小説や漫画における「転校生」の設定の注意点。

冬陽

文字の大きさ
1 / 3

「転校生」は、基本的には公立の小中学校で登場させましょう。

しおりを挟む
基本として。

現代(風)の学園モノの小説や漫画に、「転校生」を持ってくることができるのは、基本、公立の小中学校だけにしましょう。
リアリティーを追求する、ごく普通の学校を予定しているなら、「転校生」の登場は県立・市立などの公立学校になります。しかも、小学校と中学校に限定されます。



例外として「私立・公立や小中高校の区別なく転校生」設定が使えるのは

現代風や近未来風と言った設定の、財閥が作った壮大なスケールの大学園都市。
なんでもありな超個性的で、現実にはありえないような設定の学校。
こう言った設定でしたら、転校生なんかはキャラとして使いたい放題で、いくらでも登場させてもOK。


******************

今更な話ですが。

高校だと基本、「転校生」とは言わず「編入生」になります。

******************


「なぜ、公立の小中学校だけなのか」と思われるかもしれません。

「公立」の小中学校は義務教育です。
児童は、その住所、校区の学校に通うことになります。

A県B市 D町に住んでいる児童は、B市立d小学校(あるいはd中学校)に通うと言うことです。
D町は、d小学校の校区内なので。

学力関係なく、住所で通う学校が決まります。
ですから、親の仕事の都合で引越してきたら、その住所の該当する校区の公立校に通うことになるからです。

公立校は、その校区内にいる児童の受け入れを、基本的には拒否できません。




反面、「私立学校」は小学校でも中学校でも、校区に関係ありません。
親の車で通学30分とか、学校が走らせてる通学バスで1時間など、自宅から学校までの長距離移動もありえます。

「沖縄在住で、毎日自家用機で北海道の私立に通ってます」と言うのもOKなんです。
(実際そんなことする人はいないと思いますが。)

ついでに、「親の仕事で近くに引越してきたから」と言う理由であっても、私立の学校に転入はできません。
極端な話、家の正面が私立小学校で、子供が小学生であっても、
 親・子「転校生として受け入れて?」
 私立 「却下」
となります。

私立小学校の児童はだって、「お受験」してその入学の権利を得たのです。
入学資格試験を受けていない児童に、門は開けません。
もし、引越してきた直後にその私立に欠員があり、募集がかかっていたなら、その枠を争って試験に合格するしかないんですよ。もちろん、試験に合格できなかったら、その私立には入れません。

でも、事情で欠員ができていたとしても、
学校側は試験問題の作成や募集要項の作成や、募集の宣伝。時間をとっての面接、といった手間隙をかけてまで、
途中からの転校生の受け入れをしたがるか、というとそう言うこともないんですよね。
複数の欠員ならともかく、1人だけの欠員なら、そのままで行くこともあるから。

なので、「私立校から(公立へ)の転校(転入生)」はあっても、
「私立校への転入生」は現実味がないんです。




高校は公立私立関係なく、転校は難しいです。というか、「編入」ですけれどね。

あなたの県に、実際はどうかわかりませんが、「あそこは進学校」とか「あそこは底辺校」と言われる高校がありませんか?

競争率の高い、就職に有利とか有名大学への進学の高い高校。
反面、テスト用紙に名前を書きさえすれば入れると噂されてる底辺校とか。

自分が必死こいて勉強して入学した難関高校に、
「親の仕事で近所に越してきて~」って理由で年度途中に転校生がきたら「おい!」て思いませんか?
小説や漫画で、高校の編入生がそんな登場したら、リアリティがなくなります。

現実世界で、そんな理由で高校の転校が可能なら、
「とりあえず手近の適当な高校に合格し、その後本命の高校近くに引っ越して、転校する」
のが主流になってしまうでしょうから。



高校での転校(編入)にはまず、その舞台になる高校の定員に欠員があること。
さらに欠員補充を行うことを決められていること。
(年度途中で退学者が出ても、その欠員補充を即座に行う高校は少ないでしょう)

その上で、転校希望者が「編入試験」を受けて合格してやっとその高校に編入できるんです。




あと、学校側の視点で編入の難しさを書きましたが、編入する生徒の視点でも考えてみてください。

あなたの住まいが東北として、あなたは九州の高校に詳しいですか?
中四国の住まいの方、北海道の高校に詳しいですか?
中部地方在住の方、沖縄の高校に詳しいですか?

引越し先のその県の、編入したい高校レベル。わかります?
どの高校が東大などを目指すのに都合のいい学校なのか。
進学校なのか、卒業生の大半が地元就職に行くのか。
実は、地元では札付きのワルが行く学校なのか。

(某TV局の「高校生クイズ」によく出ている高校なら地元でなくてもわかるでしょうが)

 平凡な学力で、地元の平均的な高校に合格して入学して、
で、親の都合で引っ越しするからと、
そこの自分の学力にマッチする高校を、把握できますか?
ちなみに、親の会社の移動先の上司とかが余程気の利く人なら、
ある程度の高校の情報は教えてもらえるかもしれません。
…教えてくれるだけですが。


そしてもう一つ。
苦労して入った高校。中学からの友達も数人いる。
入学してからの数ヶ月で築いた交際関係もある。

それらをリセットして、どんなレベルかわからない高校に編入したいですか?
普通高校といっても、学校によって力を入れている分野が違います。
それらをひっくるめ、親の仕事都合で一緒に引越しする高校生に、
どんなメリットがありますか?

金銭面でもすごい負担でしょう。(金持ちは負担じゃないかもですが)
まず、制服全部買い直し。体操服も。
教科書・副読本も全て買い直しの可能性があります。

高校単位で、教科の学習進度や順番が違うので、3年間という単位で見て、
途中転校した場合、履修してない単元が発生する可能性もありえます。



なので現実世界では、子供が高校入学(高校が決まった直後も含め)していて、
親が仕事で引越しを余儀なくされた場合、
親が「単身赴任」して、もう片方の親と今までの住所に残るのが普通です。
あるいは、親戚の家や学生寮で、下宿ということになります。


小説や漫画の設定として違和感ない高校の編入は、
『親が海外で仕事をしていた。帰国に伴い、子供も受け入れてくれる高校を探して編入』
ぐらいのレベルでしょうか。
あと、将来の仕事を考えての
その高校での資格取得や専門性を考慮しての転校か、
芸能系での転校関連でしょうか。
(漫画「銀の匙」の「あやめ」発言。←学力問題で編入ならず。
漫画「スキップ・ビート」のキョーコの高校入学理由とか)



なので、小説や漫画にリアリティーを出したいのなら
私立小中学校や高校で
「保護者の都合で、今回引越ししてきた○○さんだ」
「親の仕事で引越ししてきた△△です」
というセリフは出さないことです。

「親が某商事のアメリカ支店勤務でしたが、今回本社勤務になって帰国したので」
(この場合、親の勤務地が地方だと、左遷したと思われる。あるいは退職したとか)
なら、大丈夫ですけど。







しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

◆アルファポリスの24hポイントって?◆「1時間で消滅する数百ptの謎」や「投稿インセンティブ」「読者数/PV早見表」等の考察・所感エッセイ

カワカツ
エッセイ・ノンフィクション
◆24h.ptから算出する「読者(閲覧・PV)数確認早見表」を追加しました。各カテゴリ100人までの読者数を確認可能です。自作品の読者数把握の参考にご利用下さい。※P.15〜P.20に掲載 (2023.9.8時点確認の各カテゴリptより算出) ◆「結局、アルファポリスの24hポイントって何なの!」ってモヤモヤ感を短いエッセイとして書きなぐっていましたが、途中から『24hポイントの仕組み考察』になってしまいました。 ◆「せっかく増えた数百ptが1時間足らずで消えてしまってる?!」とか、「24h.ptは分かるけど、結局、何人の読者さんが見てくれてるの?」など、気付いた事や疑問などをつらつら上げています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...