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10話 嘘つきでごめん
しおりを挟む蓮side
目の前には誠実なあべちゃんが正座してて、自分のクズさ加減に嫌気がさした。
『お腹…大丈夫ですか?すみませんっ!自分勝手なえっちしかできなくて!俺、もっともっと勉強してれんくんが満足するようなえっちします!!』
『わははっ!どんな勉強やねん。』
『ネットで調べたりとか、映像観たりとか…あ、でも、れんくん以外には勃ちませんから!!れんくんだけですから!!』
皮肉なもんだ…
俺は、他の人とヤってるのに…
真面目で初心なあべちゃんらしいなんて、微笑ましく思ってしまう
ごめんな、あべちゃん
せめてもの罪滅ぼしに、あべちゃんにぎゅっと抱きついた。
あべちゃんは少し戸惑ってはにかむ笑顔を俺に向けた
その反応さえもきっと可愛らしいのだろう…
でも、そう思えないのは、俺の気持ちの問題なんだと思う。
『っ///あの~っ///そんなにくっつかれると…たまらないんですけどっ///』
赤い顔したあべちゃんが俺を熱っぽく見つめた。
『あっ、ごめん。寝よっか?』
いつもなら、行為がいつ終わったのかわからないうちに堕ちていて、気が付けば朝なんてことが多いけど…
もちろん、自分で風呂に入って自分でナカきれいにするなんて事、速水とは一度もなかったから…
なんだか不思議な感覚で…
やけに頭が冴えていた。
ベッドに横たわり、そっと俺に布団をかけるあべちゃんの幸せそうな顔を見ると、余計に罪悪感を感じてしまう。
せめてもの罪滅ぼしに、あべちゃんの腕に抱かれて眠ることにしよう。
抱かれて眠るのは嫌いじゃない。
暖かくて、安心して…心までポカポカしてくるような、心地よく眠れる…から、抱かれて眠るのは、好き…
だったはず…
心地良く眠れるはずだった…
それなのに…
全然眠くならないし、ごそごそと何度も寝返りを打っては、居心地のいい場所を探してしまう。
速水なんかよりも、もっと長い腕は俺を余裕で抱きしめられるし、速水なんかよりも背の高いあべちゃんは俺をまるっと包み込めるはずなのに…
しっくりこないのは…なんでだろう?
あべちゃんの腕の中で何度も何度も寝返りを打つと
『…眠れませんか?』
あべちゃんが心配そうに俺の顔を覗き込んだ。
『…あっ…うん…なんか…』
『ごめんなさい。俺、れんくんを抱きしめて眠りたかったんですけど…寝にくかったですよね?』
捨てられた子犬みたいにすがるような瞳で俺は見つめられて
なんか、バツが悪い…
『あっ…そうやなくて…あべちゃんがとかじゃなくて…。俺、誰かと寝るとか落ち着かないみたいで…。ひとりで寝るのが好きというか…そう、…そう、いつもひとりで寝てるから、誰かと寝るの苦手で…』
『そうですか…』
しょんぼりと肩を落としているのが表情でまるわかりのあべちゃん
ごめん、嘘ついて…
嘘に嘘重ねて、あべちゃんを傷つけて…
これ以上は嘘を重ねたくなくて…
『ごめんっ、やっぱ俺帰るわ。明日の現場に持って行くもの家に忘れて来ちゃたの思い出したから…』
『えっ?でも、もう深夜だし。危ないから…朝取りに帰ればいいじゃないですか?』
『あ~でも、服もそのままだし。着替えも取りに帰りたいし…あべちゃんの睡眠の邪魔したくないから…。やっぱ、帰る…』
『俺は全然平気です!!れんくんが居てくれれば、寝なくても全然平気ですから!!』
『だめだって!しっかり、寝ないと体に悪いし…』
なんて…とって付けたような言い訳をする
ごめん。あべちゃんを心配しているみたいなこと言ってるけど、ほんとはもうこの場に耐えられない。
これ以上嘘に嘘を重ねるのが辛くて
嘘つく自分が苦しくなってる
ごめん。
『…ごめん。俺、帰る。見送らなくていいから。このまま帰る。こんな時間にごめん』
せめてもの罪滅ぼしに、最高の作り笑いをして、あべちゃんの部屋を後にした。
ごめんの気持ちしか…出てこない。
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