4 / 20
4
それからも俺は春陽くんに打ち明けられず、数年が経つ。社会人になり親元を離れ、春陽くんの家から少し離れた場所で住み始めたが、彼との関係は途切れなかった。
俺は春陽くんにベータとバレないように、その後も必死にオメガの振りを続けていた。オメガの真似事のように抑制剤を持ち歩き、更には首輪まで春陽くんに買ってもらってしまった。
通常十代後半から発情期が現れるようになるが、まだ体が不安定かもと適当に誤魔化し、春陽くんの前では首輪を着ける、という生活を送っている。更にオメガ特有のフェロモンにかなり似せた「オメガになれちゃう!?オメガ体験香水」をネットで買ってみたが、鼻の良い春陽くんには直ぐバレて俺には似合わないと言われてしまってやめた。
今日も俺の仕事終わりに春陽くんから会いたいというLIMEが送信されてきたため、首輪を付けて家で待った。すると春陽くんは部活終わりのようで学ランを着たまま訪れてきた。彼は現在高校三年生で学ラン姿ももう見ることも少ない。シンプルな学ランなのに何故こんなに格好よく着こなすんだろう。イケメンって羨ましい。
そんなことを考えているとふわりと抱きしめられ、そっと春陽くんの息が耳許にかかった。
「幸人さん、会いたかった」
「俺も会いたかった」
「ふふ、今日もいい匂いですね」
俺の肩に顔を埋め、そう呟く。その嬉しそうな声を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
まだβだとバレてない。
そして、二人で夕食を共にした。今日はこんなことがあった、これが楽しかった、と笑顔で話す彼の話に相槌を打ちながら食事をする。そんな中、春陽くんがふと箸を止めた。
「あっ、今日は伝えたいことがあってここに来たんです」
「なになに?」
「ジャン!こちらです」
なんだその効果音、可愛過ぎる。静かに萌えを噛み締めながら彼の差し出した紙に目を落とす。
「花高祭」と手書きの大きな文字の周りに屋台や花火などがポップに描かれている。散りばめられている鮮やかな色彩に青春の眩しさを感じた。どうやら春陽くんの通う花安高校で三年に一度開催される文化祭のことらしい。
「その、もし良ければ幸人さんに来て欲しいなって思って。一緒に回ってくれませんか?」
「うん。行きたいな。でも俺で良いの?折角だし学校の友達と回らなくても大丈夫?」
「全然!寧ろ幸人さんと回りたいです」
机に身を乗り出す彼の勢いに飲まれて俺は頷いた。すると彼は花が綻ぶような笑顔を見せ、自分の行きたいお店を色々説明してくれた。
可愛いなぁ。この歳で高校の文化祭なんて入っていいのかと思ったが、もう行く機会もないだろうし春陽くんの学校の時の姿を見るのは楽しみで心が躍る。
「このお化け屋敷結構クオリティ高いって噂になってて」
「へえ、怖いのは苦手だけど気になるなぁ」
「じゃあ怖かったら僕の手を握ってください」
和やかに笑い合いながら雑談してた俺はまだ知らなかった。この文化祭が後々事件に繋がるということを。
俺は春陽くんにベータとバレないように、その後も必死にオメガの振りを続けていた。オメガの真似事のように抑制剤を持ち歩き、更には首輪まで春陽くんに買ってもらってしまった。
通常十代後半から発情期が現れるようになるが、まだ体が不安定かもと適当に誤魔化し、春陽くんの前では首輪を着ける、という生活を送っている。更にオメガ特有のフェロモンにかなり似せた「オメガになれちゃう!?オメガ体験香水」をネットで買ってみたが、鼻の良い春陽くんには直ぐバレて俺には似合わないと言われてしまってやめた。
今日も俺の仕事終わりに春陽くんから会いたいというLIMEが送信されてきたため、首輪を付けて家で待った。すると春陽くんは部活終わりのようで学ランを着たまま訪れてきた。彼は現在高校三年生で学ラン姿ももう見ることも少ない。シンプルな学ランなのに何故こんなに格好よく着こなすんだろう。イケメンって羨ましい。
そんなことを考えているとふわりと抱きしめられ、そっと春陽くんの息が耳許にかかった。
「幸人さん、会いたかった」
「俺も会いたかった」
「ふふ、今日もいい匂いですね」
俺の肩に顔を埋め、そう呟く。その嬉しそうな声を聞き、ほっと胸を撫で下ろす。
まだβだとバレてない。
そして、二人で夕食を共にした。今日はこんなことがあった、これが楽しかった、と笑顔で話す彼の話に相槌を打ちながら食事をする。そんな中、春陽くんがふと箸を止めた。
「あっ、今日は伝えたいことがあってここに来たんです」
「なになに?」
「ジャン!こちらです」
なんだその効果音、可愛過ぎる。静かに萌えを噛み締めながら彼の差し出した紙に目を落とす。
「花高祭」と手書きの大きな文字の周りに屋台や花火などがポップに描かれている。散りばめられている鮮やかな色彩に青春の眩しさを感じた。どうやら春陽くんの通う花安高校で三年に一度開催される文化祭のことらしい。
「その、もし良ければ幸人さんに来て欲しいなって思って。一緒に回ってくれませんか?」
「うん。行きたいな。でも俺で良いの?折角だし学校の友達と回らなくても大丈夫?」
「全然!寧ろ幸人さんと回りたいです」
机に身を乗り出す彼の勢いに飲まれて俺は頷いた。すると彼は花が綻ぶような笑顔を見せ、自分の行きたいお店を色々説明してくれた。
可愛いなぁ。この歳で高校の文化祭なんて入っていいのかと思ったが、もう行く機会もないだろうし春陽くんの学校の時の姿を見るのは楽しみで心が躍る。
「このお化け屋敷結構クオリティ高いって噂になってて」
「へえ、怖いのは苦手だけど気になるなぁ」
「じゃあ怖かったら僕の手を握ってください」
和やかに笑い合いながら雑談してた俺はまだ知らなかった。この文化祭が後々事件に繋がるということを。
あなたにおすすめの小説
俺は完璧な君の唯一の欠点
一寸光陰
BL
進藤海斗は完璧だ。端正な顔立ち、優秀な頭脳、抜群の運動神経。皆から好かれ、敬わられている彼は性格も真っ直ぐだ。
そんな彼にも、唯一の欠点がある。
それは、平凡な俺に依存している事。
平凡な受けがスパダリ攻めに囲われて逃げられなくなっちゃうお話です。
狂わせたのは君なのに
一寸光陰
BL
ガベラは10歳の時に前世の記憶を思い出した。ここはゲームの世界で自分は悪役令息だということを。ゲームではガベラは主人公ランを悪漢を雇って襲わせ、そして断罪される。しかし、ガベラはそんなこと望んでいないし、罰せられるのも嫌である。なんとかしてこの運命を変えたい。その行動が彼を狂わすことになるとは知らずに。
完結保証
番外編あり
ギャルゲー主人公に狙われてます
一寸光陰
BL
前世の記憶がある秋人は、ここが前世に遊んでいたギャルゲームの世界だと気づく。
自分の役割は主人公の親友ポジ
ゲームファンの自分には特等席だと大喜びするが、、、
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
ウサギ獣人を毛嫌いしているオオカミ獣人後輩に、嘘をついたウサギ獣人オレ。大学時代後輩から逃げたのに、大人になって再会するなんて!?
灯璃
BL
ごく普通に大学に通う、宇佐木 寧(ねい)には、ひょんな事から懐いてくれる後輩がいた。
オオカミ獣人でアルファの、狼谷 凛旺(りおう)だ。
ーここは、普通に獣人が現代社会で暮らす世界ー
獣人の中でも、肉食と草食で格差があり、さらに男女以外の第二の性別、アルファ、ベータ、オメガがあった。オメガは男でもアルファの子が産めるのだが、そこそこ差別されていたのでベータだと言った方が楽だった。
そんな中で、肉食のオオカミ獣人の狼谷が、草食オメガのオレに懐いているのは、単にオレたちのオタク趣味が合ったからだった。
だが、こいつは、ウサギ獣人を毛嫌いしていて、よりにもよって、オレはウサギ獣人のオメガだった。
話が合うこいつと話をするのは楽しい。だから、学生生活の間だけ、なんとか隠しとおせば大丈夫だろう。
そんな風に簡単に思っていたからか、突然に発情期を迎えたオレは、自業自得の後悔をする羽目になるーー。
みたいな、大学篇と、その後の社会人編。
BL大賞ポイントいれて頂いた方々!ありがとうございました!!
※本編完結しました!お読みいただきありがとうございました!
※短編1本追加しました。これにて完結です!ありがとうございました!
旧題「ウサギ獣人が嫌いな、オオカミ獣人後輩を騙してしまった。ついでにオメガなのにベータと言ってしまったオレの、後悔」
βな俺は王太子に愛されてΩとなる
ふき
BL
王太子ユリウスの“運命”として幼い時から共にいるルカ。
けれど彼は、Ωではなくβだった。
それを知るのは、ユリウスただ一人。
真実を知りながら二人は、穏やかで、誰にも触れられない日々を過ごす。
だが、王太子としての責務が二人の運命を軋ませていく。
偽りとも言える関係の中で、それでも手を離さなかったのは――
愛か、執着か。
※性描写あり
※独自オメガバース設定あり
※ビッチングあり
偽物の運命〜αの幼馴染はβの俺を愛しすぎている〜
一寸光陰
BL
楠涼夜はカッコよくて、優しくて、明るくて、みんなの人気者だ。
しかし、1つだけ欠点がある。
彼は何故か俺、中町幹斗のことを運命の番だと思い込んでいる。
俺は平々凡々なベータであり、決して運命なんて言葉は似合わない存在であるのに。
彼に何度言い聞かせても全く信じてもらえず、ずっと俺を運命の番のように扱ってくる。
どうしたら誤解は解けるんだ…?
シリアス回も終盤はありそうですが、基本的にいちゃついてるだけのハッピーな作品になりそうです。
書き慣れてはいませんが、ヤンデレ要素を頑張って取り入れたいと思っているので、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。