問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』

山口 犬

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第四章  【ソイランド】

4-28 探索

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「ねぇ……よしましょうよ」


「大丈夫だって、サナ。怖いなら付いてこなくてもいいんだよ?」


「違う、怖くなんかないの。でも、嫌な予感がするし……勝手に動くのは良くないんじゃないの?」


「今がチャンスなんだよ、アイツらみんな警備兵に連れていかれてたじゃないか」




ブンデルとサナは、ステイビルたちがパインの屋敷に招待されているなか別行動をとっていた。
それは、ステイビルたちに一言も告げていなかった。

チェイルがヴェスティーユに連れさられ、町に入ってきたときに追われていた男たちに引き渡されていた。
ステイビルたちに発見されたときには、痛めつけられてたチェイルの姿を見てブンデルは怒りを覚えた。

『せっかく……サナが直した身体を!!』


襲撃する際に、攻撃の魔法は使わない様にとステイビルから強く言われていた。
理由はサナと似ているところがあり、魔法の存在は知られているが人間には使える者が少ない。
攻撃や防衛の要としてその力を利用しようとしている者は少なからず人間側にいる。
もしも迂闊にブンデルの魔法の……決して弱くはない力を見せることにより、今度はブンデルが狙われる対象となる可能性も充分にあるとブンデルを諭した。

そのため、襲撃時にはブンデルはエルフらしく背中に下げていた弓を使って対応していた。
しかし、相手はそんなに訓練された者たちでもないため、前衛のアルベルトとソフィーネと後方から精霊使いの力による支援だけで、相手の抵抗は封じられていた。
ブンデルは、逃げ出そうとしている者を矢で威嚇しその場に留めておくことが主な仕事になっていた。



「ここだったな……ぐぇっ!」


ブンデルは戦闘の痕が残る、建物の入り口に足を踏み入れる。
何の警戒もないブンデルの上着の後ろを手で、先走ろうとするブンデルを手綱で制するように後ろに引っぱられて喉が詰まる。

「さ、サナ!?な、何をす……る」

ブンデルはサナに抗議しようとしたが、言葉が詰まってしまう。
サナの顔は言うことを聞かないブンデルに対し、不快感を精一杯示す表情で睨んでいた。


「ご……ごめん」

「こういう時はもう少し慎重になってくださいね!」



小さな姿の”怒った顔も愛らしいな……”と思いながら、表情が緩まない様に必死にブンデルは堪えている。
きっと、ここで表情を緩めてしまうとふざけているとサナに怒られてしまうのは容易に想像できた。


ブンデルは気を引き締めて、明かりの点いていない部屋の中を隙間から差し込む夕日の明かりだけで進んでいく。



ここにある物は足の折れた椅子、盾替わりにした倒れたテーブルなどガラクタばかりが散乱している部屋ばかりだった。
警備兵がこの場所にある物を検証するために、ほとんどの物を持ちだしていた。
そのため、今となってはここが何のために利用されていた場所か想像することすらできないほど物が何もなかった。


「何かあるんじゃないかと思ったんだけどなぁ……」


ブンデルは後頭部をポリポリとかきながら、照れ隠しのような仕草をする。


「ふーん……何もなさそう……ですね?」


後ろから遅れて小さな姿で瓦礫を乗り越えてくるサナが、ブンデルの後を必死に追いかけてくる。


「大丈夫か、サナ……ほら」


そういってブンデルは、サナの太ももの高さほどある倒れた棚を乗り越えてこようとするサナに手を差し伸べる。


「……はい!」


サナは差し出されたその手を嬉しそうに掴み、ブンデルに身体を引き寄せてもらった。


――ガタっ!


「きゃふんっ!!」



乗り越えるために足を掛けていた瓦礫が崩れ、サナは引っ張られたブンデルの胸の中に顔をうずめる形になった。



「だ……だいじょうぶか、さ、さ、サナ?」


サナのことを心配しながら、ブンデルは胸の中に入り込んできたサナの柔らかい身体を優しく抱き締める。
サナも抵抗することなく、この偶然のタイミングでブンデルの温もりを楽しんでいた。


「……はい」


目を閉じると、ブンデルの鼓動が接した頬にわずかに伝わってくる。
そして埃のようなサナの好きなブンデルの匂いが、嗅覚を満たし幸せな気持ちになる。
近頃は移動ばかりで、二人きりになれることが少なかった。
もしかして、ブンデルは自分と二人きりになりたいためにステイビルたちと別行動をとってくれたのではないか……
サナの幸せ回路が、状況を自分の都合の良いように変換して分析する。


この姿勢のまま数分が経過する――
それでも二人は誰も見られていないことをいいことに、離れようとする気配は見せなかった。


そして、ブンデルこの旅で考えていたことをサナに告げる。


「サナ……この王選が終わったら……旅をしようと思うんだけど……一緒に……その……付いてこないか?」


サナの身体に電撃が走る。
ブンデルが、自分を旅に誘ってくれたことに……

元々サナは外の世界に興味があり、ブンデルが自由に森の中で生活していることをうらやましく思っていた。
その憧れていた旅を、大好きなブンデルの方から誘ってくれた。
サナの心臓は、破裂しそうなほど強く早く拍動する。


「……は」



――カタン



先程崩れた、瓦礫から重なり合ったバランスが崩れた何かが音を立てた。
それによってサナの返事は中断され、ブンデルとサナは甘い時間から現実に引き戻された。


「ん……これは?」


ブンデルは音がした場所を見ると、床の板が外れそこには空間のようなものが見えていた。











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