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第六章 【二つの世界】
6-352 サヤとハルナと4
しおりを挟む「……もう、状況が見えないくらいに逆上しちゃってるの?」
盾の創造者は両手を伸ばし、サヤの身体を掴みにかかった。
しかしサヤは、その直進的な攻撃とも呼べないお粗末な行動に対して、軽く身をひねって交わした。
と同時に、通過していくその身体につま先を出し、ハルナの足を引っかけた。
――ドサッ!!
『――ぐえっ!?』
今までハルナから聞いたことのないくらいの情けない声が、倒れ込んだ大きな音とともに聞こえた。
その無様な姿を視線の下に、サヤは笑みを浮かべることもなく床に這いつくばっている姿を見ていた。
しかし、警戒は最高レベルを保ったまま、いつでも背中の剣を抜くことを意識し準備をしている。
情けない姿で横たわったままの盾の創造者は、床に額を付け握った両手は感情が握りしめられて震えているのがみえる。
それもそのはずと、サヤは考える。
今まで存在してきた永い時間の中で、この世界の生物をどのようにもできたヒエラルキーの頂点に君臨していた存在であった。
だが――同じ存在と協力しているとはいえ――目の前の一人の女性によって、そのプライドをズタズタに引き裂かれている。
「……どうした?もう終わりか?」
サヤは、盾の創造者の背中に声をかけた。
その声に反応して、ゆっくりと手をついて膝を立て、身体を四つん這いの状態になった。
『サヤ……あなたは何を……どこまで知っている?』
「はぁ?何言ってんの?……そうだね、知っているっていうより、ここまではすごく予想が当たっているっていう感じかねぇ」
『予測……?ここにきたことも?』
「まさかこんなにまで当たるとは……ねぇ?アタシの勘も捨てたもんじゃないね!!」
サヤは自慢げに、四つん這いになったままのハルナの上からここに来た理由を語った。
「ハルナとつながれないアンタがとろうとした行動は、まずはハルナを何とかして味方に付けようかと考えてんじゃないかって思ったんだ……そしたらまず、ハルナの希望を叶えてやるために動くと考えたんだよ」
そこからサヤは、盾の創造者が生き物を創りだす能力があることから、”フユミ”を復活させてあげると持ち掛けたのだろうと推測する。
そこで考えたのは、『見たこともない存在をそのまま再現できるのか』ということだった。
もしも盾の創造者が全く違うフユミを創り出してしまうのならば、それはハルナの怒りを買うだけで協力などありえない結果となるだろう。
ハルナの記憶の中から創り出すのであれば、勝手にハルナの頭の中を覗くことになり、それもまたハルナの怒りを買うことになる。
となればフユミの存在を取り込み、その情報からハルナの知るフユミを創り出すのではないかと考えていた。
「……だから、アタシたちはアンタがここに来ることを予測してきたってわけ。フユミさんの死体を掘り返すことができなかったら、この世界でフユミさんに近かった宿屋の婆さんを取り込むつもりだったろ?だからそれは先回りして、婆さんとその関係者はこちら側で確保させてもらったよ」
『ふ……うふふふ……そう……そうなの』
盾の創造者は、どういう感情からか分からないが薄い笑いを浮かべた。
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