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第1章
襲われる僕
アーバスノイヤー公爵家次男、ルナイス・アーバスノイヤーは今日で生後一か月を迎えた。
父は最初の方こそ頻繁に僕を見に来ていたけど、仕事の忙しい人のようでここ最近は僕に会いに来ることはない。
二日に一回兄が訪れるが、しばらく僕の頬をつついて帰るだけ。
母を失ったことに未だ心の整理がついていないのだろうが謎すぎる。
正直もう会いに来ないだろうと思っていたのだけど…。
「坊ちゃま、そろそろ就寝のお時間ですよぉ。」
ばぁやが出してくれるキラキラを目で追って楽しんでいると突如キラキラが消えてばぁやが僕を寝かしにかかる。
「あー!(まだ見ていたかった!)」
まだ起きているのだと抗議の声をあげるが、ばぁやはそれにニコニコ笑うだけ。
少しだけお喋りっぽくなってきた僕の声にばぁやは嬉しいようだ。
成長を喜んでくれるのはいいのだけど、キラキラだしてくれ。
「早く寝ないと大きくなれませんからねぇ。それに明日は旦那様が早くにご帰宅の予定ですよ。」
ばぁやはニコニコ笑ってトントンと僕の胸を優しく叩く。
完璧に寝かせるつもりだな。
それに父が帰ってきたところで僕にはあまり関係のないことだ。
僕はまだ大人達と意思疎通はできないし、できることも少ない。
その上僕は寝ていることが多いので他者と触れ合う時間は限られている。
「あら、旦那様に会えるの嬉しくないんですか?」
ばぁやが困ったなという風に頬に掌を添えて言う。
嬉しくないわけではないけれど、父に会うからといって特別テンションは上がらない。
ばぁやはあらあら言いながらもやっぱり僕を寝かせようとする。
どう足掻いてもあのキラキラを出してくれないのだと諦めて近くにあったお気に入りのドラゴンのぬいぐるみを掴む。
今の僕ではまだ持ち上げたりはできないので本当に掴むだけしかできない。
だけど、このドラゴンのぬいぐるみを掴んでいると落ち着いて眠れるので手放せない大事な相棒だ。
「ふふ、可愛らしいわぁ。」
ばぁやが何か言っているけどキラキラ出してくれないんで僕もう寝ますね。
___________
ガタン
突如耳を刺激した音に目がパチリと覚める。
ベビーベッドの壁に阻まれてよく見えないけど、部屋の中に誰か人が居る気配がする。
「こいつがアーバスノイヤー家の2番目か。」
そう言ってベビーベッドを覗き込んできたのは黒い布を顔に巻き付けた見るからに怪しい奴。
そいつの手にはナイフが握られている。
まさかこの世に誕生して1ヶ月で命を狩られるとは…儚きかな。
「こいつを人質にすりゃ、あのルグノスが俺の言いなりだ!!」
ニヒニヒ笑う男は忍び込んでいる自覚があるのだろうか?
結構な声量で独り言を口にしているのだけど。
魔法が使えたらこんな奴どーにでもできるんだろうけど、生まれて1ヶ月の僕には無理な話だ。
「大人しくし…」
ボド
伸ばされる手に目を瞑ると、すぐ近くで重たいものが床に落ちるような音がした。
ゆっくりと目を開くとあの不審者の姿はなくて辺りも静かだ。
でもすぐ側に誰かが居ることだけは何となく分かった。
「ルナイス無事か?」
はぁ…と深いため息が聞こえてきた後に声を掛けられて、ベビーベッドを覗き込んだのは久々に見る父であった。
「うー(大丈夫)」
何故此処に父が居るのか、あの輩はどうしたのかと気にはなるがとりあえずお利口に返事をしておこう。
僕の返事を聞いた父はひとつ頷き、少し声を張り上げて誰かを呼んだ。
「コルダ!」
「はっ」
何処からともなく人の気配と声がして体がびくぅと跳ねる。
「全て処分致しました。裏切り者は既に捉えてあります。」
声的に男の人だ。
気になるが寝返りもできない僕では声の主を目にすることができなくてもどかしい。
「念の為隅々まで調べ尽くせ。」
「はっ」
父の言葉のあと直ぐにもう1人の気配は消えて僕は父に抱き上げられる。
やっと辺りを見ることができたが暗くてよく見えない。
それにまだ首をすわりきってないから動かせない。
「ルナイス、これがお前を襲った馬鹿の成れの果てだ。」
父が僕を抱えたまましゃがんで僕に見せたのは首を失った体と少し離れた所に落ちている頭らしきもの。
突然のバイオレンスに体がビクリと震えたが頭の中では何故この死体から血が吹き出してないのかと疑問が浮かんでいた。
「我々一族はこう言う風に狙われることが多々ある。理由はもう少しお前が大きくなってから話そう。」
父はそう言って僕を抱えていない方の手の指でパチンと音を鳴らす。
そうすると、転がり落ちていた死体が跡形もなく消え去ってしまった。
「あー(どこ?)」
「…やはり、ルナイスはアーバスノイヤー家の子だ。」
消えた輩の死体を探す僕に父がボソリと何か言ったようだけど、僕は突然のマジックにそれどころではなかった。
父は最初の方こそ頻繁に僕を見に来ていたけど、仕事の忙しい人のようでここ最近は僕に会いに来ることはない。
二日に一回兄が訪れるが、しばらく僕の頬をつついて帰るだけ。
母を失ったことに未だ心の整理がついていないのだろうが謎すぎる。
正直もう会いに来ないだろうと思っていたのだけど…。
「坊ちゃま、そろそろ就寝のお時間ですよぉ。」
ばぁやが出してくれるキラキラを目で追って楽しんでいると突如キラキラが消えてばぁやが僕を寝かしにかかる。
「あー!(まだ見ていたかった!)」
まだ起きているのだと抗議の声をあげるが、ばぁやはそれにニコニコ笑うだけ。
少しだけお喋りっぽくなってきた僕の声にばぁやは嬉しいようだ。
成長を喜んでくれるのはいいのだけど、キラキラだしてくれ。
「早く寝ないと大きくなれませんからねぇ。それに明日は旦那様が早くにご帰宅の予定ですよ。」
ばぁやはニコニコ笑ってトントンと僕の胸を優しく叩く。
完璧に寝かせるつもりだな。
それに父が帰ってきたところで僕にはあまり関係のないことだ。
僕はまだ大人達と意思疎通はできないし、できることも少ない。
その上僕は寝ていることが多いので他者と触れ合う時間は限られている。
「あら、旦那様に会えるの嬉しくないんですか?」
ばぁやが困ったなという風に頬に掌を添えて言う。
嬉しくないわけではないけれど、父に会うからといって特別テンションは上がらない。
ばぁやはあらあら言いながらもやっぱり僕を寝かせようとする。
どう足掻いてもあのキラキラを出してくれないのだと諦めて近くにあったお気に入りのドラゴンのぬいぐるみを掴む。
今の僕ではまだ持ち上げたりはできないので本当に掴むだけしかできない。
だけど、このドラゴンのぬいぐるみを掴んでいると落ち着いて眠れるので手放せない大事な相棒だ。
「ふふ、可愛らしいわぁ。」
ばぁやが何か言っているけどキラキラ出してくれないんで僕もう寝ますね。
___________
ガタン
突如耳を刺激した音に目がパチリと覚める。
ベビーベッドの壁に阻まれてよく見えないけど、部屋の中に誰か人が居る気配がする。
「こいつがアーバスノイヤー家の2番目か。」
そう言ってベビーベッドを覗き込んできたのは黒い布を顔に巻き付けた見るからに怪しい奴。
そいつの手にはナイフが握られている。
まさかこの世に誕生して1ヶ月で命を狩られるとは…儚きかな。
「こいつを人質にすりゃ、あのルグノスが俺の言いなりだ!!」
ニヒニヒ笑う男は忍び込んでいる自覚があるのだろうか?
結構な声量で独り言を口にしているのだけど。
魔法が使えたらこんな奴どーにでもできるんだろうけど、生まれて1ヶ月の僕には無理な話だ。
「大人しくし…」
ボド
伸ばされる手に目を瞑ると、すぐ近くで重たいものが床に落ちるような音がした。
ゆっくりと目を開くとあの不審者の姿はなくて辺りも静かだ。
でもすぐ側に誰かが居ることだけは何となく分かった。
「ルナイス無事か?」
はぁ…と深いため息が聞こえてきた後に声を掛けられて、ベビーベッドを覗き込んだのは久々に見る父であった。
「うー(大丈夫)」
何故此処に父が居るのか、あの輩はどうしたのかと気にはなるがとりあえずお利口に返事をしておこう。
僕の返事を聞いた父はひとつ頷き、少し声を張り上げて誰かを呼んだ。
「コルダ!」
「はっ」
何処からともなく人の気配と声がして体がびくぅと跳ねる。
「全て処分致しました。裏切り者は既に捉えてあります。」
声的に男の人だ。
気になるが寝返りもできない僕では声の主を目にすることができなくてもどかしい。
「念の為隅々まで調べ尽くせ。」
「はっ」
父の言葉のあと直ぐにもう1人の気配は消えて僕は父に抱き上げられる。
やっと辺りを見ることができたが暗くてよく見えない。
それにまだ首をすわりきってないから動かせない。
「ルナイス、これがお前を襲った馬鹿の成れの果てだ。」
父が僕を抱えたまましゃがんで僕に見せたのは首を失った体と少し離れた所に落ちている頭らしきもの。
突然のバイオレンスに体がビクリと震えたが頭の中では何故この死体から血が吹き出してないのかと疑問が浮かんでいた。
「我々一族はこう言う風に狙われることが多々ある。理由はもう少しお前が大きくなってから話そう。」
父はそう言って僕を抱えていない方の手の指でパチンと音を鳴らす。
そうすると、転がり落ちていた死体が跡形もなく消え去ってしまった。
「あー(どこ?)」
「…やはり、ルナイスはアーバスノイヤー家の子だ。」
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