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第六章 【二つの世界】

6-185 自信

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「頑張っているな……ガレム」


「あぁ……今のところコレしかやることがないんでね」



ステイビルから声を掛けられたガレムは、元王子に対して不適切な態度で返事をする。
あの後ミカベリーからステイビルが、元王子であることを知らされた。それでもガレムの反応は何もなく『ふーん』と一言漏らしただけだった。
それでもステイビルやアルベルトは、ガレムの態度に対して何かを言うことはなかった。



「アンタもやることが無いんだったら、俺と一緒に……やらないか?」


「あぁ、それもいいな……だが、あいにく暇ではないのでな。それに、お前のことはアルベルトに任せてある、充分に学ぶがいい」



「――ちっ!?」


ステイビルはそういうと、ガレムに背中を見せてこの場を離れる。
アルベルトは、ステイビルの背中に頭を下げてこの場に来てくれたことに感謝の意を示した。















そこから少し離れたところで、ステイビルの後ろを付いて歩くハルナが声をかける。


「あの……アルベルトさんに用があったのではなかったんですか?」


「はい、そうなのですが……なんだか急に恥ずかしくなりまして」




ハルナは、常に自信があふれているステイビルにも、恥ずかしくなることがあることに驚いた。




町を見回っていた際、ステイビルからの急な告白。
そのことに対し、ハルナはステイビルに応えることができなかった。
ハルナ自身もどうすればいいかわからず、誰かに相談したい気持ちだったがその相手がいない。

本当はステイビルが諦めてくれることを望むが、この先の状況を考えると今後の付き合いなどが生じてくる可能性の方が十分に高い。



「はぁ……」



ハルナは、少し距離の開いたステイビルの背中を見ながらため息を漏らす。



(どうしたらいいのかなぁ……)


「アンタ、何やってんのさ……こんなところで」


ハルナに声をかけた女性は、ハルナの行動に呆れながら忠告する。


「きっとアンタのことだから、変なこと考えてたんでしょうよ。ステイビルに置いていかれたみたいだね。愛想をつかされたんじゃないの?」


ハルナは周囲を見渡すが、一緒に歩いていたステイビルの姿はない。
この場に現れたサヤがその姿を消してしまったのではないかという思いもあったが、そんなことをしても意味がないと考え、自分でも愚かに思える考えをすぐに否定する。



ステイビルも、自分のことをほっといていくなんてあんまりではないかと考えたが、ステイビルの今の状況を考えれば自分と同じで余裕がない状況なのだろうと前向きに判断した。


ハルナは周囲を見回す……幸いにして、この場にいるのは自分とサヤの二人だけで、扉の向こうに誰かがいるような気配もない。
ハルナは意を決して、自分の中にあるモヤモヤをサヤにぶつけていった。



「ねぇ、サヤちゃん」


「なに?ちょっと忙しいんだけど……」


話しかけられたサヤは、いつも通りに不機嫌な返答をする。
だが、これは本当の不機嫌ではなく、サヤの性格によるものであることをハルナは知っている。
だからこそ、この対応は気にすることなく、本題をサヤに投げ掛けた。





「ねぇ……いま、好きな人っている?」






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