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2.照れる不良
こんにちは画面の向こうの君。
俺は佐藤明。普通の高校生。好きなタイプはお淑やかで可愛い女の子かな。
実は最近、俺の平凡な日々をぶっ壊されたんだ。
「明。行くぞ」
この目の前の睨んでくる彼こと獄堂啓吾が原因である。
急に俺を呼び出した挙句まるで普通の人間のように接してくる。今日も約束もしてないのに勝手に部屋の前で待っていた。
はぁー、どうしよう。いつもは学校サボってるくせに何で一緒に登校しなきゃいけないんだ。しかも、また手を繋いでくるし。
「明」
「なっななな何」
「その、一緒に昼食べないか」
えぇー、絶対に嫌だ。俺が目をつけられるじゃないか。あんなに怖がられてる啓吾と食べるなんて恐ろしい。でも俺に拒否権はない。
冷や汗をかきながらも頷いた。
「パンとか買ってこればいいの?」
「何で?明がする必要は無い。舎弟が買ってくる。ああ、明の分も買わせようか」
「う、ううん!俺は弁当作るから平気!」
そうか、と彼は目を細めた。
相変わらず顔は綺麗だ。こんなに傷だらけじゃなければ女の子にもモテただろうに。俺と交換してくれよ。
それにしても、俺がパシリ役かと思ったが、もう既にパシリは居たようだ。可哀想に。じゃあ何で一緒に食べるんだろう。
「おはよう、明。生きてたか」
「ああ……生きてる。散々だったよ」
昨日俺を置いていった薄情な友人、光が話しかけてきた。周囲の友人も普通に話しかけてくるということは、俺が啓吾に従う三下になったことはまだ知られてないようだ。安心安心。
教室に入った途端、やっと呼吸が普通に出来る。もう女の子にモテなくていいから平凡な日々を送りたい。
昨日から今日までの一連を友人に話すと、彼は目を丸くしていた。
「マジか。ほんとに何もしなかったんだな」
「うん。手を握られたり、家まで送ってくれたりしたけど、普通の良い人みたいだった」
「へぇ、なんか獄堂啓吾じゃないみたいだな」
本当に噂の獄堂啓吾とは異なる対応だった。
目を付けられたら最後、と呼ばれる程だったが殴られなかったし優しいし。でも、ずっと俺の事睨んでるし。うーん、謎だ。まぁ、普通に過ごさせてくれればなんでもいいけど。
「もうお前と話せないかと思ったわ」
「酷い。光ったら、そんな直ぐに私の事を捨てるのね!」
「冗談さ、明。俺はお前がいないと生きていけない」
「私もよ!」
いつものふざけたノリで彼と笑い合った。
うん、やっぱり俺はこの平凡な日々が続いて欲しいな。
まあそんなフラグは直ぐに壊されます。
「明」
彼の訪問に教室は凍えるように静かになった。
そうだ、昼は一緒に食べるんだった。クラスメイト全員が俺に同情の視線を送ってる事が伝わる。同情するなら助けて。
「わ、わざわざ迎えに来てくれて有難う。その、どこで食べる?」
「屋上」
「え、でも屋上は閉まってるんじゃ」
「一蹴りすれば開くだろ」
俺とは考え方の次元が違うようだ。とりあえず笑みを浮かべて「そ、そっか」と返した。
ヤンキーとパンピーの考え方はやはり違う。
そして彼は有言実行し、扉を蹴ると本当に開いた。そして、座れと言われた場所に大人しく座る。
「何作ってきたんだ」
「あ、えっと、俺の家中華料理屋だからレパートリーが中華料理ばっかで」
「知ってる」
何で?疑問は心の中に留め、二人で黙々と昼食を食べた。
……あーあ、いつもの奴らと食べたかったな。なんで俺は不良と食べてるんだろ。もそもそと卵焼きを食べていると、横にいる彼は怖ず怖ず話しかけてきた。
「美味しそうだな」
「あ、うん。欲しいならあげます、じゃなくてあげるよ」
「良いのか!?」
フードピックで卵焼きを刺して、彼に差し出す。すると嬉しそうに笑って礼を言った。
本当に、彼は獄堂啓吾なのか。余りにも普通の優しい人間に見えて、思わず彼が不良ということを忘れてしまいそうになる。
「美味いな」
「ありがとう」
「明の分が減ってしまったな。代わりに俺の分をやるよ。おい」
急に目線を後ろに向けて声をワントーン低くした姿に動揺する。
すると、何処からか如何にも下っ端っぽい制服を着崩した人が現れた。何故か啓吾を見て嬉しそうにしている。まるで尻尾を揺らしている犬のようだ。
「プリン買ってこい。秒で」
「ハイ!!行ってきます!」
「え、待って待って。今から?」
「ん?ああ、気にしなくて良い。コイツは舎弟の中で一番買うのが早い」
そっちじゃねえよ!
今から買いに行くなんて大変だ。多分食堂のプリンはもう売り切れている。だから今からじゃコンビニとかに行かないと買えないんじゃ……。こんな山奥だからコンビニまで普通は徒歩一時間はかかるぞ。見ず知らずの人にそこまでさせるなんて申し訳ない。
「ああああの、気持ちは嬉しいけど俺そんなに食欲無いから」
「そんな少ないのにか?明はもっと食べた方が良い。細過ぎる」
「あああ、じゃあ啓吾の持ってるパン一口貰えたら充分」
すると、彼は何故か顔を真っ赤にした。そして恐る恐るパンを差し出してきた。え、駄目なの?嫌なの?言ってくれたら食わないよ?
少し不思議に思いながらも、口に含むとふわふわのパンで美味しかった。
「美味しかった。ありがとう」
「そ、そうか」
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