【R18】この恋止めて下さいっ!!

白夜

文字の大きさ
2 / 29

2話 恋をした

しおりを挟む
 恋をしたあの日を思い出す。

特にやりたい事も無かった。いくつか面接をしてたまたま合格したのがこの会社だっただけ。

人見知りで目立つことが苦手だった俺。

でも、整った顔立ちとすらりと伸びた手足という人並み外れたスタイルが、嫌でも俺を目立たせていた。

女子に囲まれるのも、男子から疎まれるのも慣れっこだった学生時代だった。

でも、この会社にはたくさんの美男美女が揃っていて、学校程俺の容姿が目立つことは無かった。

それでも、引っ込み思案な性格は変わることなくて、入社初日もひとりでいた。



そんな時、


『同期だね。よろしく。』

入社して数日後、長身のTHE・イケメンの一ノ瀬くんに声をかけらた。


『よろしく~~~~~っ!!』

そして、元気すぎる可愛い顔立ちの永山くん。


いつの間にかこのふたりと一緒に行動するようになっていた。

新入社員オリエンテーションが行われて、俺たちの教育係となったのが友也さんだ。

友也さんは誰にでも優しくて,新入社員からも絶大な人気があった。

『わからない事あったら、なんでも聞いて~。俺もわからないかもしれないけど笑』

なんて、みんなから笑いも取っていた。


イベント企画をしているうちの会社は、数名ずつグループになって行動することが多かった。

早速、いくつかのグループに割り振られて、俺は友也さんと一緒になった。


口下手だし、イベントのなんの知識もなかった俺は、仕事が終わってから資料室へ向かった。

資料室のドアを開けると、友也さんがいて真剣なまなざしで資料に目を通していた。

なんとなく気まずくて、気が付かれる前に立ち去ろうと思ったら突然声を掛けられる。


『あれ~?高橋遼平くん?おぉ~調べもの?』


『あっ…はい…』

『偉い!偉い!…なんかわからない事あった?』

『俺…全然…何もわからなくて…少しでも知っておこうかなって…』

『いいじゃん!いいじゃん!こっちおいでぇ~』

友也さんは誰にでも優しくて、壁を作らない話しやすい先輩で、気が付けば人見知りの俺でも楽しく話すことが出来た。


友也さんは自分の調べものよりも俺の事を気遣って、いろいろと教えてくれた。

それから毎日仕事が終わると資料室に向かって友也さんと楽しい時間を過ごした。

友也さんに惹かれていて、好きかもしれないと気が付くのにそんなに時間はかからなかった。


何か出来事があってその瞬間にドキっとしたとかそんな恋する瞬間があった訳でもなく、ぬるっと好きだと気が付いてしまったから…厄介だ。

そんなぬるっと好きになってしまったから、どんどん深みにハマって抜け出せなくなってしまったのだろう。


好きだと気が付いてからは、いつの間にか友也さんを目で追っていた。

友也さんのお昼はいつもお弁当だとか、お弁当の他におやつを持って来ていつも食べているとか、好きな缶コーヒーのメーカーはどこだとか…、些細な事を発見していく毎日が楽しかった。


いつも友也さんを見ているのが楽しかった。

だから、気が付いてしまった。


友也さんは仁さんを見ている…。

社内でも抜群のコンビだと噂されているやり手の2人。


仁さんのコミュニケーション能力と独自の感性を持っている友也さん。

このふたりは仕事での相性も抜群で、このふたりが組んで企画したイベントは全て大成功を収めているという。

最強のふたりらしい。

仁さんは高いコミュニケーション能力と周囲を見渡す判断力、この仕事も長いし俺も早速仁さんに助けてもらった。
頼りになるいい上司だ。

感性で物事を話す友也さんは語彙力があまりない。それを補うように仁先輩がそれを汲み取って言葉にしてクライアントに伝えるといった感じらしい。

友也さんは誰にでも同じように接している。でも、仁さんの前だと甘えたり素の部分が出ている気がする。

元気いっぱいの友也さんでも、さすがに人間だから疲れてぐったりしている時もある。
そんな時は、明るい元気いっぱいの友也さんじゃなくて少し落ち着いた大人の雰囲気の友也さんで、たいてい隣には仁さんがいた。

頼りになる上司それが仁さん。それでいて、子供の様にはしゃいだり話しは面白い!

そんな人だから、きっと友也さんも仁さんを好きになったのだろう。

仁さんも、友也さんとふざけている時はほんとに楽しそうで、


『おいっ!やめろって!ほんとにっ!』なんて、言うくせに

顔はにっこり笑っていて幸せそうに笑う仁さん。


ふたりは似合いすぎるほど相性がいい。

それなのに、不器用なふたりは拗らせに拗らせて…

未だに両片思いのままだ。

今時、中学生だってもっと上手くやる!


そんな不器用な恋をするふたりの間に、俺はいる。






そして、始まってしまった友也さんとのカラダの関係


今日も…あのメッセージが届く。



【遼平、今日暇?】


【はい、暇です。】


俺は速攻で返信する。友也さんの気が変わらないうちに…

【行ってもいい?】

【待ってます】


そして、友也さんが俺の家に来る。

友也さんは貪る様に俺にキスをして、俺を抱く。


悲しくなるくらいに上手なキスは、俺の心を離さない。

俺じゃない誰かを想っていたとしても、今キスをしているのは俺だから…。


そう自分に言い聞かせて友也さんに抱かれる。


友也さんの大きな手が好きだ。

友也さんが俺に触れるだけで、全身の血液が下半身に集まって来るのがわかる。


『遼平…キスだけで感じてるの?』

少し意地悪な言葉も、俺を興奮させる材料でしかない…


『っ///…はいっ…』


『素直で可愛いっ!』


友也さんの優しいキスが降り注ぐ。

勘違いしてしまいそうな程優しいキスは、俺のカラダだけじゃないって言われているみたいで、嬉しくなる。



俺を好きじゃないなら、そんなに優しいキスをしないで下さい。

もっと雑に扱って、カラダだけの関係だって割り切ってくれた方がよっぽど優しい。


それなのに…

『遼平…キレイな顔。…嫌いじゃない』って友也さんは言う。



決して、<好き>って言葉は使わずに…


それでも…かまわない。


カラダを重ねて居れば、いつか…心も重なるかもしれないから…


そんな甘い妄想を胸に抱いて


今日も、友也さんに抱かれる。





そもそも…俺と友也さんがカラダの関係を持つようになったのは…


あの日から…



そう、あの日あんなことがなければ…



俺の淡い恋は静かに消えて行ったはずなのに…


あの日…


あんな事さえ言わなかったら…

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる

ユーリ
BL
魔法省に悪魔が降り立ったーー世話係に任命された花音は憂鬱だった。だって悪魔が胡散臭い。なのになぜか死神に狙われているからと一緒に住むことになり…しかも悪魔に甘やかされる!? 「お前みたいなドジでバカでかわいいやつが好きなんだよ」スパダリ悪魔×死神に狙われるドジっ子「なんか恋人みたい…」ーー死神に狙われた少年は悪魔に甘やかされる??

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

ビジネス番契約ですが欠陥αに不器用に溺愛されて偽りΩは幸せです

子犬一 はぁて
BL
住販会社で働く小鳥遊駿輔は、 自分の欠落を隠しながら“普通のアルファ”として生きてきた。 新年度、彼の部下として配属された岸本雄馬。 物怖じしない態度と有能さの裏で、 彼もまた誰にも言えない秘密を抱えていた。 偶然から互いの秘密を知った二人は、 互いの秘密を守るために「ビジネスの番という契約」を結ぶ。 それは運命でも愛でもない、 合理的で大人な関係のはずだった――。 自己否定を抱えた二人が出会い、 少しずつ自分を肯定していく 救済のセラピーオメガバースBL。 ※この作品はフィクションです。オメガバースの世界観をベースにしています。一部独自設定あり(作中説明あり) ※主に攻め視点/一部受け視点あり ※誤字 横溝課長 ⇒ 正 横溝本部長 (現在修正中です) ※誤字 百田部長⇒ 正 百田先輩 (現在修正中です)

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

処理中です...