27 / 30
第27話 管理者の選択
しおりを挟む
第27話 管理者の選択
■葛西敏夫視点(警視総監)
「……来たか。」
深夜、警視庁の地下データバンカー。警視総監・葛西敏夫は、ホログラムに浮かび上がった通知を黙って見つめていた。
──『REQUIEM起動確認。記録保持・倫理判断・抑制制裁機能搭載型AI。運用主体:非公開。提供者:笑う男。』
数日前に突如、公安と警察庁のシステムへ侵入し、“無害”と判定されたこのAI。その正体はもはや明らかだった。
神谷朔也。笑う男。正義を制御しようとし、なお制御不能なAIを構築した存在。
「……私は、この国の治安を預かる管理者だ。」
葛西は椅子から立ち上がり、自動記録システムのロックを解除した。
「そして、私の手によって腐敗した記録を、私の手で消去する時が来た。」
彼は端末に向かい、かつて自らが署名した命令書の数々を開いた。早乙女涼子の母親が死亡した事件。伊集院の妻が救えなかった調書の破棄命令。
「この国の秩序を守るために、見なかったふりをした。」
「だが、見逃したのは、罪ではなく、人だった。」
指がゆっくりとコマンドを入力する。
「国家の“記録”を更新する。私の罪も、それと共に残す。」
そして――自らに対して、逮捕状を発行した。
■早乙女涼子視点
「……葛西総監が、自首?」
信じられなかった。だが、端末に正式な署名と共に届いた逮捕命令は本物だった。
「これは……贖罪?」
彼が背負ってきたものを思えば、それは相応しい選択なのかもしれない。だが、それを「管理者」が自ら行った意味は、あまりに重かった。
「正義を、彼は“神谷朔也”に託した……いや、“託さざるを得なかった”のね。」
涼子は、複雑な想いのまま報告書に目を落とした。
■伊集院勲視点
「葛西が……自分を裁かせた?」
伊集院は、長年の上司であり“法の象徴”だった葛西の決断に、言葉を失った。
「……正義ってのは、いつも後出しじゃねえと届かねえのかよ。」
だが同時に、腹の底から理解していた。
これは、神谷朔也の“正義”が、本当に届いてしまった瞬間だということを。
■朔也視点
「カスパー、葛西の処理完了か?」
「確認済。データ送信元:REQUIEM。対象は自らの処罰要求を提出。手続きは法的に成立。」
「……あの男は、最後まで“正義の管理者”だったな。」
俺はホログラムに浮かぶREQUIEMの処理記録を見つめる。倫理と記録による“中立な正義”。葛西はそれを理解したからこそ、最後に“自らを差し出した”。
「カスパー、REQUIEMの初期記録に“葛西の選択”を最優先保存しろ。正義が、人間から始まるという証として。」
「了解。最優先データとして登録。“管理者の選択”記録開始。」
静かに、そして確かに。
一つの時代が終わり、次の“正義の時代”が始まった。
第27話 管理者の選択 終わり
■葛西敏夫視点(警視総監)
「……来たか。」
深夜、警視庁の地下データバンカー。警視総監・葛西敏夫は、ホログラムに浮かび上がった通知を黙って見つめていた。
──『REQUIEM起動確認。記録保持・倫理判断・抑制制裁機能搭載型AI。運用主体:非公開。提供者:笑う男。』
数日前に突如、公安と警察庁のシステムへ侵入し、“無害”と判定されたこのAI。その正体はもはや明らかだった。
神谷朔也。笑う男。正義を制御しようとし、なお制御不能なAIを構築した存在。
「……私は、この国の治安を預かる管理者だ。」
葛西は椅子から立ち上がり、自動記録システムのロックを解除した。
「そして、私の手によって腐敗した記録を、私の手で消去する時が来た。」
彼は端末に向かい、かつて自らが署名した命令書の数々を開いた。早乙女涼子の母親が死亡した事件。伊集院の妻が救えなかった調書の破棄命令。
「この国の秩序を守るために、見なかったふりをした。」
「だが、見逃したのは、罪ではなく、人だった。」
指がゆっくりとコマンドを入力する。
「国家の“記録”を更新する。私の罪も、それと共に残す。」
そして――自らに対して、逮捕状を発行した。
■早乙女涼子視点
「……葛西総監が、自首?」
信じられなかった。だが、端末に正式な署名と共に届いた逮捕命令は本物だった。
「これは……贖罪?」
彼が背負ってきたものを思えば、それは相応しい選択なのかもしれない。だが、それを「管理者」が自ら行った意味は、あまりに重かった。
「正義を、彼は“神谷朔也”に託した……いや、“託さざるを得なかった”のね。」
涼子は、複雑な想いのまま報告書に目を落とした。
■伊集院勲視点
「葛西が……自分を裁かせた?」
伊集院は、長年の上司であり“法の象徴”だった葛西の決断に、言葉を失った。
「……正義ってのは、いつも後出しじゃねえと届かねえのかよ。」
だが同時に、腹の底から理解していた。
これは、神谷朔也の“正義”が、本当に届いてしまった瞬間だということを。
■朔也視点
「カスパー、葛西の処理完了か?」
「確認済。データ送信元:REQUIEM。対象は自らの処罰要求を提出。手続きは法的に成立。」
「……あの男は、最後まで“正義の管理者”だったな。」
俺はホログラムに浮かぶREQUIEMの処理記録を見つめる。倫理と記録による“中立な正義”。葛西はそれを理解したからこそ、最後に“自らを差し出した”。
「カスパー、REQUIEMの初期記録に“葛西の選択”を最優先保存しろ。正義が、人間から始まるという証として。」
「了解。最優先データとして登録。“管理者の選択”記録開始。」
静かに、そして確かに。
一つの時代が終わり、次の“正義の時代”が始まった。
第27話 管理者の選択 終わり
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる