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第二章  【西の王国】

2-37 次の業務

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「えぇっ!?」




この中で一番驚いたのは、エレーナだった。




「な、なんでエレーナがそんなに驚いてるのよ!?」


「だ……だって、初めて聞いたんだもん」



エストリオが、エレーナの言葉に本意を告げる。




「それはね、お前の身を守る為だったんだよ。エレーナ……」


「つまり、エストリオさんは諜報員で敵も多かった。幼かったエレーナに余計な心配をかけないために黙ってた……ってところですかね?」




ハルナは名探偵よろしく、ワザワザ人差し指を立てて推理して見せた。





「えぇ。まぁ、そんなところです……でもこれは秘密事項なので他言無用でお願いしますね」



エストリオは、ハルナの推理に笑いながら答えた。




「――おっと、長居し過ぎたな。黙って抜け出してきたから、そろそろ戻らないと」


「あ。最後にひとつだけ教えてもらえませんか?」





その言葉に、慌ててハルナが質問する。





「ん?なんでしょう、ハルナさん」


「今回のこの問題……これで終わりでしょうか?」




エストリオは、顎を撫でながら目を瞑る。





「もう大丈夫です……と言いたいところなのですが、いまのところこれ以降の動きの確かな情報は入っておりません。しかし、王選という儀式は何が起きるかわかりませんし、様々な思惑が混じり合うものでもあります。油断は禁物です、気を付けて下さい」



エストリオのこの言葉は、今までの中で一番の重みがあった。




「はい、ありがとうございます!」





ハルナは、真剣に身を案じてくれているその言葉に、素直に礼を述べた。

エストリオは、父親の顔になりエレーナに向く。




「お前は、お前なりにやればいい。がんばれよ、エレーナ」



そういって、エレーナの頭を撫でた。

エレーナは、何も言わずにただその言葉にひとつだけ頷いた。


エストリオは背中を向け、ドアに向かって急ぐ。




「たまには、ラヴィーネに帰ってきてね!」




エレーナが後ろから声を掛けると、エストリオは振り向いて笑顔で返した。


エストリオは、城に戻っていった。










その夜、王選に参加する精霊使いはハイレインに呼び出された。
相変わらず周りの従者は、ハルナたちへの態度は冷たい。

今回の呼び出しは、以前のような堅苦しい儀式ではなく、ただ連絡事項を伝えるためだった。

ハルナとエレーナが入った後に、クリエ、ルーシーが入ってきた。
四人が集まったところで、最後にハイレインが入ってきた。





「忙しい中、集まってくれて感謝する。今日は、これからのことを説明しようと思う……と、祝いの言葉を忘れてたな。これでようやく、王選に参加する四人が確定した、おめでとう。特にハルナ。見極めへの参加、いろいろご苦労だった」


ハルナは、ハイレインの言葉にペコリと頭を下げる。

ルーシーが横目でハルナを見る。





「そして、これからの事だがいくつかやって貰いたい事がある」


「それは……どのような内容でしょう?」




確認したのは、クリエ。

その質問に、ハイレインはニヤリと笑う。




「そうだな……先ずお前たちがやることは、王選お披露目パレードに参加してもらおう」


「え?そ……それは何をするもので?」




言葉から、自身には苦手なものだと想像するが念のため、ルーシーは確認してみた。





「ん?言葉通りの意味だ。お前たちには民衆の前で、王子と一緒に街中をパレードしてもらう!」


「えっと……こんな格好しか持ってないんですけど」




ハルナは体格が隠せるような、ややゆったりめのワンピースを着ていた。
普段着としては良いが、大勢の人前で着れるようなものではない。
あと持ってきたのは、旅用の丈夫なローブくらい。





「安心しろ……そこは私の私物を貸し出そう」



今までにないくらいにハイレインが楽しそうにしているのを見て、嫌な感じがする四人だった。


衣装合わせは後日行うこととなり、この場は解散となった。



と、部屋を出ようとしたとき、ハルナより一回り年上くらいの従者がハルナに話しかけにきた。





「ハルナ様ですね……」


「あ、はい。そうですけど……」


「わたくしハイレイン様一筋なのですが、あなたのことが気になるの……なんだか、以前かわいがっていた子に感じが似ているのよ」




(ちょっと、ペットに似てるなんて失礼ね!?でも、猫か犬かしら?)


「……そうなんですね。その子は、オスでした?メスでした?」



「あら、あなたも”そっち”の方なの?……うふふふ、うれしいわ。以前飼っていたのはメスよ」



「メスなんですね、可愛かったでしょうね!」


「そうなの、この子がまた”いい声”で鳴いてたのよ」



「いまは、どうされたんですか?その子」



「もう……辞めちゃったのよね。田舎に帰るとかで」


「辞めた?……あの、犬か猫じゃないんですか?」



「うふふふ、近いけど違うわね。……メイドよ」


「え!?」




「もし何か困ったことがあったら、いらっしゃいな。うちの家で面倒見るように言ってあげるわ」


従者はぺろりと唇をなめる。


「は……はい。”もしも”そういう時があればよろしくお願いします」




「それとね……ハイレイン様の趣味はあの性格とギャップがあるのよ、驚くと気分を損ねるから気をつけなさいね」


それじゃ、といいながら話しかけてくれた従者は部屋を出ていった。



「ハル姉どうしたの?具合が悪いの?顔が真っ青だよ」


「ん、大丈夫よ。少し驚いただけだから……」



「ふーん……」




ハルナはフウカと一緒に部屋を出てい。
気が付けば、最後の一人だった。

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