29 / 31
29.勇者様、殴り合い!
しおりを挟む
「く、クレイ!?何でここに」
「こっちのセリフ。何で他人の家に入ってんの?」
「あああ、えっとこれは」
「クレイだけじゃなくて私の家でもあるわよ。私がミルを入れたの。てか今まで全然顔見せなかったくせに急にどうしたの?」
クレアの問いかけにクレイは言い淀む。そして目を逸らして呟いた。
「……煩い、猿」
「誰が猿ですって!?」
クレアが般若の形相でクレイに掴みかかった。しかしクレイは魔法で移動して逃げた。二人はその後も喧嘩を続け、あっという間に部屋がぐちゃぐちゃになった。下手に間に入ると殺されそうだから大人しくしていたが、流石にこの部屋の惨状に黙っていられず俺は二人を止めに入った。
「二人とも、落ち着いて」
「「煩い!!」」
「すみません……」
二人の剣幕に押され、俺は黙り込んだ。どうしよう。怖い。俺が止めに入っても結局余計に悪化してしまった。
その後二人が落ち着いた頃にはもう日が落ち始めていた。
「全く……久々に帰ってきたかと思ったらいきなり邪魔してくるなんてどういうつもりよ」
「それはお前もだろ」
「はあ?また殴られたいの?」
「お前こそ」
「ちょっと待って!二人共!」
また険悪な雰囲気になって来たところで、俺は慌てて仲裁に入る。このままだとまた部屋を壊しかねない。
「今日は久しぶりに三人揃ったんだし仲良くしようよ」
「私は別にこいつが居なくてもいいけど」
「はあ?僕もお前なんか」
「だから二人とも……はあ」
相変わらず仲の悪い兄弟だ。クレイはクレアに冷たく当たるし、クレアはクレイに冷たい。だけどお互い嫌いではないはずなのだ。ただ、素直になれないだけで。
クレイとクレアはお互いに睨み合った後、プイッと顔を背けた。俺は呆れてため息をつく。
「とりあえず、今日は俺帰るね……」
そしてその場から離れようとしたが、クレアに止められた。クレアはそのまま俺の肩を引き寄せ、耳元で声を潜めて俺に話した。
「ちょっと、私とクレイを二人にする気?冗談じゃないわ」
「いや、俺がいても……」
「お願い。今度何か奢るから」
「えぇ……」
すると、階段から誰かの足音が聞こえた。ノックをして扉が開くと、華奢な女性が現れた。ぱっちりとした大きな目が俺たちを映してキラキラと輝きを灯す。
「あら、あらあら、クレイ!それにミルくんも!久しぶりの三人組ねぇ!クレアはいつも家にいるけど他の二人はほんと久しぶりね!元気にしてた?昔に比べたら皆大きくなったけどうちの旦那に比べたらリスみたいで可愛いわね!」
「お、お久しぶりです」
「ババア、煩い」
クレイが呟いた瞬間、クレア母からの拳骨が飛んだ。ゴンッといい音が響き渡る。痛そう……。
二人の子供を産んだとは思えない程美しい人だが、やはりクレアの母。成人男性を上回る力強さを持っている。どこからそのパワーが出るのか気になる。
「こらっ!ババアとは誰のことかしら?お母さんと呼びなさい。もう、クレイったら口が悪いわね。誰に似たのかしら。あ、そうそう!折角三人揃っているんだからご飯食べていきなさいよ!」
「いえ、でも悪いですし」
「遠慮しないで!ミルくんと会うのもそういえば久々ね!クレアとはよく一緒に話しているようだけど私には全然顔だしてくれないから嫉妬しちゃうわ。そういえばクレアが前教えてくれたんだけどーーー」
相変わらずよく口が回る人だ。余りの速さに俺は少し狼狽えながらも何とか返事をする。
結局、夕食を食べていくことになった。
食事中もずっと喋り続けていたが、ふと思い出したことがあって俺はクレイに話しかけた。
「そういえば、アルバムに挟んであった花ってミーギロッタだよね?好きなの?」
「押し花までして保存してるなんて意外と可愛いところあるのね。乙女クレイ」
「アァ?黙れブス」
「はあ?目付いてないの?」
喧嘩が始まりそうになったところで俺はまた止めた。何でこの二人はすぐに喧嘩するんだよ。
俺はため息をついて再びクレイに問いかける。この花は確か、小さい頃にクレイと一緒に摘みに行ったものだ。クレイは俺の言葉を聞くと不機嫌そうな表情を浮かべて答えた。
「これは……戒めとして」
「戒め?」
「お前、ほんと何も覚えてないね。勇者のこと以外。うざ。病気かよ。その脳みそ本気で入れ替えてもらった方がいいんじゃない?」
そこまで言われる必要ある!?俺はムカついたので言い返そうとしたが、それよりも先にクレア母の拳骨が落ちた。
「あんたいい加減にしなさい!グチグチ嫌味ばかり言ってたら幸せが逃げていくわ。ただでさえ友達いないのにミルくんにまで嫌われたらどうするの?ミルくんもごめんなさいね。許してあげて。この子素直じゃないけど心の中はハッピー!ってサンバ踊ってるから」
「踊るわけないけど!?おい、絶対想像するなよ」
サンバを踊るクレイ……想像するどころか余りにも現実逃避かけ離れていて想像できない。一方、クレアは想像出来たのか爆笑している。クレア母も同様に笑い始めた。
クレイはそんな二人を見て「もう帰る!」と大声を出して立ち上がった。しかし、それをクレア母が引き止める。
「ふふっ、ああ、クレイ待って。もう暗いからミルくんを家まで送ってあげて」
「は?コイツ男だし送る程じゃないだろ」
「ダメダメ。最近ここら辺も物騒だからね。それに一人で帰らせる方が心配だわ」
「いや、大丈夫ですよ。一人でも全然……」
「いいのいいの!遠慮しないで。こんなのだけど護衛には向いてるから!もし何かあっても魔法で助けてくれるわ!じゃあミルくん、またいつでも遊びに来てね!」
こうして俺は何故かクレイに送られることになった。
俺、超気まずいんだけど……。
「こっちのセリフ。何で他人の家に入ってんの?」
「あああ、えっとこれは」
「クレイだけじゃなくて私の家でもあるわよ。私がミルを入れたの。てか今まで全然顔見せなかったくせに急にどうしたの?」
クレアの問いかけにクレイは言い淀む。そして目を逸らして呟いた。
「……煩い、猿」
「誰が猿ですって!?」
クレアが般若の形相でクレイに掴みかかった。しかしクレイは魔法で移動して逃げた。二人はその後も喧嘩を続け、あっという間に部屋がぐちゃぐちゃになった。下手に間に入ると殺されそうだから大人しくしていたが、流石にこの部屋の惨状に黙っていられず俺は二人を止めに入った。
「二人とも、落ち着いて」
「「煩い!!」」
「すみません……」
二人の剣幕に押され、俺は黙り込んだ。どうしよう。怖い。俺が止めに入っても結局余計に悪化してしまった。
その後二人が落ち着いた頃にはもう日が落ち始めていた。
「全く……久々に帰ってきたかと思ったらいきなり邪魔してくるなんてどういうつもりよ」
「それはお前もだろ」
「はあ?また殴られたいの?」
「お前こそ」
「ちょっと待って!二人共!」
また険悪な雰囲気になって来たところで、俺は慌てて仲裁に入る。このままだとまた部屋を壊しかねない。
「今日は久しぶりに三人揃ったんだし仲良くしようよ」
「私は別にこいつが居なくてもいいけど」
「はあ?僕もお前なんか」
「だから二人とも……はあ」
相変わらず仲の悪い兄弟だ。クレイはクレアに冷たく当たるし、クレアはクレイに冷たい。だけどお互い嫌いではないはずなのだ。ただ、素直になれないだけで。
クレイとクレアはお互いに睨み合った後、プイッと顔を背けた。俺は呆れてため息をつく。
「とりあえず、今日は俺帰るね……」
そしてその場から離れようとしたが、クレアに止められた。クレアはそのまま俺の肩を引き寄せ、耳元で声を潜めて俺に話した。
「ちょっと、私とクレイを二人にする気?冗談じゃないわ」
「いや、俺がいても……」
「お願い。今度何か奢るから」
「えぇ……」
すると、階段から誰かの足音が聞こえた。ノックをして扉が開くと、華奢な女性が現れた。ぱっちりとした大きな目が俺たちを映してキラキラと輝きを灯す。
「あら、あらあら、クレイ!それにミルくんも!久しぶりの三人組ねぇ!クレアはいつも家にいるけど他の二人はほんと久しぶりね!元気にしてた?昔に比べたら皆大きくなったけどうちの旦那に比べたらリスみたいで可愛いわね!」
「お、お久しぶりです」
「ババア、煩い」
クレイが呟いた瞬間、クレア母からの拳骨が飛んだ。ゴンッといい音が響き渡る。痛そう……。
二人の子供を産んだとは思えない程美しい人だが、やはりクレアの母。成人男性を上回る力強さを持っている。どこからそのパワーが出るのか気になる。
「こらっ!ババアとは誰のことかしら?お母さんと呼びなさい。もう、クレイったら口が悪いわね。誰に似たのかしら。あ、そうそう!折角三人揃っているんだからご飯食べていきなさいよ!」
「いえ、でも悪いですし」
「遠慮しないで!ミルくんと会うのもそういえば久々ね!クレアとはよく一緒に話しているようだけど私には全然顔だしてくれないから嫉妬しちゃうわ。そういえばクレアが前教えてくれたんだけどーーー」
相変わらずよく口が回る人だ。余りの速さに俺は少し狼狽えながらも何とか返事をする。
結局、夕食を食べていくことになった。
食事中もずっと喋り続けていたが、ふと思い出したことがあって俺はクレイに話しかけた。
「そういえば、アルバムに挟んであった花ってミーギロッタだよね?好きなの?」
「押し花までして保存してるなんて意外と可愛いところあるのね。乙女クレイ」
「アァ?黙れブス」
「はあ?目付いてないの?」
喧嘩が始まりそうになったところで俺はまた止めた。何でこの二人はすぐに喧嘩するんだよ。
俺はため息をついて再びクレイに問いかける。この花は確か、小さい頃にクレイと一緒に摘みに行ったものだ。クレイは俺の言葉を聞くと不機嫌そうな表情を浮かべて答えた。
「これは……戒めとして」
「戒め?」
「お前、ほんと何も覚えてないね。勇者のこと以外。うざ。病気かよ。その脳みそ本気で入れ替えてもらった方がいいんじゃない?」
そこまで言われる必要ある!?俺はムカついたので言い返そうとしたが、それよりも先にクレア母の拳骨が落ちた。
「あんたいい加減にしなさい!グチグチ嫌味ばかり言ってたら幸せが逃げていくわ。ただでさえ友達いないのにミルくんにまで嫌われたらどうするの?ミルくんもごめんなさいね。許してあげて。この子素直じゃないけど心の中はハッピー!ってサンバ踊ってるから」
「踊るわけないけど!?おい、絶対想像するなよ」
サンバを踊るクレイ……想像するどころか余りにも現実逃避かけ離れていて想像できない。一方、クレアは想像出来たのか爆笑している。クレア母も同様に笑い始めた。
クレイはそんな二人を見て「もう帰る!」と大声を出して立ち上がった。しかし、それをクレア母が引き止める。
「ふふっ、ああ、クレイ待って。もう暗いからミルくんを家まで送ってあげて」
「は?コイツ男だし送る程じゃないだろ」
「ダメダメ。最近ここら辺も物騒だからね。それに一人で帰らせる方が心配だわ」
「いや、大丈夫ですよ。一人でも全然……」
「いいのいいの!遠慮しないで。こんなのだけど護衛には向いてるから!もし何かあっても魔法で助けてくれるわ!じゃあミルくん、またいつでも遊びに来てね!」
こうして俺は何故かクレイに送られることになった。
俺、超気まずいんだけど……。
16
あなたにおすすめの小説
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
異世界で聖男と呼ばれる僕、助けた小さな君は宰相になっていた
k-ing /きんぐ★商業5作品
BL
病院に勤めている橘湊は夜勤明けに家へ帰ると、傷ついた少年が玄関で倒れていた。
言葉も話せず、身寄りもわからない少年を一時的に保護することにした。
小さく甘えん坊な少年との穏やかな日々は、湊にとってかけがえのない時間となる。
しかし、ある日突然、少年は「ありがとう」とだけ告げて異世界へ帰ってしまう。
湊の生活は以前のような日に戻った。
一カ月後に少年は再び湊の前に現れた。
ただ、明らかに成長スピードが早い。
どうやら違う世界から来ているようで、時間軸が異なっているらしい。
弟のように可愛がっていたのに、急に成長する少年に戸惑う湊。
お互いに少しずつ気持ちに気づいた途端、少年は遊びに来なくなってしまう。
あの時、気持ちだけでも伝えれば良かった。
後悔した湊は彼が口ずさむ不思議な呪文を口にする。
気づけば少年の住む異世界に来ていた。
二つの世界を越えた、純情な淡い両片思いの恋物語。
序盤は幼い宰相との現実世界での物語、その後異世界への物語と話は続いていきます。
追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜
あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。
行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。
異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?
過労死で異世界転生したら、勇者の魂を持つ僕が魔王の城で目覚めた。なぜか「魂の半身」と呼ばれ異常なまでに溺愛されてる件
水凪しおん
BL
ブラック企業で過労死した俺、雪斗(ユキト)が次に目覚めたのは、なんと異世界の魔王の城だった。
赤ん坊の姿で転生した俺は、自分がこの世界を滅ぼす魔王を討つための「勇者の魂」を持つと知る。
目の前にいるのは、冷酷非情と噂の魔王ゼノン。
「ああ、終わった……食べられるんだ」
絶望する俺を前に、しかし魔王はうっとりと目を細め、こう囁いた。
「ようやく会えた、我が魂の半身よ」
それから始まったのは、地獄のような日々――ではなく、至れり尽くせりの甘やかし生活!?
最高級の食事、ふわふわの寝具、傅役(もりやく)までつけられ、魔王自らが甲斐甲斐しくお菓子を食べさせてくる始末。
この溺愛は、俺を油断させて力を奪うための罠に違いない!
そう信じて疑わない俺の勘違いをよそに、魔王の独占欲と愛情はどんどんエスカレートしていき……。
永い孤独を生きてきた最強魔王と、自己肯定感ゼロの元社畜勇者。
敵対するはずの運命が交わる時、世界を揺るがす壮大な愛の物語が始まる。
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
冷徹勇猛な竜将アルファは純粋無垢な王子オメガに甘えたいのだ! ~だけど殿下は僕に、癒ししか求めてくれないのかな……~
大波小波
BL
フェリックス・エディン・ラヴィゲールは、ネイトステフ王国の第三王子だ。
端正だが、どこか猛禽類の鋭さを思わせる面立ち。
鋭い長剣を振るう、引き締まった体。
第二性がアルファだからというだけではない、自らを鍛え抜いた武人だった。
彼は『竜将』と呼ばれる称号と共に、内戦に苦しむ隣国へと派遣されていた。
軍閥のクーデターにより内戦の起きた、テミスアーリン王国。
そこでは、国王の第二夫人が亡命の準備を急いでいた。
王は戦闘で命を落とし、彼の正妻である王妃は早々と我が子を連れて逃げている。
仮王として指揮をとる第二夫人の長男は、近隣諸国へ支援を求めて欲しいと、彼女に亡命を勧めた。
仮王の弟である、アルネ・エドゥアルド・クラルは、兄の力になれない歯がゆさを感じていた。
瑞々しい、均整の取れた体。
絹のような栗色の髪に、白い肌。
美しい面立ちだが、茶目っ気も覗くつぶらな瞳。
第二性はオメガだが、彼は利発で優しい少年だった。
そんなアルネは兄から聞いた、隣国の支援部隊を指揮する『竜将』の名を呟く。
「フェリックス・エディン・ラヴィゲール殿下……」
不思議と、勇気が湧いてくる。
「長い、お名前。まるで、呪文みたい」
その名が、恋の呪文となる日が近いことを、アルネはまだ知らなかった。
亡国の王弟は女好きの騎士に溺愛される
コムギ
BL
アラバンド国の王弟ルカーシュは、騎士のシモンによって地下牢から救い出された。
その時、肌に触れたシモンに、やけどのような怪我を負わせてしまう。
ルカーシュは北の魔女の末裔であり、魔力を持っていた。
魔力を持たない者に触れると、怪我をさせてしまうという。
騎士団長からの命令で、シモンはルカーシュの護衛につくことになった。
※他サイトにも掲載しています。
記憶喪失ですが、夫に溺愛されています。
もちえなが
BL
目覚めると、そこは知らない天井だった。
そして、見知らぬ黒髪の男に強く抱き締められた。
「リーヴェ……あぁ、よかった……!
あなたがいなかったら、俺は……」
涙をこぼし、必死に縋ってくる彼――オルフェは、自分の“夫”だという。
だが主人公・リーヴェには、彼との記憶が一切なかった。
「記憶などどうでも良い。
貴方が健やかに生きてくれれば俺はそれだけで良い」
溺愛、過保護、甘やかし――
夫・オルフェに沢山の愛を注がれながら過ごす幸せな日々。
けれど、失われた記憶の先には、
オルフェの語ろうとしない“過去”が隠されていて――。
記憶喪失から始まる、
甘くて切ない再恋物語。
スパダリ黒髪眼鏡攻め × 金髪美少年受け。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる