命あってのものだねです。マネしないでくださいね。

冬陽

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2020年2月第2週目。まな板の上のコイになりました。

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いよいよ、手術当日です。

朝起きて、でも朝食は当然用意されなくて、カーテンの向こうの同室の方たちの食事をしている音を聞きながら、10時までは許されている水分補給、お茶をのんですごしました。

ほどなく夫もやってきて、でもはっきり言って、二人とも、することがない。
なので、私はパズル誌をといて、夫はスマホゲームに興じるという。

……私のパズル誌、ラノベ小説やコミックに持ち替えたら、
夫婦二人の、用事のない日の、普通の休日やんか。
どこまでも、通常運転な似た者夫婦。

やがて、昼食の時間となり、同室の方々に配膳されていく中。
とりあえず夫に、1Fのコンビニなり喫茶なりに行って昼食取ってくれば?
と声もかけるも、
いつもより遅い朝食だったことと、手術予定が早まるかもって言われていたので、
一緒に待機しているとの返事でした。

水分補給もできなくなり、なんとはなしに空腹感を持ちながら、
ベッドの上でパズル誌と格闘していましたらば。

そこに、にこにこ顔の副担当医がおいでまして。
「冬陽さん、予定が早まりました。今から手術になります。準備しましょうね」
…予定より2時間近く早かったです。

全身麻酔になるので、血栓予防に両足に圧力のかかった靴下を履き…
…すいません。あまりの固さ?に看護師さんに履かせてもらいました。
手術用寝間着(いわゆる浴衣タイプ)をもって手術室手前に移動。
着替えて、さあ、手術室に入り、手術台に。

予想以上に、手術台って狭いんだなあと思いつつ
ベッドによじ登りました。
そして横たわりますと、看護師さん達や麻酔の先生が手際よく私の周りで準備開始。
手に、点滴用の針をさして、呼吸マスクをセットされ。

「はい、今から麻酔かけますね~」
と声を掛けられました。
と、ほんのわずかな時間差で、天井にある手術用ライト(まだ消灯中)がぐるぐる回るではないですか。

『おお! 麻酔が効きはじめてきた!
すごい!目が回るかもしれないぐらい、ライトが回っている!』
うん、お酒飲んでも、こんな風に目は回らない。
麻酔の効き目ってすごいと体感しました。

↑↓なんてことを心で思っていたのはわずか1~2秒と思います。

『これ以上ぐるぐる目を回して吐き気もよおしたら、ヤバいよね。
で、吐くとかって横向いて、でも手術台狭いからおっこちちゃ危ないな。
ひとまず目を閉じて、落ち着こう』

と目を閉じました。

ら、そこでいきなり看護師さんに
「冬陽さん!」
と名を呼ばれ、
「はい!」と返事をしました。

『まだなんか、手術に向けて説明とか注意とかあんのかな?』
と思った私に、看護師さんは言いました。

「無事、終わりましたよ」と。

はぁ???
今、目を閉じて、その直後、名を呼んだよね?
なにが終わったの???




結論。
麻酔が効き始めたなぁと思って目を閉じて、
その直後に名を呼ばれて目を開けたら、
手術は終わっておりました。

目を閉じて、直後に名を呼ばれたように思いましたが、実際は2時間少々の時間が過ぎていたようです、はい。
全身麻酔、すごすぎるやろ……。

ちなみに、切った場所に痛みはありません。
痛み止めを点滴されていたのもあるんでしょうが、
驚くほど切った場所に痛みを感じることはありませんでした。
傷跡周辺、しびれた感じがあるだけです。

ちなみに、寝ている間に手術台から移動用ベッドに移されていました。
……体重、重いのに、大変だっただろうなと。

術後、ひとまず小一時間は念のためICUで様子見。
血圧やらなにやら、心電図やらモニターされました。
もちろん酸素マスクもセットされたまんま。

点滴。酸素マスク。心電図用コード。
切った場所とは別に、一か所小さく穴をあけられ、
ドレーン用のチューブをセットされてました。
…そして、尿カテーテル。

動けん!
私、あおむけで寝られない人間でして、寝るときはいつも横向き。
なのに、いろんな管のせいで、横にころがれない!
しかも、意識がなかったとは言え、2時間強、同一姿勢でいたためか、
背中(の筋肉?)が痛い。

はやく、病室に戻りたかったです。
しかも、のどが強烈に乾いてて、水分が欲しかった。


ようやく小一時間たって、体調に不安要素が見受けれらないので
病室に戻りしてもらえました。
この時点で、まだ4時前。

のどが渇いてお茶を飲みたいといいましたら
「まだ、術後すぐなので我慢してください。
そうですね、体調がよいなら6時過ぎてからならお水を飲んでくださって大丈夫ですよ」
とのこと。

看護師さんの目がないので、
ベッドのフレームに手をかけて、こっそり40度ぐらいの角度で横向きになったりして、
自分なりの楽な態勢をとりました。

痛みは感じないけど、手術はやはり体に負担だったみたいで、
体が重く感じました。

なんやかやで、ようやく6時。
夫にペットボトルのお茶を渡してもらい、乾ききったのどをいやしました。

そして、気付く。
そう、全身麻酔のあとなので、本日の夕食はなし。
麻酔で止まっていた内臓がちゃんと動きだすまで、固形物なし!でした。



こまめに見に来る先生が、おなかの音を聞いて、
「内臓は動いてますね。ガス、でました?」
「いえ、まだ出ていません」(←私)
「そうなんですか? 内臓は活発に動いているのにねぇ。
まあ、すぐにガスも出るでしょう!」
と。

そうなんです。
ガスは確かに出ていなかった。
しかし、私のお腹は6時の時点で、盛大に鳴っていたんですね。

なので、空腹感に耐え、寝ては目を覚まし~という浅い眠りで一晩過ごしました。




なお、夫は、7時に(翌日から仕事があるので)帰ってもらいました。

そんな夫は、手術後医師に、「切除した腫瘍、ご覧になります?」
と聞かれ、
激しく首を横に振り、全身で見事なぐらい拒否したそうです。スプラッタは苦手だから。



腫瘍は、そのまま、病理検査に出されました。

実際に取り出した腫瘍をみた担当医は
「乳がんではなく、葉状腫瘍と思います。本当にガン細胞がないのか、また悪性か良性かなどは、詳しく調べ、最終的な結果は退院するころには出ると思います」
という診断でした。

ついでに、腫れのあったリンパ節は、転移の形跡がみられなかったので、温存されました。


切除して、ようやく、最悪のパターンは免れていることが判明しました。

あとは療養のみ!




というか、早くカテーテルやマスクや点滴等々の管、外してほしいと思った
手術翌日の早朝でした。
動きたい! 心行くまで横寝したい!


★★★★★★★★★★★★★★★

最悪の「乳がん」という結末は、この時点でほぼ消えました。
素人判断ながら、「良性の転移しない葉状腫瘍」なんだろうと。

本当に、運がよかっただけの私。

しかし、運のよかった私とは別に、
世の中には、
「胸にできたしこりは、乳がんだった」
という人は確実にいるんです。

私は、たまたま乳ガンではなかった。
でも、これを読んだ「しこりがあるけど、未検査で~」という人が
私と同じ『乳ガンではない』という結果は、断言できません。
むしろ、『乳ガンだった』とか『悪性の葉状腫瘍だった』という可能性の方が高い。


一年もほったらかしで、たまたま良性の腫瘍だったから、
私は、現在も生存できています。

もし、これが乳ガンだったり、葉状腫瘍の悪性だったなら。
私は、ガンのステージ最終に近い状況になっていたり、
悪性の葉状腫瘍が体のあちこちにできた挙句の、すでに火葬済だった。

まだまだ母親を頼りにする、中学1年と小学5年の子供を父子家庭にせずに済んだのは、
本当に運がよかったから。


胸にしこりを見つけたら、私のようにぐだぐだせずに、すぐに病院で検査してください。
たとえ乳ガンだったとしても、初期なら生存率をすごく上げられるし、
治療方法もいろいろ選べたり試せますから!





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