ふと思いついた小話集

飛鳥槐

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滑り台

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**character******************

浅木 桃菜  (あさぎ もな)

鳥井 清  (とりい しん)

************************

親が喧嘩した。

どこの家庭でもよくある事かもしれない。

でも私は違った。

元々、あまり仲良くない私の両親。

仲悪いわけではないけど良くもないみたいな。

対して清の両親は仲が良い。

清が言うには、

『ベタベタしすぎて見てらんねーよ』

らしい。

あまりベタベタされても困るが、今はちょっぴり清の家族が羨ましかった。

あ、清は私と家が隣で幼馴染みの彼氏サマのこと。

やっぱり皆家族が仲良いほうが良いだろう。

旅行に行ったり、美味しいご飯を食べに行ったり、バーベキューやプール、登山だって。

皆で楽しくしていた方が良いに決まってる。

離婚なんてしてほしくない。

…離婚とは言ってなかったけど。

今日の喧嘩は酷かった。

暴力とかは一切無かったのに。

何故かすごく酷かったと思うのだ。

心なしか塾の帰り道がすごく長い気がする。

足も重い。周りの空気でさえそう感じる。

呼吸が苦しい。心が苦しい。

今にも灰になって風に飛ばされそうになった時前から声が聞こえた。

清「なーに明日地球爆発しますーっていうかおしてんだあ?」

ハッと顔をあげると、コンビニの袋を持った清がいた。

清「よっ!買いすぎたから浅木家にも分けてやろうと思ってさ」

桃菜「あー、今はやめといた方が良いと思う。」

清「あーなるほど。…おい桃菜、ちょっとこっ
ち」

手招きされて清の隣に行くと手を掴まれ、戸惑う私をお構いなしに引っ張っていった。

着いたのは小さい頃よく清と遊んだ公園だった。

滑り台でよく遊んだっけ?

ほれここ座れと言った彼はすでに滑り台の上。

ロープを使わずに登れるようになった丸太の階段。

さっと登って、滑り台に足を投げ出して彼の隣に座る。

清「ほれ」

ポイッと投げられたのはプリンだった。

桃菜「良いの?」

清「おう。お前プリン好きだろ?」

桃菜「うん!ありがとう!いただきます」

柔らかいプリンにスプーンを差し込む。

口にプリンを運びながら幸せに浸っていると

清「やっと笑った」

桃菜「?」

清「お前、死人みたいな顔して歩いてたぞ。なんかあった?」

桃菜「もう分かってるくせに。」

清「まあ分かるけど話した方が気が楽になるって。ほら聞いてやるから」

桃菜「……あのね」

それから全部清に話した。

清の言った通り空気が軽くなった気がする。

…いや清がいるから空気が軽いのかも。

清「なるほどな。まー俺にはどうすることもできねえけど、こうやって話を聞いてやることはできる。」

清「昔からお前がお姉ちゃんだったから俺は頼りないかもしれないけど、俺だって頼れるんだからな!」

桃菜「そっか。ふふ」

清「おい、今笑ったな!?」

桃菜「わ、笑ってなんかふふ、ない、よアハハ!」

清「絶対笑ってるだろそれ!」

桃菜「だから、笑ってハハハ、ないってフフ」

清「あー、くそ」

一瞬世界が、時間が止まった気がした。

急だったから今の自分の状況が理解できない。

でも唇にある温かくて柔らかい物で分かった。

私、清にキスされてる。

離れようとしても頭の後ろにある清の手が許してくれない。

力、こんなに強かったっけ?

昔は私と腕相撲して散々負けてわんわん泣いてたのに。

幼馴染みで隣にいることが当たり前でいつも一緒にいた。

だから忘れかけていた。

清は私の彼氏サマだったなーって。

そういえば小さい頃5才位?の時もこの滑り台でキスされてあんな約束したんだっけ。

清『大きくなったら結婚して、僕が王子様で、桃菜ちゃんがお姫さまね!』

桃菜『えー清君が王子様?私が王子様で清君がお姫さまじゃない?』

清『桃菜ちゃんは女の子だからお姫さまだよ!』

桃菜『清君のほうが女の子っぽいよ』

清『むー』

ちゅ

清『どうだ!?参ったか!?』

桃菜『////』

清『やっぱり僕が王子様で桃菜ちゃんがお姫さまだよ!』

清『だからこれあげる!絶対結婚しようね!まずは僕が桃菜ちゃんの彼氏サマだからね!』

なーんて未来の約束をしておもちゃの指輪をくれたんだっけ?

清が離れると急に冷たくなる唇。

ちょっぴり寂しい。

清「なあ覚えてるか?」

桃菜「何を?」

清&桃菜「「ここで結婚しようって約束したこと」」

清「なっ?!」

桃菜「もちろん覚えてるよ。今もあの指輪大事に持ってる。」

清「なんで分かったんだよ」

桃菜「んーだって私も同じこと考えてたから」

清「そっか。」

清「寒いしそろそろ行くか」

季節は冬。

雪が少し積もった滑り台を清と一緒に滑り降りようとして

清「じゃあ行くか俺のお姫さま」

桃菜「なっ//…行きますか私の王子様」

清「もう一回約束、しようぜ」

桃菜「いいよ」

清「大きくなったら絶対結婚して、仲良い家族にしような」

桃菜「!…うん!」


12月の夜。あの約束から9年後。

私達はまた新たな約束をして雪の道を歩くのだった。

右手から伝わる温もりに頬を緩ませながら

ねえ清君。来年も再来年もずっと



『大好きだよ』


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