βとバレたら婚約破棄

綿毛ぽぽ

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 それからも俺は春陽くんに打ち明けられず、数年が経つ。社会人になり親元を離れ、春陽くんの家から少し離れた場所で住み始めたが、彼との関係は途切れなかった。

 俺は春陽くんにベータとバレないように、その後も必死にオメガの振りを続けていた。オメガの真似事のように抑制剤を持ち歩き、更には首輪まで春陽くんに買ってもらってしまった。 

 通常十代後半から発情期が現れるようになるが、まだ体が不安定かもと適当に誤魔化し、春陽くんの前では首輪を着ける、という生活を送っている。更にオメガ特有のフェロモンにかなり似せた「オメガになれちゃう!?オメガ体験香水」をネットで買ってみたが、鼻の良い春陽くんには直ぐバレて俺には似合わないと言われてしまってやめた。
 
 今日も俺の仕事終わりに春陽くんから会いたいというLIMEが送信されてきたため、首輪を付けて家で待った。すると春陽くんは部活終わりのようで学ランを着たまま訪れてきた。彼は現在高校三年生で学ラン姿ももう見ることも少ない。シンプルな学ランなのに何故こんなに格好よく着こなすんだろう。イケメンって羨ましい。
 そんなことを考えているとふわりと抱きしめられ、そっと春陽くんの息が耳許にかかった。
 
「幸人さん、会いたかった」
「俺も会いたかった」
「ふふ、今日もいい匂いですね」
 
 俺の肩に顔を埋め、そう呟く。その嬉しそうな声を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
 まだβだとバレてない。
 
 そして、二人で夕食を共にした。今日はこんなことがあった、これが楽しかった、と笑顔で話す彼の話に相槌を打ちながら食事をする。そんな中、春陽くんがふと箸を止めた。
 
「あっ、今日は伝えたいことがあってここに来たんです」
「なになに?」
「ジャン!こちらです」
 
 なんだその効果音、可愛過ぎる。静かに萌えを噛み締めながら彼の差し出した紙に目を落とす。
 「花高祭」と手書きの大きな文字の周りに屋台や花火などがポップに描かれている。散りばめられている鮮やかな色彩に青春の眩しさを感じた。どうやら春陽くんの通う花安高校で三年に一度開催される文化祭のことらしい。
 
「その、もし良ければ幸人さんに来て欲しいなって思って。一緒に回ってくれませんか?」
「うん。行きたいな。でも俺で良いの?折角だし学校の友達と回らなくても大丈夫?」
「全然!寧ろ幸人さんと回りたいです」
 
 机に身を乗り出す彼の勢いに飲まれて俺は頷いた。すると彼は花が綻ぶような笑顔を見せ、自分の行きたいお店を色々説明してくれた。

 可愛いなぁ。この歳で高校の文化祭なんて入っていいのかと思ったが、もう行く機会もないだろうし春陽くんの学校の時の姿を見るのは楽しみで心が躍る。
 
「このお化け屋敷結構クオリティ高いって噂になってて」
「へえ、怖いのは苦手だけど気になるなぁ」
「じゃあ怖かったら僕の手を握ってください」
 
 和やかに笑い合いながら雑談してた俺はまだ知らなかった。この文化祭が後々事件に繋がるということを。




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