勇者様、推しです!〜溺愛されるのは解釈違いです〜

ぽぽ

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24.勇者様、パツパツ

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 ため息を吐き部屋で布団の上に寝転んだ。
 帰宅後、オリヴァーさんは帰りが遅かった俺を責めず泣きそうな顔で心配し、更に一日声が出ない事を伝えるとこの世の終わりのような表情をした。オリヴァーさんに過剰に心配させたことに罪悪感を感じ、いつもより長めに働いた結果、体が酷く疲労している。初めての乗馬も不慣れで疲れたしなぁ。まあカツは可愛かったけど。

 部屋で寛いでいると、ふと玄関の方から物音がした。様子を見に行くと自室に居たオリヴァーさんと鉢合わせる。
 
「ミルくんもやっぱり聞こえた?幽霊だったらどうしよぉぉぉ」
 
 震えるオリヴァーさんの背中を撫でて落ち着かせる。そしてゆっくり扉を引くと、ジェイミー様が俯いていた。彼の金髪の先から雨が零れる。睫毛の影を落とした暗い瞳と目が合い心臓が跳ね上がった。
 
「えぇぇ、ジェイミー様!?どうしてここに」
「……夜分遅くに失礼した。直ぐ帰る」
「へっ、でも全身濡れてますよ?ミルくんも心配するだろうし入って雨宿りをしていってください」
 
 ウンウンとオリヴァーさんと共に頷く。するとジェイミー様は眉を下げて申し訳ないと言い、中に入った。
 
「えっと、僕コーヒー持ってくるね」
「いえ、気を遣わなくても」
「大丈夫大丈夫!」
 
 オリヴァーさんが行ってしまい、ジェイミー様と二人きりになった。
 沈黙が部屋を包む。気まずいし何か話を作りたいが残念ながら話すことが出来ない。あ、そういえば筆談で良いんじゃないか。ペンと紙を取りに立ち上がると、ふと腕を掴まれた。振り向くとジェイミー様が少し驚いた表情をしていた。こっちが驚いたんですけど、どうしたんだろ。
 
「すまない。つい……」
 
 首を横に振るとジェイミー様はまた無表情に戻った。いつもと違うジェイミー様の様子に違和感を感じながらも目的の物を取り、俺は文字を書いた。

“すみません。口封じの薬を誤って触れてしまい今話せません。文字で書きます。”

 そんな俺の書いた文を見てジェイミー様の眉がピクリと上がった。
 
「何故口封じの薬を?ここらで出回っていないだろう」
 
 魔法士の方に頂きました。と書くとジェイミー様の眉間に溝が出来た。
 
「今日、アレンと馬に乗っていた所を見た。薬を飲んだのはアレンが原因か。その魔法士はまさかルッツか?かなり遠い塔にいるはずだがそこまで行ったのか?」
 
 畳み掛けるように話す姿に戸惑うが筆を走らせた。
 
“ルッツさんは知りませんがアレン様の知り合いの魔法士さんから頂きました。乗馬は初めてでしたがカツは良い子で可愛かったです。”
 
 幼児が書く手紙のような文章をジェイミー様は真剣に読み、そっと俺の喉に手を伸ばした。
 
「痛くないか?」

 首を縦に振る。ジェイミー様こそ風邪を引いてませんか?と書くと彼は同じ様に首を振った。安心してほっと一息つくと、ジェイミー様は俯いた。
 
「私より───」

 聞き取れたのはそれだけで、その続きは扉の開く音で掻き消された。
 部屋に入ってきたオリヴァーさんは俺とジェイミー様の前にコーヒーを置き、俺の隣に座って話し始めた。
 
「いやぁ、雨凄いねぇ。今日は止みそうにないし空いてる部屋で泊まっていって下さい」
「良いのか?」
「こんな雨の中に追い出す人なんていませんよぉ」
 
 そしてジェイミー様は一泊していくことになった。今はお風呂に入っている。雨に濡れたままじゃ風邪を引いてしまうだろうからとオリヴァーさんが気を利かせたのだ。推しが近くでお風呂に入っているというのは何だかそわそわする。
 
 それにしても、こんな時間に土砂降りの中外を歩いているなんて何かあったのかな。様子も変だったしまた魔物が街を襲ったのかもしれない。
 魔王を倒しても生き残りの魔物達は未だ村に現れ人々を襲う。加えて最悪なことに魔王が居た時に比べ、魔物が人里に降りてくる頻度が高いのだ。自分達のトップである魔王が倒された事に腹を立てたのか分からないが他国に比べて異常に魔物出没率が高い。

 暫くすると、ジェイミー様が部屋に戻ってきた。髪が湿っていて色っぽい。

「あ、やっぱり僕の服だとパツパツだね」
 
 ジェイミー様は恥ずかしかったのか伏し目になる。可愛い。どうしてこんなに大きいのに可愛いんだ。反則過ぎる。
 萌えを押し殺して、滅多に人が来ない客間へジェイミー様を案内する。布団は一度も使ってない新品を取り出してきた。
 
「ミルは一緒に寝ないのか」
 
 思わぬ質問にオリヴァーさんも俺も目を丸くした。いいいい一緒に寝るなんて恐れ多すぎて無理に決まってるしジェイミー様が穢れる。ていうか俺が悪い奴だったら襲われるかもしれないんだぞ、もっと気をつけて発言して欲しい。ファンは心配です……。
 オリヴァーさんは、ぶんぶん首を横に振る俺の言葉を代弁してくれた。
 
「えっとぉ、ミルくんには刺激が強過ぎるから厳しいかな……」
 
 ジェイミー様は言葉の意味が分かっていないらしく怪訝な面持ちをしていたが、渋々というように「分かった」と答えた。俺は心の中で土下座をした。
 
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