3 / 9
3.槍の不良
しおりを挟む教室へ戻ると、予想通り誰一人俺と目を合わせない。
はは、終わった。俺のスクールライフ。
血の涙を流して俺は席に着いた。
「……明、大丈夫か?」
「ひ、光!俺はもうぼっちだ」
「まあアイツに話しかけられたらそうだよな。これから他の奴にも絡まれるかもしれないぜ」
他の奴!?啓吾以外にもパシられるって事?
さ、最悪だ……。いや、でも啓吾は特に何もしないし全然悪い人じゃなかったから他の人もそうかもしれない。
しかし、そんな訳が無い。
「なあなあ、お前さ、啓吾の新しいパシリだろ?俺の分もさっさと買ってこいよ」
「コーラ十本な」
はい、早速柄の悪そうな五人組に囲まれました。
俺の首を掴み凶悪な笑みを浮かべる彼等に尿が漏れそうになるほど怯えたが、急いで自販機へ向かった。コーラ十本は割と重いが、今は急がなければ。
そして大量のコーラを持って彼等の元へ戻った。
「は、はい!持ってきました」
「遅せぇよ」
「すみません!!」
何だこの扱いは。まるでお前らの奴隷じゃないか。もう嫌だよお母さんお父さん。俺は何もしてないのに!!
そして、不良の元にコーラを置き、足早に去ろうとすると何故か肩を強く掴まれる。
「おい、待てよ」
「へ、は、はい。なんでしょうか」
「一本、お前にやるよ」
マジで?え、何で?
拒否するのも怖いし、大人しく彼の差し出した缶を受け取り蓋を開く。
すると、凄まじい勢いで顔にコーラがぶっ掛かった。俺は衝撃でその場に立ち尽くした。
「ヒャハハ!!マジでコイツぶっ掛けた」
「美味しいかー?顔面コーラ」
地獄だ。自分が惨めで泣きそうだけど、男がこの程度で狼狽えるなんて恥ずかしい。俺は無理やり口角を上げて平気なフリをした。
二本目にいこうとする不良達に何も抵抗出来ず、俯いていると扉が不良の元へ吹っ飛んできた。
……え、今の何?
「今すぐ明から手を離せクソども!!」
啓吾の顔はまるで鬼のようで、凄まじい怒りが眉の辺りに這っていた。
「明っ、大丈夫か?怪我は無いか?」
「あ、うん平気……」
そこに山のように積まれている不良達に比べれば俺なんてかすり傷のようなものだ。
助けに来てくれた彼は噂通り強く一瞬で五人の不良を倒した。
大量の槍が降ってきた時は何かと思ったが、噂の「槍の獄堂」は本当だったようだ。不良の喧嘩は俺の想像以上に血腥いものだった。何度も助けを乞う彼等に全く聞く耳を持たず、追い打ちをかけるように啓吾は殴り続けていた。もう既に槍で十分半殺しにされているというのに、その姿は正に地獄の悪魔のようだった。
マジで死ぬかもしれないと焦った俺は彼を止めると「明はまるで聖母のように優しいな」なんて微笑みながら言ってきた。違う、お前が怖いだけだ。
しかし、助けに来てくれたのは本当に助かった。今も心配してくれて、凄く安心している。まあ元はと言えば彼が根本的な原因だが。
「ありがとう、助けてくれて」
「これ位大丈夫だ」
「でも、血とかも出てるし」
「ああ。これは全部返り血だ」
そっか、良かった……。
俺は深く考えることを放棄した。
「それにしても何で明がこんなカツアゲを受けているんだ。まさか……イジメか?こんなに可愛い明を虐めるなんて、全く分かんねえ」
主にお前のせいだよ。
それに可愛いだなんてお前の目は節穴か。頭を抱えたが、もうとやかく言うのは面倒だ。
「俺がアイツらに忠告しておくから安心しろ。あとこれはジュース代だ」
「え、啓吾が払わなくても」
「これはアイツらの財布だ。盗られても文句言えないだろ」
うん。そうだね。
45
あなたにおすすめの小説
劣等アルファは最強王子から逃げられない
東
BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。
ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。
ビッチです!誤解しないでください!
モカ
BL
男好きのビッチと噂される主人公 西宮晃
「ほら、あいつだろ?あの例のやつ」
「あれな、頼めば誰とでも寝るってやつだろ?あんな平凡なやつによく勃つよな笑」
「大丈夫か?あんな噂気にするな」
「晃ほど清純な男はいないというのに」
「お前に嫉妬してあんな下らない噂を流すなんてな」
噂じゃなくて事実ですけど!!!??
俺がくそビッチという噂(真実)に怒るイケメン達、なぜか噂を流して俺を貶めてると勘違いされてる転校生……
魔性の男で申し訳ない笑
めちゃくちゃスロー更新になりますが、完結させたいと思っているので、気長にお待ちいただけると嬉しいです!
乙女ゲームのサポートメガネキャラに転生しました
西楓
BL
乙女ゲームのサポートキャラとして転生した俺は、ヒロインと攻略対象を無事くっつけることが出来るだろうか。どうやらヒロインの様子が違うような。距離の近いヒロインに徐々に不信感を抱く攻略対象。何故か攻略対象が接近してきて…
ほのほのです。
※有難いことに別サイトでその後の話をご希望されました(嬉しい😆)ので追加いたしました。
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
坂木兄弟が家にやってきました。
風見鶏ーKazamidoriー
BL
父子家庭のマイホームに暮らす|鷹野《たかの》|楓《かえで》は家事をこなす高校生。ある日、父の再婚話が持ちあがり相手の家族とひとつ屋根のしたで生活することに、再婚相手には年の近い息子たちがいた。
ふてぶてしい兄弟に楓は手を焼きながら、しだいに惹かれていく。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
pixivにも投稿しています。
ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者、の予定
幼馴染みに告白したら、次の日オレ当て馬になってたんですけど!?
曲がる定規
BL
登場人物
慎太郎 (シンタロウ)
ユキ
始 (ハジメ)
あらすじ
慎太郎とユキ、始の三人は幼馴染で、隣同士に住んでいる。
ある日、慎太郎がユキの部屋でゲームをしていると、ユキがポツリと悩みを口にした。『友達の好きと恋愛の好きって、何が違うの?』と。
密かにユキに想いを寄せていた慎太郎。ここは関係を一歩進められるチャンスだと思い、ユキに想いを告げる。
唇を近づけた慎太郎。そこに偶然やって来た始に、慎太郎は思いっきり殴られてしまう。慎太郎は何がなんだかわからないと混乱する。しかし、ユキと始に帰るよう言われ渋々帰宅した。
訳のわからないまま翌日になると、ユキと始は付き合い始めたと言われてしまう。
「この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。
そちらに加筆、修正を加えています。
https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる