【R18】この恋止めて下さいっ!!

白夜

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15話 焦りと嘘

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『友也はさぁ…好きな人とかいるのかな?』


それは、不器用な仁さんが放った渾身の一言だった。

『えっ?』

まさか仁さんからそんな言葉を聞くとは思っていなかったからすごく驚いた。
不器用で何年も片思いしていた仁さんが…ここへ来て一歩前へ踏み出そうとしているのかもしれないと思った。


『さぁ…どうなんですかね…聞いた事ないですけど』


俺はコーヒーを一口啜った。

嘘だ…俺は知っている。

友也さんの好きな人は仁さんだ!!

それでも…もう少しこの関係を友也さんと続けたいから…
嘘をついた…

ごめんなさい…

仁さんがいい人だってわかっています。
それと同時に俺が最低なヤツだって事も自覚しています。


それでも…今…ここで…それを言ってしまったら?
きっとふたりの恋は実ってしまう。

もう少しだけ…この地獄のような幸せなカラダの関係を続けさせて下さい…


『そうだよなぁ~知る訳ないよな…でもさ…遼平ってことあるかな?』


『はぁ~?そんな訳ないですよっ!!』

思わず語気を荒げてしまった。
この鈍感な恋愛偏差値が低い人は、全くわかってないっ!!

『俺の訳ないです!なんでそうなるんですかっ!!』

『いや…仲いいし……プライベートでも遊んでいるみたいだから…』

『いやいや…ご飯食べ連れていってもらって、時々家でゲームとか…やってるだけです…』


仁さん…すみません…
俺…嘘つきました。

でも…友也さんの好きな人は仁さんですって言ったら…
きっとふたりは…あっと言う間に付き合って
やっぱりお似合いのふたりなんだなって思い知らされちゃうじゃないですか!!

俺が、友也さんに抱かれることもなくなってしまう…

仁さんと友也さんが付き合うってことは…
俺との関係の終わりを意味しています。

まだ…

もう少しだけ…

あと少し…

友也さんに抱かれていたいんです。

例えそれが、仁さんを想って俺を抱いているとしても…

好きな気持ちが止められないから

こんな卑怯なやり方をしてでも、友也さんを繋ぎとめておきたいんです。

だから…

俺は最低な人間で卑怯だけど、友也さんとの関係を続けさせてもらいます。


あなたがその恋を実らせるまで…

缶コーヒーを飲み干して、

『先戻ります…ご馳走様でした』

背中に罪悪感を背負いながら仕事に戻った。




缶コーヒーをご馳走になって、仁さんが俺に探りを入れてきてから
何事もなく、数週間が過ぎていた。


焦っているであろう仁さんは奥手な故に自分から言い出すことが出来ないのだろう。

長年築きあげた関係を壊す勇気がないのだろう。

前に進むにしろ今の関係のままな訳はないのだから…

リスクも考えると動き出せないって言うのが仁さんの心情なのだろう。


俺は内心ほっとしていた。
俺に声をかけて来た時、完全に仁さんは焦っていたと思う。
俺と友也さんがつきあうんじゃないかって、友也さんを俺に取られるんじゃないかって
不安になって俺に声をかけずにはいられなかったんだと思う。

でも、行動に移せない仁さんは…あのまま…何も変わらなかった。

このままこんな状態がずっと続くのではないかって思い初始めた頃、事件が起こった。
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