃんも私も三時間授業で給食なしだったので昼ご飯を家で食べなくてはいけない。
ジュージューと言うなにかを焼く音とともに付けっ放しのテレビから聞こえてくるお花見のニュースを聞き流していると沙羅ちゃんは一也さんに言った。
「みんなでお花見行こう」
朝花見に行きたいと言っていたがもうすぐ桜は散ってしまう。今がちょうど満開というところだ。
「俺は予定がない日ならいつでもいいけど……玲ちゃんと母さんにも聞いたか?」
という一也さんの問いに
「玲さんお花見一緒に行ってもいい?」
と沙羅ちゃんに聞かれた。
「うん。むしろ私も行きたいな」
そう言って笑いかけると、今までの沙羅ちゃんには珍しい満面の笑みが返ってきた……すごい破壊力だ。
「とりあえず母さんに確認して予定が合えば行こう……っとちょうどできた」
そう言って盛り付けを終えた一也さんは豚の生姜焼きとご飯、味噌汁、漬物、コップをそれぞれの場所に置く。
「いただきます」
食前の挨拶をして一枚生姜焼きを口に入れる。
「美味しい」
私がそう呟くと
「そうか」
と満足そうに一也さんは笑った。
昼食を食べ終えて皿洗いの手伝いを申し出ると、「じゃあ半分頼む」と言われたので腕まくりをして、腕につけていた黒い飾り気のないヘアゴムで髪を縛る。
食器とスポンジが擦れる音がする。一也さんと私の間には会話はあまり多くなかったが、お互いよく喋る方でもないので沈黙は別に気まずくなかった。黙々と皿洗いを進めて行く。
部屋に戻ると学校からもらって来た部活紹介の資料を見る。やりたいこと探しに一番手っ取り早いのはきっとこれだ。
『本学の部活動は以下の通りです。
文系部:吹奏楽部、演劇部、合唱部、美術部、パソコン部、英会話部、軽音部
運動部:野球部、サッカー部、バスケットボール部、バレーボール部、卓球部、剣道部、柔道部、テニス部、バドミントン部、陸上部』
うーん……運動部の中なら陸上部か剣道部、文化部なら美術部がいい。個人でできるものの方が自分に合っている気がする。あとは実際に行ってみないとなんとも言えない。
翌日、三時間授業の中ではそれぞれの自己紹介、班分け、ロッカーの確認、授業についてなどが話された。そして大量の教科書が配布される。流石に一気に量が増えたなと思いながらそれぞれに名前を書き込んでカバンに詰めて行く……授業に死ぬ気でついていかなくては……バカにならない塾代を払ってもらうようなことになったら申し訳無さでどうにかなりそうだ。
放課後は約束通り倉田さんと部活を回ることにした。一階から順番に見て行く。
第2体育館で柔道部と剣道部が練習している。他にもたくさん見に来ている人がいるので少し見づらい……この学校の柔道部はかなり強いので人気があるのは知っていたが、同時にとても顧問が厳しい。やはり少しの緩さがないと続けられない気がする。
剣道部を見た感想として、やはりというべきか個人種目であるため柔道部と同じでストイックだ。ただ顧問がとてもゆるいので真面目にやりたい人は真面目にできるし、他のことがやりたいならそちらを優先してもいいというスタンスがとてもいい。
次は陸上部。陸上部は短距離と長距離で分かれており、長距離組は外周しているそうだ。陸上部もかなり人数が多く、個人種目であるため自分との戦いだ。顧問の先生も理解のある人で評判がいい。
短距離組はインターバルをやっていてとてもきつそうだ。だがとても楽しそうだなと思った。
続いて倉田さんが行きたいというテニス部だ。グラウンド横のテニスコートに行く。女子の中ではテニス部は人気の部類だ。やはり男子テニス部より女子テニス部の方が人数が多い。
テニスウェアを着こなした先輩がスマッシュを打つと見ている人から拍手と歓声が起こった。倉田さんは頬を少し染めて「カッコいい……」と呟く。
部活の雰囲気としては「女の園」の一言だ。応援も他の部よりチアリーディングの掛け声のような感じで、点が入ると女の子たちから黄色い声がする。
「どうだった?」
テニス部を見終わったあと、校舎まで歩きながら倉田さんに問う。
「先輩たちはカッコよかったけど……でも雰囲気が少し……」
と言って倉田さんは口ごもる。確かにあの雰囲気は倉田さんの苦手とする部類だろう。
私たちは今度美術室に行く。倉田さんも私もいいなと思った部活だ。特徴は何と言っても緩い。とにかく緩い。この学校は特別な事情がない限り部活に入らなくてはいけないというルールがある。 この美術部は絵を描くのが好きな人だけではなく、「勉強の方が大事!」とか「本読みたい」だとか「早く帰りたい」など様々な人の受け皿になっている。美術室で絵を描いている人もいれば参考書を読んだりノートとにらめっこしている人もいる。部活終了時間前でもいつでも帰っていいという、ある種無法地帯の部活だ。
最後は吹奏楽部。倉田さんは音楽が好きなそうで、何か楽器がやってみたいとのこと。吹奏楽部は練習がかなりきついらしいという噂を聞いた。吹奏楽部もかなりの強豪であり人数が多い。コンクールメンバーに選出されるのも苦労するだろう。
吹奏楽部の模擬演奏はさすがというしかないくらいうまかった。みている人から拍手が起こる。
「どこに仮入部するか決めた?」
倉田さんに聞かれて改めて考える。美術部は楽そうではあったが、そんな理由で入ったらやりたいこと探しと言う当初の目標から逸脱している。剣道部か陸上部のどちらかだろう。どうせならやったことのないこともしてみなくては。
「……剣道部かな。倉田さんは?」
倉田さんはうーんと考えて
「吹奏楽部……かな?」
と答えた。
「お互い頑張ろう」と倉田さんに言われ、大きく頷いて私たちはそれぞれの家路についた。
「玲ちゃんのやりたいことを見つけて欲しい。自分のペースで────」
家に帰ると一也さんが「おかえり」と声をかけてくれた。「ただいまです」と返してひとまず部屋に戻る。制服をハンガーにかけて適当に服を選ぶ。とりあえずジーパンとニットを取り出して着込んだ。荷物とプリント類をそれぞれを整理して貸したの準備をしておく。
リビングに戻ると先に帰って来た沙羅ちゃんがいた。
「玲さんおかえりなさにい」
「ただいま」
私は笑顔で返してテーブルの座席に座る。今日は一也さんが家事当番だ。沙羅ちゃんも私も三時間授業で給食なしだったので昼ご飯を家で食べなくてはいけない。
ジュージューと言うなにかを焼く音とともに付けっ放しのテレビから聞こえてくるお花見のニュースを聞き流していると沙羅ちゃんは一也さんに言った。
「みんなでお花見行こう」
朝花見に行きたいと言っていたがもうすぐ桜は散ってしまう。今がちょうど満開というところだ。
「俺は予定がない日ならいつでもいいけど……玲ちゃんと母さんにも聞いたか?」
という一也さんの問いに
「玲さんお花見一緒に行ってもいい?」
と沙羅ちゃんに聞かれた。
「うん。むしろ私も行きたいな」
そう言って笑いかけると、今までの沙羅ちゃんには珍しい満面の笑みが返ってきた……すごい破壊力だ。
「とりあえず母さんに確認して予定が合えば行こう……っとちょうどできた」
そう言って盛り付けを終えた一也さんは豚の生姜焼きとご飯、味噌汁、漬物、コップをそれぞれの場所に置く。
「いただきます」
食前の挨拶をして一枚生姜焼きを口に入れる。
「美味しい」
私がそう呟くと
「そうか」
と満足そうに一也さんは笑った。
昼食を食べ終えて皿洗いの手伝いを申し出ると、「じゃあ半分頼む」と言われたので腕まくりをして、腕につけていた黒い飾り気のないヘアゴムで髪を縛る。
食器とスポンジが擦れる音がする。一也さんと私の間には会話はあまり多くなかったが、お互いよく喋る方でもないので沈黙は別に気まずくなかった。黙々と皿洗いを進めて行く。
部屋に戻ると学校からもらって来た部活紹介の資料を見る。やりたいこと探しに一番手っ取り早いのはきっとこれだ。
『本学の部活動は以下の通りです。
文系部:吹奏楽部、演劇部、合唱部、美術部、パソコン部、英会話部、軽音部
運動部:野球部、サッカー部、バスケットボール部、バレーボール部、卓球部、剣道部、柔道部、テニス部、バドミントン部、陸上部』
うーん……運動部の中なら陸上部か剣道部、文化部なら美術部がいい。個人でできるものの方が自分に合っている気がする。あとは実際に行ってみないとなんとも言えない。
翌日、三時間授業の中ではそれぞれの自己紹介、班分け、ロッカーの確認、授業についてなどが話された。そして大量の教科書が配布される。流石に一気に量が増えたなと思いながらそれぞれに名前を書き込んでカバンに詰めて行く……授業に死ぬ気でついていかなくては……バカにならない塾代を払ってもらうようなことになったら申し訳無さでどうにかなりそうだ。
放課後は約束通り倉田さんと部活を回ることにした。一階から順番に見て行く。
第2体育館で柔道部と剣道部が練習している。他にもたくさん見に来ている人がいるので少し見づらい……この学校の柔道部はかなり強いので人気があるのは知っていたが、同時にとても顧問が厳しい。やはり少しの緩さがないと続けられない気がする。
剣道部を見た感想として、やはりというべきか個人種目であるため柔道部と同じでストイックだ。ただ顧問がとてもゆるいので真面目にやりたい人は真面目にできるし、他のことがやりたいならそちらを優先してもいいというスタンスがとてもいい。
次は陸上部。陸上部は短距離と長距離で分かれており、長距離組は外周しているそうだ。陸上部もかなり人数が多く、個人種目であるため自分との戦いだ。顧問の先生も理解のある人で評判がいい。
短距離組はインターバルをやっていてとてもきつそうだ。だがとても楽しそうだなと思った。
続いて倉田さんが行きたいというテニス部だ。グラウンド横のテニスコートに行く。女子の中ではテニス部は人気の部類だ。やはり男子テニス部より女子テニス部の方が人数が多い。
テニスウェアを着こなした先輩がスマッシュを打つと見ている人から拍手と歓声が起こった。倉田さんは頬を少し染めて「カッコいい……」と呟く。
部活の雰囲気としては「女の園」の一言だ。応援も他の部よりチアリーディングの掛け声のような感じで、点が入ると女の子たちから黄色い声がする。
「どうだった?」
テニス部を見終わったあと、校舎まで歩きながら倉田さんに問う。
「先輩たちはカッコよかったけど……でも雰囲気が少し……」
と言って倉田さんは口ごもる。確かにあの雰囲気は倉田さんの苦手とする部類だろう。
私たちは今度美術室に行く。倉田さんも私もいいなと思った部活だ。特徴は何と言っても緩い。とにかく緩い。この学校は特別な事情がない限り部活に入らなくてはいけないというルールがある。 この美術部は絵を描くのが好きな人だけではなく、「勉強の方が大事!」とか「本読みたい」だとか「早く帰りたい」など様々な人の受け皿になっている。美術室で絵を描いている人もいれば参考書を読んだりノートとにらめっこしている人もいる。部活終了時間前でもいつでも帰っていいという、ある種無法地帯の部活だ。
最後は吹奏楽部。倉田さんは音楽が好きなそうで、何か楽器がやってみたいとのこと。吹奏楽部は練習がかなりきついらしいという噂を聞いた。吹奏楽部もかなりの強豪であり人数が多い。コンクールメンバーに選出されるのも苦労するだろう。
吹奏楽部の模擬演奏はさすがというしかないくらいうまかった。みている人から拍手が起こる。
「どこに仮入部するか決めた?」
倉田さんに聞かれて改めて考える。美術部は楽そうではあったが、そんな理由で入ったらやりたいこと探しと言う当初の目標から逸脱している。剣道部か陸上部のどちらかだろう。どうせならやったことのないこともしてみなくては。
「……剣道部かな。倉田さんは?」
倉田さんはうーんと考えて
「吹奏楽部……かな?」
と答えた。
「お互い頑張ろう」と倉田さんに言われ、大きく頷いて私たちはそれぞれの家路についた。
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