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23.勇者様、ゴリラとお遊び!
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鬱蒼とした森の中を駆け回る少年を追い掛ける。
少年の名はクレイ。
母親譲りの繊細で柔らかい猫みたいな紺の髪はふわふわとしていて思わず触れたくなる。大きなルビーレッドの瞳は瞼の中に宝石をはめたようだ。
彼はこの平民ばかりが集う街には似合わない美貌の持ち主だった。その為、何度も誘拐犯や少年愛者に狙われたが、一度も被害は無かった。
神が彼を心配した故に授けた賜物か、彼は膨大な魔力を持っていたからだ。
本来、平民が魔力を持つ事は珍しいにも関わらず、彼は人の二、三倍の魔力量を持つ。器用な彼は幼い頃からその魔力を使いこなし近付いてきた不審者は身ぐるみを剥がし街の中心に吊るした。挙句、その裸体には「私は少年に手を出そうとしました」と黒い文字で刻むのだ。勿論、その文字を消す方法は彼以外知らない。
結果、彼に強引に迫ろうと愚かな事を考える人間は消えた。
尚且つ害の無い人々までもが彼を恐れ近寄ることは無くなった。唯一傍に居るのは家族である。そして気の強い姉が連れてきた友人の一人。それがミルだった。
魔力を見初められ高位魔法士がクレイを連れてから彼が街に戻ってくることは無かった。
数年振りだろうか。あの頃の可愛らしい姿は一変し、背が伸びて大人っぽいクールな姿だ。俺より年下なのにどこかミステリアスで落ち着いた雰囲気を醸し出している。
しかし、その考えは彼の行動を見た瞬間消え去る。
「お前みたいな魔法も使えない蟻が来る場所じゃないんだけど。さっさと消えろ」
ぶっきらぼうに言い、俺の持っていた瓶を奪い地面に叩き付ける。散らばった破片を見て一同唖然と固まった。
クレイは昔は良い子だった。口は悪いが俺を森に強引に遊びに誘って来たりと懐いているように見えた。しかし、ジェイミー様を推し始めてから何故か攻撃的になった。魔法士になることも、どこで働くのかも言わずに消えてしまうくらい嫌われてる。
「チッ、ていうかお前仕事は?あの亀みたいな鈍臭いオッサンに店預けてゴリラと遊んでんの?」
ゴリラというのはアレン様の事だろうか。アレン様はかなりフレンドリーだが一応魔王討伐の旅に出た一員だ。そんな渾名で呼ぶのは余りにも不敬だ。
それにオリヴァーさんの事も鈍臭いオッサンなんて言わないで欲しい。鈍臭くないしオッサンじゃない。格好に頓着が無いだけでちゃんと身嗜みを整えれば若く見える。
言い返してやりたいが今は喋れない為、俺は視線で否定を訴えた。すると彼は顔を歪ませた。
「何?言いたいことあるなら言えば?」
「ク、クレイ氏。今、ミル氏は口封じの魔法で話せなくなっちゃってますので……」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。そして魔法士さんから事情を聞くと呆れたように大きなため息を吐いた。
「そもそも何でお前ここに来たわけ?」
「俺が連れて来たんだよ。筋肉付けるためにさ」
「その面で筋肉とかキモすぎ。何目指してんの……」
庇うように俺の前に出たアレン様だが、クレイはドン引きした。
何がキモイんだ。筋肉が似合わないひ弱な野郎だと言いたいのか?別に似合わなくてもジェイミー様を守るためだから良いし。
「別にどんな顔でも鍛えて悪いことはねえだろ。人のやる事に突っかかるなよ。今日のお前変だぞ。ミルとどんな仲だ?」
「お前に言う義務は無い。兎に角二人とも帰って。お前らに構う時間無いから」
クレイの失礼な態度にアレン様は苦笑を浮かべ、結局帰ることにした。まあ約束せず訪問したこっちにも非があるし大人しく帰った方が良い。
曇天の中、道を駆ける。帰り際に感じた体を突き刺すようなクレイの鋭い視線が脳にこびりついていた。
少年の名はクレイ。
母親譲りの繊細で柔らかい猫みたいな紺の髪はふわふわとしていて思わず触れたくなる。大きなルビーレッドの瞳は瞼の中に宝石をはめたようだ。
彼はこの平民ばかりが集う街には似合わない美貌の持ち主だった。その為、何度も誘拐犯や少年愛者に狙われたが、一度も被害は無かった。
神が彼を心配した故に授けた賜物か、彼は膨大な魔力を持っていたからだ。
本来、平民が魔力を持つ事は珍しいにも関わらず、彼は人の二、三倍の魔力量を持つ。器用な彼は幼い頃からその魔力を使いこなし近付いてきた不審者は身ぐるみを剥がし街の中心に吊るした。挙句、その裸体には「私は少年に手を出そうとしました」と黒い文字で刻むのだ。勿論、その文字を消す方法は彼以外知らない。
結果、彼に強引に迫ろうと愚かな事を考える人間は消えた。
尚且つ害の無い人々までもが彼を恐れ近寄ることは無くなった。唯一傍に居るのは家族である。そして気の強い姉が連れてきた友人の一人。それがミルだった。
魔力を見初められ高位魔法士がクレイを連れてから彼が街に戻ってくることは無かった。
数年振りだろうか。あの頃の可愛らしい姿は一変し、背が伸びて大人っぽいクールな姿だ。俺より年下なのにどこかミステリアスで落ち着いた雰囲気を醸し出している。
しかし、その考えは彼の行動を見た瞬間消え去る。
「お前みたいな魔法も使えない蟻が来る場所じゃないんだけど。さっさと消えろ」
ぶっきらぼうに言い、俺の持っていた瓶を奪い地面に叩き付ける。散らばった破片を見て一同唖然と固まった。
クレイは昔は良い子だった。口は悪いが俺を森に強引に遊びに誘って来たりと懐いているように見えた。しかし、ジェイミー様を推し始めてから何故か攻撃的になった。魔法士になることも、どこで働くのかも言わずに消えてしまうくらい嫌われてる。
「チッ、ていうかお前仕事は?あの亀みたいな鈍臭いオッサンに店預けてゴリラと遊んでんの?」
ゴリラというのはアレン様の事だろうか。アレン様はかなりフレンドリーだが一応魔王討伐の旅に出た一員だ。そんな渾名で呼ぶのは余りにも不敬だ。
それにオリヴァーさんの事も鈍臭いオッサンなんて言わないで欲しい。鈍臭くないしオッサンじゃない。格好に頓着が無いだけでちゃんと身嗜みを整えれば若く見える。
言い返してやりたいが今は喋れない為、俺は視線で否定を訴えた。すると彼は顔を歪ませた。
「何?言いたいことあるなら言えば?」
「ク、クレイ氏。今、ミル氏は口封じの魔法で話せなくなっちゃってますので……」
「は?」
鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。そして魔法士さんから事情を聞くと呆れたように大きなため息を吐いた。
「そもそも何でお前ここに来たわけ?」
「俺が連れて来たんだよ。筋肉付けるためにさ」
「その面で筋肉とかキモすぎ。何目指してんの……」
庇うように俺の前に出たアレン様だが、クレイはドン引きした。
何がキモイんだ。筋肉が似合わないひ弱な野郎だと言いたいのか?別に似合わなくてもジェイミー様を守るためだから良いし。
「別にどんな顔でも鍛えて悪いことはねえだろ。人のやる事に突っかかるなよ。今日のお前変だぞ。ミルとどんな仲だ?」
「お前に言う義務は無い。兎に角二人とも帰って。お前らに構う時間無いから」
クレイの失礼な態度にアレン様は苦笑を浮かべ、結局帰ることにした。まあ約束せず訪問したこっちにも非があるし大人しく帰った方が良い。
曇天の中、道を駆ける。帰り際に感じた体を突き刺すようなクレイの鋭い視線が脳にこびりついていた。
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