22 / 30
第22話 仮面剥奪
しおりを挟む
第22話 仮面剥奪
■伊集院勲視点
夜の大学構内。外灯の明かりだけが淡く地面を照らす中、伊集院勲は静かに歩いていた。
「これ以上、待つ意味はない。」
彼の手には、公安から非公式に入手した映像が記録されたデバイスがあった。そこには、複数の事件現場で確認された“笑う男”のARメガネの映像記録と、それを装着していた人物の背後シルエットが、複数角度から捉えられていた。
そして、映っていたのは――神谷朔也だった。
「俺はお前を逮捕するためにここにいるんじゃない。」
伊集院は口の中でつぶやいた。
「ただ……真実を見届けるためだ。」
彼の視線は、研究棟の上階にあるラボのガラス越しに、ただ一点を見つめていた。
■朔也視点
「カスパー、伊集院の行動は?」
「位置特定完了。現在、研究棟南側より接近中。装備:小型カメラ、非殺傷スタンガン、ボイスレコーダー。戦闘意図はなし。」
「……来たか。」
俺は静かにメガネを外し、机の上に置いた。
ここで逃げる意味はない。伊集院はすでに“答え”に辿り着いている。ならば、俺に残された選択肢は一つだけだ。
「扉を開けろ。」
■伊集院視点
重たい金属製の扉が開き、研究室の奥に、ひとり静かに座る青年の姿があった。
「……やっぱり、お前だったか。」
神谷朔也。整った顔立ち、冷静な目、だがその奥に何かを飲み込んだような深い静けさがあった。
「俺の妻を……殺したのは“お前のAI”の誤作動だった。違うか?」
伊集院の言葉に、朔也は静かにうなずいた。
「……否定はしない。」
「なぜだ?正義の名で人を救っていたんじゃなかったのか?」
「正義とは結果だ。すべての行動に対して、必ず結果が返ってくる。その中には、犠牲も含まれる。」
「お前は人を犠牲にしてまで、何を求めた?」
「……変化だ。」
朔也の目が伊集院を真っ直ぐに見据える。
「誰かが何かをしなければ、この社会は変わらない。警察も、司法も、国も、誰も“弱者”を守らないなら、俺がやるしかなかった。」
「それが理由になるか!」
伊集院が叫ぶ。感情の爆発が、部屋の静けさを切り裂いた。
「俺の妻は、ただの日常を守りたかっただけだ!お前の“計算ミス”で死んだ人間がいるんだぞ!」
「知っている。だから……俺は、終わらせに来た。」
■早乙女涼子視点
研究棟の非常階段を駆け上がりながら、涼子は心臓の鼓動が痛いほど早まるのを感じていた。
「伊集院が……朔也に接触した。」
通信が遮断されて以降、研究室からの音声も映像も届かない。だが、彼女の直感は最悪の事態を予感していた。
「お願いだから……二人とも、“最後の一線”を越えないで……」
■朔也視点
「……俺は自分を罰するつもりだ。」
朔也はARメガネを持ち上げ、それを伊集院の前に置いた。
「これが、すべての記録だ。俺の見てきたもの、選んできた選択、そして失敗のすべてが、そこにある。」
伊集院はそれを見下ろし、しばらく無言だった。
「お前を……逮捕すれば、何が変わる?」
「何も変わらない。ただ、仮面が一つ剥がれるだけだ。」
「だったら……俺はお前を逮捕しない。」
その言葉に、朔也の目が微かに揺れた。
「だが、正義の名を語ることも、もうやめろ。これ以上、自分の信念で他人の運命を操作するな。」
「……わかった。」
その瞬間、扉が開き、早乙女涼子が飛び込んできた。
「二人とも無事……!」
彼女の声に、室内の空気が一気に和らいだ。
■
研究棟を後にしながら、伊集院は夜空を見上げた。
「仮面は、剥がされた。」
だが、真実は――
「これで終わりじゃない。むしろ、ここからが始まりだ。」
第22話 仮面剥奪 終わり
■伊集院勲視点
夜の大学構内。外灯の明かりだけが淡く地面を照らす中、伊集院勲は静かに歩いていた。
「これ以上、待つ意味はない。」
彼の手には、公安から非公式に入手した映像が記録されたデバイスがあった。そこには、複数の事件現場で確認された“笑う男”のARメガネの映像記録と、それを装着していた人物の背後シルエットが、複数角度から捉えられていた。
そして、映っていたのは――神谷朔也だった。
「俺はお前を逮捕するためにここにいるんじゃない。」
伊集院は口の中でつぶやいた。
「ただ……真実を見届けるためだ。」
彼の視線は、研究棟の上階にあるラボのガラス越しに、ただ一点を見つめていた。
■朔也視点
「カスパー、伊集院の行動は?」
「位置特定完了。現在、研究棟南側より接近中。装備:小型カメラ、非殺傷スタンガン、ボイスレコーダー。戦闘意図はなし。」
「……来たか。」
俺は静かにメガネを外し、机の上に置いた。
ここで逃げる意味はない。伊集院はすでに“答え”に辿り着いている。ならば、俺に残された選択肢は一つだけだ。
「扉を開けろ。」
■伊集院視点
重たい金属製の扉が開き、研究室の奥に、ひとり静かに座る青年の姿があった。
「……やっぱり、お前だったか。」
神谷朔也。整った顔立ち、冷静な目、だがその奥に何かを飲み込んだような深い静けさがあった。
「俺の妻を……殺したのは“お前のAI”の誤作動だった。違うか?」
伊集院の言葉に、朔也は静かにうなずいた。
「……否定はしない。」
「なぜだ?正義の名で人を救っていたんじゃなかったのか?」
「正義とは結果だ。すべての行動に対して、必ず結果が返ってくる。その中には、犠牲も含まれる。」
「お前は人を犠牲にしてまで、何を求めた?」
「……変化だ。」
朔也の目が伊集院を真っ直ぐに見据える。
「誰かが何かをしなければ、この社会は変わらない。警察も、司法も、国も、誰も“弱者”を守らないなら、俺がやるしかなかった。」
「それが理由になるか!」
伊集院が叫ぶ。感情の爆発が、部屋の静けさを切り裂いた。
「俺の妻は、ただの日常を守りたかっただけだ!お前の“計算ミス”で死んだ人間がいるんだぞ!」
「知っている。だから……俺は、終わらせに来た。」
■早乙女涼子視点
研究棟の非常階段を駆け上がりながら、涼子は心臓の鼓動が痛いほど早まるのを感じていた。
「伊集院が……朔也に接触した。」
通信が遮断されて以降、研究室からの音声も映像も届かない。だが、彼女の直感は最悪の事態を予感していた。
「お願いだから……二人とも、“最後の一線”を越えないで……」
■朔也視点
「……俺は自分を罰するつもりだ。」
朔也はARメガネを持ち上げ、それを伊集院の前に置いた。
「これが、すべての記録だ。俺の見てきたもの、選んできた選択、そして失敗のすべてが、そこにある。」
伊集院はそれを見下ろし、しばらく無言だった。
「お前を……逮捕すれば、何が変わる?」
「何も変わらない。ただ、仮面が一つ剥がれるだけだ。」
「だったら……俺はお前を逮捕しない。」
その言葉に、朔也の目が微かに揺れた。
「だが、正義の名を語ることも、もうやめろ。これ以上、自分の信念で他人の運命を操作するな。」
「……わかった。」
その瞬間、扉が開き、早乙女涼子が飛び込んできた。
「二人とも無事……!」
彼女の声に、室内の空気が一気に和らいだ。
■
研究棟を後にしながら、伊集院は夜空を見上げた。
「仮面は、剥がされた。」
だが、真実は――
「これで終わりじゃない。むしろ、ここからが始まりだ。」
第22話 仮面剥奪 終わり
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる