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1.勇者様、何故ここに!
しおりを挟む早朝、ポストに入っている新聞を取り出して今日も彼の姿を見てはニマニマと口元をだらしなく緩める。
【勇者ジェイミー。盗賊から人質救出】
記事には、人質として囚われた子供の盾になるように前に立ち、精悍な顔つきで剣先を大男達に向ける一人の美しき騎士の写真が載っていた。
白黒写真だから彼の魅力である光を集めたような金髪やサファイアの如く輝く瞳は分からないが、それでも彼の美貌は色褪せない。日々鍛えられている体はしなやかな筋肉が程良くついておりギリシャ彫刻の様な造形だ。
また、彼の美しさは容姿だけでは無い。人々を思い魔王討伐へと旅立った勇姿、弱き者に手を差し伸べ助ける慈愛の心。
そう、彼は正に生きる国宝。生きる神。
そんな完璧な男を見て惚れない人はいるか?いないね。俺もその一人である。国中が彼を称えるが俺はただの国民とは違う。
「クレア!見た?今日の朝刊のジェイミー様!」
「見たわ!何あのイケメン!王子?王子なの?あぁあああ私を白馬で迎えに来て!」
俺、ミルは、ジェイミー様のガチオタである。
そして目の前で発狂している彼女の名はクレア。
パン屋の娘で持ち前の明るい笑顔が街の男達に人気だ。しかし、この彼女の発狂ぶりを見れば千年の恋も冷めるだろう。
彼女は俺と同じくジェイミー様ガチ勢。
ジェイミー様が出た新聞は全て買い集め、ジェイミー様の写真集は三冊買う。観賞用・保存用・布教用である。因みに俺は残念ながら一冊だけ。もっとジェイミー様に貢ぎたいが、小さな本屋の店員には金銭的に厳しい。
「どうしてあんなにお美しいのに下々の人間にも手を差し伸べるの……神?神の使いなの?」
「最高過ぎる……ジェイミー様のいる世界に生まれて良かった」
「本当ね。あっ、この後暇?カフェでジェイミー様の秘蔵写真を見せてあげるわ」
いいね!と親指を立てる。するとクレアは首を傾げ、眉を下げて笑った。
「ミル。また貴方変わった仕草をするわね」
「ん?あっ、あはは、クセで」
この世界では使わない仕草だということをうっかり忘れていた。
実を言うと、俺には前世の記憶がある。
あるとは言っても出身地や家族の名前は朧気だが、あるアイドルを推していた事だけはしっかり覚えている。
名前はひらりちゃん。天然姫様ひーらーり!と友人達とコールをしていた記憶がある。ひらりちゃんの顔をもう見る事が出来ないと子供ながら人生に絶望を感じていたが、俺は新たな推し・ジェイミー様を見付けたお陰で今は人生に希望しか感じない。
ひらりちゃんすまない。これは別に担降りした訳ではない。今も変わらず愛してる。だけどこっちの世界ではジェイミー様という訳だから許して欲しい。
まあひらりちゃんへの弁解はここまでにしておこう。
今世も俺はオタ活を楽しんでいるが、実はこの世界は「推し」という文化が無い。
クレアも俺と同じジェイミー様ガチ勢だが彼女はジェイミー様に対して本気で恋をしている。つまり、この世界のオタクは所謂リアコしか居ないのだ。
俺みたいに恋愛対象では無く影から応援するタイプのオタクは居ない。俺が「ジェイミー様好き!」なんて言ったら最後。街中の女性から目の敵にされる。
皆、本気でジェイミー様を恋愛対象として愛してるのだ。まあ平たく言うと、この世界は軽々と好きとか愛してるとかは言わないんだよな。
その点、クレアは昔からの仲の為、俺の考え方も理解してくれており一緒に語り合える。マジで俺の親友。ありがとう。俺は推しの良さを皆で共有したい派だから他の人に語れないのは苦痛でしかなかったが、クレアの存在のお陰で日々幸せにオタ活を出来ている。
そして、素晴らしき親友とカフェへ行きジェイミー様の尊さを語り合った。甘い苺のタルトを頬張りながら話を弾ませていると、突如クレアが石像のように固まり黙った。
「どうした?」
「じぇ、じぇじぇ」
謎の単語を発するクレア。瞬きもせず扉を見つめている。振り向くと、信じられない人物がそこにいた。
「良い雰囲気の店だなぁ」
「ああ」
朗らかな笑みを浮かべる大柄な赤髪の男の横で颯爽と歩く彼。横の大男も街で歩いていたら通行人の目を引くようなイケメンだが、ジェイミー様のオーラには到底及ばない。
一目見れば余りの美貌の眩さに思わず瞼を閉じてしまいたくなる程神々しいお姿。まるで太陽を背負って現れたような輝きだ。
なっ、何故こんなありふれた街中のカフェにジェイミー様が……!?
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旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
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