薄明喰 短編集【12話執筆中】

薄明 喰

文字の大きさ
104 / 119
僕のヒーロー、田丸君。

立ち上がって玄関の扉を開けようとしたところで、ぱしっと右手を掴まれた。


「ごめん、嘘ついた。誰かと同居してみたいから河中に声かけたわけでも、河中に同情して正義感で声かけたわけでもない」


田丸君はそう言って、掴んでいる僕の手をグイっと自分の方に引いた。
よくわからない状況と田丸君の言葉に抵抗するってことをしなかった僕の体は引かれるまま、田丸君の方へと倒れた。


倒れた僕を田丸君は抱き留めて、ぎゅっと田丸君の両腕に強くホールドされた。



「俺は高校入ってすぐに河中のことが気になってて、んで好きになった。でも同じ男の俺が河中に告白したところで相手にされないことなんてわかってたし…それで、河中の家にやばそうな奴らが出入りしてるとこ見て、守りたいって思ったし、守りきれれば…その…河中が俺を意識してくれるんじゃないかって甘い期待をしている」


田丸君の言葉にえ?と上にある田丸君の顔を見上げれば、視線はどこか遠くへ向けられていて、そして顔がすっごく真っ赤に染まっていた。

そんな田丸君の様子に、先ほどの言葉が冗談なんかじゃないことも、田丸君が軽い気持ちで言ったわけでもないことが分かった。



この人…本気で僕のことが好きで、本気で甘い期待をしているのんだ。





「っは…あははは!!」

「ん”」



自然と出た笑いに、上から変な声が聞こえてきて、それも何か…すごく笑えた。





「あーぁ…ふぅ…田丸君。守りたいって言ってくれてるけど、あいつらからどうやって僕を守ってくれるつもりなの?」

笑いが落ち着いたところで、僕は田丸君に聞いてみた。

田丸君は守りたい、守ったら僕が田丸君に好意を寄せることを期待していると言ったけれど、田丸君はただの高校生だ。
しかも今は受験真っただ中の大事な時期で…そんな時にやばい奴らと関わってしまえば将来を棒に振ることになるかもしれない。


そんなリスクが高い選択をとるのは馬鹿すぎるって…田丸君ならわかってるはずだ。




「情けない話だけど…俺だけじゃ守れない。だからじいちゃんに頼る」


「じいちゃん?」


「そ。すっげぇ頼りになるじいちゃんが俺にはいる」


自信満々に宣言する田丸君にまた笑いがこみ上げてくる。

そういえば、このマンションもじいちゃんの持ち物だって言ってたっけ。
すごく仲良いんだなって思うと同時に、どんなおじい様なんだろうってちょっと興味がわいてきた。





「じいちゃんが危なくならない?」


「大丈夫。俺はじいちゃん以上に強い人を知らない」



ほんとにどんな人なんだろうっと思いながら、その日は結局田丸君に誘われるままに田丸君の家に泊まらせてもらった。

僕が笑うと、すっごく嬉しそうな顔をして見てくるからくすぐったい気持ちになる。
疑いようがないくらいに好意を寄せられている。


誰かに抱きしめられて眠ったのは初めての経験で、とても安心して心地の良いものだった。





感想 0

あなたにおすすめの小説

片思いの貴方に何度も告白したけど断られ続けてきた

アリス
恋愛
幼馴染で学生の頃から、ずっと好きだった人。 高校生くらいから何十回も告白した。 全て「好きなの」 「ごめん、断る」 その繰り返しだった。 だけど彼は優しいから、時々、ご飯を食べに行ったり、デートはしてくれる。 紛らわしいと思う。 彼に好きな人がいるわけではない。 まだそれなら諦めがつく。 彼はカイル=クレシア23歳 イケメンでモテる。 私はアリア=ナターシャ20歳 普通で人には可愛い方だと言われた。 そんなある日 私が20歳になった時だった。 両親が見合い話を持ってきた。 最後の告白をしようと思った。 ダメなら見合いをすると言った。 その見合い相手に溺愛される。

伝説の勇者が俺の寝室に不法侵入してきました〜王様の前で『報奨より幼馴染をください』って正気ですか!?〜

たら昆布
BL
勇者になった青年とその幼馴染だった薬師の話

冷酷公爵と呼ばれる彼は、幼なじみの前でだけ笑う

由香
恋愛
“冷酷”“無慈悲”“氷の貴公子”――そう恐れられる公爵アレクシスには、誰も知らない秘密がある。 それは、幼なじみのリリアーナの前でだけ、優しく笑うこと。 貴族社会の頂点に立つ彼と、身分の低い彼女。 決して交わらないはずの二人なのに、彼は彼女を守り、触れ、独占しようとする。 「俺が笑うのは、お前の前だけだ」 無自覚な彼女と、執着を隠しきれない彼。 やがてその歪な関係は周囲を巻き込み、彼の“冷酷”と呼ばれる理由、そして彼女への想いの深さが暴かれていく―― これは、氷のような男が、たった一人にだけ溺れる物語。

落ちこぼれオオカミ、種族違いのため群れを抜けます

椿
BL
とあるオオカミ獣人の村で、いつも虐げられている落ちこぼれの受けが村を出ようと決意したら、村をあげての一大緊急会議が開催される話。

1日、また1日と他人になっていく。大切なあなたへ

月夜の晩に
BL
好きな人のトラウマを消してあげる代償に、 好きな人から忘れられる攻めくんの話

嫌われものと爽やか君

黒猫鈴
BL
みんなに好かれた転校生をいじめたら、自分が嫌われていた。 よくある王道学園の親衛隊長のお話です。 別サイトから移動してきてます。

俺の可愛い幼馴染

SHIN
恋愛
俺に微笑みかける少女の後ろで、泣きそうな顔でこちらを見ているのは、可愛い可愛い幼馴染。 ある日二人だけの秘密の場所で彼女に告げられたのは……。 連載の気分転換に執筆しているので鈍いです。おおらかな気分で読んでくれると嬉しいです。 感想もご自由にどうぞ。 ただし、作者は木綿豆腐メンタルです。

恋愛対象

すずかけあおい
BL
俺は周助が好き。でも周助が好きなのは俺じゃない。 攻めに片想いする受けの話です。ハッピーエンドです。 〔攻め〕周助(しゅうすけ) 〔受け〕理津(りつ)