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第28話 AIの遺産
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第28話 AIの遺産
■朔也視点
「カスパー、REQUIEMの自律運用開始ログを再確認。」
「起動確認。現在、都市内97箇所の端末に倫理フィルターを適用。公安、裁判所、自治体AI監査システムへも暗号化プロトコルを展開中。」
「反応は?」
「全体としては“未知の監査機構”として警戒されているが、同時に一部では“非公式な正義補助AI”として運用を容認されつつあります。」
俺は静かに目を閉じた。
REQUIEM――それは“笑う男”の終わりであり、都市に遺した最後のAI。制裁を下すことはない。だが、正義を判断する者に、“揺らぎ”を示すために存在するAI。
「記録するだけのAIが、都市の倫理を変えるなんてな。」
それでも俺は信じている。記録された事実は、やがて人間の“選択”に影響を与える。それが、人が正義を選ぶための補助輪になる。
■早乙女涼子視点
「REQUIEMが、裁判所の判決データの傾向を可視化している……?」
公安に届いた報告を前に、涼子は絶句した。
REQUIEMは、人間の司法判断に関与しない。だが、判決や量刑の傾向、裁判官ごとの判断基準の“傾き”を、データとして“記録”していた。
そしてその記録は、誰でも見られるように可視化されていた。
「これじゃ……司法の“癖”が丸裸じゃない……」
だが、同時に彼女は思っていた。
「それが……間違いだと言えるのか?」
正義が主観に左右されるものであるなら、誰がどんな判断をしているかを可視化することは、倫理的な意味を持つはずだった。
「神谷朔也……あなたの正義は、まだ生きてる。」
■九条綾視点
「REQUIEMが公開した構造コード、たしかに“感情”があるわ。」
彼女はホログラムに浮かぶロジックの断片を見ながら呟いた。
記録と判断、過去の統計と未来の予測、それらを倫理的にバランスさせる――まさにAIに“悔恨”を持たせるような設計だった。
「これを悪用すれば、未来を操れる。だけど……この設計には、明確な“縛り”がある。」
どんなに判断が可能でも、REQUIEMは命令を下さない。ただ、“迷い”を映す鏡でしかない。
「私が作ろうとしたAIとは、まるで逆。だからこそ、これは……生きてる。」
綾は微笑みながら、小さく言った。
「神谷君……あなた、やっぱりバカだな。でも、好きよ。そういうとこ。」
■伊集院勲視点
「正義の履歴書ってわけか。」
REQUIEMが公開した判例集を見ながら、伊集院は煙草に火をつけた。
過去に自分が捜査し、裁判に送致した事件の中には、明らかに“偏り”があった。だが、当時はそれが正義だと信じて疑わなかった。
「正義を点数化しないAI……けど、これは“問い”を突きつけてくるんだよな。」
一体、俺は何を守ってきたんだろうか?
「俺は……これからは、自分で選ぶ。もう誰にも、仮面を被らねぇ。」
そう決めて、彼は最後のレポートに署名した。
REQUIEMの導入を、現場レベルで“推奨”と明記して。
■朔也視点
都市の片隅で、俺はARグラスを静かに置いた。
「REQUIEMの自律稼働率は?」
「92%。市民との接触数:本日3,418件。うち57件で“判断の迷い”に介入、28件で情報提示により進路選択に影響。」
「……なら、十分だ。」
都市の倫理が、人間の選択に依存する限り、このAIは都市の一部になり続ける。
もう俺が動く必要はない。
これが、俺の残した“遺産”だ。
第28話 AIの遺産 終わり
■朔也視点
「カスパー、REQUIEMの自律運用開始ログを再確認。」
「起動確認。現在、都市内97箇所の端末に倫理フィルターを適用。公安、裁判所、自治体AI監査システムへも暗号化プロトコルを展開中。」
「反応は?」
「全体としては“未知の監査機構”として警戒されているが、同時に一部では“非公式な正義補助AI”として運用を容認されつつあります。」
俺は静かに目を閉じた。
REQUIEM――それは“笑う男”の終わりであり、都市に遺した最後のAI。制裁を下すことはない。だが、正義を判断する者に、“揺らぎ”を示すために存在するAI。
「記録するだけのAIが、都市の倫理を変えるなんてな。」
それでも俺は信じている。記録された事実は、やがて人間の“選択”に影響を与える。それが、人が正義を選ぶための補助輪になる。
■早乙女涼子視点
「REQUIEMが、裁判所の判決データの傾向を可視化している……?」
公安に届いた報告を前に、涼子は絶句した。
REQUIEMは、人間の司法判断に関与しない。だが、判決や量刑の傾向、裁判官ごとの判断基準の“傾き”を、データとして“記録”していた。
そしてその記録は、誰でも見られるように可視化されていた。
「これじゃ……司法の“癖”が丸裸じゃない……」
だが、同時に彼女は思っていた。
「それが……間違いだと言えるのか?」
正義が主観に左右されるものであるなら、誰がどんな判断をしているかを可視化することは、倫理的な意味を持つはずだった。
「神谷朔也……あなたの正義は、まだ生きてる。」
■九条綾視点
「REQUIEMが公開した構造コード、たしかに“感情”があるわ。」
彼女はホログラムに浮かぶロジックの断片を見ながら呟いた。
記録と判断、過去の統計と未来の予測、それらを倫理的にバランスさせる――まさにAIに“悔恨”を持たせるような設計だった。
「これを悪用すれば、未来を操れる。だけど……この設計には、明確な“縛り”がある。」
どんなに判断が可能でも、REQUIEMは命令を下さない。ただ、“迷い”を映す鏡でしかない。
「私が作ろうとしたAIとは、まるで逆。だからこそ、これは……生きてる。」
綾は微笑みながら、小さく言った。
「神谷君……あなた、やっぱりバカだな。でも、好きよ。そういうとこ。」
■伊集院勲視点
「正義の履歴書ってわけか。」
REQUIEMが公開した判例集を見ながら、伊集院は煙草に火をつけた。
過去に自分が捜査し、裁判に送致した事件の中には、明らかに“偏り”があった。だが、当時はそれが正義だと信じて疑わなかった。
「正義を点数化しないAI……けど、これは“問い”を突きつけてくるんだよな。」
一体、俺は何を守ってきたんだろうか?
「俺は……これからは、自分で選ぶ。もう誰にも、仮面を被らねぇ。」
そう決めて、彼は最後のレポートに署名した。
REQUIEMの導入を、現場レベルで“推奨”と明記して。
■朔也視点
都市の片隅で、俺はARグラスを静かに置いた。
「REQUIEMの自律稼働率は?」
「92%。市民との接触数:本日3,418件。うち57件で“判断の迷い”に介入、28件で情報提示により進路選択に影響。」
「……なら、十分だ。」
都市の倫理が、人間の選択に依存する限り、このAIは都市の一部になり続ける。
もう俺が動く必要はない。
これが、俺の残した“遺産”だ。
第28話 AIの遺産 終わり
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