482 / 1,278
第四章 【ソイランド】
4-28 探索
しおりを挟む「ねぇ……よしましょうよ」
「大丈夫だって、サナ。怖いなら付いてこなくてもいいんだよ?」
「違う、怖くなんかないの。でも、嫌な予感がするし……勝手に動くのは良くないんじゃないの?」
「今がチャンスなんだよ、アイツらみんな警備兵に連れていかれてたじゃないか」
ブンデルとサナは、ステイビルたちがパインの屋敷に招待されているなか別行動をとっていた。
それは、ステイビルたちに一言も告げていなかった。
チェイルがヴェスティーユに連れさられ、町に入ってきたときに追われていた男たちに引き渡されていた。
ステイビルたちに発見されたときには、痛めつけられてたチェイルの姿を見てブンデルは怒りを覚えた。
『せっかく……サナが直した身体を!!』
襲撃する際に、攻撃の魔法は使わない様にとステイビルから強く言われていた。
理由はサナと似ているところがあり、魔法の存在は知られているが人間には使える者が少ない。
攻撃や防衛の要としてその力を利用しようとしている者は少なからず人間側にいる。
もしも迂闊にブンデルの魔法の……決して弱くはない力を見せることにより、今度はブンデルが狙われる対象となる可能性も充分にあるとブンデルを諭した。
そのため、襲撃時にはブンデルはエルフらしく背中に下げていた弓を使って対応していた。
しかし、相手はそんなに訓練された者たちでもないため、前衛のアルベルトとソフィーネと後方から精霊使いの力による支援だけで、相手の抵抗は封じられていた。
ブンデルは、逃げ出そうとしている者を矢で威嚇しその場に留めておくことが主な仕事になっていた。
「ここだったな……ぐぇっ!」
ブンデルは戦闘の痕が残る、建物の入り口に足を踏み入れる。
何の警戒もないブンデルの上着の後ろを手で、先走ろうとするブンデルを手綱で制するように後ろに引っぱられて喉が詰まる。
「さ、サナ!?な、何をす……る」
ブンデルはサナに抗議しようとしたが、言葉が詰まってしまう。
サナの顔は言うことを聞かないブンデルに対し、不快感を精一杯示す表情で睨んでいた。
「ご……ごめん」
「こういう時はもう少し慎重になってくださいね!」
小さな姿の”怒った顔も愛らしいな……”と思いながら、表情が緩まない様に必死にブンデルは堪えている。
きっと、ここで表情を緩めてしまうとふざけているとサナに怒られてしまうのは容易に想像できた。
ブンデルは気を引き締めて、明かりの点いていない部屋の中を隙間から差し込む夕日の明かりだけで進んでいく。
ここにある物は足の折れた椅子、盾替わりにした倒れたテーブルなどガラクタばかりが散乱している部屋ばかりだった。
警備兵がこの場所にある物を検証するために、ほとんどの物を持ちだしていた。
そのため、今となってはここが何のために利用されていた場所か想像することすらできないほど物が何もなかった。
「何かあるんじゃないかと思ったんだけどなぁ……」
ブンデルは後頭部をポリポリとかきながら、照れ隠しのような仕草をする。
「ふーん……何もなさそう……ですね?」
後ろから遅れて小さな姿で瓦礫を乗り越えてくるサナが、ブンデルの後を必死に追いかけてくる。
「大丈夫か、サナ……ほら」
そういってブンデルは、サナの太ももの高さほどある倒れた棚を乗り越えてこようとするサナに手を差し伸べる。
「……はい!」
サナは差し出されたその手を嬉しそうに掴み、ブンデルに身体を引き寄せてもらった。
――ガタっ!
「きゃふんっ!!」
乗り越えるために足を掛けていた瓦礫が崩れ、サナは引っ張られたブンデルの胸の中に顔をうずめる形になった。
「だ……だいじょうぶか、さ、さ、サナ?」
サナのことを心配しながら、ブンデルは胸の中に入り込んできたサナの柔らかい身体を優しく抱き締める。
サナも抵抗することなく、この偶然のタイミングでブンデルの温もりを楽しんでいた。
「……はい」
目を閉じると、ブンデルの鼓動が接した頬にわずかに伝わってくる。
そして埃のようなサナの好きなブンデルの匂いが、嗅覚を満たし幸せな気持ちになる。
近頃は移動ばかりで、二人きりになれることが少なかった。
もしかして、ブンデルは自分と二人きりになりたいためにステイビルたちと別行動をとってくれたのではないか……
サナの幸せ回路が、状況を自分の都合の良いように変換して分析する。
この姿勢のまま数分が経過する――
それでも二人は誰も見られていないことをいいことに、離れようとする気配は見せなかった。
そして、ブンデルこの旅で考えていたことをサナに告げる。
「サナ……この王選が終わったら……旅をしようと思うんだけど……一緒に……その……付いてこないか?」
サナの身体に電撃が走る。
ブンデルが、自分を旅に誘ってくれたことに……
元々サナは外の世界に興味があり、ブンデルが自由に森の中で生活していることをうらやましく思っていた。
その憧れていた旅を、大好きなブンデルの方から誘ってくれた。
サナの心臓は、破裂しそうなほど強く早く拍動する。
「……は」
――カタン
先程崩れた、瓦礫から重なり合ったバランスが崩れた何かが音を立てた。
それによってサナの返事は中断され、ブンデルとサナは甘い時間から現実に引き戻された。
「ん……これは?」
ブンデルは音がした場所を見ると、床の板が外れそこには空間のようなものが見えていた。
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
転生したので好きに生きよう!
ゆっけ
ファンタジー
前世では妹によって全てを奪われ続けていた少女。そんな少女はある日、事故にあい亡くなってしまう。
不思議な場所で目覚める少女は女神と出会う。その女神は全く人の話を聞かないで少女を地上へと送る。
奪われ続けた少女が異世界で周囲から愛される話。…にしようと思います。
※見切り発車感が凄い。
※マイペースに更新する予定なのでいつ次話が更新するか作者も不明。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる