幸せになるための絶対条件

白夜

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13話 心地よい時間

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13話 心地好い時間


鷹司駿side




拓人に公園で会った野球ボールの彼の事を、調べさせていろいろわかった。


彼がなかなか有名な弁護士だって事、それから大手事務所で働いている事。

会社に新しい顧問弁護士を考えていたとこだったからちょうどいい。

彼に頼めば、ちょうどいい。

でも、ただ彼を手に入れたい一心で顧問弁護を頼むわけではない。

能力のない奴を雇うほど、俺も馬鹿じゃない!

金で買うのと、雇うのは別の話だ!


父の会社の顧問弁護士に彼の話を聞いて、彼がとても優秀だということが分かった。だから、彼にお願いすることにした。

彼は、この仕事を断るかもしれない…だから、一応根回しをしておいた。

これで、彼はこの仕事をきっと断らない。
いや、断れない。


俺と一緒に仕事をすれば落ちるのは時間の問題だ。直ぐに俺のものになる!

にやにやしていると、電話が鳴った。

普段は鳴らない電話…

彼からだとすぐに分かった!
早速、電話が鳴ったことに胸が躍った。

電話に出ると、電話の向こうの彼は酷く怒った様子だったが、一緒にランチをすることになり、俺の気持ちは上がっていた。

『拓人!あの人を迎えに行く!そして、一緒にランチするから』

運転している拓人に告げると、

『かしこまりました。お店はどちらにしますか?』

『そうだな…彼は何が好きなんだろう?彼の好みに合わせてもいい!今はそういう気分だ』

普段相手に合わせることなんてない。

でも、彼の事を知りたいから、彼が選んだ店でランチをするのも悪くない、そう思えた。

『嬉しそうですね。駿様がお相手に合わせるなんて…久しぶりですね。駿様が笑顔で良かったです。』
拓人が穏やかな笑顔を見せていた。
拓人の笑顔、それも俺の中ではなかなかのお気に入りだ!

『うん。楽しい。』
俺は素直に喜んでいた。こんなワクワクした気持ちはほんとに久しぶりで、嬉しかった。

弁護士事務所の前に着くと、彼が待っていた。

ドアを開けて、不服そうな顔をした彼に、

『乗って♡ゆうくん♡』と告げた。

彼はキィっと俺を睨みつけながらも、
『お願いします』と不服ながらに礼儀正しく車に乗った。

『何食べたい?なんでもいいよ。ステーキ?お寿司?フレンチ?イタリアン?何にする?』

俺の言葉なんて聞いていないかのように、
『施設の取り壊し‼止めさせて!!』
彼は言った。


『何が食べたいかって俺が聞いてるんだけど!!食べてからしかその話はしない!!』

彼はわかりやすく嫌な顔したけど、そんな顔もかわいらしかった。

『なんでも…いい…。あんたが選べばいいだろ…』

『俺は、君が食べたいものが食べたいんだけど。』
ワクワクが止まらなくて、こんな会話すら楽しい。


『本当に、俺が食いたいもんでいいんだな?』

『いいよ。君の好きなもの知りたいし!!俺、好き嫌いないし!』

『じゃあ…』

彼は、知らない店の名前と住所を、拓人に伝えた。

拓人はすぐにナビに言われた住所を入力すると、その場所へ車を走らせた。

車を走らせる事15分

古びたお店に着いた。

『ここですか?』
不安そうに拓人が聞くと

『ここです!めっちゃ美味いんで!!最近来れてなくて、来たかったから!ほらな、俺の好みとあんたじゃ合わないんだよ』

彼はしてやったりとでも言うように、どこか少し嬉しそうだった。

そこへすかさず、拓人が
『駿様…このようなお店は…防犯上…あまり…。他のお店に変えてはいかがでしょうか?』


何を言い出すかと思えば…
そんなことしたら、彼の思うつぼだろ?

こんなところを選ぶ彼をもっと知りたいと思ってしまう自分にワクワクした。

『拓人が近くいれば、防犯面は大丈夫だろ?俺は、彼が食べてるものが食べたい!!』

はぁ~とため息をついた拓人を無視して、お店の中に進む彼の後を追いかけた。

その後ろを拓人が慌ててついてきた。

『おう!佑一郎!久しぶり!…ん?和希と一緒じゃないのか?』

『…まぁ、和希には内緒ね!』

店主と思われる男性が、俺をチラッと見て

『浮気か?』と、彼に問いかけた。


『そんなはずないだろ!!浮気でここへ連れてくるか!仕事のクライアントだよ!』



『こんな汚い店に似合わないお客さんだな』
店主が苦笑すると、

彼は大きな口を開けて大声で笑った。


それは、俺が見たかった、屈託のない誰にでも見せる人懐っこいあの日の笑顔だった。

彼の笑顔に見とれていると、
『いつものやつ!』
そう言って、指を三本出して店主に伝えていた。

『汚いところだけど、美味いからここ!!まぁ、座りなよ』

さっきまで俺を警戒していたのが嘘みたいに、友達に接するように俺に話しかけてきた。

『…ここって?』

『あぁ~こんなところ来た事無いだろ?お好み焼き屋!!たこ焼きも出来るけど!!まぁ、今日はお好み焼きにしよう!!』

目の前に鉄板があって、椅子に座ると店主が
『和希がいないし、俺が焼こうか?』
って、聞きに来た。

和希とは、彼と一緒に居たあの優男の事だろう。

『和希が焼いたのが一番美味いんだけど…まー仕方ない、店長の焼きでいいか!!』

『おいおい!俺の店だぞ!俺より美味く焼けるわけないだろ?』

彼は、誰にでも笑顔でフランクに話す人なんだと思った。

俺は無言のまま、お好み焼きが焼けるのをじっと見ていた。

お皿と小さなヘラを俺に渡して、それから壁際にいる拓人に声をかける彼。

『そこで立ってないで、一緒に食べよう!美味いからさ!』

拓人に向かって、彼は微笑んだ。

『自分は仕事中なので、結構です。』
拓人が断ると

『じゃあ、君はいつ昼食を食べるの?』

『私は、駿様のお仕事の合間や移動時間に少しいただきます…』

『労働基準法違反だな。コイツ訴えるか?』
彼が俺を指差した。

『そんな…これが私の仕事ですから。結構です』

拓人が困っていると
『いいよな?あんたの許しがあれば一緒に、メシ食ってもいいんだろ?』

『ああ。拓人も一緒に食べても何も問題ない!』

『…そ、そんな…、私は大丈夫です』

やけに遠慮する拓人が可愛く思えた。

昔から、自分の事は後回しでいつでも俺の事を優先していた拓人。

『拓人も一緒に食べよ。久しぶりだろ?一緒に食べるの?学生の頃以来かな。たまにはいいだろ?』

『…高等学校で一緒にお弁当を食べた時以来です。…けれど…』

『ははっ。すんげー覚えてんじゃん。』
彼がとびきりの笑顔で笑った。

なんだか、穏やかで心地よい時間だった。

美味しそうに大きな口で食べる彼。

そして、最初こそ遠慮していたが、俺の隣に座って無邪気に『美味しいっ!』と、喜ぶ拓人

そんな拓人を見たのは久しぶりだった。





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