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「今日もいい匂いですね」
俺の肩に顔を埋め、そう呟いた。その嬉しそうな声を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
まだβだとバレてない。
時は遡り、俺が小学生の頃。彼、高木春陽と俺、中村幸人は番になった。正確に説明すると、番になった訳では無く婚約をしただけだが。
基本、生後直ぐに第二性は血液検査で分かるが、その後成長し変化する場合もあり十代後半になり、漸く正確に第二性が判明する。だから、まだ幼い俺達は第二性が確定していない為番にはなれなかった。
しかし、きっと俺はオメガで彼はアルファだろうという根拠の無い自信があった。自分で言うのもあれだが、小さい頃は何処かの国の姫かという程、可愛らしい容姿をしていた。こぼれ落ちそうなくらい大きな瞳で身長も周囲と比べて低く華奢な庇護欲を掻き立てる容姿だった。だから、自分はきっとオメガだろうと無意識に考えていたのだ。
そんな幼少期の俺は女の子よりも男の子に告白されることが多く、まだ幼稚園に通うほどの年齢の春陽くんにまで告白された。
「はじめまして」
初めて会ったとき、彼は猫のように距離をとっていた。きょろきょろと不安げな顔で周囲を見渡し、隅の方にそっと隠れる。俺はそんな彼を少しでも安心させるように笑みを作り彼の身長に合わせ屈んで話し掛けると、下がっていた眉が少し戻った。
「僕の名前は幸人だよ。君は?」
「……はるひ」
「格好良い名前だね!」
緊張しているからか無言の彼は徐々にぽつりぽつりと話をしてくれるようになった。そんな彼の変化が嬉しくて俺も沢山話しかけ、いつの間にか俺達の距離は縮まり春陽くんも心を開いてくれた。
「ゆきちゃん、今日はね、かけっこでね、一番だったの!」
昔は俯いていた彼が、今では、こちらをまっすぐ見つめて笑う。学校での出来事を弾んだ声で話す様子に俺も自然と笑みが零れた。
春陽くんの両親は共にアルファで大手企業の管理職を務めている。両親の仕事が忙しく彼らが帰ってくるまでの間、彼は近所の俺の家によく遊びに来てくれていた。毎日殆ど共に過ごす彼に対して年下だけども親友と呼び、愛おしく感じていた。
「ゆきちゃん、あのね」
ある時、遊んでいると春陽くんは視線を泳がせ、何故かもじもじしていた。
「どうしたの?具合悪い?」
「ちがう……あのね……」
彼は何かを決意したようで、頬を赤らめながら口を開いた。
「ゆきちゃん、僕と結婚してください」
「え……」
突然のプロポーズに驚いた俺は固まってしまった。まさか五歳も年下の男の子に告白されるなんて思いもよらないだろう。彼の小さな手で差し出されたマーガレットを見て以前春陽くんに「マーガレットが一番好きだ」と話していた事を思い出す。
俺の事ちゃんと考えてくれていたんだ……。
とくとくと心臓が鼓動しときめきを全身に訴えかけている。歓喜のまま頷くと、春陽くんはふわりと頬を緩めた。蕾のほころびのような、暖かく優しい微笑み。俺はその春に見惚れてしまった。
俺の肩に顔を埋め、そう呟いた。その嬉しそうな声を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
まだβだとバレてない。
時は遡り、俺が小学生の頃。彼、高木春陽と俺、中村幸人は番になった。正確に説明すると、番になった訳では無く婚約をしただけだが。
基本、生後直ぐに第二性は血液検査で分かるが、その後成長し変化する場合もあり十代後半になり、漸く正確に第二性が判明する。だから、まだ幼い俺達は第二性が確定していない為番にはなれなかった。
しかし、きっと俺はオメガで彼はアルファだろうという根拠の無い自信があった。自分で言うのもあれだが、小さい頃は何処かの国の姫かという程、可愛らしい容姿をしていた。こぼれ落ちそうなくらい大きな瞳で身長も周囲と比べて低く華奢な庇護欲を掻き立てる容姿だった。だから、自分はきっとオメガだろうと無意識に考えていたのだ。
そんな幼少期の俺は女の子よりも男の子に告白されることが多く、まだ幼稚園に通うほどの年齢の春陽くんにまで告白された。
「はじめまして」
初めて会ったとき、彼は猫のように距離をとっていた。きょろきょろと不安げな顔で周囲を見渡し、隅の方にそっと隠れる。俺はそんな彼を少しでも安心させるように笑みを作り彼の身長に合わせ屈んで話し掛けると、下がっていた眉が少し戻った。
「僕の名前は幸人だよ。君は?」
「……はるひ」
「格好良い名前だね!」
緊張しているからか無言の彼は徐々にぽつりぽつりと話をしてくれるようになった。そんな彼の変化が嬉しくて俺も沢山話しかけ、いつの間にか俺達の距離は縮まり春陽くんも心を開いてくれた。
「ゆきちゃん、今日はね、かけっこでね、一番だったの!」
昔は俯いていた彼が、今では、こちらをまっすぐ見つめて笑う。学校での出来事を弾んだ声で話す様子に俺も自然と笑みが零れた。
春陽くんの両親は共にアルファで大手企業の管理職を務めている。両親の仕事が忙しく彼らが帰ってくるまでの間、彼は近所の俺の家によく遊びに来てくれていた。毎日殆ど共に過ごす彼に対して年下だけども親友と呼び、愛おしく感じていた。
「ゆきちゃん、あのね」
ある時、遊んでいると春陽くんは視線を泳がせ、何故かもじもじしていた。
「どうしたの?具合悪い?」
「ちがう……あのね……」
彼は何かを決意したようで、頬を赤らめながら口を開いた。
「ゆきちゃん、僕と結婚してください」
「え……」
突然のプロポーズに驚いた俺は固まってしまった。まさか五歳も年下の男の子に告白されるなんて思いもよらないだろう。彼の小さな手で差し出されたマーガレットを見て以前春陽くんに「マーガレットが一番好きだ」と話していた事を思い出す。
俺の事ちゃんと考えてくれていたんだ……。
とくとくと心臓が鼓動しときめきを全身に訴えかけている。歓喜のまま頷くと、春陽くんはふわりと頬を緩めた。蕾のほころびのような、暖かく優しい微笑み。俺はその春に見惚れてしまった。
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