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第六章 【二つの世界】
6-296 不可能なこと
しおりを挟むハルナが盾の創造者からの選択を迷っていると、サヤがハルナに声をかけてきた。
「なんなんだよ?急に黙ってさ……アタシが一体なんだっていうのさ?」
「あ……え?」
ハルナは、盾の創造者から選択を迫られる前の状況を思い出した。
妹の風香を危険に晒していたサヤの行動に怒りを覚えていたが、それ以上の疑問が頭の中を占めていたために、その怒りはどこかに消えてしまっていた。
(たいしたことないのかな?忘れるくらいなら……)
ハルナはそう判断して、再びサヤに意識を向ける。
「その……えっと……他に何かあるの?」
「……はぁ!?」
サヤはハルナの言葉に対し、呆れたような声をあげた。
自分が話した内容は、ハルナにとって決して聞き流せるような話ではなかったはずだった。
しかし、ハルナはその内容について、何も感じていないかのような対応を見せた。
サヤはそのハルナの反応について残念に思い、さらなる言葉を重ねていった。
ハルナが大切にしていた本に折り目を付けてしまい、それを返さずいたままのこと。
二人に共通する男友達が、サヤに対してハルナのことを聞いていた時に、ハルナのありもしない愚行をでっちあげて伝えたこと。
その他にもハルナの悪い噂を流すために、様々な行動を取っていたことを明かした。
だが、ハルナにとってはそれらの話しは、風香の話し以降なんということはなかった。
それ以降の話しでは、自分にとって何の被害も受けていないし、他人から受ける自分に対する評価など、ハルナにとってはどうでも良いことだった。
さっきの話しほどに何の反応を見せないハルナを、サヤは舌打ちをしながら感情を逆なでさせることに失敗したのだと悔やむ。
そんなサヤのことを見ながら、ハルナは気になっていたことをこの場でサヤに確認しようと口を開いた。
「ねぇ、サヤちゃん……聞いていい?」
「ん?……なに?」
「サヤちゃん、さっき……私が繋がっているかって聞いたよね?それって何なの?」
ハルナは盾の創造者から聞いていたが、サヤにそのことを聞くべきだと思い、繋がっているという事実は別として警戒されないようにその内容について問いかけた。
「あぁ……そうだね。でもその様子じゃあ、まだ繋がっていないってことか?」
ハルナはその言葉に対し、何の反応も見せなかった。それは、自分が持つ情報と、サヤから語られる情報にどのくらいの差があるのかを確かめたいという気持ちもあった。
今回の行動に対して、盾の創造者からは何の反応もない。このまま黙って状況を見守るということだと判断した。
「……うん。繋がるっていうことは、この剣や盾の持つ能力を契約した者に与え、能力が向上するってことさ」
ここまでは、ハルナが事前に聞いた内容と一致しているため何の問題もない。
ハルナは、この後にどうやって情報を引き出そうとしようか考えていると、サヤはその続きを語り始めた。
「だけどね……一度つながると、もう解除はできないんだよ」
「え?それ、どういうこと?」
「どうもこうもないさ、いま言ったままのことだよ。ハルナ」
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